日本に専売店60店舗? 「ジュリア」発表のアルファロメオが強気な理由

日本に専売店60店舗? 「ジュリア」発表のアルファロメオが強気な理由

2017.11.09

アルファロメオが強気だ。フィアットやアバルトなどを手掛けるFCAが持つブランドの1つだが、このほど日本で専売店60店舗を整備する方針を打ち出した。新車「ジュリア」の発表と同時に強気の姿勢を鮮明にしたアルファロメオだが、その勝算は。FCAジャパン取締役で営業本部長の牛久保均氏に聞いた。

FCAジャパン取締役で営業本部長の牛久保均氏

ジュリア導入でディーラー網を再構築、専売店設置へ

アルファロメオの新車「ジュリア」の発表会場は、記者席が一杯になるほど熱気を帯びていた。式次第は、FCAジャパン代表取締役兼CEOのポンタス・ヘグストロム氏による新車紹介に加え、アルファロメオで外観(エクステリア)デザインのチーフデザイナーを務めるアレッサンドロ・マッコリーニ氏がイタリアから来日し、107年に及ぶ同社の伝統と、受け継がれてきたデザインの系譜を熱く語った。

FCAジャパンが10月に発売したアルファロメオ「ジュリア」

ジュリア導入に寄せるFCAジャパンの期待が伝わる新車発表会であった上、さらに関心を呼んだのは、これを機にアルファロメオのディーラー網を再構築し、専売店を日本全国で展開するとの発表であった。

アルファロメオは「156」(1997~2005年)や「147」(2000~2010年)のあと、「ミト」や「ジュリエッタ」を日本に導入しているが、1980年代後半に登場した「164」以降の3桁数字の車名を使った時代に比べ、存在感が薄まっているのは事実だろう。そこに、専売店での販売網構築という話が出てきたのだ。FCAとして、フィアットやアバルトと併売するのではなく、単一ブランドでの販売店で商売を成り立たせていけるのか、という心配や驚きがあった。

「ジュリア」から変わるクルマづくり

これには、アルファロメオという伝統の銘柄をいかに復活させるかについて、イタリア本社が動きだしたことが関わっていそうだ。新型ジュリアは、フィアットの部品を共有した前輪駆動方式を止め、後輪駆動のプラットフォームを開発し、採用した車両だ。

「ジュリア」はアルファロメオの伝統を再び輝かせられるか

エンジンも独自に新開発し、これに8速オートマチックトランスミッション(自動変速機)が組み合わされる。その自動変速機は、前輪と後輪の重量配分を50:50に近づけるため、後輪を駆動するデファレンシャル近くに配置され、まるでスポーツカーのような搭載方法を用いている。例えば、最低でも1,000万円近い日産自動車「GT-R」が、この方式を採用している。

販売価格が446万円からという4ドアセダンのジュリアに、そうした特殊な変速機搭載方法を用いてまで、前後重量配分の最適化にこだわり、走行性能の高さを追求した新車開発を行ったことを考えると、新車発表会場での熱気も、さもありなんと思うのである。

前輪と後輪の重量配分を50:50に近づけるべく工夫された「ジュリア」

アルファロメオ専売店設置は必然、気になる採算性は?

より大衆的なフィアットとは、採用技術を別にしつらえたアルファロメオの誕生には、販売する店もまた、別仕立てが必要になった。こう聞けば、専売店化の話も筋道が通ってくる。だが、まだ発売された新車はジュリアのみである。経営は成り立つのだろうか。牛久保氏は次のような手立てを語った。

「来年の早い時期には、ジュリアに加え『ステルヴィオ』も発売となることは、ジュリア発表会の場でCEOのポンタス・ヘグストロムが申し上げています。とはいえ、現状で新車が1台しかないところで経営が成り立つのかという点について、正直、私も厳しいと考えています。そこで、当初の44店舗の専売店については、ほとんどが既存のディーラー様にお声を掛けさせていただいています。そして、これまで販売されたアルファロメオ車のサービス売り上げで補完していただくように考えています」

来年の早い時期には、アルファロメオ初のSUV「ステルヴィオ」も発売となる(画像提供:FCA)

