「XT5」は日本にぴったり? 流行のSUVにキャデラックという選択肢

「XT5」は日本にぴったり? 流行のSUVにキャデラックという選択肢

2017.11.16

近年、世界的に人気を高めているのがSUVだ。昔ながらのジープ的な4輪駆動車の逞しさを残しながら、日常生活の中での利用も重視するクルマとして、日本でも見かける機会が多い。人気カテゴリーで車種も豊富だが、キャデラックの新車「XT5」も一度は試してみるべきクルマだと言える。

キャデラックの新型クロスオーバーSUV「XT5」

米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランドであるキャデラックから、新型のクロスオーバーSUVとして「XT5クロスオーバー」が2017年7月に日本初公開され、10月から販売が開始された。このクルマは、これまでの「SRX」の後継車になる。

XT5については試乗の感想も含めお伝えするとして、まずはSUVの歴史を振り返り、その文脈でXT5の立ち位置を考えてみたい。

「XT5」はSUVの歴史に名を刻めるか

走破性と街乗りの両立が魅力のSUV

SUVの発端は、英ランドローバー社の「レンジローバー」誕生に遡ることができる。レンジローバーは本格的な悪路走破性を備えながら、高級乗用車のような快適性を持つ車種として1970年に誕生した。当時からフルタイム4輪駆動方式を採用し、2輪駆動と4輪駆動の切り替えを必要とするパートタイム4輪駆動方式に比べ、日々の使い勝手を大幅に向上させていた。

日本車では、1981年にいすゞ自動車から「ロデオビッグホーン」が登場し、翌82年には三菱自動車工業から「パジェロ」が誕生した。これらは当時、レクリエーショナル・ビークル(RV)と呼ばれ、郊外へ休暇に出かけた際に悪路も走れる車種という位置づけだった。そして、キャンプやスキーが流行ったのである。

1982年に発売となった「パジェロ」(画像提供:三菱自動車工業)

米国ではジープ「チェロキー」が1974年に生まれ、1984年からの2世代目が日本でも人気を呼んだ。

これらは当時まだ、SUVとはっきり区分けされてはいなかったが、それぞれの自動車メーカーには軍用や過酷な道なき大地を駆ける車種として、ランドローバー社には「ランドローバー」(のちに「ディフェンダー」)、三菱自にはジープのノックダウン生産による「三菱ジープ」、もちろん本家米国には軍用の「ジープ」があり、それぞれに悪路を走破するための高度な4輪駆動技術を持っていた。そうした本格派の派生としてSUVにつながる車種が登場したのである。

富裕層のクルマとしても定着、トヨタ「ハリアー」も登場

SUVという位置づけがより明確になってくるのは、1990年代に入ってからだ。米国西海岸の高級住宅地であるビバリーヒルズなどで、レンジローバーに乗る富裕層が出てきた。

富裕層の乗る高級車と言えば、米国なら「キャデラック」、英国なら「ロールスロイス」、あるいはドイツの「メルセデス・ベンツ」、そして高性能スポーツカーなどがあるが、そうした乗用4ドアセダンなどと一味違う見栄えや乗り心地、存在感を見せる車種として、レンジローバーに注目が集まったのではないか。金持ちであることを単に誇示するだけでなく、人となりとして、より行動的で活発であることを示す持ち物と考えられたのだろう。

ジャガー・ランドローバー・ジャパンが2017年7月に受注を開始した「レンジローバー・ヴェラール」

そこに目を付けたのが、トヨタ自動車の「ハリアー」だった。こちらは本格的4輪駆動車からの派生ではなく、中型乗用4ドアセダンとして米国で販売1位をとっている「カムリ」が基になった。4輪駆動車としての能力はそれなりだが、基が乗用車なので、快適性は格段に違った。そこに多くの人が魅力を感じだし、SUVという存在が確立されていったのである。

ラグジュアリークロスオーバーとしてのキャデラック「XT5」

SUVの発想はさらに広がり、本格的4輪駆動車として存在してきたジープのような格好をした車種でありながら、実は4輪駆動ではなく2輪駆動のクルマまで現れるようになる。

そうなると、何をもってSUVと定義するのかが曖昧になってきた。そして、あらゆる要素を1つに融合したクロスオーバー車という呼び名が登場することになる。

定義が曖昧になってきたSUV。キャデラック「XT5」はどのような位置づけになるのか

クロスオーバー車とは、4輪駆動車のようでありながら、乗用車の快適性や、高級さをより備え、日常的な利用にも便利なクルマであるというように、昔ながらの分類を超えて、複合的な魅力を併せ持つクルマだと位置づけられる。

前置きが長くなったが、キャデラック「XT5」は、ラグジュアリークロスオーバーと紹介されるSUVだ。

やや無骨な外観、乗り心地は高級乗用車

XT5は、最新のキャデラック各車種と共通の顔つきやデザインの雰囲気を備えながら、4輪駆動車であることを明らかにする車高の高さが外観の特徴だ。ドアを開け乗り込むと、高級車のような上質な室内空間があり、内装デザインは目に心地よい豪華かつお洒落な雰囲気を湛えている。

