キットカットと東京ばな奈、二大ブランドが挑む5,700億円ギフト市場

キットカットと東京ばな奈、二大ブランドが挑む5,700億円ギフト市場

2017.11.17

キットカットと東京ばな奈のコラボレーションによる、新しい東京土産が発売となった。土産菓子はインバウンドなどの影響もあり、今後は1,000億円以上の成長が予想される市場。東京土産とチョコレート、それぞれの分野でトップを走る両者にインタビューし、今回の共闘における狙いを聞いた。

キットカットと東京ばな奈がコラボ商品を発売

2020年に向け大きく成長しそうな東京土産の市場

11月15日に発売となったのは、東京ばな奈を販売するグレープストーンと、キットカットのネスレ日本が開発した土産菓子「東京ばな奈 キットカットで『見ぃつけたっ』」だ。グレープストーンが他社とコラボするのは今回が初めて。また、過去に多数のコラボ商品を販売してきたキットカットにおいても、初めて商品紹介動画を制作するなど、今までにない取り組みとなっている。

両社がこれほどまでに力を入れているのは、土産菓子市場の大きな成長可能性が視野に入っているからだ。ネスレ日本の調べによると、訪日客・東京観光客の2つのギフト市場は前者が1,300億円(2016年)、後者が3,300億円(2014年)という規模。これが2020年までにそれぞれ500~600億円の成長を遂げ、計5,700億円に拡大する見込みだという。

土産菓子市場の大幅な成長を見込むネスレ日本

東京土産とチョコレート、二大ブランドがマッチング

東京ばな奈もキットカットも、東京土産として、またチョコレートブランドとしての認知度が高く、ファンも多い商品。土産菓子市場に、単独で挑む力は十分にあるように思える。今回、わざわざ手を結んだ理由はどこにあるのだろうか。コラボレーションの狙いを、ネスレ側の担当者は次のように語っている。

「東京ばな奈は東京土産としてナンバーワン。キットカットは世界にファンを有しています。両者がタッグを組むことで、東京ばな奈側はグローバル規模でのアピールを、キットカット側は東京土産という市場を一気に開拓することを狙っています」(ネスレ日本 コンフェクショナリー事業本部 マーケティング部長 槙亮次氏)

ネスレ日本の槙亮次氏

つまり、それぞれの課題を補う存在としてお互いを認識し、協力関係にメリットを見いだしたというところだ。役割分担はどのようになっているかというと、商品は両社が共同開発し、ショッパーマーケティングなどの販売面は土産菓子のブランド力・ノウハウを持つグレープストーンが、消費者マーケティングと商品製造はキットカットが担当する。

しっとりとサクサク、相反する特徴を両立

では、開発に1年以上かかったというコラボ商品は、既存のものとどう違うのだろうか。

基本的に、種類としてはチョコレート菓子であり、形状・味もキットカットがベースとなっている。ただ「バナナ味のキットカットではない」と槙氏も力を込めて語るように、キットカットの持ち味であるサクサク感と、東京ばな奈のやさしい味やしっとりとした食感という、相反する要素を合わせ持っているところが大きな特徴だそうだ。

「東京ばな奈 キットカットで『見ぃつけたっ』」は東京駅一番街・地下1階の「東京おかしランド」で先行販売(2018年1月9日まで)し、関東近郊を中心とする空港、鉄道、高速道路の店舗に順次拡大していく。価格は税抜きで8枚入りが650円、15枚入りが1,200円だ

キットカットのサクサクとした小気味好い食感は、ミクロン単位の粒子からなる、厚さ2ミリのウエハースをチョコレートでコーティングすることで実現している。東京ばな奈はしっとりしたスポンジと、裏ごししたバナナを使ったなめらかなクリームのコンビネーションが特徴だ。

この2つの魅力を共存させるために、新商品ではウエハースの間に、東京ばな奈の風味を再現したやさしい甘さのバナナクリームをサンド。クリームをなめらかにすることにより、東京ばな奈のしっとり感を表現したという。チョコレートの表面には、バナナの形の刻印を施してプレミアム感を演出。パッケージや箱のデザインも土産菓子らしさを強調している。