点検や整備、あるいは修理といった納車後の維持のための売り上げは、無視しえない金額に達する。例えばフォルクスワーゲンは、初代「ビートル」を含め、長く乗ってもらうこともディーラーの売り上げに貢献していると話す。そのため、ことに欧州の自動車メーカーは、古いクルマの部品をなお供給し続けている。

サービス事業の売り上げを当てにすることにより、アルファロメオの専売店化を既存ディーラーから推進することは、無理のない筋書きなのだ。

赤と黒の外観、営業トレーニングはリッツ・カールトンで

アルファロメオ専売店は、どのような形で始まっているのか。店の外観は赤と黒で統一され、そこにアルファロメオの文字と、アルファロメオのロゴが配されている。店内は、サローネ・ロッソ(赤い客間)を基軸に、ホテルのラウンジのような空間を演出しているという。牛久保氏は狙いを次のように語った。

赤と黒で統一された専売店の外観。画像は2017年10月にオープンした国内8店舗目となる専売店「アルファロメオ小山」(栃木県)だ(画像提供:FCAジャパン)

「黒を敷いた店内の目立つ場所に最新のクルマを置き、これまでも店内にソファーは置いていましたが、そこをよりくつろげる空間としたり、コーヒーバーを設けたりして、VIP感覚を味わっていただけるようにしています。もちろん、携帯電話などの充電コンセントや無料Wi-Fiなど、日常的にお使いの機器を不便なくご利用いただけるようにもしています」

「スタッフはジャケットとスラックスの姿で、ネクタイには色を指定するなど、フィアットでは親近感を出すためポロシャツでもかまわなかったですが、そこを明確に分けています。そうした営業の方々のトレーニングを、リッツ・カールトンで開催するなどして、これまでとは違った顧客満足をいかに高めるかに取り組んでいます」

ネット普及で変わるクルマの買い方、販売店は“一期一会”

同時に、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)の一環として、ネットでの問い合わせに対する迅速な対応も心掛けているという。

「インターネットでお問い合わせをいただいたお客様に、いかに早く対応するか。例えば米国では、ネットでのカタログ請求に24時間以内で対応することを行っています。一方、国内では、まだそこまで意識が高まっていない面がありました」

「また米国では、10年前には5.4回の来店で(クルマの)購入を決める傾向でしたが、今日では1.7回に来店回数が減っています。それは、事前にネットで情報を得た上で、実際にクルマを見てみなければわからない、質感、肌触り、走りの楽しさなどを(実際に来店して)確認するだけとなっているからです」

顧客がクルマの購入を決めるまでに来店する回数は減っている(画像はアルファロメオ専売店の内観、提供:FCAジャパン)

「国内市場も、そうしたお客様の動向に適した店側の対応ができるようにしていかなければなりません」。このように牛久保氏は付け加える。

先進装備を充実し、レースの栄光を盛り込む

接客と同時に、新しいアルファロメオをどのように売っていこうとしているのか。今年から、ブランドコミュニケーションテーマとして「IQ/EQ」を打ち出している。IQは知性、EQは感性を意味する。

「IQの面では、技術を駆使し、これまで不十分であった安全装備の充実を推し進めていきます。EQはアルファロメオらしい感触や臭い、あるいは走行感覚といったことになります。例えば、ドイツのニュルブルクリンクの周回タイムにおいて、市販のセダンとしてジュリアもステルヴィオも最速を記録しています。かつてのレースにおける栄光の歴史を、ブランドとして押し出していきたいと考えています」

「競合となるメルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどに対しても、乗って楽しいということを訴えていきたいと思います」

乗って楽しいクルマだという「ジュリア」(画像はジュリア ヴェローチェ)。都内を試乗していると、すれ違う歩行者からの熱い視線を感じることが何度かあった

ジュリアの開発では、最上級の高性能車種である510馬力エンジンを搭載した「ジュリア クアドリフォリオ」をまず作り上げ、その技術をベース車種のジュリアに展開させる手法を採っている。ここは、ベース車種にサブブランドとして「AMG」(メルセデス・ベンツ)や「M」(BMW)といった高性能車種を追加でそろえるドイツメーカーとは、やり方が異なるという。