外観からすると、やや武骨な印象も与える4輪駆動車の佇まいでありながら、室内に居ると高級乗用車の快さを伝えてくる。そこがまさしく、ラグジュアリークロスオーバーということなのだろう。

キャデラックであることを物語る外観と、豪華な内装(画像提供:GMジャパン)

運転をし始めると、何よりその軽快な走りが印象深い。悪路を駆け抜けるためのゴツゴツとした頑丈さはあまり感じさせない。それよりも、車高が私の身長を超える1.7メートルと高いにも関わらず、背の低いスポーティな車種を運転するかのように身軽だ。

前型の「SRX」に比べ90キロもの軽量化を実現していることが、その軽快さを生み出しているのだろう。その結果、車体全長が4.8メートルあるということ以上に、車幅が1.9メートルを超えかなり幅広いにも関わらず、クルマの大きさをあまり意識せず、自在に運転することができた。

大きなクルマではあるが、軽快な走りが印象深い(画像提供:GMジャパン)

キャデラックはデトロイトからニューヨークへ

この気軽な気分にさせる運転感覚は、前型のSRXと明らかに異なる。その背景には、2009年に連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を受け、新生GMとしての再スタート後、グローバルキャデラックの本社をミシガン州デトロイトからニューヨーク州ニューヨークへ移したことも関わっているのではないかと想像する。

重厚長大なモノづくりの街から、世界から人々が集まり文化を生み出すニューヨークへと拠点を移したことで、今という時代を生きる人々が求める感性をキャデラックが身にまとったのではないだろうか。

XT5に乗っていると、とにかく心地よい。運転も楽だ。こう言うと、高性能であることを旨とするドイツ車勢に劣っているのではないかと思い込む読者があるかもしれない。だが、ドイツ車のSUVやクロスオーバー車とは、また違った味わいのある、それでいてしっかり走るクルマにXT5は仕上がっている。

ドイツ車とは違った味わいがある「XT5」(画像提供:GMジャパン)

例えば軽快な走行感覚も、高速道路に入るとドイツ車のように腰を落ち着けた安定性を発揮しだす。駆動方式の切り替えにより、もちろん前輪駆動で走っている時も安定感を感じるのだが、4輪駆動へ切り替えればいっそう安心を高める。さらに、スポーツモードを選ぶとハンドルの手ごたえが重くなり、乗り心地もやや硬めにはなるが、快適性を損なうことなく爽快に高速道路を走り続ける。

この感覚は、ドイツ勢と明らかに異なる。そして、日本での利用に最適な走行性能と快適性だと思わせるのである。

速度制限から見るクルマの使用条件

速度無制限区間のあるアウトバーンを走るドイツ車は、高速性能という点で世界屈指だろう。だが、公道における速度無制限など、世界のどこにも他に例がなく、特殊な環境だ。一方、米国の速度制限は国内のそれに近く、すなわちクルマの使用条件が日米では似ている。

もちろん、道幅や路地の有無、あるいは舗装の違いなどはあるが、似たような条件で走ることを視野に開発すれば、おのずと日米で乗りやすいクルマとなっていくのである。ただし同時に、世界的に売っていく車種として、高速性能も満たしている。それがXT5である。

さらに、後席の快適性が特筆すべき点だ。後席は床へきちんと足を下ろして座れる座席の高さがあり、腿を座席で支えることができるので、走行中も体が安定する。クッションの硬さも適度だ。さらに、天井ほぼ一杯にシェードを開けることで空を見上げることのできる「ウルトラビューパノラミック電動サンルーフ」には、息を呑むだろう。そもそも、ガラスサンルーフという発想を生み出したのは米国だ。

電動サンルーフのシェードを開ければ夜空を眺めることもできる(画像提供:GMジャパン)

操縦安定性は一新、変わる“アメ車”のイメージ

4ドアセダンの「CTS」が2003年に誕生して以降、キャデラックは単なる国内車種ではなくなり、かつて“アメ車”と国内で揶揄されたような、操縦安定性は二の次といったような乗り味ではなくなっている。その後、ドイツ勢を追うような運転感覚が目指されたが、ここに来て、“新生アメリカ車”とでも言うべき独自の新しい乗り味を実現していると感じる。

もはや、国内でドイツ車に乗る意味はどこにあるのかとさえ思わせる最新のキャデラックに、ぜひ乗ってみるべきだ。

「XT5」に乗れば“アメ車”のイメージは変わるかもしれない

25万台の国内ラグジュアリー市場を主眼に、成熟した国内市場のコア層(中核となる顧客)との接触を重視した経営戦略を進めるゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)は、左ハンドル車のみの輸入となっているが、日本での人気が右肩上がりで推移するならば、再び右ハンドル車の輸入がかなうかもしれない。

まずは最新のキャデラックを見て、運転してみてはどうだろう。目から鱗が落ちること間違いなく、クルマの選択肢が広がるに違いない。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。