上期好調も、創業100周年へ向け「テスラリスク」が残るパナソニック

上期好調も、創業100周年へ向け「テスラリスク」が残るパナソニック

2017.11.02

パナソニックが発表した2017年度上期(2017年4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.0%増の3兆8578億円、営業利益は10.4%増の1965億円、税引前利益は7.6%増の1947億円、当期純利益は10.9%減の1189億円となった。「2017年度は増収増益に転じる年」と位置づける同社にとって、上期の折り返し地点での評価は、ひとまず合格点に達したといえるだろう。

パナソニック 取締役執行役員 CFOの梅田 博和氏は、「第1四半期に続き、増収増益を達成している。また、すべてのセグメントで、事業から創出される利益は増益となっており、収益力は着実に向上している」と自信をみせる。同社 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの津賀 一宏氏も、「今年度の公表値をクリアすることには、かなりの手応えを感じている。公表値をボトムに上積みしたいと考えている」と語る。

2017年度(2017年4月~2018年3月)の連結業績見通しは、5月公表値をそのまま据え置き、売上高は前年比6.27%増の7兆8000億円、営業利益は21.0%増の3350億円、税引前利益は18.2%増の3250億円、当期純利益は7.1%増の1600億円としている。「下期は、上期同様の成長が継続すると見込んでいる。営業利益についても、将来に向けた投資や原材料の高騰影響があるものの、増販益が貢献し、引き続き増益になる見通しである」と、梅田氏は補足する。

パナソニック 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 津賀 一宏氏
パナソニック 取締役執行役員 CFO 梅田 博和氏

しかし津賀氏が、「公表値をボトムに上積みしたいと考えている」とするものの、上方修正には踏み出せない理由がある。それが、米Tesla Motors(テスラモーターズ)との協業の行方だ。

第3四半期、260台しか生産されなかったモデル3

米ネバダ州北部のギガファクトリー

津賀氏も、「上方修正をしないのは、テスラをはじめとした不透明要素があるためだ」と明かす。パナソニックはテスラとの協業により、米ネバダ州北部にあるギガファクトリーにおいて、2017年1月から二次電池の生産を開始している。

ここで生産しているのは「2170」と呼ぶ円筒形リチウムイオン電池セル。テスラは、パナソニックが生産したこの電池セルを使用した電池モジュールを生産し、主にプレミアムセダン「モデル3」向けに搭載する。モデル3は、テスラのラインアップ初の普及モデルであり、全世界で45万台以上のプレオーダーが入っているという人気ぶりだ。

だが、モデル3の生産が遅れており、そこに不透明要素が存在するのだ。

津賀氏は、「2017年1月以降、電池は順調に生産を続けてきたものの、テスラ側でモデル3の生産の立ち上げに苦戦しており、電池の生産量がクルマの生産量を上回るという状況が生まれている。電池がないために、テスラの生産の足を引っ張るという状況ではない」とし、「そのため、電池の使途を蓄電用に切り替えて、蓄電用電池の生産を行っている」と説明した。

モデル3は、生産の自動化が遅れており、第3四半期(2017年7~9月)の生産台数はわずか260台に留まったという。これは、1500台の計画を大きく下回るものだ。津賀氏は、「生産の問題が解決すれば、一気に立ち上がるだろう。我々の増産体制も加速することになる」と語るが、好調な業績もテスラの影響で上方修正を足踏みせざるを得ない状況であるのは明らかだ。

パナソニックの成長戦略は、収益性の高い車載事業を柱に描いている。

そして、その根幹を担うのがテスラとの協業だ。そのリスクについては、かねてから指摘されており、テスラ向け二次電池の生産に関する大規模な投資については、かつてのプラズマディスプレイ事業で工場設備に大型投資を行い、業績悪化に至った失敗とダブらせて指摘する声も少なからず上がっていた。

その協業の本格的なスタート位置となるこのタイミングで、早くも"テスラリスク"が懸念材料として浮き彫りになったといえなくもない。

津賀氏は、自ら「テスラ頼みでいいのかという指摘もある」としながらも、「二次電池は、テスラ向けのほかに、車載向けの角形と、18650と呼ぶ円筒形のパソコン向けバッテリーを使った蓄電池がある。テスラ向けの比率が高まるが、蓄電池なども順調に売上高、利益も伸びようとしている。この3つをバランスさせながら事業を行っていくことになる」と説明する。

2170 円筒形リチウムイオン電池セル

ギガファクトリーでは「2170」サイズの円筒形リチウムイオン電池セルだけを生産しており、一般的に広く使用されてきた18650サイズは生産していない。しかし同社は、2170サイズを住宅向けにも転用して、生産を維持するといったことにも取り組んでいるというわけだ。

また、「テスラへの投資が大きいため、リスクが増すのは事実だが、契約次第で、リスクヘッジが可能になると考えている」とも津賀氏は語っており、両社間の契約でなんらかの調整が行われる模様だ。

2018年度営業利益を達成するために

従来のプラズマディスプレイにおける失敗は、需要変動が大きいBtoC市場が対象であったのに対し、BtoBとなるテスラとの協業はそうした影響が少ないというのが同社の見解だった。しかし今後、テスラのモデル3の生産がどんなスケジュールで立ち上がるのかによって、パナソニックの業績が左右されるのは明らかだろう。

パナソニックでは、創業100周年を迎える2018年度に、4500億円以上の営業利益を目標に掲げている。今回、上期の業績が好調であったにも関わらず、上方修正に踏み出せなかったことで、その道のりが平坦ではないことが示されたともいえる。例えば、2017年度業績目標を上方修正できなかったことで、2018年度の目標達成には2017年度から約1000億円の積み上げが必要となるからだ。

津賀氏は、「その過半が、オートモーティブ&インダストリアルシステムズになる」とし、その点でもテスラの影響は避けられないだろう。2018年度には車載事業で2兆円の売上高を目指しており、そのうち93%が受注済みという状況は万全かのように見えるが、そこにテスラリスクが影を落とす。

「車載事業以外にも、液晶パネルなどの収益改善事業に位置づけられる事業の回復や、高成長事業であるメカトロニクスなどのインダストリアル事業やインフォテイメントシステム事業などが、収益を伴った成長が必要。これらが落ち着いてくれば、残りの半分の積み上げが可能になる」と津賀氏は説明するが、やはり車載事業への依存度は高い。

「テスラ依存体質」といわれない成長戦略を描く必要がある。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。