ドイツ車と比較する顧客も

さて、まだ今年8月から始まったばかりの専売店展開だが、手応えはどうだろうか。

「ジュリア発売の10月のフェアなど、2週間で3,000人の来場をいただき、300台の受注残を得ました。来場されたお客様は、メルセデス・ベンツ、BMW、レクサスなどにお乗りの方が見られ、比較していただいているのがわかりました。そこに、手応えを感じています」

「販売店からは、従来はフィアットやアバルトとの併売であったため、どちらに関心のあるお客様か分かりかねるところがあったのが、専売店化により分かりやすく、楽になったという声が出ています。こうしたことから、アルファロメオの専売店化は、やるべきであったし、的を射た戦略だったと自信を深めています。あとは販売台数という結果だけなので、ドキドキもしています」(牛久保氏)

牛久保氏はアルファロメオ専売店化に手応えを得ている様子。気になるのは「ジュリア」(画像)の売れ行きだ

ドイツ勢が形成するトップ集団に肉薄できるか

専売店化は、来年2018年中に60店舗へと拡大する計画がある。

「FCAジャパンは直営店を持っていませんので、現在、都心や横浜の中心部がディーラー網の空白地帯となっていて、そこに課題を残しています。出店のお話はいただいていますが、ジュリアや、この後に導入となるステルヴィオの販売動向を見てというのが、出店の判断のしどころとなっているようです。今後、テレビコマーシャルを増やし、自動車雑誌などでも記事が掲載されるでしょうから、そうした効果も待ち遠しいところです」と、牛久保氏は期待する。

では、ドイツの競合が鎬を削るDセグメントで、アルファロメオはどこまで食い込めるのか。牛久保氏は「販売店数でドイツ勢の4分の1ほどですから、Bクラスのトップを狙いたい。それが現実的な目標になるでしょう」と話す。ジャーマンスリーが形成するトップ集団の後に付けたいというのがアルファロメオの目標だ。

ドライバー中心という考えから、人とクルマが一体になれるクルマ作りをはじめたアルファロメオ。第1弾のジュリアは、そんな期待に応えるであろう、壮快な運転を楽しませるクルマである。

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

2019.03.19

大画面化の限界を破ろうと登場した「折り畳みスマホ」

2019年にスマホ大手が参入し、本格的なトレンドに

普及する? 価格とコンテンツが最大の課題に

2018年末から2019年初頭にかけ、ディスプレイを折り曲げて畳むことができる「折り畳みスマートフォン」大きな注目を集めている。閉じた状態では普通のスマートフォン、開くとタブレットサイズで利用できるのが特徴だが、新しいスタイルのスマートフォンとして市場に定着し、普及していくには課題も多い。

大画面化の限界から生まれた折り畳みの発想

ここ最近、にわかに注目されるようになった「折り畳みスマートフォン」だが、そもそもどんなものなのか。簡単に言えば、これはディスプレイ素材に、一般的なLEDとは異なる面光源で、かつフレキシブルな特徴を持つ有機ELを採用することで、1枚のディスプレイを2つに折り曲げられるようにしたスマートフォンのこと。いくつかの企業が折り畳みマートフォンを相次いで発表したことから、一気に注目を集めるに至ったようだ。

折り曲げられる7.8インチのディスプレイを備えたRoyoleの「FlexPai」は、世界初の折り畳みスマートフォンとして注目を集めた

最初に折り畳みスマートフォンを発表したのは中国のRoyoleというベンチャー企業で、2018年11月に7.8インチのディスプレイを折り曲げられる「FlexPai」という機種を発表している。だがより本格的に注目されるようになったのは、2019年2月に入ってからであろう。

その理由は、2019年2月20日(米国時間)にサムスン電子が「Galaxy Fold」、ファーウェイ・テクノロジーズが2019年2月24日(スペイン時間)に「HUAWEI Mate X」と、スマートフォン大手が相次いで折り畳みスマートフォンを発表したからだ。いずれの機種もFelxPaiより洗練され、より日常使いに適したスタイルながらディスプレイを曲げられるという機構を実現したことから、がぜん折り畳みスマートフォンに対する注目が高まったのである。

