伝統から革新へ? レンジローバー「ヴェラール」が示す英国SUVの今

伝統から革新へ? レンジローバー「ヴェラール」が示す英国SUVの今

2017.12.21

英国のSUV専門メーカーであるランドローバーの「レンジローバー」に、4番目の車種として「ヴェラール」(VELAR)が今年、加わった。そして今回、遅れて日本市場に導入されたディーゼルエンジン車に試乗し、ヴェラール誕生の意味をようやく理解できたように思う。

レンジローバー「ヴェラール」のディーゼルエンジン車に試乗

レンジローバーで4番目の車種はどんな性格か

今後のレンジローバーにおけるデザインの方向性を示すとされる先進的なデザインと、デジタルテクノロジーを兼ね備えた“ミッドサイズラグジュアリーSUV”という触れ込みで誕生したヴェラールであったが、当初導入されたV6の3リッターガソリンエンジンを搭載した車種に試乗したときは、わざわざ4番目の車種として、ヴェラールがなぜレンジローバーに加わったのか、分かり難かった。

ヴェラールは、見た目のデザインは新しく、確かにこれまでのレンジローバーや、「レンジローバースポーツ」の角張ったスタイルとは違った、やや丸みのある先進的なデザインではあるが、見た目の新鮮さという点では、クーペのようなスタイルを採り入れた「イヴォーク」のほうが独特さは伝わってきた。

「スポーツ」(左)、「イヴォーク」(右)、「ヴェラール」は同じSUVでも雰囲気が異なる

また、スーパーチャージャーという過給器を備えたV型3.0リッターガソリンエンジンがアクセルを全開にすれば猛烈な加速を体験させたものの、全体的に重々しい走行感覚は、レンジローバーやレンジローバースポーツはもちろん、レンジローバーイヴォークとの違いをそれほど印象付けなかった。

ところが、今回試乗した直列4気筒で排気量2.0リッターのディーゼルターボエンジンを搭載した車種は、明らかに新鮮さを覚えさせたのだった。それは、V型6気筒より軽い直列4気筒のエンジンを積んだことで獲得した、軽快さによる乗り味の違いといえるだろう。なおかつ、このディーゼルエンジンは、いわゆるディーゼルらしい振動や騒音が少なく、強い加速をさせた際にも高回転へ伸びやかに回り、壮快な速度感覚を味わわせたのであった。

この軽快さは、市街地の角を曲がり、あるいは車庫入れをするといった日常の運転の中でも扱いやすさをもたらしてくれる。

つるりとした先進的な外観と、ディーゼルエンジンによる新鮮な走りが味わえるヴェラール。その上で、イギリスの高級車である「ジャガー」などからも感じられる、英国風の派手過ぎず目に心地よい色使いのインテリアは、気持ちを豊かにしてくれた。改めて室内を見回せば、簡素でありながら上質な作り込みや造形によって、心が癒されるのであった。

ブリティッシュなスタイルのインテリアから上質さを感じた

直列4気筒エンジンを得て本来の味を発揮

そもそも、レンジローバーの成り立ちは、日常的に乗る「ロールスロイス」や「ジャガー」と同じように、英国の貴族たちが彼らの領地を見回るための頑丈な四輪駆動車として誕生したと伝えられる。米国の「ジープ」と同じように、悪路を走るために生まれた四輪駆動技術を、より一般の人でも扱いやすくし、車体はアルミニウムで作って軽く仕上げられた。これが、米国のビバリーヒルズに住む人たちにも、高級セダンとは違うお洒落なクルマとして受け入れられ、今日のSUVブームの発端となっている。

そうした流れを汲むレンジローバーに加わったヴェラールは、軽量な直列4気筒エンジンを得て、目指した本来の味を発揮できるようになったのではないかと思う。2018年2月には、同じ直列4気筒のガソリンエンジン車も日本に届けられるようになる。

2018年2月には直列4気筒のガソリンエンジン車も日本に導入となる「ヴェラール」

ヴェラールは2017年9月の発売から約400台の受注を得ている。その多くは「50歳代以上のお客様」であると、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部、佐藤健プロダクトマネージャーは解説した。一方、当初の狙いとして想定した、イヴォークからの乗り換えは意外に少なかったともいう。

かつて、「いつかはクラウン」という言葉があったように、人生と共にクルマも出世して、大きな車種を選ぶといった買い方は、影を潜めはじめているのかもしれない。

英国ブランドに日本人を惹きつける魅力はあるか

また、一般的に輸入車ではドイツ車人気が続いており、英国車の存在を知る人が、どれほど若い世代にあるだろうかとの懸念も指摘される。

そもそも、英国に関する情報が日本では減っているように感じる。そうした中で、ヴェラールを購入する50歳代以上というのは、まさしくビートルズの影響や、その後1970~80年代のデヴィッド・ボウイ、80年代のカルチャークラブ、ワム、デュラン・デュランなどの音楽に親しんだ世代ではないだろうか。あるいは、アイルトン・セナが人気となったF1に熱狂した人は、ほとんどのF1チームが英国を本拠地とすることを知っていたはずだ。

