冬の定番をめぐる外食界の攻防、吉野家が「牛すき鍋膳」で今年も参戦

冬の定番をめぐる外食界の攻防、吉野家が「牛すき鍋膳」で今年も参戦

2017.11.15

11月1日より全国発売が始まった吉野家の「牛すき鍋膳」。発売から5年を経て、冬の定番商品として認知されつつある「鍋」を通じて、吉野家の販売戦略を見通してみたい。

今年も発売となった吉野家の「牛すき鍋膳」

吉野家が強調した「テイクアウト」の重要性

まず、10月30日に行われた商品発表会において、今年の「牛すき鍋膳」について説明を受けた。変更点は出汁の味と野菜の増量だ。特に野菜については、半日分の野菜が取れる量を盛り込んだという。商品としては、他に「地域限定鍋」も発売となる。

販売戦略として特に強調されていたのが「テイクアウト」だ。昨年からの取り組みだが、意外に流行っていない。アツアツの鍋をつつくからこその「牛すき鍋膳」なのだが、自宅でも楽しみたいという顧客の声に応えた取り組みだという。今年はテイクアウト限定で、肉だけ並盛りサイズ4食分の「牛鍋ファミリーパック」も販売する。

発表会にはコマーシャルを監督した福田雄一さん(右)と出演者の佐藤二朗さん(中央)も駆けつけた。左は吉野家の河村泰貴社長

登場初年は大混乱

発売初年となる2013年には店舗が混乱し、大勢の顧客の要望に応えきれなかった程の話題を呼んだ「牛すき鍋膳」。5回目の登場となる今年は、店舗サイドでも万全の準備をして臨んでいる様子だ。

「牛すき鍋膳」の基本は、顧客の前で完成する「鍋」であるということだ。半調理された具材を鍋に入れ、固形燃料の火力で顧客の目の前で完成させる。アツアツの鍋をほおばる姿は、全面ガラスにより店舗の外からも見ることのできる「冬の風物詩」ともなってきている。

うまい、やすい、ごゆっくり?

2013年に米国産牛肉の輸入規制が緩和されたことにより、吉野家としては、同社が目指す味わいを持つ月齢の素材が手に入れやすくなった。牛丼の価格を値下げした年と記憶される年であるが、「うまい、やすい、ごゆっくり」をコンセプトとした「牛すき鍋膳」はこの年に産声を上げた。「うまい、やすい、はやい」が企業文化であったところに、あえて「ごゆっくり」を掲げて新商品を誕生させたわけだ。

2013年には並行して新たな実験も行われていた。素材をすべて生から調理する鍋を提供する、1人鍋に特化した吉野家の新業態「いちなべ家」である。IHコンロで1人鍋を十分に堪能する機会を提供する仕組みでスタートしたが、やはり、生からの調理には時間がかかることなどを理由に、現在は実験が終了している。本格的な「鍋料理」の味を追求したものの、提供方法や調理時間、店舗の形態など、やはり限界があったと想像できる。ただ、実験の結果として、吉野家の「鍋」は、半調理の具材を詰め合わせて調理時間の短縮と味の再現性を高める現在の形にたどりついたとも言えるだろう。

「牛すき鍋膳」は「ごゆっくり」というコンセプトで登場した

吉野家が目指す「テイクアウトの充実」

吉野家が最も重要視する指標の1つは集客だろう。景気回復と言われながらも、コンビニなどで弁当や食材を購入し自宅で食べる「中食」はブームを超えて定着している。その実情は、コンビニの弁当売り場の品ぞろえが物語っている。外食が対抗策として戦略を練ったのは、まず、店内消費であるイートインの強化と持ち帰りのテイクアウトだ。

「中食」に対抗するテイクアウトだが、スーパーやコンビニの商品と差別化できなければ選ばれる存在とはなりえない。今年の戦略の目玉に「テイクアウト」を掲げる吉野家では、社長自らが力を込め、店頭ポスターだけでなくCMの最後にも、「テイクアウト可能」ということを意識させるシーンを入れたほどだという。

ポスターにもテイクアウト可能である旨が目立つよう明示されている

では、「牛すき鍋膳」の持ち帰りはどのような感じなのだろうか。早速、テイクアウトを試そうと店舗に足を運んだ。準備を待つ「鍋」が山のように重なり、中にはセットされた野菜が詰められている。牛肉は調理を済ませ別のトレイに並べられて出番を待っている。店内消費と異なり、テイクアウトの場合は煮込んで「完成品」としてから顧客に手渡される。そのため、注文時に「お時間をいただきます」と説明を受けた。

半調理の商品に店舗で熱を入れて仕上げた「アツアツ鍋」。注文から待ち時間は少々あるものの、手に取った時の温かさは心地よい。レンジではなく、実際に火床で完成された「鍋」は期待値を盛り上げる。テイクアウトにこだわった専用容器の効果もあるのだろうが、自宅までの10分強は比較的、温かさを保持した状態で持ち帰ることができた。

