クルーズ市場は拡大するか? 世界大手の参入が日本にもたらしたもの

クルーズ市場は拡大するか? 世界大手の参入が日本にもたらしたもの

2016.05.02

世界最大のクルーズ会社、米カーニバル傘下の米プリンセス・クルーズが日本市場に乗り出して今年で4年目。潜在需要の高さを背景に日本のクルーズ市場の開拓を図っている。しかし、日本のクルーズ熱はまだそれほど高まっているとはいえない。それでも同社には余裕が持てるある事情が存在するのだ。

プリンセス・クルーズの客船ダイヤモンド・プリンセス号。全長290m、全幅37.5m、全高62.5m。船内のエレベーターで16デッキまで移動可能(最上階は17・18デッキ)。乗船すると巨大ビルの中にいるような感覚に陥る

クルーズ船は富裕層向けの旅行

クルーズ旅行と聞いて何を思い浮かべるだろうか。船内にはフィットネスクラブ、プール、ジャグジー、スパ、バーラウンジがあり、エンタテインメントショーも開催、船内ではジャケット着用が求められることもある。こんな言葉を並べられれば、富裕層向けの旅行というイメージがついてもおかしくはない。

ダイヤモンド・プリンセス号の船内。写真左上:プール、右上:スカイデッキ、左下:フィットネスクラブ、右下:アトリウム

そんなクルーズではあるが、日本ではふじ丸が就航した1989年が「クルーズ元年」とも言われ、業界ではクルーズ人口100万人を目指していた時期もあった。しかし、ふじ丸は2013年に引退、現在、稼動している日本籍船は「飛鳥II」「にっぽん丸」「ぱしふぃっくびいなす」の3船に限られ、船の数を見ると、一定層の需要は獲得しつつも、大きな広がりは見せていない。利用者数も、それほど増えていない。

国土交通省海事局調べによると、外航クルーズ(乗船地、下船地、寄港地のいずれかに海外が含まれるもの)を利用する日本人乗客数は、2014年で約13万7000人、1989年の約5万8000人から増えているものの、海外と比較すると乗客数の伸びは微々たるものだ。たとえば、世界一のクルーズ需要がある米国は年間1000万人近く利用しているとされている。米国と比較すると、日本ではクルーズ旅行を楽しむ文化が根付いたとはいいにくい状況だ。

そうした中で日本発着便をスタートさせ、日本市場に期待を寄せるのが、世界最大のクルーズ船会社、米カーニバルコーポレーション傘下の米プリンセス・クルーズである。

外資がクルーズ船市場に名乗り

日本発着便開始のきっかけについて、プリンセス・クルーズのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントのアンソニー・H・カウフマン氏は「海外でクルーズ旅行を体験した日本人からの強い要望があり、期待に応えた」と話す。同社は2013年に保有するサン・プリンセス号の日本発着クルーズをテスト的に実施。日本での市場拡大余地が大きいと見て、以後、ダイヤモンド・プリンセス号の日本発着便をスタートさせた。

日本発着便の開始にあたり、単に船旅を提供したわけではない。ダイヤモンド・プリンセス号に、寿司、日本酒が楽しめるレストランを用意し、ラーメン、そば、うどんといった馴染みの料理も食べられるようにした。日本式大浴場も備え、約100人の日本語を話せるスタッフも乗船し、外資系クルーズ船とは思えない充実したサービスを提供している。

「Kai Sushi」で寿司や日本酒が楽しめる
船内ではそばも食べられる
日本式大浴場の泉の湯。湯船だけでなくサウナも用意されている

クルーズ代金も手の届く範囲に

提供されるサービスとともに、気になるのは、クルーズ代金だろう。富裕層向けのお高い料金であることが想像されるが、実際には一般庶民に手の届かないものではなくなっている。たとえば、横浜発、長崎、韓国を巡る5泊6日の日程の商品では、87,300円(2人部屋を2名で利用した場合、政府関連諸税を除く)と、1泊あたり1万数千円だ。総額ならそこそこの値段だが、海外旅行をすると思えば、非現実的な額でもない。リーズナブルなプランが受けてか、目下、売れ行き良好とのことで、6月1日から発売する2017年の日本発着クルーズでは、シーズンの延長を行い、今後も、日本発着便に力を入れていく方針だ。

クルーズ元年の再来か

こうした同社の動きを見ると、日本における"クルーズ元年の再来"も期待される。しかし、一筋縄ではいきそうにないのが、クルーズ旅行だ。先にも述べたように、価格帯としては手頃なものが増加しているが、問題は日程だ。

ダイヤモンドプリンセス号の場合、最短4泊5日というプランもあるものの、数は少なく、幅広い層の人が気軽に参加できるわけではない。カーニバル・ジャパンの堀川悟代表は「ファミリー向けにも受け入れられる施設を整えている。乗船客の2、3割は仕事を持つ人で、夏になるとその比率はあがる」とするが、8泊9日、9泊10日といったある程度長期に渡るプランが多く、メーンターゲットは経済的、時間的余裕を持つ、現役を引退したシニア層と考えたほうがよさそうだ。

そう考えてしまうと、リーチ可能な層が限定されてしまい、クルーズ乗船人口の増加、クルーズ熱の高まりは大きく期待できそうにない。

しかし、ダイヤモンド・プリンセス号の場合は、必ずしも、日本人乗客数の増加にこだわる必要もない事情がある。それは乗船客の国籍だ。乗船客の半数近くは実は外国人。日本発着便をインバウンド需要が支えているわけだ。欧米からの参加者が多く、日本発着便を利用して、日本国内メーンに周遊するプランに積極的に参加しているという。

船内には外国人スタッフも多く外国人への対応もばっちり。日本人向け施設も多いが「バランスがとれたのでは」とカウフマン氏は指摘する

国土交通省が2013年より調査を開始した日本発着の外航クルーズの利用外国人は、2013年が6000人、2014年は2万97000人と急増している。国土交通省担当者によると、プリンセス・クルーズの参入が急増の背景にあるとしており、日本のクルーズ市場に影響を与えつつあるのだ。インバウンド需要は様々な業界に波及しており、クルーズ市場も例外ではないことがわかる。国内のクルーズ市場の拡大への期待は、日本人ではなく、外国人旅行客にかけたほうがいいのかもしれない。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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