英国ブランドに魅力を感じる日本人が以前より減っていそうなことが、「ヴェラール」を含む英国車にとって懸念材料ではある

今日の英国は、EU離脱や王室の話題が日本に伝えられる程度で、それもダイアナ妃が亡くなる前とは、情報量が比較にならないほど少なくなっているだろう。英国文化やファッションの情報も多くはなく、英国を意識したり、英国に魅了されたりする機会が減っているのではないだろうか。

引き算の美学が現代人の好みにマッチ?

それでも、レンジローバーイヴォークは、500万円台からの価格や、SUVでありながらコンバーチブル(オープンカー)もあるなど、ドイツ車一辺倒では飽き足らない人の関心を呼んだ。続いて、簡素なデザインの美しさを追求する「引き算の美学」のヴェラールは、同じように引き算の美学を語るマツダの「魂動デザイン」や、米国の電気自動車(EV)テスラのような、新しいクルマの美しさの在り方に通じ、惹きつけられる人はあるだろう。

ランドローバー初となるドアパネル格納式のデプロイアブル・ドアハンドル。ドアをロックするとハンドルが引っ込むので、車体の側面から凹凸がなくなる

独自性のある装備としては、クルマの中に貴重品を残したまま身軽に車外で活動することを助けるリストバンド式のアクティビティキーが挙げられる。ジャガー・ランドローバーの他にはない機能であり、一度使うと手放せなくなるのではないだろうか。

クルマに荷物を置いたまま、ジョギングやサーフィンなどを楽しむのに最適なリストバンド式アクティビティキー

ヴェラールは、存在を知れば選択肢の1つになりうるクルマなのではないだろうか。そして実際に運転してみると、今回の直列4気筒ディーゼルターボエンジン車のような、新鮮なクルマとしての乗り心地も体感することができる。

米国のキャデラック「XT5」も、いわゆる昔からの“アメ車”と言われてきた時代のクルマとは違った、軽妙さを備えた快適なSUVであった。国柄の違いはあるにしても、新たな時代を切り拓くクルマとして、レンジローバーヴェラールとキャデラックXT5は、いずれも心に響く何かを持った新感覚のSUVである。

LINEとモバイクがシェアサイクル推進同盟、そのメリットと消えぬ謎

LINEとモバイクがシェアサイクル推進同盟、そのメリットと消えぬ謎

2017.12.20

シェアサイクルで注目されている企業として中国のモバイクがあげられる。そして、その日本法人となるモバイク・ジャパンが大きな動きをみせた。LINEと資本業務提携を結び事業展開を図るのだ。新たなパートナーとの展開で何が変わるか。

写真左:LINEの出澤剛代表、写真右:モバイク創業者のHu Weiwei氏

シェアサイクル事業で注目すべきこと

モバイクは世界200都市以上でシェアサイクル事業を展開する企業だ。登録ユーザー数は2億人以上、1日あたりの最大利用回数は3000万回以上にのぼる。国内では今年8月から北海道の札幌市で事業を開始。それ以後、大きなニュースはなく次の一手が注目されていた。

その一手がLINEとの資本業務提携だった。LINEと資本業務提携を結び、国内におけるシェアサイクル事業を両社で展開していく。LINEは国内月間利用者数7000万人超に達する豊富なユーザーベースを活用、LINE Payとの連携によるLINE内での決済、官公庁や自治体、企業とのアライアンスの促進によるインフラ整備のサポートなどを行なう。対してモバイクはサービス運営、自転車の提供、アプリや業務システム開発を進めていくという。2018年上半期をメドに両社の力を合わせたサービスを提供していく考えだ。

業務提携における各社の役割

今回の発表で公表されたことは非常に少ない。サービスインのエリアも明かされていないが、注目したいのはLINEが行なうインフラ整備のサポートの部分である。シェアサイクル事業で重要になるのは、駐輪スペースだからだ。

今、注目を浴びているシェアサイクルは、人口の多い都市部において、数多くの自転車を用意し、1日に何度も利用されることで収益化できる。利用促進を図るには、利便性が高くなければならず、駐輪ポートをいかに確保するかがビジネスに大きな影響を与える。

シェアサイクル事業において、先行するドコモ・バイクシェアの堀清敬社長は、かつて本誌に次のように語ってくれた。「駐輪ポートが増えればサービス利用も指数関数的に増えていく。そうなると露出が増えて認知度が高まり、さらに利用が増える」(堀氏)。同氏の言葉どおり、駐輪ポートの確保は、サービス利用の増加、ひいては収益の点からも非常に重要なのだ。

