魚価高騰に悩む回転寿司、スシローが打った手とは?

魚価高騰に悩む回転寿司、スシローが打った手とは?

2017.11.14

あきんどスシローは、事業戦略発表会を実施し、日本国内の旬の天然魚を日本中のスシローで提供する「地元の旬の天然もの!スシロー×羽田市場」プロジェクトを発表した。魚価高騰に苦しむ回転寿司業界だが、割高で漁獲量も安定しない国内の天然魚を扱うメリットはどこにあるのだろうか。

日本中の旬の天然魚を提供

スシローは昨年より「世界の海からいいネタ100円PROJECT」と題して、世界中の海から集めた極上のネタを100円(税別)で提供するキャンペーンを実施してきた。一方、これとは相反する取り組みとして、千葉県や大阪府といった一部地域で、その土地で獲れた天然魚を提供する「前浜プロジェクト」を展開してきた。

「世界の海からいいネタ」プロジェクトはこれまで9種類の高品質なネタが世界中から集められ、100円で提供されたことで人気を博してきた
地魚の提供は「前浜プロジェクト」と呼ばれて大阪と千葉でのみ展開されてきた

前浜プロジェクトについては顧客から「こういう商品を食べたかった」と評判が高かったとする一方、販売を実施した店舗からも「こういう商品をもっと多くのお客様に提供したい」という声が多く寄せられたという。通常のオペレーションに加えて追加の作業も発生するという面倒な商品でありながら、現場の士気はむしろ高かったということになる。

この前浜プロジェクトを受けて立ち上がったのが、今回発表された「地元の旬の天然もの!スシロー×羽田市場」プロジェクトだ。これは地方の漁師と直結し、朝獲れた新鮮な魚介類を羽田空港内の「羽田鮮魚センター」を通じて仕分け・加工し、その日のうちに飲食店や小売店に届ける「羽田市場」を運営するCSN地方創生ネットワークとあきんどスシローが資本業務提携し、日本各地の海で取れる旬の天然魚を全国のスシローで提供するというものだ。

もともとはスシローの堀江陽・商品本部長(左)と、CSNの野本良平会長(右)が意気投合したところから関係がスタートしたとのこと

11月15日からスタートする同プロジェクトでは、北海道産の「生甘えび」、静岡・長崎県産の「黒むつの炙り」など全国向けのネタと、長崎県産「かますの炙り」や北海道産「つぶ貝」といった地域限定のネタに分かれており、180円~280円(税別)で提供される。レギュラーメニューが1皿100円のスシローでは、期間限定/吟味ネタと同じ高級ネタということになる。

北海道産の生甘えび(180円+税)。プリプリとした身はねっとりと甘い。水揚げから一度も冷凍せず店内で殻向きや仕込みが行われるという
和歌山・沖縄県産の生まぐろ(右側、180円+税)と生鮪のづけ2貫(左側、180円+税)。づけは程よい味付けで食べやすい
長崎県・山口県他の「活さざえ」(280円+税)。コリコリとした歯ごたえがたまらない一品
北海道産「つぶ貝」(280円+税)。歯ごたえ、旨味ともにしっかりした身は満足感大
長崎県産「剣先いか」(180円+税)。新鮮なイカならではの歯ごたえとネットリした身の旨味が味わえる
静岡県・長崎県他の「黒むつの炙り」(280円+税)。皮目を炙ったことにより凝縮された皮下の脂の旨味が絶品
長崎県産「かますの炙り」(180円+税)。やや水っぽいとされがちなカマスだが、炙ったことにより旨味が凝縮、食べ応えも非常に高い。個人的お勧めの一品
こちらは「世界の海からいいネタ」プロジェクトの「塩いくら包み」(100円+税)。アラスカ産の紅鮭のイクラをあえて塩だけで味付けしたことによりイクラ本来の味が楽しめる
同じく「世界の海から」プロジェクトより「特上赤身」(100円+税)。南アフリカ・ケープタウン沖で獲れた天然インドまぐろの赤身は味が非常に濃厚。大切りで食べ応えも抜群
こちらは11/29から提供される中国・舟山産の「天然生車海老1貫」(100円+税)。エビが大振りで食べ応え満点

日本の漁業を活性化していきたい

もともと原価率の高い回転寿司業界でも、スシローの原価率は一段と高い約50%前後と言われている。この原価率がネタの質に反映されている点が顧客に評価されているとも言えるが、天然魚プロジェクトはある意味、こうしたスシローの体質を最も如実に体現するようなものになるだろう。商品の単価こそ高めなものの、スシローが進めているコスト削減とは正反対な動きに見える。それではなぜ、スシローはこうしたプロジェクトを進めるのだろうか。

まずCSN地方創生ネットワークと資本業務提携した理由について、水留社長は、単に一過性のプロジェクトではなく、旬の国産の天然魚を提供することをスシローの事業の一部として継続的に行っていくという覚悟を示すためだと説明した。また、CSN地方創生ネットワークの事業を応援することで、全国の漁師や日本の漁業が活性化していく一助になれば、という言葉も飛び出した。

日本の漁業全体を活性化させたいと語るあきんどスシローの水留社長

現在、漁業関係は燃料費の高騰や漁業資源の減少に加え、深刻な従事者・後継者不足に悩まされている。このままで行けば近い将来、日本の漁業は大きく衰退してしまうことが考えられる。世界中から魚を集めている一方で、寿司という日本の文化を支えるべき国産の旬の魚を獲る漁師がいなくなってしまっては、本末転倒というべきだろう。そういう意味ではスシローの取り組みは、地方の漁師に金銭面でもメリットが生まれるものであり、文化の維持という意味でも大きな意義のある行為といえる。

もっとも、そういった社会貢献の側面もさることながら、より直接的な効果のほうが大きいだろう。すなわち、競合他社との差別化と、顧客単価の向上だ。各地の旬の天然魚がメニューに並ぶというのは、地域密着型の回転寿司チェーンにはしばしば見られるが、全国展開する100円回転寿司では、一部のキャンペーンメニューを除けばほとんど例がない。寿司には旬のネタが欠かせないだけに、少し割高であってもこうした商品があるスシローを選ぶ顧客は多いだろう。ライバル社に先駆けて、鮮魚流通の革命児と言われるCSN社をおさえたのは大いに意義があるわけだ。

スシローは第34期の売り上げ目標を1700億円、利益は100億円を目指すという。こうした目標の達成には、別記事で紹介した「スシローCafe部」のようなスイーツ・サイドメニュー系の展開に加え、天然魚プロジェクトは欠かせないキーパーツとなるはずだ。温暖化の影響などもあって各地で獲れる魚種の変異や不漁といった問題も聞かれるが、こうしたイレギュラーを乗り越え、どこまでスシロー躍進に貢献することができるか、注目したい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu