主役の座から落ちたスマホ、変わり行くドコモの製品発表会

主役の座から落ちたスマホ、変わり行くドコモの製品発表会

2016.05.11

スマートフォン登場以後、大手携帯電話会社の新商品発表会といえば、毎年、スマホの新製品が発表され、注目されてきた。ところが、このところその様相が変化しているのだ。NTTドコモが11日に都内で開催した2016年夏の新商品発表会では、スマホの存在感がほとんど感じられないまでになってしまった。

夏モデルを手にするドコモ加藤薰社長だが、主役はスマホではない

主役の座から落ちたスマホ

ドコモが開催した2016年の夏モデル発表会。例年であれば、少なくとも10機種は新モデルが発表され、発表会でも、各機種の特徴が紹介されてきたものだが、今年はこれまでとは大きく異なっていた。

新たに発表された新モデルはわずか7機種。製品ごとの特徴も淡々と紹介され、新モデルを期待した人たちにとっては物足りなさしか感じられなかっただろう。それもそのはず、従来はスマホの新機能・性能が著しく、説明するに値するものが多かったが、近年は機能、性能ともに大差がなくなっている。どのメーカーのスマホを取り扱っても、スマホの取扱機種で携帯電話の契約を大きく伸ばせるという時代はすでに終わってしまっている。

2016年夏モデルのスマートフォン。写真左=Xperia X Performance SO-04H、写真右=GAlaxy S7 edge SC-02H

4月下旬に行われた2015年度の決算発表会でも、ドコモは2016年度のスマホ販売数の見通しについて弱気な数値を予測。2015年度比142万台減の1402万台とした。この水準は2014年度の1460万台を下回るもので、ドコモでは「タブレットをはじめとした2代目需要はまだあるが、スマホの機能や性能は一定のところまで来ている」(ドコモ幹部)とし、弱気な見通しの理由について説明している。

このあたりを掘り下げると、総務省が昨年9月から進めてきた携帯電話の値下げ議論も関係する。スマホの購入補助が携帯電話料金の値下げを阻害する要因になっているとして、実質ゼロ円でのスマホの販売が実質的に規制されたのは記憶に新しいところ。そのあたりも考慮すると、買い替え需要は減退することになり、ドコモとしても、弱気な見通ししか示せないということだろう。

これらのことからすると、新商品発表会で新モデルの役割はもはやサブ的な位置づけになる。取材案内のタイトルも、「NTTドコモ 2016夏 新サービス・新商品発表会」となっており、いつの間にか"新サービス"と"新商品"という言葉が倒置されており、主役が入れ替わっていたことも付記しておきたい。

新サービスに移った主役の座

一方、発表会で重点が置かれたのは、新技術、新サービスだ。新技術として発表されたのは「VoLTE[HD+]」「スグ電」「PREIUM 4G」といった音声通話と通信に関するもの。

「VoLTE[HD+]」は、LTE回線を利用して高音質通話を実現するVoLTEより、さらに品質の高い音声通話を実現する技術、「スグ電」はスマホの画面にタッチせず「応答」「発信」「切断」「消音・拒否」操作ができる技術、「PREIUM 4G」は下り最大375Mbpsの高速データ通信を可能にする技術だ。

高音質通話のVoLTEよりもさらに明瞭に声が聞き取れる「VoLTE[HD+]」
画面にタッチせずに「応答」「発信」「切断」「消音・拒否」操作ができる「スグ電」
下り最大375Mbpsの高速データ通信が行える「PREMIUM 4G」

ドコモは4月下旬の決算会見の場でも「音声のクリアさなどが今後の差別化要因になる」(ドコモ幹部)とコメントしており、これらの技術を活用して、通信事業において他社との差別化を図りたい考えだ。

そう記しつつも、新技術よりも注目したいのが新サービスだ。なかでも、dマーケットの新サービスの「dリビング」、ドコモ子会社2社が発表した健康食が今回の発表会の目玉であり、今ではドコモの戦略を理解する上で、スマホ新モデルよりも健康食の位置づけを理解するほうが重要度が高いだろう。

新機種よりも弁当を注目すべき

その意味合いを説明する前に、これらのサービスについて軽く触れておこう。「dリビング」は、生活トラブルや家事サービスのサポート、留守中の部屋の見守り機能などを提供してきた「家のあんしんパートナー」をリニューアルして名称変更し、子供のシッターサービスや買い物、食事の用意などができる家事代行サービスが追加された。

「dマーケット」の新サービスとなる「dリビング」。キッズ・ベビーシッター、家事代行サービスなど新たなメニューが追加された

"健康"では、子会社2社の新商品が重要だ。ひとつは、らでぃっしゅぼーやが遺伝子検査のネオリアと協同開発した「健康弁当」。肥満遺伝子タイプ(糖質で太りやすい、脂質で太りやすいなど)に合わせた食材になっているという。もうひとつは、ショップジャパンを運営するオークローンマーケティングの「Hill's Epicure」という冷凍食品。低糖質、低脂質、高たんぱく質にこだわったものとなっている。

糖質、脂質を減らし高たんぱくにこだわった食品の「Hill's Epicure」。東京都元麻布の人気レストラン「EPICURE」のオーナーシェフ藤春幸治氏と共同開発したという
らでぃっしゅぼーやは肥満遺伝子タイプ別の健康弁当を販売。写真は糖質で太りやすい人向けの濃厚デミグラスソースハンバーグと十六穀米ごはん。遺伝子検査キットも販売する

dリビングと食品の位置づけとは

dリビングと子会社2社の食品。いずれもドコモの事業とは遠いように見えるが、「通信依存から脱却図るドコモ、次なる期待はどこに?」という記事に記したとおり、同社は今、スマートライフ領域と呼ばれる分野を重視しており、上記の事業はこれらに属すものとなる。

dリビングは、キャリアフリーの戦略をとるdマーケットのコンテンツのひとつとなる。ドコモユーザーでなくとも、サービスの利用が可能なのが特徴で、通信事業に次ぐ新たな収益の柱として、ドコモが注目している事業だ。最近ではMVNOとの連携を図っており、今後も拡大させていくとしている。健康食についても、キャリアフリー戦略をとる「dショッピング」での販売となり、dショッピング自体もdマーケットを構成するコンテンツのひとつに位置づけられている。

今回の発表会では、スマホの新商品に注目してしまうと、物足りなさを強く感じてしまうだろう。しかし、ドコモが描く戦略に発表内容なぞらえていくと、今、注目すべきサービス、新商品は、通信事業とは切り離された意外なものが目に留まることになる。スマホから別のサービス、商品のお披露目の場として、発表会の役割が変わろうとしているのだ。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

関連記事
「社会人デビューは30歳からでいい」 転職相談のプロが想う“令和時代のキャリア論”

「社会人デビューは30歳からでいい」 転職相談のプロが想う“令和時代のキャリア論”

2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

「20代の転職相談所」運営会社の社長に直撃!

「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
関連記事