自販機にもインバウンド対応の波、伊藤園がGMOと新型機を展開

自販機にもインバウンド対応の波、伊藤園がGMOと新型機を展開

2017.12.26

マルチ決済対応自動販売機のイメージ(伊藤園プレスリリースより)

伊藤園は12月21日、GMOフィナンシャルゲートと共同でマルチ決済端末を搭載した自動販売機を開発したと発表した。2018年1月以降、りそな銀行の10支店に設置する。

マルチ決済端末はクレジットカードや電子マネーなど、複数の決済手段での支払いを可能にするものだが、これを自販機に取り付ける。急速に拡大するインバウンド需要を見込んだキャッシュレスでの決済手段の提供に注目が集まっているが、この伊藤園の自販機もそうしたニーズを狙ったものだ。その実際の狙いと今後をまとめていく。

プロモーションを目的としたVisaデビットカード支払い専用自販機

今回採用されたマルチ決済端末はNayax製のものを採用し、決済手段としては「Visaデビットカード」の非接触タイプのみを受け付ける。「(Visaデビットカードによる)キャッシュレスの利便性を体験してもらう」ことが狙いで、従来であれば自販機に決済端末とは別に搭載される現金の取り扱い口が、用意されない予定だ。

りそな銀行は「Visaデビットカード」を発行しており、そのメリットを強調する形でのキャンペーンを展開しているが、りそな銀行にVisaデビットカード専用自販機が設置されるのは「そのプロモーションの一環」と伊藤園の広報は説明している。

そのため、今回の自販機の設置は伊藤園、GMOフィナンシャルゲート、りそな銀行の3社がパートナーを組んでの展開ということになるが、今後も「新たなパートナーがいれば設置エリアを拡大していく」(伊藤園)と述べており、ニーズを鑑みつつ全国展開を進めていくようだ。

経済産業省が出した「キャッシュレスの現状と推進」の報告書によれば、クレジットカード/デビットカード/電子マネーなどの現金を用いないキャッシュレス決済は、個人消費全体のうち20%を現在占めている。これを今後、10年間(2027年6月まで)に40%まで引き上げることが政府の目標だ。

また、2020年の東京五輪までにインバウンド需要を取り込むためのキャッシュレス対応がさまざまな業界で進んでいる。長年クレジットカード決済に対応していなかったマクドナルドなどが2018年から利用可能になるほか、コンビニ各社もPOS端末の更新期に差し掛かり、さまざまな決済手段への対応を順次進めている。

こうした流れを、伊藤園を含む自動販売機ビジネスを展開する各社も当然注視しており、これに対応する形で今回の発表に至ったようだ。ただ、今回は認知向上というプロモーションを主因とした設置のため「それほど売上が出るとは考えていない」と伊藤園側が認めているように、実際にこれが広域展開できるかどうかは、さまざまなオプションを探りつつ行っていくことになる。

なお伊藤園では、今回のマルチ決済端末搭載自動販売機について「国内初」をうたっている。この意味は、Visaデビットカードの非接触決済に加えて、「Nayax製端末搭載の国内初の自販機」ということだ。2016年7月に東京で開催された「インバウンドジャパン2016」において、伊藤園の自販機と同型のマルチ決済端末を展示していたNayax関係者に質問したところ、サントリーなど自販機大手らと交渉を続けていると説明していた。

Nayaxのマルチ決済端末。こちらは旧タイプのもの

当時は2016年末から2017年にかけて、古くなった自販機の一部からリプレイスしていく可能性を示唆していたが、伊藤園は「Nayax製の端末の設置自体が初のケース」としている。現時点でリプレイスがほとんど進んでいないことがうかがえる。

Nayaxの決済端末は欧米など海外の自販機では比較的よく見かけるもので、そこでは主にクレジットカード決済を取り扱うことを目的としている。旧タイプでは磁気カード、接触(IC)、非接触の3種類の決済手段に対応していたが、新タイプでは比較的大型のカラー液晶を採用し、各種電子マネー対応のほか、タッチパネルでの項目選択が可能になっている。

また、液晶とカメラを組み合わせて近年増加しているQRコード決済にも対応しており、過去に行われたデモではAlipayのアイコンが表示されていた。ただ伊藤園のケースでは、クレジット/デビットカードの非接触決済のみのサポートに限定されている。これは、10月にりそな銀行で「非接触決済に対応したVisaデビットカード」の発行がスタートした関係もあるだろう。

こちらは新タイプで伊藤園も採用したタイプ。液晶がタッチパネル方式となり、サイズが拡大した
Alipayマークが表示されていることからもわかるように、QRコード決済にも対応できる

伊藤園によれば、「現時点で話せる計画はない」としたものの、今後はりそな銀行のようなパートナー提携で展開を模索するほか、主にホテルや観光地など外国人が比較的多く訪れる場所で設置を目指していくようだ。当然、国内利用者がメインとなる電子マネー対応だけでなく、クレジットカードやQRコード決済への対応も行っていくようだ。

同社は12月7日にWeChat Pay(微信支付)とLINE Payに対応した自販機を設置したことを発表しているが、この自販機は成田市内にあるホテル1カ所で稼働しており、前述のように主にインバウンドを狙ったプロモーションを兼ねてのものだという。

実験的ではあるものの、単純な目先のビジネス的視点でなく、このように試行錯誤を続けているベンダーがいるのは非常に興味深い。こうした取り組みの成果は継続して追いかけていく予定だ。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。