「フルMVNO」はMVNOビジネスをどのように変えるか

「フルMVNO」はMVNOビジネスをどのように変えるか

2017.11.15

MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が、来春の提供に向けて取り組んでいる「フルMVNO」。加入者管理機能を持ち、自身でSIMを発行できるようになることで、さまざまなメリットが生まれるというが、一方で「IIJmio」などの個人向けサービスにはほとんど影響を与えないとも言及している。なのであれば一体なぜ、IIJはフルMVNOに力を入れているのだろうか。

来年3月開始予定の「フルMVNO」とは

インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月8日、同社のMVNOに関する説明会を実施し、IIJのMVNO事業の現状などについて説明がなされた。その中で大きなテーマの1つとして触れられていたのが、「フルMVNO」についてである。

フルMVNOについて改めて簡単に説明すると、HLR(Home Location Register)やHSS(Home Subscriber Server)といった、加入者情報を管理するデータベースを、自ら保有して管理しているMVNO、ということになる。HLRやHSSはSIMの番号なども管理していることから、SIMを発行・管理する上で非常に重要な存在でもある。

これらの設備は大手キャリアが保有しているため、SIMの発行や管理は大手キャリアにしかできなかった。そのためMVNOは大手キャリアが発行したSIMを借りてサービスを提供し、キャリアが用意する範囲の中でしかサービスを提供できないなど、キャリアの枠組みに縛られてしまい自由なサービス設計をするのが難しかったのだ。

だがMVNOがそれらの設備を保有してフルMVNOになると、自社でSIMを発行できるようになるため、サービス設計の自由度が大幅に高まる。そこでIIJは昨年8月、NTTドコモにHLR/HSSの相互接続を申し入れ、2017年の下期にフルMVNOとしてのサービスを提供すると発表。国内初のフルMVNOとしてサービス提供に向けた準備を進めているのだ。

従来のMVNOとフルMVNOの違い。SIMを発行できるようになるなど、よりサービスの自由度が高まるのが大きな特徴だ

そして今回の説明会で、IIJは11月に大きな試験が終了するなど準備が順調に進んでいることを公表。当初の計画通り17年度末、つまり来年の3月頃には第1弾のサービスを提供する予定だとしている。会場でも実際にIIJが提供するSIMと、それが実際に動作する様子を公開しており、確実に準備が進んでいる様子を見て取ることができた。

IIJがフルMVNOとして作成したSIM。現在はまだ試験的に作られたものだというが、IIJ独自のSIMとして認識、利用できるようになっている

最大の狙いは「eSIM」と法人ビジネスの拡大

だがフルMVNOになるには、高い通信技術と開発コストが必要だという。そのためコストを削って格安な通信サービスを提供している、「格安SIM」などと呼ばれるMVNOにとって手を出しにくいものであり、IIJの後に続いてフルMVNOを目指す動きは、現状ほとんど見ることができない。

しかも、IIJがフルMVNOとなったのはあくまでデータ通信の部分のみで、音声通話は含まれていない。「IIJmio」などIIJが個人向けに提供している安価なモバイル通信サービスには、音声通話の提供が欠かせないことから、今回のフルMVNO化がそれらのサービスに直接何らかの影響を及ぼす可能性はないと考えられる。

なのであれば一体、なぜIIJはそれだけのリソースをかけてフルMVNOになる決意をしたのか。その最大の狙いは法人向けビジネスの拡大にある。

中でもIIJが重視しているのはeSIMへの対応だ。多くの人はSIMと聞くと、スマートフォンなどに挿入して使う、プラスチックの小さなICチップをイメージするだろう。だが現在はそうした従来型のSIMだけでなく、「eSIM」と呼ばれる機器に直接内蔵する組み込み型のSIMも存在するのだ。eSIMが搭載されている機器の多くは、建設機械など法人向けの機器が主だが、コンシューマー向けでも、アップルの「iPad Pro」の9.7インチモデルや、「Apple Watch Series 3」など、一部の機器でeSIMが採用されている。

さまざまな機械に組み込んで使用される、超小型チップサイズの「eSIM」。これらに通信サービスを提供するには、自身でSIMを発行できるフルMVNOになることが不可欠だ

だがネットワークを提供する側がeSIMに対応しなければ、eSIM搭載機器にサービスを提供できない。従来のように、キャリアからSIMを借りている立場ではeSIMに対応できないことから、特に法人向けを主体としたeSIM搭載機器向けサービスを提供するには、フルMVNOになることが必要不可欠だったわけだ。

そもそもIIJのMVNOは、元々法人向けサービスとして立ち上がり、その後個人向けのサービスへと拡大していった経緯がある。しかも価格競争が激しく不安定要素が多い個人向けサービスと比べ、法人向けサービスは安定的でより高い収益を見込みやすい。それだけに、IIJは従来型のSIMだけでなくeSIMへと対象を広げ、法人向けのモバイル通信サービスの充実度を高めるべく、フルMVNOになったといえそうだ。

一般消費者が受ける恩恵はほとんどない?

あえて、IIJのフルMVNO化が個人向けサービスに生み出すメリットを挙げるとすれば、それは訪日外国人向けのサービスになりそうだ。IIJは来年3月のフルMVNOによるサービスの1つとして、訪日外国人向けのプリペイドSIM「Japan Travel SIM」を、現状のNTTドコモのMVNOとして提供するSIMから、自社発行のSIMへと置き換えていくとしている。

その理由は、SIMを借りていることに起因するという。現在のJapan Travel SIMはNTTドコモからSIMを借りて提供しているが、未使用状態でも1枚当たり毎月100円前後の維持費をNTTドコモに支払う必要があるのだという。それゆえ店頭在庫を増やすと増やしただけ維持費がかかるため、販路を広げるのが難しいのだそうだ。

だが自社発行のSIMであれば、どれだけ店頭に在庫を置いても維持費はゼロ円で済むことから、販路を大きく広げやすくなるのだそうだ。自社でSIMを発行・管理することにより、サービスだけでなく販売の自由度も高められるというメリットが生まれるようだ。

また将来的にはフルMVNOのメリットを生かし、アウトバウンド向けSIMの提供も期待できるかもしれない。現在IIJはNTTドコモからSIMを借りている立場であり、国際ローミングサービスもキャリアが提供するものを使う以外に選択肢がなかった。だがフルMVNOになれば、海外での接続先もIIJが自由に選べることから、より安価なサービスと接続することで、従来より安い海外向けデータ通信サービス提供も可能になる。

同社は現在、同種のサービスとして「IIJmio海外トラベルSIM」を提供しているが、フルMVNO化によって、海外でのデータ通信をより安価に利用できるサービスが登場する可能性は十分考えられよう。IIJ側では現在のところそうしたSIMを提供する計画はないとしているが、今後に期待が持てるところだ。

確かに今回のフルMVNO化は、国内の一般消費者に直接恩恵を与えることはほぼないと言い切ってよいだろう。だがコンシューマー向け機器にeSIMの搭載が進むことにより、目に見えない形でその恩恵を受ける可能性は今後増えてくるだろう。またIIJのフルMVNOによる事業が拡大していけば、個人向けサービスに向けた展開、ひいては音声のフルMVNO化により積極的に取り組む可能性も出てくるかもしれない。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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