駐輪ポートをどう確保するか

では、駐輪ポートをどう確保するかだ。言い換えれば、駐輪ポートになりうる土地を誰が保有しているか、という問題でもある。

これは場所によって異なるが、自治体であるケースも多い。日本の違法駐輪対策を自治体が中心となり進め、人の集まる駅前への駐輪所の設置などを進めてきたからだ。またシェアサイクルが公共性の高い事業という観点からも、自治体と結びつくほうがビジネスとして展開しやすい。

現に国内最大の事業者となるドコモ・バイクシェアも自治体からの事業受託をメインにしてビジネスを展開しているほどだ。ざっくり言えば、人口の多い自治体といかに手を結び、連携していくかが成功につながりやすい。それがシェアサイクルビジネスの一面である。

そうなると、モバイク・ジャパンにとって、自治体と強い結びつきを持つパートナー、もしくは、今後、強い結びつきを持てる力を持つパートナーが望ましい。LINEはその条件に当てはまる相手といえるだろう。

意外かもしれないが、LINEは行政サービスの情報発信を主体として、いくつかの自治体と連携している。とりわけ東京都渋谷区とは結びつきが強く、渋谷区内の小中学生を対象としたリテラシー教育、シェアリングサービスの実施・実現に向けた取組みを進めている。

2016年8月にLINEと渋谷区がパートナー協定を締結。写真は長谷部健渋谷区長(左)とLINEの出澤剛代表(右)

今後は自治体と連携を図るうえで、シェアサイクルを新たなサービスに加えて提案することも可能となり、自治体口説きの大きな材料となる。今回の提携はLINEとっても旨みのあるものだ。対して、自治体も市民の生活向上につながるサービスを提案してもらえるのだから歓迎すべきことだろう。

ビジネス環境をみても、今年になってソフトバンクとofoと共同で事業参入を表明し、DMM.com、メルカリも事業参入への検討を公表するなど、話題の企業が続々と手を上げている。そうした中でLINEとモバイクの提携は差別化を進めたという点でも意義が深い。

最大の課題は東京都心部の攻略

しかし、こうしたメリットを見出しながらも、シェアサイクルビジネスで、最も旨みのある東京都心部での事業展開については正直、謎である。

すでにドコモ・バイクシェアは都心部の多くを押さえており、数多くの事業者が名乗りをあげつつも、もはや勝敗が決したように見えるほどだ。

2017年9月末段階で、江東区、千代田区、港区、中央区、新宿区、文京区、大田区がドコモ・バイクシェアのサービスエリアとなっており、自転車4260台、駐輪ポート328カ所で展開している。さらに10月以降には渋谷区、練馬区、品川区もサービスエリアに加わっており、東京都心部はドコモ・バイクシェア一極集中の状態なのだ。

もちろん、自治体の手を借りずに都心部でのビジネス展開を図ることは可能であり、実際に都心部でサービス提供している事業者もいる。しかしながら、わずか数箇所の駐輪ポートをつくっても、ドコモ・バイクシェアと比較すると見劣りしてしまう。

発表会の席で、モバイク創業者のHu Weiwei氏は「ドコモ・バイクシェアと競争にはならない。相互補完性がある」などと述べたが、何をもってして相互補完性があるのかは不明だ。よほどの利用動機を作らない限り都心部での展開は難しいだろう。

「今後はスモールスタートを行いながら、LINEが懇意にしている地方自治体への提案を進めていく」とLINEの出澤剛社長が述べるように現状は発表待ちという段階だ。今回の提携をきっかけに、どういった一手を打ってくるのか、どういったアイデアで攻めていくのか、そこに注目したい。

パナソニックが歩んだ2017年、キーワードは「車載」「外様」「コト」

パナソニックが歩んだ2017年、キーワードは「車載」「外様」「コト」

2017.12.20

2017年の家電業界はある種堅調な一年だったようにも思える。

シャープは12月に東証一部復帰を果たし、復活が鮮明となった。一方で、再建に向けた動きが迷走を続けた東芝だが、ウェスタン・デジタルとの訴訟リスクを回避し、日本を主軸とした投資連合からの資金調達がうまく行けば、ようやくその道筋に決着がつくという段階に入ったと言えよう。

そうした中で、2017年度末の2018年3月にパナソニックは創業100周年を迎える。この老舗企業もまた、地道ながらに、そして着実に体質転換の成果を挙げた1年だったと言えるだろう。

テスラとトヨタ、車載事業で大規模提携

米ネバダ州 ギガファクトリー

パナソニックの1年間は、その軌跡を3つの出来事に集約できる。その一つは成長分野として経営資源を集中させた車載事業だ。

2017年1月に米テスラとの協業を発表し、米ネバダ州の「ギガファクトリー」でテスラ向け二次電池の生産に乗り出した。そして先日発表された同じく電池分野におけるトヨタ自動車との協業は大きな話題を呼び、電池分野のトップランナーとしての面目躍如といったところだろう。

