自動運転を成長ドライバーに! 日立が取り組む自動車事業の現在地

自動運転を成長ドライバーに! 日立が取り組む自動車事業の現在地

2017.11.10

クルマの知能化が進む自動車業界で、自動運転関連の技術開発を進める日立オートモーティブシステムズ(以下、日立AMS)。自動運転での走行中、システムが破損した場合の対策など、同社が研究する領域は幅広い。その技術の一端を北海道・十勝のテストコースで体感した。

日立AMSは日立製作所が自動車事業を2009年に分社して設立した。日産自動車「プロパイロット」向けECUや、スバル「アイサイト」向けステレオカメラなどを手掛ける(画像は十勝テストコースに並んだデモ車両)

人とクルマの間で責任が行き来する自動運転レベル3

自動運転の研究が進む自動車業界だが、「レベル3」と呼ばれる領域(自動運転のレベリングについて詳しくはこちら)に踏み込むかどうかについては、いろいろな考え方があるようだ。レベル3の自動運転では、クルマ(システム)が運転の責任を担う自動運転状態と、人間による手動運転状態が混在するので、その責任の受け渡しが難しい。アウディは先頃、新型「A8」で世界で初めてレベル3の領域に踏み込むと発表し、世間の耳目を集めた。

アウディ「A8」(東京モーターショー2017で撮影)

例えば自動運転状態の車内で、人間(ドライバー)がくつろいでいたり、何か別の(運転以外の)作業をしていたりする時に、クルマのシステムに問題が生じるなど、自動運転技術では回避不可能なシチュエーションが発生すると、どうなるのか。クルマは人間に、どんな感じで運転を引き渡すのか。これはクルマの作り手にとって難題だ。引き渡しには何秒くらいの時間的猶予を持たせるのか、あるいは引き渡しが必要な状況にあることをどのようにドライバーに知らせるかなど、まだまだ煮詰まっていない課題も多い。

この課題に対し、日立AMSが提示するのが「1 Fail Operational」(ワン・フェイル・オペレーショナル)という技術だ。

部品同士で機能を補完する技術を実用化へ

日立AMSはクルマの自動運転システムを構成する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)、カメラ、センサー、レーダー、アクチュエーター(エンジンやステアリングなどを制御する部品)群などの基幹部品を自動車メーカーに供給しているが、この基幹部品の一部が破損し、機能を失陥した時、別の部品が失陥した機能を引き継ぐ技術を日立AMSは開発した。それが「1 Fail Operational」だ。

十勝では、日産「フーガ」をベースとするデモ車両で日立AMSの技術を体感できた。デモ車両はコース上で、車線を認識して一定の速度で走行する自動運転状態に入るのだが、その途中で自動運転ECUが破損してしまうという想定のデモ走行だった。

「1 Fail Operational」のデモ車両と開発者の皆さん

ECUはクルマの電子制御をつかさどる基幹部品なので、これが自動運転中にダウンしたら、すぐにでも人間が運転を引き継がねばならないはずだ。しかし、日立AMSの「1 Fail Operational」技術では、ECUの機能を「ステレオカメラ」に付いている制御用コンピューターに一時的に代替させるという。ステレオカメラ側で機能を代替している間、クルマはドライバーに運転を引き継ぐよう警告しつつ、しばらくは自動運転を続け、徐々に速度を落として最終的には停止する。この技術は2020年にも実用化する計画だ。

左側が日立AMSが手掛ける自動運転システムの構成図だ

冗長化がコスト低減に貢献

自動運転中に部品の一部が破損するのはありうる話だ。十勝で話を聞いた日立AMS技術開発本部長の山足公也CTOによれば、アクチュエーターは破損に備えて二重にしてあるが、コンピューターまで二重にするとコストがかさむため、同社では冗長化という手法に取り組んでいるという。

クルマが人間に運転を引き渡す必要があると判断した場合、人間に対してどのような知らせ方をするかも大事なポイントだ。警報音であったり、ディスプレイを点滅させたりと、その方法はいくつもあるし、その強弱や表現方法にも工夫の余地が多い。つまり、クルマと人間の「Human Machine Interface」(HMI)に関する話だが、この点で提案を行うのが日立グループのクラリオンだ。

音と振動で伝えるクラリオンの「インフォシート」

クラリオンは十勝で自動車用HMIのデモを実施。クルマからの情報をシート経由でドライバーに伝える「インフォシート」という技術を体感できた。

まず、インフォシートのヘッドレストにはスピーカーが内蔵されている。クルマを運転している時、ナビの音声ガイダンスが入ると、音楽やラジオが自動的にミュートされることがあるが、クラリオンのインフォシートは、ドライバーにだけ必要な情報は運転席のヘッドレストから伝える。この機能があれば、同乗者は音楽やラジオを邪魔されずに済む。

インフォシートのもう1つの特徴は振動の機能だ。例えば車線を逸脱した時、インフォシートはブルブル震え、音声およびLED表示と合わせてドライバーに危険であることを知らせる。音響技術のクラリオンが振動技術の出来栄えに胸を張る理由が気になったが、説明員から「音も振動なので」と聞いて納得できた。クラリオンCTOの國井伸恭執行役によると、音だけで知らせるHMIでは「うるさくて」機能自体をオフにしてしまうドライバーもいるらしいが、振動との組み合わせや使い分けといった手法により、その不快感は減るかもしれない。

HMIのデモ車両と開発者の皆さん

“伝える力”がクルマ選びのポイントに?

