世界を取るための戦略、メルカリが3年で技術者1000名の雇用を計画

世界を取るための戦略、メルカリが3年で技術者1000名の雇用を計画

2017.12.26

フリマアプリのメルカリが、新たなフェーズに踏みだそうとしている。「テックカンパニーへの進化」がその目標となるが、今後の成長を描くにはこれが不可欠な要素だと同社は考えているようだ。

UX/マーケ力でユーザー拡大も、今後は技術力を磨く

メルカリ 代表取締役会長兼CEO 山田 進太郎氏

メルカリはフリマアプリの代表格で、アメリカやイギリスでも急伸。総ダウンロード数が1億回を超えた。メルカリ 代表取締役会長 兼 CEOの山田 進太郎氏は、成功の要因を「創業経営陣はエンジニア経験があり、UI/UXにこだわってきたこと」と話す。その一方で不正な商品の出品が社会問題化したことから、自動検知の仕組みを導入するなど、バックエンドの技術力も磨いてきた。

「最近では、AIの活用で使い勝手を向上させた。出品する商品の写真を撮るとタイトルやカテゴリ、適正な価格などをサジェストすることで、出品率や販売率が上がった。また、不正な出品を検知したり、米国では重量の自動推定を行って重量のシッピングラベルを提供し、手間の削減と配送コストを削減するといった効果も出ている」(山田氏)

そうした状況から、より技術開発に力を入れ「テックカンパニーを目指す」方向性を打ち出す山田氏。これはFacebookの戦略と同じと語る。

「Facebookも最初は使い勝手のいいサービスが差別化となり、ユーザー数を拡大してきたが、ここ数年はタイムラインに興味があるものを表示したり、より簡単に動画をアップロードできるようにするなど、テクノロジーで他社の追随を許さない体制を作っている」(山田氏)

メルカリでは今後、各種技術のロードマップを策定し、3年で1000人規模まで技術者を拡大するほか、外部企業と共同研究および社会実装を行い、日本を代表するテックカンパニーを目指すという。

シャープや東大らと連携

こうした取り組みの一つが、研究開発組織「Mercari R4D(アールフォーディー)」の設立だ。

R4Dの名称は、調査(Research for)および開発(Development)、設計(Design)、実装(Deployment)、破壊(Disruption)という4つのDから構成されており、基礎研究や応用研究を試験・調査するだけに留まらず、外部の企業や教育機関との連携によって、社会実装を目的にしているのが特徴だ。

R4Dに関する研究開発投資は、2018年度に数億円規模を想定。山田氏は「2、3年後にメルカリのビジネスに影響すると思われるIoTやAI、VR/ARといった技術に取り組んでいくことが、当社の競争力を高めることにつながるだろう」と見る。R4Dの代表となるR4Dオフィサーにはメルカリの木村 俊也氏が就き、シニアフェローには、現代アーティストのスプツニ子!氏、京都造形芸術大学 教授の小笠原治氏が参画する。

連携パートナーと研究テーマは下記の通り。

  • シャープ 研究開発事業本部 (8Kを活用した多拠点コミュニケーション)
  • 東京大学川原研究室(無線給電によるコンセントレスオフィス)
  • 筑波大学落合研究室(類似画像検索のためのDeep Hashing Network、出品された商品画像から物体の3D形状を推定、商品画像から背景を自動特定)
  • 慶應義塾大学村井研究室(ブロックチェーンを用いたトラストフレームワーク)
  • 京都造形芸術大学クロカテック研究室(Internet of Thingsエコシステム)
  • 東北大学大関研究室(量子アニーリング技術のアート分野への応用)

パートナーの一つ、シャープ 常務 研究開発事業本部長の種谷 元隆氏は、「メルカリはインターネット中心の企業から、技術の企業へと変革を進めようとしており、ストレスフリーの社会の実現に取り組んでいく。一方でシャープは、研究開発を『価値を生み出す事業』のひとつであると考えている。研究成果をβ版の段階からいち早く実装し、2023年に実装をすると思われているようなものを、2019年に実装したい」と話した。

具体的には、8Kディスプレイによるオフィスコミュニケーションや、遠隔地にいる友人などとAR/VRを活用した疑似スポーツ体験、医療支援などを検討しているほか、「遠隔地にいる人と、感情(エモーション)まで共有できるようなサービスを考えたい」(種谷氏)という。特にオフィスコミュニケーションでは、映像のリアリティや、遅延の無い音声伝送の実現が必要となるため、こうした課題を共同研究で乗り越えたいとした。

一方で現代アーティストのスプツニ子!氏は、「今後は、未来の可能性を提示し、先導するデザインをDesign-Led Xが重要である」と話す。例えば、学生に対してアートやデザインの観点から発想を求めると、入院したときに病室が自動運転車になれば退屈しないで済むといったアイデアや、お墓参りが面倒であれば、お墓が向こうからやってくるという仕組みを考える学生もいたという。

こうしたアートやデザイン的な発想が、新たなテクノロジーを生むこともあるとして「アートやデザインの観点から活動に貢献していきたい」とスプツニ子!氏は話した。

R4Dオフィサーの木村氏は、「3~5年先にビジネスになったり、インフラになるようなものを研究開発テーマとして考えている」と具体的な製品・サービス化時期を想定する。例えば暗号通貨で注目され、さまざまな分野でインフラとして期待されるブロックチェーンは、「安心・安全な利用にまだまだ課題がある」とみており、研究開発に注力することでサービスへの応用を早めたい考えだ。

類似画像検索といった現状でも利用されている技術についても、より高速化する技術開発を内製に近い形で目指し、現在はメルカリが進出していないコミュニケーション分野でも、前述のシャープとの共同研究を行うことから、メルカリが幅広い可能性を模索していることが伺える。

ITインフラの多くが米国企業に押さえられているなか、学術界や他産業とのコラボレーションで技術力を磨いてどこまで製品・サービスの競争力の源泉とできるか。海外市場でもポジションを築きつつあるメルカリだが、この取り組みが5年後、10年後に繋がる「底力」となるか注目だ。

(左から)京都造形芸術大学の小笠原治教授、現代アーティストのスプツニ子!氏、ピクシーダストテクノロジーズの落合陽一社長、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授、メルカリ 代表取締役会長兼CEOの山田進太郎氏、メルカリ 取締役 CPOの濱田優貴氏、シャープ 常務 研究開発事業本部長の種谷元隆氏、東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授、東北大学大学院情報科学研究科の大関真之准教授
「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。