サムスン電子の「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレイを内側に備え、本を開くようにして開くと大画面ディスプレイが現れる仕組みだ

ディスプレイを曲げられるというだけでも十分に大きなインパクトがある折り畳みスマートフォンだが、その誕生にはやはり「スマートフォンの大画面化傾向」が影響している。初代iPhoneが登場した頃には3インチ程度だったスマートフォンのディスプレイも、年を追う毎に大画面化が進み、いまでは6インチを超えるディスプレイも当たり前のものとなってきている。

だが人間が片手で持つことができるスマートフォンのサイズ、特に横幅には限界がある。6インチ超でも、18:9や19:9の縦長比率として片手に持てる横幅に抑えていたのが最近のトレンドだが、従来の方法によるディスプレイの大画面化は限界に達しつつある。しかしながら特に海外では、消費者がスマートフォンに一層の大画面化を求める声が非常に強い。そうした市場ニーズに応えるべく、持ち運ぶ時はコンパクトで、必要な時だけ大画面で利用するという、折り畳みスマートフォンの開発を推し進めるに至った訳だ。

ファーウェイの「HUAWEI Mate X」。さらなる大画面化を求める消費者ニーズに応えるべく、3年もの歳月を費やして開発されたとのこと。同社初の5G対応スマートフォンにもなるという

各社の折り畳みスマートフォンは、開いた状態では7.3~8インチと、小型のタブレット並みのサイズ感を実現している。従来より一層の大画面でコンテンツを楽しめるというメリットが生まれる訳だが、大画面によってもう1つもたらされるメリットは、表示できる情報量が増やせること。実際Galaxy Foldはそのメリットを生かし、画面を3つに分割して3つのアプリを同時に利用できる機能を搭載している。

さらに今後、次世代通信の「5G」が普及していけば、通信速度が一気に高速になりコンテンツのリッチ化が進むことから、大画面を生かせるシーンも現在以上に増えていくことが考えられる。それゆえ折り畳みスマートフォンこそがスマートフォンの将来像と見る向きもあるようだ。

普及にはコンテンツや価格など多くの課題あり

だが実際の所、折り畳みスマートフォンが真に普及して定着に至るかといえば、まだ多くの課題があるように感じる。理由の1つは、折り畳みスマートフォンに適したコンテンツが少ないことだ。その最大の要因はディスプレイのアスペクト比で、折り畳みスマートフォンでは開いた状態のアスペクト比が、アナログテレビで主流だった4:3に近い比率になってしまう。これは折り畳むという構造状どうにもならない課題だ。

折り畳みスマートフォンは、開いた状態では4:3、あるいはそれに近いアスペクト比となることから、オフィス文書や地図、Webサイトなど情報量が求められるコンテンツは見やすい

この比率は、オフィス文書などを利用するのには適しているといわれる一方、映像やゲームなどのコンテンツでは横長の傾向が強いため、あまり適していない。実際、折り畳みスマートフォンで16:9や21:9の映像コンテンツ再生すると、どうしても上下の黒帯が目立ってしまうのだ。

一方で映画などの動画コンテンツ再生時は、上下に黒帯が目立つなど大画面をフルに生かせていない印象だ

そうしたことから折り畳みスマートフォンを普及させるには、それに適したコンテンツの開発も同時に求められているのだ。そのためにはいかに多くのコンテンツホルダーから協力を得られるかが、非常に重要になってくるだろう。

そしてもう1つの課題は価格だ。折り畳みスマートフォンは最新の技術を詰め込んで開発しているため、Galaxy Foldは1980ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xは2299ユーロ(約29万円)と、価格が非常に高い。現在は“初モノ”ゆえにこれだけの価格でもやむなしとの認識がなされているようだが、普及を考える上では少なくともその半額程度、つまり現在のフラッグシップスマートフォンと同程度にまで価格を落とす必要がある。

折り畳みスマートフォンの実用化を実現した今後は、いかにその価値を落とすことなく価格を落とすかという、難しい課題をクリアする必要がある訳だ。そうした課題をクリアできなければ普及にはつながらないだけに、折り畳みスマートフォンが今後の主流になるかどうかは、現状ではまだ見通せないというのが正直な所でもある。

