「XT5」は日本にぴったり? 流行のSUVにキャデラックという選択肢

「XT5」は日本にぴったり? 流行のSUVにキャデラックという選択肢

2017.11.16

近年、世界的に人気を高めているのがSUVだ。昔ながらのジープ的な4輪駆動車の逞しさを残しながら、日常生活の中での利用も重視するクルマとして、日本でも見かける機会が多い。人気カテゴリーで車種も豊富だが、キャデラックの新車「XT5」も一度は試してみるべきクルマだと言える。

キャデラックの新型クロスオーバーSUV「XT5」

米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランドであるキャデラックから、新型のクロスオーバーSUVとして「XT5クロスオーバー」が2017年7月に日本初公開され、10月から販売が開始された。このクルマは、これまでの「SRX」の後継車になる。

XT5については試乗の感想も含めお伝えするとして、まずはSUVの歴史を振り返り、その文脈でXT5の立ち位置を考えてみたい。

「XT5」はSUVの歴史に名を刻めるか

走破性と街乗りの両立が魅力のSUV

SUVの発端は、英ランドローバー社の「レンジローバー」誕生に遡ることができる。レンジローバーは本格的な悪路走破性を備えながら、高級乗用車のような快適性を持つ車種として1970年に誕生した。当時からフルタイム4輪駆動方式を採用し、2輪駆動と4輪駆動の切り替えを必要とするパートタイム4輪駆動方式に比べ、日々の使い勝手を大幅に向上させていた。

日本車では、1981年にいすゞ自動車から「ロデオビッグホーン」が登場し、翌82年には三菱自動車工業から「パジェロ」が誕生した。これらは当時、レクリエーショナル・ビークル(RV)と呼ばれ、郊外へ休暇に出かけた際に悪路も走れる車種という位置づけだった。そして、キャンプやスキーが流行ったのである。

1982年に発売となった「パジェロ」(画像提供:三菱自動車工業)

米国ではジープ「チェロキー」が1974年に生まれ、1984年からの2世代目が日本でも人気を呼んだ。

これらは当時まだ、SUVとはっきり区分けされてはいなかったが、それぞれの自動車メーカーには軍用や過酷な道なき大地を駆ける車種として、ランドローバー社には「ランドローバー」(のちに「ディフェンダー」)、三菱自にはジープのノックダウン生産による「三菱ジープ」、もちろん本家米国には軍用の「ジープ」があり、それぞれに悪路を走破するための高度な4輪駆動技術を持っていた。そうした本格派の派生としてSUVにつながる車種が登場したのである。

富裕層のクルマとしても定着、トヨタ「ハリアー」も登場

SUVという位置づけがより明確になってくるのは、1990年代に入ってからだ。米国西海岸の高級住宅地であるビバリーヒルズなどで、レンジローバーに乗る富裕層が出てきた。

富裕層の乗る高級車と言えば、米国なら「キャデラック」、英国なら「ロールスロイス」、あるいはドイツの「メルセデス・ベンツ」、そして高性能スポーツカーなどがあるが、そうした乗用4ドアセダンなどと一味違う見栄えや乗り心地、存在感を見せる車種として、レンジローバーに注目が集まったのではないか。金持ちであることを単に誇示するだけでなく、人となりとして、より行動的で活発であることを示す持ち物と考えられたのだろう。

ジャガー・ランドローバー・ジャパンが2017年7月に受注を開始した「レンジローバー・ヴェラール」

そこに目を付けたのが、トヨタ自動車の「ハリアー」だった。こちらは本格的4輪駆動車からの派生ではなく、中型乗用4ドアセダンとして米国で販売1位をとっている「カムリ」が基になった。4輪駆動車としての能力はそれなりだが、基が乗用車なので、快適性は格段に違った。そこに多くの人が魅力を感じだし、SUVという存在が確立されていったのである。

ラグジュアリークロスオーバーとしてのキャデラック「XT5」

SUVの発想はさらに広がり、本格的4輪駆動車として存在してきたジープのような格好をした車種でありながら、実は4輪駆動ではなく2輪駆動のクルマまで現れるようになる。

そうなると、何をもってSUVと定義するのかが曖昧になってきた。そして、あらゆる要素を1つに融合したクロスオーバー車という呼び名が登場することになる。

定義が曖昧になってきたSUV。キャデラック「XT5」はどのような位置づけになるのか

クロスオーバー車とは、4輪駆動車のようでありながら、乗用車の快適性や、高級さをより備え、日常的な利用にも便利なクルマであるというように、昔ながらの分類を超えて、複合的な魅力を併せ持つクルマだと位置づけられる。

前置きが長くなったが、キャデラック「XT5」は、ラグジュアリークロスオーバーと紹介されるSUVだ。

やや無骨な外観、乗り心地は高級乗用車

XT5は、最新のキャデラック各車種と共通の顔つきやデザインの雰囲気を備えながら、4輪駆動車であることを明らかにする車高の高さが外観の特徴だ。ドアを開け乗り込むと、高級車のような上質な室内空間があり、内装デザインは目に心地よい豪華かつお洒落な雰囲気を湛えている。

