多摩川の河川敷にオフィスが出現!? アウトドアにおける働き方改革の新提案

多摩川の河川敷にオフィスが出現!? アウトドアにおける働き方改革の新提案

2017.11.08

11月初頭に迎えた小春日和。東急田園都市線の二子玉川と二子新地の至近にある多摩川の河川敷で、ユニークな試みが行われた。広々とした河川敷で、野球でもなくバドミントンでもなく、ゴルフでもなく、ビジネスを行おうというのだ。

そもそもの興りは「クリエイティブ・シティ・コンソーシアム」という、日本にクリエイティブ・シティを創ろうという活動がもとになっている。東京急行電鉄やコクヨ、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、大日本印刷、日建設計、三菱総合研究所といった企業が幹事法人となり、世田谷区や川崎市、大田区といった多摩川流域の自治体が協力している。 そのほかにも、慶應義塾大学、多摩大学、東京都市大学などが参加し、まさに産官学一体となり、多摩川流域にクリエイティブ、そしてイノベーションを起こす文化を築き上げようという取り組みだ。

当日、取材に呼ばれて多摩川の河川敷に立った筆者の目には、いくつかのテント、そしてタープが設営された光景が映った。「多摩川の河川敷にキャンプ場ができたの?」としかはた目には思えない。

キャンプで談笑ではなく打ち合わせ

遠くからみると「あれキャンプしてるのかな?」といった雰囲気。右はオフィスとして使われたテント

だが、キャンプにつきものの、調理器具を使った野外料理やボール遊びをする人の姿はみられない。それもそのはず、このテントに入っている人々は、遊ぶためではなく、仕事をするために集まったからだ。

いくつかのテントの中をのぞかせてもらった。一見すると、テントの中で談笑している仲間連れのようにみえるが、会話を聞いていると、いわゆる“会議”または“打ち合わせ”という内容だった。普段、会議室やミーティングルームで行われている内容が、多摩川河川敷に設営されたテントの中で行われていたのだ。

これは「キャンピングオフィス」という、スノーピークビジネスソリューションが提供する取り組み。スノーピークといえば、キャンプ用品の老舗で、アウトドア愛好家から絶大な支持を得ているメーカーだ。そのスノーピークが、ビジネスとアウトドアを掛け合わせた取り組みが、このキャンピングオフィスというわけだ。

当日、テント内やタープ下でミーティングをしていた企業は、NEC、富士通、三菱総合研究所など。お話しをうかがったところ、アウトドアでのミーティングは、なかなか面白いものだなと感じた。

ある企業の担当者は、「開放感があるので、普段は思い浮かばないようなアイデアが思いつく」と話した。また、ほかの企業の担当者は「いつもは発言しないスタッフが、かなり饒舌になっていた」と笑みをこぼした。あきらかに、普段のミーティングルームや会議室とは違う効果が生まれたようだ。

多摩川流域にいかに価値を創造するか

左から東急電鉄 太田雅文氏、スノーピークビジネスソリューション 村瀬亮氏、川崎市長 三浦淳氏

今回のイベントの主催企業のひとつ、東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 副事業部長 太田雅文氏は、「企業が都市部に集中しているが、この多摩川のような少し郊外で働く人を増やす必要がある」と、山手線内に集中している企業の立地に対して提言している。二子玉川を本社の拠点にしている楽天を例に、そのメリットを語った。また、「鉄道会社にとって、輸送での売り上げは18%ほど。輸送だけではなく、地域の価値をいかに事業に結びつけるかが大切」と語る。ちなみに、JRは約80%が鉄道の売り上げだそうだ。首都圏の私鉄が鉄道以外の売り上げを模索する理由が、この数字からもみえてくる。

また、流域の川崎市 副市長 三浦淳氏は、「多摩川流域にはキヤノン本社や富士通、NECの事業所がある。クリエイティブ・イノベーションを生み出しやすい人材が集まるところなので、これをいかに生かすかが大事」と、流域の重要性を強調した。

スノーピークビジネスソリューション 代表取締役 村瀬亮氏は、「公民館やオフィスではない自然の中でのワークは、通常味わえないワクワク感が得られる。働き方改革という意味でも、この取り組みを推進していきたい」と、キャンピングオフィスの意義を語る。

確かにそうだろう。冒頭で述べたとおり、当日は小春日和といえる絶好の天気。トンビの甲高い声や群れで飛ぶ野鳥を視野に入れながら、打ち合わせができるのだ。こうした光景はオフィスビルの中では絶対に味わえない。普段は出てこないアイデアや意見も出やすくなるというものだ。

群れで飛ぶ野鳥。橋の向こうには二子玉川ライズと楽天本社がみえた

通信に関しても多摩川周辺であれば、問題なくつながる。年に数回、こうした自然環境の中で仕事をするのも悪くないなと、素直に思った。ただ、これからの季節は寒風が吹きすさぶ時期。もし、筆者が勤める会社でこの取り組みを行うなら、来年のゴールデンウィーク前後がいいなというのが、正直な要望だ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu