通信依存から脱却図るドコモ、次なる期待はどこに?

通信依存から脱却図るドコモ、次なる期待はどこに?

2016.05.11

NTTドコモはモバイル通信会社――。そうしたイメージが近い将来、大きく変化するかもしれない。2015年度決算会見の場で繰り返し出てきたのは、伸び代の大きな新領域に寄せる期待の言葉。期待の向け先は通信事業とは別のところにあるのだ。

主力ながら環境厳しい通信事業

ドコモの主力事業は通信だ。2015年度の営業収益は4兆5,270億、営業利益は7,830億円。このうち通信事業の営業収益は3兆6,898億円で全体の81%、営業利益は7,089億円で全体の90%と収益・利益の大多数を占めている。

しかし、近年の通信事業は振るわない。2013年度決算を境に、2014年度は減収・減益、2015年度は盛り返したものの、完全回復までは至っていない。このようになった理由は、2014年6月にスタートした新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」で躓いたからだ。

「カケホーダイ&パケあえる」は、音声通話が定額で、データ通信量を任意に選べるのがウリのプラン。利用者の契約数の推移、契約形態によって、通信事業の業績を大きく左右するが、それが裏目に出てしまったのだ。

NTTドコモの加藤薫社長

ドコモの加藤薫社長は「新料金プランの契約者数がサービス開始1カ月間で470万契約に達した。当初はだいたい50万契約くらいだろうと思っていた。それが外れた。データ通信も安いプラン(2GB)に集中してしまった」と振り返る。

2015年度決算では、コストダウン、ドコモショップの営業努力などがあり、通信事業はかなり回復したが、今後の収益回復に向けては、外部環境を見ても明るい材料は乏しい。それが今、ドコモの通信事業が置かれた環境だ。

今に限ったことではないが、携帯電話が普及しきったことで、新規契約者の大幅な増加は望めない。足元を見ても、MVNO(仮想移動体通信事業者)が台頭してきており、昨年9月から議論が進んできた携帯電話料金の値下げ問題を受け、総務省は料金の安いMVNOへの移行を後押しする流れを生み出そうとしている。このように、通信事業をいろいろと見回しても、明るい材料は見当たらないのだ。

ドコモが期待するスマートライフ領域

そんなドコモが期待するのは、スマートライフ領域だ。2015年度決算では、営業収益が前年度比14%増の8,634億円、営業利益は同24.7倍の742億円だった。規模感は通信事業と比べると小粒だが、営業利益の増加額だけに焦点をあてれば、通信事業とほぼ同額の700億円となっており、同領域への期待は大きい。

では、スマートライフ領域とは何か。大きくはコンテンツサービス、金融・決済サービス、グループ会社の事業を包含する「スマートライフ事業」と「その他の事業」(M2Mなどの法人ソリューション、携帯保証サービスのあんしん系サポート等)に分かれる。トピックとしては、動きが盛んなスマートライフ事業が注目されるところだ。

コンテンツサービスは、映画、音楽、アニメなどが月額定額で楽しめるdTV、dヒッツ、dアニメストアなどのサービスを展開する「dマーケット」が該当する。

dマーケットの契約数は、右肩上がりで増加しており、2015年度第4四半期末で1554万契約、前年同期が1188万契約であり、30.8%増加した。1人あたりの月額利用料も増加しており、2015年度第4四半期は1370円と前年同期比で約20%の増加となっている。

金融・決済サービスでは、昨年リニューアルしたドコモのクレジットカード「dカード」、そして、ポイントプログラムの「dポイント」が該当する。

グループ会社には、フィットネスマシーンのワンダーコアを販売するショップジャパン、ABC Cooking Studioなどのグループ企業が好調。このほか、外部企業とともにサービスの展開を図る「+d」の取り組みも順調だ。

外部企業とともにサービス展開を図る「+d」の取り組みは4月21日現在で53件に達したという

スマートライフ事業の共通点

スマートライフ事業をみていくと、ある共通点が浮かび上がる。それはドコモだけでサービスを完結しようとしないことだ。外部企業との連携で、サービスの間口を広げたり、サービスの強化を図ったりしている。

たとえば、コンテンツサービスのdマーケットは、かつてドコモユーザーのためのサービスだったが、2014年に方針が変わった。契約する携帯電話会社がKDDI、ソフトバンクであろうともサービスが利用できるキャリアフリー戦略に転換したのだ。最近ではMVNOのフリーテルと販売を連携しており、今後もMVNOとのパートナーシップを強めていくという。

金融・決済サービスでも、外部との連携を進めている。ポイントプログラムの「dポイント」では、ローソンやマクドナルドといった外部企業と連携。ドコモのサービス利用だけではなく、これらの店舗の利用でも、ポイントが付与され、またポイントの使用も可能となっている。

通信依存からの脱却

今回の決算会見では、幾度となく登場したのが"スマートライフ領域"という言葉だった。「スマートライフ領域は、ゼロから始まったといっても過言ではない」「営業利益の伸びは通信事業とほぼ同じ」「不採算なサービスによる減損を除けば、900億円の営業利益を出せる実力がある」など、様々な情報を補足しながら、スマートライフ領域への期待の高さが語られたのだ。

決算会見の数日後に、6月の株主総会で承認され次第、退任すると報じられた加藤薫社長。最後の決算会見の場で、自らの功績をアピールしておきたかったという見方もできそうだが、今回の決算でドコモが打ち出したのは、通信依存からの脱却というメッセージだ。スマートライフ事業から見えるように、外部企業との連携を進め、新たな分野で成長を目指そうとする姿勢が伺える。今はまだ、通信インフラを提供する携帯電話会社のイメージが強いドコモだが、これから先は、同社へのイメージが少しずつ形を変えていきそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。