法律相談だけじゃない、弁護士ドットコムが切り込む「フィンテック」

法律相談だけじゃない、弁護士ドットコムが切り込む「フィンテック」

2017.11.15

大量の書類を扱う法律分野においては、ITをはじめとするテクノロジーを活用することで大幅な業務効率化が期待できる。そこで近年、法律全般に関するテクノロジー「リーガルテック」が注目を集めている。

日本のリーガルテックを牽引する企業のひとつが、弁護士ドットコムだ。法律相談ポータルサイトのイメージが強いが、契約書作成から契約締結、保管・管理までを行うことができるオンライン契約サービス「クラウドサイン」を2015年より提供してきた。

契約書の締結には従来、製本や押印、郵送、返送という作業が必要だったが、クラウドサインでは、これら契約締結に関わる作業から契約書の保管・管理まで、すべてをクラウド上で完結できる。

これまで、数日から数週間かかっていた契約書の締結作業が数分で終わるほか、収入印紙にかかるコスト削減や書類の保管場所が不要になることなども大きなメリットだ。同社のクラウドサイン事業部長 橘 大地氏は「普及には日本の判子文化の壁が立ちはだかっている」と話すが、クラウドサインの導入社数は1万社を超えているという。

クラウドサインの導入社数推移
同社はクラウド契約の市場を4450億円と見積もる

契約締結と同時に決済を実行 - 幅広い分野に可能性

弁護士ドットコムは、契約業務に付きものな「決済」も狙う。10月末に、クラウドサインでの契約締結と同時に決済を実行できるサービス「クラウドサインペイメント」をリリースした。クラウドサインに契約書をアップロードし、「決済タグ」に決済情報を入力して契約を締結すれば、契約締結と決済が同時に実行できるというものだ。

橘氏は、「契約書を送った後に請求書を発行し、請求書に基づいて銀行振込みをするというのが、従来の支払い業務の流れだった。しかし、契約書というエビデンスがありながら、さらに請求書を発行して銀行振込みをしなければならないのは手間がかかる。契約締結と同時に決済ができるようにすれば便利な世の中になると考えた」と説明する。

クラウドサインペイメントの概要

クラウドサインペイメントの導入費用は無料だが、クラウドサインへの事前登録が必須となる。決済手段は今のところクレジットカード(Visa、Mastercard)のみ。1決済あたり、法人向け決済で2.0~2.45%、個人向け決済で2.7~3.15%の手数料がかかる。

請求側のメリットとしては、請求書作成や印刷、送付、入金確認、催促などの作業が不要になるため、決済にかかる事務コストが大幅に削減されるほか、振込による代金回収よりも入金サイクルが早まることが挙げられる。クレジットカード決済であるため、回収のリスクが大幅に減り、与信管理が軽減されるというのもポイントだ。

「約400万社あると言われている国内中小企業のキャッシュフローを改善したいという思いでやっている。取引先からの入金がなく従業員に給料を支払えなかったなど、キャッシュフローに関して問題を抱えているという声を中小企業の方からいただくことがある。クラウドサインペイメントで、早期入金を実現し、かつ債権回収を100%行えるようになることで、企業間のキャッシュの流動性を高めたい」(橘氏)

クラウドサイン事業部長 橘大地氏

支払い側にとっても振り込み作業が不要になるため、決済にかかる事務コストを削減でき、振込み手数料を支払う必要がなくなるメリットがある。クレジットカード払いであるため、分割支払いも可能となる。

想定される利用シーンや用途も幅広い。たとえばB2C分野ではセミナーや資格試験の申し込み、B2B分野では売買契約やフランチャイズ加盟契約、業務委託契約、さらにはC2C分野においても自宅でのキッチン教室やピアノレッスンの月謝の徴収、といったように、各分野に可能性を持つサービスであるといえる。

当面は、請求書発行から支払いまでを行うために利用するケースを想定しているという。「請求書発行のフローをなくす」ことが理念であるものの、原理的には請求書をクラウドサインペイメントで送付・決済が可能だ。橘氏は「しばらくは請求書としての利用シーンも多いのでは」と話していた。将来的には、家賃、駐車場代、税理士・会計士への報酬など月額決済への対応や、従量課金といった「金額が変動する決済」についても対応していく予定だ。

B2B市場でもフィンテックの波を

国内の法人決済市場は約920兆円と言われている。現在の決済手段は銀行振込や小切手など旧来からある支払方法が大半を占めており、クレジットカード決済額は市場の0.3%程度に過ぎない。クラウドサインペイメントはこの比率を、まず米国と並ぶ3%台へと押し上げるべくサービスを展開していく考えだ。普及が進めば、リーガルテックのみならず、フィンテック領域に与える影響も大きい。

特に現在の日本におけるフィンテック領域のビジネスは、B2CやC2C分野を対象としたサービスを中心に発展してきた流れがあり、B2Bを主な領域として想定しているクラウドサインペイメントは、国内フィンテックの新たな潮流を生み出すポテンシャルがあるといえる。

また、弁護士ドットコムでは、AIを用いた契約書の自動作成やブロックチェーン技術を用いた契約の自動執行といった研究開発も進めており、リーガルテックという視点で見ても、やるべきことはまだ多く残されている。従来の書面による契約締結実務をどこまで効率化できるのか、弁護士ドットコムの取り組みは緒に就いたばかりだ。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

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2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

「20代の転職相談所」運営会社の社長に直撃!

「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
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