その振動を生み出すのが、シートに内蔵された2つのデバイスだ。これはモーターではなく、コイルを使った特別なデバイスなのだという。たった2つのデバイスで生み出す振動だが、体感した感想としては、前後左右、そして背中から腿の辺りと振動する場所が変わることに加え、その強弱が自在であることにも驚いた。

自動運転レベル3でクルマが人に運転を引き渡す場合、どのように知らせるかは難しい問題だ。警告が過剰だと不快だし、過小だと気付かないおそれがある。自動運転が普通になった時、そのクルマに気の効いたHMIが搭載されているかどうかは、購入者の評価ポイントの1つになるだろう。気の効いたHMIを求める自動車メーカーが、インフォシートの“伝える力”に注目する可能性もありそうだ。

見た目に特徴はないが、これがデモ車両に搭載された「インフォシート」だ。ヘッドレストのスピーカーは、右耳だけに「右に曲がって」と伝えるような使い方もできる

そして十勝のデモではもう1つ、実用化が楽しみな自動運転関連の技術を見ることができた。アメリカ映画で見かけたことのある、あのサービスの自動化に日立AMSとクラリオンが取り組んでいるのだ。

「自動バレーパーキング」で駐車が不要に

アル・パチーノ演じる落ち目のスター歌手が高級車でホテルに乗りつけ、ドアマンにキーを手渡して建物に入っていく。こんなシーンを最近、映画で見たような覚えがあるが、ホテル側にクルマを預けて、駐車しておいてもらうサービスは「バレーパーキング」と呼ばれるらしい。これの自動化に日立AMSとクラリオンが取り組んでいる。

「自動バレーパーキング」は例えば、大型ショッピングモールなどで実用化の可能性がある。買い物に来た客が降車位置でクルマを降りると、クルマは管制センターと通信を行い、管制センターから指示された駐車スペースに自動かつ無人の状態で駐車を行う。駐車が済むとドライバーのスマートフォンに連絡を送り、ドライバーが帰る際には乗車位置まで迎えに行くというシステムだ。

管制センター(東京の池袋)とデモ会場(十勝)のクルマが通信し、自動で駐車を行うデモを見た

鉄道のノウハウも応用、日立の総合力がいきる新技術

このシステムでは、日立グループの総合力が垣間見えた。駐車場内でのクルマの管理に、日立製作所が持つ鉄道運行管理システムのノウハウが活用されているというのだ。

数台のクルマが自動バレーパーキングを行う際、追突事故が生じてしまっては元も子もない。先行車がいるなら、後から駐車場に入ってきたクルマは進行方向がクリアになるまで待つ必要があるが、日立AMSはその部分に鉄道の技術を使う。鉄道は信号で管理され、ある区間に列車が侵入していれば、後から同区間に別の列車が入らないようなシステムとなっている。自動バレーパーキングでも、同一区間に2台のクルマが入らないようシステムで制御する。

自動バレーパーキングの入庫・出庫依頼は携帯端末で行う

手動運転のクルマが混在する場合や歩行者への対応、あるいは落ちている物を踏んでしまってクルマが破損しないかなど、同システムの実用化に向けてはさまざまな課題があるのも事実。その点を認めつつ山足CTOは、「日立製作所の中には駐車場管理システムを扱う部署もあり、そちらでは監視カメラで駐車場内を捉え、中にある他のクルマや障害物、侵入者を画像認識する技術がある。この情報を管制センターと共有することで、一歩踏み込めるのでは」との見方を示した。

実用化のハードルは高そうな自動バレーパーキングだが、この技術を使えば手動運転よりも効率的な駐車が可能となりそうだ。同システムを導入する施設では、駐車可能台数が増えるというメリットも享受できるだろう。

EVのデモも実施

十勝のデモでは、日立AMSがマツダ「デミオ」をベースに開発した電気自動車(EV)も見ることができた。日立AMSは自動運転時代にクルマの頭脳の役割を果たすであろう基幹部品も作っているし、EVを作る能力も持つ企業というわけだ。

日立AMSの製品・技術で構成したEVシステムを積んだデモ車両。2つのモーターで前後の車輪を独立に駆動させ、トルク配分を自在に制御する

クルマの知能化と電動化が2大トレンドとなりつつある自動車業界において、その両方を手掛ける日立AMSの存在感は今後、高まっていくかもしれない。クルマが変われば自動車業界の勢力図も変わるので、日立AMSもサプライヤーという立場から一歩を進められそうに思える。極端かもしれないが、日立AMSもクルマを作ってしまえば、業界におけるポジションは今と全く変わるはずだ。

こういう素人の考えに山足CTOは、「EVを作ろうと思えば作れるが、売れるEVを作るのは別の話」と釘を刺した。日本ではクルマをメーカーとサプライヤーの「擦り合わせ」で作り上げているというが、日立AMSが自動運転のEVを作る能力を獲得したとしても、やはり自動車メーカーには独自のノウハウがあり、そこに追いつくのは容易ではないし、その方向は目指さないというのが山足CTOの考えなのだろう。

日立AMSでCTO兼技術開発本部長を務める山足公也執行役(左)とクラリオンでCTO兼技術戦略本部長を務める國井伸恭執行役

日立AMSの売上高は2016年度実績で9,922億円。このうち、電動化・自動運転製品の比率は18%だった。同社では2020年度に売上高を1兆3,000億円に引き上げる計画で、電動化・自動運転製品の比率は26%へと高める方針だという。

クルマの電動化と自動化が、どのようなスピードで進展するかは誰にも分からないし、自動化に至っては、どこまで実現するかも不透明な状況ではある。しかし、日立AMSは電動化・自動運転に関連する製品を「成長ドライバー」に位置づけ、事業拡大を図っている。十勝で見た技術は将来、同社のコア事業に発展するのか、それとも一部が実用化するにとどまるのか。今後の進展を見ていきたい。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる