MVNOの契約数伸び悩みを巡る 携帯大手3社と総務省の思惑

MVNOの契約数伸び悩みを巡る 携帯大手3社と総務省の思惑

2017.11.18

大手キャリアから顧客を奪って契約を急拡大させてきたMVNOだが、ここ最近その伸びに急ブレーキがかかっている。主な理由はキャリアがMVNOへの流出を防止する策を大幅に強化したからなのだが、現在のMVNOを巡る3キャリアと、MVNOを推進してきた総務省の思惑、そして今後について考察してみよう。

好調だったMVNOが一転して危機を迎える

昨年まで、大手キャリアより圧倒的に安い通信料金を武器として、急成長を遂げてきたMVNO。だが今年、そのMVNOの伸びに大ブレーキがかかっているようだ。

実際、9割以上のMVNOに回線を貸し出しているNTTドコモは、MVNOの伸び悩みなどが影響し、今年度の純増数を220万から130万へと大幅に下方修正している。

またMVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)も、前年度まではコンシューマー向けサービスの「IIJmioモバイル」の純増数が、四半期毎に数万単位で伸びていたにもかかわらず、今四半期からはその伸びが急減。第2四半期にはついに、1万を切るに至っている。

IIJの2018年3月期第2四半期決算説明会資料より。今年に入ってから個人向けの「IIJmioモバイル」の純増数の伸びが急減し、四半期ベースでついに1万を切るに至っている

なぜこれほど急速に、MVNOの伸びが落ちているのだろうか。MVNO自体の数が700社近くにまで増たことで、それらが一斉に限られたパイを食い合い、競争を激化させたという市場環境も影響しているだろうが、より大きく影響しているのが大手キャリアである。

これまでMVNOは、格安な料金を武器に、大手キャリアからユーザーを奪うことで契約数を増やしてきた。だがそのキャリア側が、MVNOに顧客が大量に流出していることに危機感を覚え、流出防止に向けた対策を大幅に強化してきたからだ。

顧客流出防止の効果が表れたKDDI

中でもここ最近、MVNOへの顧客流出対策に最も力を入れてきたのがKDDIである。KDDIは低価格を求めるユーザー向けサービスの提供に最も消極的であったことが仇となり、MVNOの急伸によって低価格を求めるauブランドのユーザー流出が続いていた。

そのことに危機感を覚えたKDDIは、ここ数年のうちに低価格のサービスを大幅に強化。2015年にはauのMVNOとしてサービスを提供する子会社をUQコミュニケーションズと合併させ、「UQ mobile」ブランドによる低価格サービスへのテコ入れを図った。さらに今年1月には、MVNOの大手の一角を占めるビッグローブを買収。ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムが展開する「J:COM MOBILE」と合わせ、3つのMVNOを活用して低価格を求める顧客を獲得する戦略に打って出たのだ。

さらにKDDIは、auブランドの顧客流出防止にも積極的に打って出ている。その最たる例として挙げられるのが、今年7月に導入した「auピタットプラン」「auフラットプラン」である。これらは端末価格を値引かないことで、通信料金を安くするというもの。auピタットプランの場合、各種割引やキャンペーンを適用することで月額1980円から利用できるなど、MVNOに迫る低価格を実現したことが話題となった。

auの新料金プランは、9月からiPhoneが対象になったこともあって大きく伸び、200万契約を突破するに至っている

こうした一連の施策によって、KDDIはグループ外のMVNOへの流出抑止に成功しつつある。実際11月1日の決算会見で、代表取締役社長の田中孝司氏は「番号ポータビリティによるグループ外への流出はほぼ止まっており、アンダーコントロールな状況になりつつある」と話している。auユーザー自体の減少はまだ止まっていないものの、傘下のMVNOへの流出が主となっているため、業績に与える影響は小さくなりつつあるようだ。

ワイモバイルで安泰のソフトバンク

出遅れを必死に挽回してきたKDDIとは異なり、低価格サービスを巡る競争で優位に立っているのはソフトバンクだ。同社はワイモバイルブランドを活用し、低価格を求めるユーザー向けのサービスをいち早く展開したことで、MVNOへの流出を抑えているのだ。

実際ワイモバイルは、月額2980円から利用できるなど低価格なサービスを提供する一方、ワイモバイルの前身となるウィルコムやイー・アクセスの資産を生かして全国にワイモバイルショップを展開。MVNOほどではないながらも大手キャリアよりは安く、MVNOよりサポートが充実しているという“ほどほど”のサービスがヒットしてユーザーを拡大。さらに型落ちながらもiPhoneを正規に取り扱ったり、テレビCMを積極展開したりするなどして人気を高め、低価格の通信サービスではトップシェアを獲得するに至っている。

もっとも、ワイモバイルが伸びればそれだけソフトバンク自体の売上は下がってしまうというデメリットもあり、ソフトバンクの国内通信事業は最近、減収減益傾向が続いている。

だがそれでも他社に顧客が流出するよりは、売上が落ちてでも自社内に顧客を抱えていた方がメリットが大きいのは確かなだけに、ソフトバンクがワイモバイルを強化する方針は今後も変わらないだろう。

ソフトバンクは顧客基盤の拡大に向け、ワイモバイルのユーザー獲得に今後も積極投資する方針を示している

MVNOの伸び悩みがメリットとは限らないNTTドコモ

一方NTTドコモにとって、MVNOの契約数の伸び悩みは痛しかゆしな部分がある。その理由は先にも触れた通り、9割以上のMVNOがNTTドコモから、接続料を支払ってネットワークを借り、サービスを提供しているからだ。MVNOの利用者が増えればNTTドコモにも収入が入ってくるので、契約数が伸び悩めば接続料収入の伸びも期待できなくなってしまうのである。

NTTドコモはMVNOの契約数拡大が純増数の伸び、ひいては接続料収入の伸びにもつながってくるため、MVNOに対しては難しい立場にあるといえる

もちろん、NTTドコモからMVNOにユーザーが流出してしまえば、1人当たりの売り上げ自体は落ちてしまう。そこで同社は、特定の端末を購入する代わりに通信料を毎月1500円値引く「docomo with」や、「dポイントクラブ」のリニューアルによる長期契約者優遇措置など、顧客のつなぎ止めに向けた施策を増やしてはいる。

しかしながら他の2社と比べるとサブブランドや傘下のMVNOを持たないなど、顧客でもあるMVNOへの配慮もあってか顧客流出防止に消極的な部分もいくつか見られ、同社が置かれている立場の難しさを物語っている。

そしてもう1つ、現状を最も快く思っていないのは総務省であろう。総務省は3キャリアによる携帯電話市場の寡占による料金競争の停滞を懸念しており、これまでにも3キャリアに対して、商習慣の大幅な変更を迫るなど厳しい対応をとる一方、MVNOを支援し市場競争を拡大する方針をとってきた。それだけに、キャリア側が守りを徹底的に固め、MVNOが停滞しつつある現状は、総務省にとって決して面白いものではなく、今後新たな施策検討を進める可能性が考えられる。

MVNOへの流出阻止を徹底したいKDDIとソフトバンク、消極的ながらもMVNOの広がりを期待するNTTドコモ、そしてMVNOを積極支援して強化したい総務省。MVNOの市場を巡る動向は、これら4者の思惑が大きく影響する形で、再び変化を遂げることになりそうだ。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。