「鍋」はコンビニ対策にも効果的

「牛すき鍋膳」の発表会に登壇した吉野家の河村社長によると、吉野家で全メニューに占めるテイクアウトの割合は25~30%だが、「牛すき鍋膳」に絞ると、その割合は1割ほどになるという。半調理とはいえ、店舗内で提供までに使う時間はそれなりに必要だ。他の商品と比較しても、回転率は下がることになる。しかし、テイクアウトは店舗の座席を占有しないので、回転率という視点から見ると、「鍋」においてはテイクアウトの方がありがたいという結果となる。

テイクアウト比率が極端に低い「牛すき鍋膳」

回転率だけではなく、コンビニ対策においても持ち帰り「牛すき鍋膳」の存在は大きい。コンビニで出来たてアツアツの商品は、フライヤー関連の商品である揚げ物が中心だ。おかずなどの総菜類はチルドでショウケースに並ぶ。その点、「牛すき鍋膳」はコンビニが持ちえない商品価値を有していることになる。

個食のニーズは確かに、コンビニで満たすことが可能だが、コンビニだけで個食の需要を全て充足することは困難だ。その供給を補完する1つのアイテムが「アツアツの鍋」なのではないだろうか。

単価アップより困難な客数アップに再挑戦

来店客が少なければ売り上げは伸びない。そのためにも、来店数をいかに上げるかは重要な課題だ。そこで、吉野家は来店動機を創出する取り組みを2017年9月に開始した。「おろし牛カルビ定食」などの「夕食限定商品」だ。コンビニなどの「中食」対策も肝要だが、やはり来店客の増加は必要だ。そのための取り組みが、「吉野家で夕食を」という戦略だ。

吉野家が夕食需要を取り込もうとしている

2015年から夜間帯の集客増を目論み「よし呑み」をスタートさせた吉野家。帰宅前に一杯となると、やはり男性客の数は増えたが、一方で女性客は減少し、他社に流出するという結果を招いた。消費者から見た吉野家のイメージは、“カウンター席と中年男性”なのではないだろうか。残念ながら、女性客とファミリー層の集客に後れを取っている感は否めない。

そこで、新しい戦略として「吉野家で晩御飯」が考え出されたわけだ。“呑み”を前面に出さず、温かい夕食を提供する場所として来店機会の創出を狙った戦略だ。「牛すき鍋膳」への注力具合もこの文脈で説明できる。

ただし、想定通りの顧客が来店しなければ、売り上げは向上しない。要するに来店客の増加は、顧客に来店してもらえる「価値を創出できているか」にかかってくる。

コンビニも、店内消費を狙ってイートインスペースを確保するチェーンが増えている。消費者の選択肢が多様になる中で「牛すき鍋膳」も進化しているが、当然、他社も商品開発に力を込め、自慢の鍋で仕掛けてくることだろう。

定番商品の条件とは

冬の定番商品といえばクリスマスケーキ。テーマソングやメーカー名、商品名が頭に浮かぶが、「ペコちゃん」が店舗の前に立つケーキ店を思い浮かべる人は少なくないだろう。ファストフードでいえば「グラコロ」(マクドナルド)が冬の定番として不動の存在感を示す。企業にとって定番商品は、その店を一定以上の消費者が認知していることを物語る指標となるし、発売すれば一定以上の販売効果をもたらす商品があることも意味する。

それは、分かりやすくブランディングができているということともイコールだ。自然に名前が想像できる商品は、実はそう多くない。

定番商品と名乗るためには、やはり毎年顔を見せることが重要な要素となる。同じ顔をしていれば、少しの成長や進化は許容される。逆に毎年、違う顔で登場すると、消費者は同じ商品として認識できないため、定番商品には育たない。

商品の認知度が高ければ、余計な説明も不要となり、あとはファンが自然とフォローしてくれる。ブランディングは単に知名度を上げるだけではなく、顧客満足度や顧客ロイヤルティーを高める武器ともなる。顧客ロイヤルティーが高い商品・企業として有名なのが、外食産業ではモスバーガーと言われている。他社でどんな新商品が出ようが、コアなモスファンは見向きもしないと伝えられているほどだ。

「鍋といえば吉野家」は確立するか

「牛すき鍋膳」を確固たる冬の定番として定着させたい吉野家。「鍋といえば吉野家」という認識が確立すれば、同社のコミュニケーション戦略は奏功していると見てよいだろう。

吉野家は「牛すき鍋膳」を冬の大定番に育て上げられるか

定番商品は、努力して作れるものではない。逆に、努力しなくても「定番」となってしまう商品も存在する。要は消費者に価値が伝わり、消費者から変わらぬ支持を得られる存在になれるかどうかが重要なのだ。