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そこで今回紹介したいのは、総務省が学生や若手エンジニアを対象にIoT人材育成を目的として実施している「Web×IoT メイカーズチャレンジ」である。2018年度は国内9か所でイベントが開催され、2019年2月から3月にかけては、東京でも開催された。この取り組みが何を変えようとして、どのような一石を投じているのか、イベントで実際に実施された内容を下敷きに紐解いてみたい。

Web×IoT メイカーズチャレンジ 2018-19

Web×IoT メイカーズチャレンジ開催の経緯

総務省の情報通信審議会の技術戦略委員会では、かねてよりIoT・ビッグデータ・AI時代の人材育成方策についての議論が続けられており、去る2016年には、中間答申というかたちで以下のような旨の提言も出されている。

「IoTを総合的に理解し、使いこなせる人材・アイデアを発想できる人材が求められており、若者やスタートアップを対象とした開発キットやオープンソースなどを使ったモノづくりを通じた体験型教育やアイデア・ソリューションを競うハッカソンの取り組みを推進することが重要である」

こうしたことを受け、日本最大規模の産官学のIoT推進組織「IoT推進コンソーシアム」の技術開発ワーキンググループ「スマートIoT推進フォーラム」に、「IoT人材育成分科会」が設置されることとなり、そこでの議論を踏まえてこの人材育成事業、Web×IoT メイカーズチャレンジがスタートすることになった。

IoT推進コンソーシアムとスマートIoT推進フォーラムの体制

では、具体的にはどのような人材が今後必要とされるのか? また、未来に向けて、どういった手法でそのような人材を育成していくのだろうか?

Web×IoT メイカーズチャレンジの基本方針などを策定する実行委員会の主査で、上述のIoT人材育成分科会の構成員でもある株式会社KDDIの高木悟氏と、同実行委員会で副査を務める一般社団法人WebDINO Japanの瀧田佐登子氏の両氏に、その点についての話を伺った。

高木氏は、IoTを活用し社会を変革する創造性豊かなエンジニアリング・イノベータ力を備えた若手人材の育成には、

(1)無線装置やセンサ・アクチュエータなどのハードウェアとコンピューティングロジックを中心としたソフトウェア双方を扱えるスキル
(2)情報システムの共通基盤技術となっているWeb技術に基づくIoTシステム構築スキル
(3)企業の製品開発やサービス企画の現場でも、新技術の迅速な導入にもスピード感を持って対応できるアジャイル開発に対応できるエンジニア力
(4)実際にアイデアを試作し、改良を繰り返して実現するプロトタイプ創出力といったスキル

が求められており、Web×IoT メイカーズチャレンジでは、特にそのあたりを意識したイベント設計を行っていると話す。

KDDI株式会社技術開発戦略部マネージャー:高木悟氏

ポイントになるのは、このイベントに参加する学生や若手エンジニアが、座学の講習だけでなく、ハンズオン形式の講習会で実際にボードコンピュータやセンサーやアクチュエータの扱いを体験し、一定の準備期間を設けたうえで、ハッカソンで実際にプロトタイピングを行うという一連のものづくりプロセスを実体験することにある。

Web×IoT メイカーズチャレンジでは、UIやクラウドを含む情報システム全体をひとつの標準化された中立的な技術体系のもとで「ハードウェアを制御できるスキル」を獲得する機会を提供しているが、Webを介することによって、OS、デバイスといったレイヤーごとの違いを吸収し、普遍性の高い共通な技術を学ぶことができる。さまざまなデータをやりとりするには、「Webがもっともやりやすい」と副査の瀧田氏も指摘する。そういった観点からイベント名にもWeb×IoTの文字が冠された。

WebDINO Japan代表理事:瀧田佐登子氏

東京大会の概要をレポート

では、東京大会の様子を交えつつ、本取り組みの具体的な流れを少しレポートしたい。2月9、10日の2日間にわたりハンズオンを含む講習会が開催された。IoTの基礎知識やWiFiやLTEなど、IoT開発には欠かせない通信技術やその根源となる電波の特性について講義を受けたうえで、実際に「Raspberry Pi 3」と各種センサーやデバイスなどの接続・動作を行うハンズオンを約1日半じっくりと行う。受講者は個人単位で参加申し込みを行うが、講習会の2日目にはチーム単位に分けられ、準備期間を置いた後日に開催するハッカソンに向けた準備をスタートする。