車載事業は、2018年度に2兆円の売上高を目指しており、そのうち93%が受注済みという高いレベルにある。そうした事業環境に加え、「次の成長」を見据えてテスラやトヨタとの提携にこぎつけたことは、今後のパナソニックに大きな意味を持つ。両社は自動車業界に対するビジョンやリーダーシップを発揮するポジションにそれぞれ立っており、業界全体への影響力を持つためだ。

一方で、テスラのモデル3は生産の自動化が遅れ、量産体制が未だに整っていない。これを「テスラリスク」として業績圧迫への懸念を示す声もある。パイの拡大や業績安定を図るためにも、この2社との提携を軸に、戦略的提携を他メーカーまで拡大できるかが当面の課題だろう。

もちろん、パナソニックは車載ビジネスの可能性を電池分野までに留める考えはない。

代表取締役社長の津賀 一宏氏は、近い将来におとずれる自動運転時代に、車内空間が「走るリビングルーム」になると語っている。エンジン音がなく、ガラス部分が少なくなれば、オーディオルームとしての進化が見込まれる上に、「空質」の提案や家電製品が応用できる範囲も広がる。

走っている時のみならず、自宅に駐車している際にも、ひと部屋増えたような形で居住空間の提案できるようになるというビジョンもある。「ここ(居住空間の提案)に入れば、それはパナソニックの得意分野。新たなビジネスを作ることができる」(津賀氏)というわけだ。

提携を発表したトヨタ自動車とパナソニック。両社社長の豊田章男氏(左)と津賀一宏氏(右)が最初に出会った場所は、豊田佐吉記念館だったという
パナソニック 代表取締役専務 樋口 泰行氏

2つ目の出来事は、外部人材の積極的な登用だ。その象徴的な例が、IT業界からパナソニック入りした2人の外様だ。

1人は、代表取締役専務の樋口 泰行氏、もう1人は馬場 渉氏である。

樋口氏は、2007年から2015年まで日本マイクロソフトのCOO、社長を務めたのち、3月まで会長として活躍していた。4月の入社後はパナソニックのコネクティッドソリューションズ 社長に就任し、さっそく東京に同カンパニーの本社機能を移転した。「門真発想のままでは限界がある」として、物理的な仕掛けも加えながら、パナソニックが持つ伝統的な姿勢や考え方を根本から変える取り組みを開始している。松下電器産業に新卒で入社した樋口氏だからこそできる改革にも期待したいところだ。

一方で、SAPジャパンのバイスプレジデントから転身した馬場氏はビジネスイノベーション本部 副本部長に就任。シリコンバレーに拠点を置き、シリコンバレー流のデザインシンキングなどの手法を持ち込み、パナソニックのモノづくりを変えようとしている。先頃発表した「Panasonicβ」はその取り組みのひとつだ。

いま、パナソニック社内には、「タテパナ」と「ヨコパナ」という言葉がある。

従来のような事業部を中心とした垂直型の組織構造によってビジネスを行うのが「タテパナ」。そして、横のつながりをベースにして、既存の枠にとらわれない仕組みで、新たなものを生み出すのが「ヨコパナ」だ。「タテパナ」と「ヨコパナ」がつながる体制を作り上げたことで、スピード感を持った開発はすでに実証した。あとはこれを短期間に事業化し、収益につながる仕組みに発展させることができるかが鍵だ。

パナソニック ビジネスイノベーション本部 副本部長 馬場 渉氏

100周年は通過点でしかない

最後の出来事は、100周年を機に開発した「Creative! セレクション」だ。第1弾の商品群では、ななめドラム洗濯乾燥機やロボット掃除機、ルームエアコンなど、13商品を発表した。

残念ながら、第1弾の商品そのものはインパクトが欠ける。ただ、約3年前から新たな家電商品の開発を進めてきたなかで、「モノづくりの会社から、コトづくりの会社」へと移行する仕掛けがいくつか用意されていた。「成果」と呼べるレベルのものが明確には見えていないものの、ちょうど100周年となる3月には第2弾の商品が発表される予定だ。

Creative! セレクション

そしてパナソニックは100周年を「区切り」ではなく「通過点」と捉えており、Creative! セレクションは2020年まで継続して発表していくという。同社は2018年度に、4500億円以上の営業利益を目標に掲げている。「増収増益に転じる年」とした2017年度業績見通しからは約1000億円の積み上げが必要という高いハードルにパナソニックは挑むことになるが、創業100周年をどんな姿で迎えるのか。

100周年の節目を迎える2018年の新たな一手を明確に打ち出せるのか、注目しておきたい。