自動車史の転換点? クルマの電動化で世界が動いた2017年を振り返る

自動車史の転換点? クルマの電動化で世界が動いた2017年を振り返る

2017.12.29

2017年は今後、自動車の歴史を考える上で“転換点”として思い出される年となるかもしれない。欧州では政府による“エンジン車販売禁止”宣言が相次ぎ、世界的には多くの自動車メーカーが電動化対応の姿勢を鮮明にした。クルマの動力源は今後、どう変わっていくのだろうか。

2017年に登場した日産自動車の電気自動車「リーフ」(2代目)

EVシフトは今に始まったことではない

1990年代に、一時的に電気自動車(EV)への移行が強く推し進められようとしたことがあった。背景にあったのは、米国カリフォルニア州で始まった低公害車・低公害燃料プログラムの法律、一般的にZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)法といわれる規制への対応である。

当時のZEV規制の内容は、カリフォルニア州内で販売する新車のうち、2%を排ガスの全く出ないクルマにしなければならないというものであった。この規制はまた、現在も同様だが年を追って規制値が厳しくなり、当時でも2001年には5%、2003年には10%を排ガスゼロのクルマの販売にしなければならないことになっていた。

とはいえ、当時はまだバッテリー性能が追いつかず、厳密な施行ができなかったため、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も、係数をのせることでZEVに準ずる車種として認めてきた。その結果、EVへの熱は一時的に下がった。

フォルクスワーゲンからはゴルフのEV「e-GOLF」が日本に上陸

政府がEV普及を後押しする事態に

しかしながら、それ以後も世界的に気候変動が進み、同時に大気汚染が深刻化してきたことから、2017年7月にはフランスが、2040年までにエンジン車の販売を禁止すると発表した。続いて英国も、2040年からエンジン車の新規販売を禁止すると発表する事態となった。これより以前にドイツ議会は、10年前倒しとなる2030年にエンジン車の販売を禁止すると議決している。

この流れはインドへも広がって、2030年までにエンジン車の販売を禁止するとともに、販売できるのはEVのみという具体的な方針を打ち出した。こうした動きは、世界最大の自動車市場である中国へも広がり、将来的にエンジン車の販売を禁止すると政府関係者が口にしている。中国では、法規制とは別にEV以外のエンジン車はナンバー交付に高額な手数料が掛かったり、ナンバー交付に何カ月も待たされたりということが、現実の問題となっている。したがって、実質上のエンジン車規制がすでに始まっているともいえるのである。

メーカー同士も電動化を軸に連携

一連の世界情勢の急変が、自動車メーカーの経営にも影響を及ぼした。国内ではEVに懐疑的であったトヨタ自動車とマツダが提携し、これにデンソーを加えてEV開発の新会社を設立することになった。続いてダイハツがその新会社への参画を表明し、スズキも参画を検討することとなった。差し当たり、インド市場へ投入するEVについては、トヨタとスズキが提携に合意している。最近の動きとしてトヨタは、パナソニックと車載用電池の協業検討で合意し、2030年にはハイブリッド車(HV)を含む電動車両550万台以上を売るとの目標を打ち出した。

日産は、すでに三菱自動車との提携の中で、EVの共同開発の動きがある。孤軍奮闘に見えるホンダは、日立オートモーティブシステムズと駆動用モーターの開発・生産で合弁会社を設立している。

トヨタとマツダは業務資本提携を発表。EVの共同技術開発に向けた新会社「EV C.A. Spirit」をデンソーと設立した

海外へ目を転じてみれば、メルセデス・ベンツのダイムラーは、2022年までに10車種以上のEVを投入するとし、BMWは「MINI」のEVを2019年に製造開始するとともに、SUV「X3」のEVを2020年に発表予定としている。同時にBMWは、全てのブランドの全ての車種に、EVまたはプラグインハイブリッド車(PHV)をラインアップできる次期車両構造を採り入れることを表明した。フォルクスワーゲンは、2025年までに30車種以上のEVを投入し、電動化のリーダーになることを表明している。

数値目標を掲げ電動化に積極姿勢を示す海外勢

この他、欧州域内ではスウェーデンのボルボが、2019年以降に発売する全ての車種をEVやHVにすると発表している。フランスのPSA(プジョー・シトロエン・オートモビル)は、エンジンとモーターの双方を搭載可能なマルチプラットフォームを検討しており、また最近では、日本電産とモーターの生産・販売で提携を結んでいる。フランスのルノーは、日産との提携を通じてすでにEV販売を行っている。

「ワーゲンバス」も電動化される見通しだ(画像は東京モーターショー2017で撮影した「I.D. BUZZ」)

米国ではゼネラルモーターズ(GM)が、今後1年半のうちにEV2車種を投入するとともに、2023年までにEVまたは燃料電池車(FCV)を少なくとも20車種発表するとしている。フォードはエンジンへの設備投資を3分の1に減らし、これを電動化の資金に回しながら、電動化の専門部署を立ち上げ、今後5年間に新型電動車両13車種を市場投入するという。

EVをカリフォルニア州内へ向け開発しなければという1990年代の自動車メーカーの考えと、現在販売する新車の全てを電動化しようとする今回の動きとでは、規模も意気込みも異なる。ガソリンエンジン車が誕生した1886年から131年目となった2017年は、自動車の動力源の概念を大きく変える節目の年になったといえるだろう。

さまざまな影響が顕在化してきた気候変動

背景にあるのは、温室効果ガスによる気候変動が現実のものとして感じられるようになってきたこと。また、都市での大気汚染が進み、健康被害が全世界的に起きてきていることの2つがある。

気候変動では、気象庁は先ごろ、海の酸化が進んでいると発表し、警鐘を鳴らしている。海には温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収する能力があるが、大気中のCO2濃度が増したことにより、本来は弱アルカリ性であるべき海が酸化し、CO2の吸収力が衰える可能性があるというのである。また、海の酸化によってプランクトンの減少やサンゴの白化などが起こり、生態系に影響を及ぼす懸念がある。これらは、人間にとって食料確保に影響が出る可能性も示唆している。

気候変動が進むと海の酸化が心配だ

他にも、すでに海の温度は1度ほど上がっているが、なおかつ海面だけでなく海中でも温度上昇が始まっており、それによって北上した台風の勢力が衰えず、従来は台風が上陸しなかった北海道へも台風が到達するといったことが現実となっている。

人口集中で深刻化する都市部の大気汚染

大気汚染については、すでにパリが北京と変わらない状態まで深刻化しているとの話があり、インドは中国を上回り、微小粒子状物質(PM2.5)は世界保健機構(WHO)が推奨する基準の70倍に達するともいわれる。PM2.5の増加は呼吸器系疾患や肺癌の懸念を生じさせる。特に、乳幼児がPM2.5を取り込むと、脳に障害を受ける恐れがあるとの報告をユニセフは行っている。

国際連合は、2030年には世界人口の60%が都市部に住むとの推計を出している。すでに大都市では大気汚染が発生しているが、このまま排ガスを出すクルマが増え続ければ、例え排ガス浄化を行っていても、排出ガスの総量は増えることとなるので、大気汚染の抑制は難しくなる。

気候変動をすぐには実感してこなかった人々も、大気汚染をいよいよ目の当たりにし、クルマの電動化を要望する消費者の声が大きくなってきているというのが実情だろう。そこで、政府も動き出し、自動車メーカーも本腰を入れることになったという図式である。

そして、その具体策が問われるのが、2018年ということになる。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。