土産菓子らしさを演出した箱とパッケージ

コラボの提案はグレープストーンから

実は今回の共同開発は、グレープストーンからネスレ日本へ最初に申し出たことから始まったという。初めてのコラボ相手としてキットカットを選んだ理由について、グレープストーンで営業部長を務める野口聡氏は次のように説明する。

「当社では商品名の通り、『東京』というブランドイメージを大切にしていました。ですので、コラボレーションというニュース性のみで一時的に売れるというのは望ましくありません。ただ、近年急成長しているインバウンド市場についてはもちろん頭にありましたし、東京ばな奈は認知度があるといっても国内やアジアに限られ、欧米ではまだまだ知られていないことが課題となっていました。まずは知ってもらうことが大切、ということで、世界的にブランド価値が知られているキットカットをコラボ相手として考えました」

グレープストーン営業部長の野口聡氏

「お土産文化」は欧米で受け入れられるか?

キットカットが世界的に知られているのは、単にネスレがグローバル企業だから、という理由からだけではない。ご当地土産やコラボ商品、プレミアム商品などを含め、非常に多くの種類があるのは日本だけ。こうした独自の展開が、グローバル規模で注目されているのだ。槙氏によるとキットカットの海外人気は高く、「2009年頃からアジアを中心に抹茶味人気が高まり、2012~2013年、爆買い傾向に火がつきました。勢いは一時期より衰えたといっても、まだまだ売れています」(槙氏)という。

種類が豊富な日本のキットカット。海外からも注目されているという

ただそもそも、「お土産」という文化そのものが欧米には馴染みが薄く、キットカットにしても、東京ばな奈にしても、やはり同じ文化を持つアジア勢への売れ行きが圧倒的に高い。従って欧米人相手には、いかに日本の土産文化をアピールし、定着させていくかという、また別の戦略が必要になりそうだ。

賞味期限の延長による販路拡大を狙う

もうひとつ、グレープストーンにとっては、コラボにより販路が拡大することも大きなメリットだ。というのも、東京ばな奈は生菓子で賞味期限が2週間程度と短いため、在庫を抱えることができない。つまり、空港、駅、高速道路などの中でも、よく売れることが見込める場所でないと販売できないわけだ。東京駅の中でさえ、中心部にある客足の多い土産物売り場でないと置けないそうだ。

その点、キットカットとのコラボ商品はチョコレート菓子なので、賞味期限が大幅に伸び、販路の拡大にもつながる。もちろんキットカットの通販サイトでの販売も含まれる。ただ、あくまで「土産菓子」としての付加価値を守っていきたいというのは、ネスレとグレープストーンの一致した目的だ。商品にプレミアム感を持たせるほか、箱やパッケージのデザインに至るまでギフトらしさを重視しているのもそのためだ。

このように、コラボによるメリットはどちらかと言えばグレープストーン側の方が大きいように思えるが、ネスレ日本も「二つ返事で引き受けた」(槙氏)と、非常に前向きだ。

今回のコラボレーションは両者の戦略が合致?

東京ばな奈のアジア人気を海外戦略の足がかりに

「当社のギフト向け商品は、2003年の北海道のご当地キットカットに始まり、市場が地域ごとに限られています。訪日や東京市場は今後の伸びが期待されており、ひとつの大きなギフト市場として開拓する価値があると考えました」(槙氏)

ネスレ日本は現在、全社的にウェルネス(健康路線)、プレミアム化に力を入れているが、それらに次ぐ第三の柱として「海外市場」があるという。キットカットでいえば、カカオや抹茶の健康効果訴求、ショコラトリー、そして今回のギフト市場開拓がそれにあたる。

また、2017年10月26日には韓国にキットカットのフラッグシップ店をオープンし、今後はアジアの他の地域へも拡大を予定しているそうだ。今回のコラボとの相乗効果があるかどうか分からないが、東京ばな奈がアジア圏で高く評価されていることから考えても、影響は小さくなさそうだ。

このように、今回のコラボレーションは両社の戦略上、まさにベストな相手との幸福な組み合わせだったといえる。まず今回のコラボ商品を確実に成功させ、第二弾以降も前向きに考えていきたいというのが両社の考えだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。