冬のボーナスシーズンを前に、懐ではなく胃袋を温めてくれる「鍋」のシーズンが到来した。吉野家は「鍋」のパイオニアとして、他社商品にはない価値を創造し、定番商品としての立ち位置を確かなものにしようと今年も仕掛けている。

「フルMVNO」はMVNOビジネスをどのように変えるか

「フルMVNO」はMVNOビジネスをどのように変えるか

2017.11.15

MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が、来春の提供に向けて取り組んでいる「フルMVNO」。加入者管理機能を持ち、自身でSIMを発行できるようになることで、さまざまなメリットが生まれるというが、一方で「IIJmio」などの個人向けサービスにはほとんど影響を与えないとも言及している。なのであれば一体なぜ、IIJはフルMVNOに力を入れているのだろうか。

来年3月開始予定の「フルMVNO」とは

インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月8日、同社のMVNOに関する説明会を実施し、IIJのMVNO事業の現状などについて説明がなされた。その中で大きなテーマの1つとして触れられていたのが、「フルMVNO」についてである。

フルMVNOについて改めて簡単に説明すると、HLR(Home Location Register)やHSS(Home Subscriber Server)といった、加入者情報を管理するデータベースを、自ら保有して管理しているMVNO、ということになる。HLRやHSSはSIMの番号なども管理していることから、SIMを発行・管理する上で非常に重要な存在でもある。

これらの設備は大手キャリアが保有しているため、SIMの発行や管理は大手キャリアにしかできなかった。そのためMVNOは大手キャリアが発行したSIMを借りてサービスを提供し、キャリアが用意する範囲の中でしかサービスを提供できないなど、キャリアの枠組みに縛られてしまい自由なサービス設計をするのが難しかったのだ。

だがMVNOがそれらの設備を保有してフルMVNOになると、自社でSIMを発行できるようになるため、サービス設計の自由度が大幅に高まる。そこでIIJは昨年8月、NTTドコモにHLR/HSSの相互接続を申し入れ、2017年の下期にフルMVNOとしてのサービスを提供すると発表。国内初のフルMVNOとしてサービス提供に向けた準備を進めているのだ。

従来のMVNOとフルMVNOの違い。SIMを発行できるようになるなど、よりサービスの自由度が高まるのが大きな特徴だ

そして今回の説明会で、IIJは11月に大きな試験が終了するなど準備が順調に進んでいることを公表。当初の計画通り17年度末、つまり来年の3月頃には第1弾のサービスを提供する予定だとしている。会場でも実際にIIJが提供するSIMと、それが実際に動作する様子を公開しており、確実に準備が進んでいる様子を見て取ることができた。

IIJがフルMVNOとして作成したSIM。現在はまだ試験的に作られたものだというが、IIJ独自のSIMとして認識、利用できるようになっている

最大の狙いは「eSIM」と法人ビジネスの拡大

だがフルMVNOになるには、高い通信技術と開発コストが必要だという。そのためコストを削って格安な通信サービスを提供している、「格安SIM」などと呼ばれるMVNOにとって手を出しにくいものであり、IIJの後に続いてフルMVNOを目指す動きは、現状ほとんど見ることができない。

しかも、IIJがフルMVNOとなったのはあくまでデータ通信の部分のみで、音声通話は含まれていない。「IIJmio」などIIJが個人向けに提供している安価なモバイル通信サービスには、音声通話の提供が欠かせないことから、今回のフルMVNO化がそれらのサービスに直接何らかの影響を及ぼす可能性はないと考えられる。

なのであれば一体、なぜIIJはそれだけのリソースをかけてフルMVNOになる決意をしたのか。その最大の狙いは法人向けビジネスの拡大にある。

中でもIIJが重視しているのはeSIMへの対応だ。多くの人はSIMと聞くと、スマートフォンなどに挿入して使う、プラスチックの小さなICチップをイメージするだろう。だが現在はそうした従来型のSIMだけでなく、「eSIM」と呼ばれる機器に直接内蔵する組み込み型のSIMも存在するのだ。eSIMが搭載されている機器の多くは、建設機械など法人向けの機器が主だが、コンシューマー向けでも、アップルの「iPad Pro」の9.7インチモデルや、「Apple Watch Series 3」など、一部の機器でeSIMが採用されている。

さまざまな機械に組み込んで使用される、超小型チップサイズの「eSIM」。これらに通信サービスを提供するには、自身でSIMを発行できるフルMVNOになることが不可欠だ

だがネットワークを提供する側がeSIMに対応しなければ、eSIM搭載機器にサービスを提供できない。従来のように、キャリアからSIMを借りている立場ではeSIMに対応できないことから、特に法人向けを主体としたeSIM搭載機器向けサービスを提供するには、フルMVNOになることが必要不可欠だったわけだ。

そもそもIIJのMVNOは、元々法人向けサービスとして立ち上がり、その後個人向けのサービスへと拡大していった経緯がある。しかも価格競争が激しく不安定要素が多い個人向けサービスと比べ、法人向けサービスは安定的でより高い収益を見込みやすい。それだけに、IIJは従来型のSIMだけでなくeSIMへと対象を広げ、法人向けのモバイル通信サービスの充実度を高めるべく、フルMVNOになったといえそうだ。

一般消費者が受ける恩恵はほとんどない?