外観からすると、やや武骨な印象も与える4輪駆動車の佇まいでありながら、室内に居ると高級乗用車の快さを伝えてくる。そこがまさしく、ラグジュアリークロスオーバーということなのだろう。

キャデラックであることを物語る外観と、豪華な内装(画像提供:GMジャパン)

運転をし始めると、何よりその軽快な走りが印象深い。悪路を駆け抜けるためのゴツゴツとした頑丈さはあまり感じさせない。それよりも、車高が私の身長を超える1.7メートルと高いにも関わらず、背の低いスポーティな車種を運転するかのように身軽だ。

前型の「SRX」に比べ90キロもの軽量化を実現していることが、その軽快さを生み出しているのだろう。その結果、車体全長が4.8メートルあるということ以上に、車幅が1.9メートルを超えかなり幅広いにも関わらず、クルマの大きさをあまり意識せず、自在に運転することができた。

大きなクルマではあるが、軽快な走りが印象深い(画像提供:GMジャパン)

キャデラックはデトロイトからニューヨークへ

この気軽な気分にさせる運転感覚は、前型のSRXと明らかに異なる。その背景には、2009年に連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を受け、新生GMとしての再スタート後、グローバルキャデラックの本社をミシガン州デトロイトからニューヨーク州ニューヨークへ移したことも関わっているのではないかと想像する。

重厚長大なモノづくりの街から、世界から人々が集まり文化を生み出すニューヨークへと拠点を移したことで、今という時代を生きる人々が求める感性をキャデラックが身にまとったのではないだろうか。

XT5に乗っていると、とにかく心地よい。運転も楽だ。こう言うと、高性能であることを旨とするドイツ車勢に劣っているのではないかと思い込む読者があるかもしれない。だが、ドイツ車のSUVやクロスオーバー車とは、また違った味わいのある、それでいてしっかり走るクルマにXT5は仕上がっている。

ドイツ車とは違った味わいがある「XT5」(画像提供:GMジャパン)

例えば軽快な走行感覚も、高速道路に入るとドイツ車のように腰を落ち着けた安定性を発揮しだす。駆動方式の切り替えにより、もちろん前輪駆動で走っている時も安定感を感じるのだが、4輪駆動へ切り替えればいっそう安心を高める。さらに、スポーツモードを選ぶとハンドルの手ごたえが重くなり、乗り心地もやや硬めにはなるが、快適性を損なうことなく爽快に高速道路を走り続ける。

この感覚は、ドイツ勢と明らかに異なる。そして、日本での利用に最適な走行性能と快適性だと思わせるのである。

速度制限から見るクルマの使用条件

速度無制限区間のあるアウトバーンを走るドイツ車は、高速性能という点で世界屈指だろう。だが、公道における速度無制限など、世界のどこにも他に例がなく、特殊な環境だ。一方、米国の速度制限は国内のそれに近く、すなわちクルマの使用条件が日米では似ている。

もちろん、道幅や路地の有無、あるいは舗装の違いなどはあるが、似たような条件で走ることを視野に開発すれば、おのずと日米で乗りやすいクルマとなっていくのである。ただし同時に、世界的に売っていく車種として、高速性能も満たしている。それがXT5である。

さらに、後席の快適性が特筆すべき点だ。後席は床へきちんと足を下ろして座れる座席の高さがあり、腿を座席で支えることができるので、走行中も体が安定する。クッションの硬さも適度だ。さらに、天井ほぼ一杯にシェードを開けることで空を見上げることのできる「ウルトラビューパノラミック電動サンルーフ」には、息を呑むだろう。そもそも、ガラスサンルーフという発想を生み出したのは米国だ。

電動サンルーフのシェードを開ければ夜空を眺めることもできる(画像提供:GMジャパン)

操縦安定性は一新、変わる“アメ車”のイメージ

4ドアセダンの「CTS」が2003年に誕生して以降、キャデラックは単なる国内車種ではなくなり、かつて“アメ車”と国内で揶揄されたような、操縦安定性は二の次といったような乗り味ではなくなっている。その後、ドイツ勢を追うような運転感覚が目指されたが、ここに来て、“新生アメリカ車”とでも言うべき独自の新しい乗り味を実現していると感じる。

もはや、国内でドイツ車に乗る意味はどこにあるのかとさえ思わせる最新のキャデラックに、ぜひ乗ってみるべきだ。

「XT5」に乗れば“アメ車”のイメージは変わるかもしれない

25万台の国内ラグジュアリー市場を主眼に、成熟した国内市場のコア層(中核となる顧客)との接触を重視した経営戦略を進めるゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)は、左ハンドル車のみの輸入となっているが、日本での人気が右肩上がりで推移するならば、再び右ハンドル車の輸入がかなうかもしれない。

まずは最新のキャデラックを見て、運転してみてはどうだろう。目から鱗が落ちること間違いなく、クルマの選択肢が広がるに違いない。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。