東京会場にて。チームでのアイデアソンの風景

チーム分け後は、まずはアイデアソンを実施し、「身近な人をハッピーにするIoTデバイスを作ろう」などといったテーマをもとに議論を進める。初めて会ったメンバー同士で、いかに議論を深めていくか、これが最初の試練といえるだろう。また、各チームには上限額25,000円の予算が与えられ、その中でハッカソンに提出する作品で使うセンサーなどの部品を用意する。ここでは準備期間中の材料調達を含むマネージメント力が求められる。

そして、ハッカソンに向けて作成する作品では、以下の要件が求められる。

・ネットワークサービスの連携、もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと
・Raspberry Pi 3を使って、Web GPIO APIあるいはWebI2C APIのいずれかを利用すること

ちなみにハッカソンの審査基準は、以下の通り。

・ソフトウェア・ハードウェアの実装力
・アイデアの独創性・ユースケースの有用性
・無線の活用度

そして、今回の東京大会のハッカソンには、計35名8チームが参加した。

ハッカソンの各チームの様子。今回は計35名8チームが参加した

ハッカソンというと、賞金目当てのツワモノが集まるというイメージがある。しかし、メイカーズチャレンジは、そもそもが「学びの場」として開催しているため、ハッカソン初心者やスキルレベルが不安な学生であっても参加しやすい枠組みを用意している。とにかく、わからないことがあれば積極的にチューターやメンターに聞き、解決していく。終始なごやかな雰囲気で進んでいくことも印象的だ。

こちらはハッカソン2日目の様子。初日のなごやかさからは打って変わり、開発完了に向け緊張感も漂う

それでもハッカソンが2日目にもなると緊張感が漂う。決められた開発締め切りに向かって、時間との戦いである。その日のうちに審査が始まり、今回は、最優秀賞が1チーム、優秀賞が3チーム選出された。

最優秀賞受賞チームの皆さん。後ろに立つ3人は審査員

順序が逆になってしまったが、審査員は以下の通りである。

・村井純氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授 大学院政策・メディア研究科委員長)
・小林茂氏(情報科学芸術大院(IAMAS) 産業文化研究センター教授)
・瀧田佐登子氏(一般社団法人WebDINO Japan代表理事、実行委員会副査)

各チームの作品やその他の情報については、Web×IoT メイカーズチャレンジの公式サイトで情報が提供されるので、参照してほしい。

Web×IoT メイカーズチャレンジの成果と今後

今回、2年目を迎えたメイカーズチャレンジの取り組みであるが、その成果はどうだろうか。高木氏は、ほぼ目的は達成されていると判断しているという。実践的な講習会とハッカソンの組み合わせに参加者の多くが満足しており、チューターのサポートやチームでの開発体験を貴重な機会だと感じてもらえたと、手ごたえを語る。

人材育成というと、とかく受講者が受け身の講習が行われがちだが、この施策は講習会からハッカソンまで、参加者が自ら試行錯誤しながら様々なスキルを身につけるアクティブ・ラーニングの機会となっている。瀧田氏は、プログラミングやハードウェアのスキルに限らず、少ないとはいえ制作予算の配分管理や、材料の調達、さらに時間配分やチーム内のコミュニケーションなど、プロジェクトのマネジメントを体験する貴重な機会にもなっていると説明する。

学生から社会人まで、参加者は様々

企業が社員に向けて行う人材育成は、成果の前に、そのコスト・手間暇が大きなハードルとなる。Web×IoT メイカーズチャレンジは、その課題を補完する答えの1つともいえるだろう。今回の東京開催の会場を見ると、30才未満の若手社会人も多く参加しており、大学生や高専生、高校生と混じってチームを組み、真剣にものづくりに向き合う姿が見られた。

Web×IoT メイカーズチャレンジは2019年度も各地で開催される予定だ。立場を問わず関心を持った読者の方がおられれば、将来に立ち向かう可能性のひとつとして、参加や見学を検討してみていただきたい。

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