あえて、IIJのフルMVNO化が個人向けサービスに生み出すメリットを挙げるとすれば、それは訪日外国人向けのサービスになりそうだ。IIJは来年3月のフルMVNOによるサービスの1つとして、訪日外国人向けのプリペイドSIM「Japan Travel SIM」を、現状のNTTドコモのMVNOとして提供するSIMから、自社発行のSIMへと置き換えていくとしている。

その理由は、SIMを借りていることに起因するという。現在のJapan Travel SIMはNTTドコモからSIMを借りて提供しているが、未使用状態でも1枚当たり毎月100円前後の維持費をNTTドコモに支払う必要があるのだという。それゆえ店頭在庫を増やすと増やしただけ維持費がかかるため、販路を広げるのが難しいのだそうだ。

だが自社発行のSIMであれば、どれだけ店頭に在庫を置いても維持費はゼロ円で済むことから、販路を大きく広げやすくなるのだそうだ。自社でSIMを発行・管理することにより、サービスだけでなく販売の自由度も高められるというメリットが生まれるようだ。

また将来的にはフルMVNOのメリットを生かし、アウトバウンド向けSIMの提供も期待できるかもしれない。現在IIJはNTTドコモからSIMを借りている立場であり、国際ローミングサービスもキャリアが提供するものを使う以外に選択肢がなかった。だがフルMVNOになれば、海外での接続先もIIJが自由に選べることから、より安価なサービスと接続することで、従来より安い海外向けデータ通信サービス提供も可能になる。

同社は現在、同種のサービスとして「IIJmio海外トラベルSIM」を提供しているが、フルMVNO化によって、海外でのデータ通信をより安価に利用できるサービスが登場する可能性は十分考えられよう。IIJ側では現在のところそうしたSIMを提供する計画はないとしているが、今後に期待が持てるところだ。

確かに今回のフルMVNO化は、国内の一般消費者に直接恩恵を与えることはほぼないと言い切ってよいだろう。だがコンシューマー向け機器にeSIMの搭載が進むことにより、目に見えない形でその恩恵を受ける可能性は今後増えてくるだろう。またIIJのフルMVNOによる事業が拡大していけば、個人向けサービスに向けた展開、ひいては音声のフルMVNO化により積極的に取り組む可能性も出てくるかもしれない。

ソフトバンクが米Uberへの出資にコメント、今なお条件次第

ソフトバンクが米Uberへの出資にコメント、今なお条件次第

2017.11.14

ソフトバンクグループは14日、米ライドシェアサービスを展開するUberへの出資に関する今後のプロセスについて基本合意をしているものの、同社への出資は検討中であり、最終合意には達していないとの声明を公表した。

Uberへの出資について決算説明会で言及した孫正義代表

今回の声明は、Uberへの出資が最終合意に達したと報道されたことを踏まえての措置だと見られる。ソフトバンクグループとしては、Uberの取得株式価格と取得株数が予定どおりに行かなければ出資を行なわない可能性があるとしている。

この点については、先日の決算説明会において、孫正義代表が言及している。「前向きに検討はしているが、最終的に我々が投資するかどうかは価格や条件次第。最後までわからない。またやるやる詐欺と言われても困るので、はっきりと申し上げたいが、、最後までわからない。既存の株主からの購入が大半。あくまでも条件次第」と条件次第であることを繰り返し述べている。条件が折り合わない場合は「Lyftに投資先を変更することも十分ある」などとコメントしていた。いずれにせよ、ソフトバンクグループからの公式声明からもわかるとおり、最終段階にあり、出資を実行するか否かは近日中にわかりそうだ。

ちなみに、Lyftへ出資する楽天の三木谷浩史会長兼社長は13日の決算説明会において、ライドシェアビジネスについて次のような展望を披露している。「人間の移動手段、モビリティビジネスには革命が起こると思う。タクシーを使ったり、自分の車を所有したり、といった既存の移動手段化から、ライドシェアリング的なサービスに進化、将来は完全自動運転車が登場し、街中を自動運転車が走り、それをみんながシェアリングするという近未来が10年以内にやってくる」(三木谷氏)。