今度こそ女性客は振り向く? 吉野家が新型店舗で挑む長年の課題

今度こそ女性客は振り向く? 吉野家が新型店舗で挑む長年の課題

2017.11.20

今年も「牛すき鍋膳」を発売した吉野家。定番商品の登場で集客に弾みがつきそうだが、気になる点もある。それは、同社が不得手とする女性客をどのように獲得するかだ。女性客に訴求すべく、吉野家は新型店舗を展開するなど手を打っている。

11月1日に「牛すき鍋膳」を発売した吉野家。長年の課題は、女性客をいかにして取り込むかだ

女性客とファミリー層の取り込みが課題

1899年に誕生した吉野家は、「うまい、やすい、はやい」をスローガンに100年を超えるストーリーを持つ企業だ。「まずはお客様に喜ばれなければいけない」を吉野家文化の筆頭に掲げ、牛丼をコア商品としてメニューの多様化を図り、多くの利用客に選ばれる価値を提供し続けてきた。冬の定番商品として定着し、ファンも多い「牛すき鍋膳」をはじめ、最近では夕食需要に対応した「おろし牛カルビ定食」など、新たな客層の確保に向けたアイテムの拡充を進めている。

一方で、吉野家に足を運ぶ機会の少ない客層も存在する。それが、女性客とファミリー層だ。

「牛すき鍋膳」の発表会に登壇した吉野家の河村泰貴社長(画像)も、女性客とファミリー層の取り込みが課題と話していた

カウンターのイメージで女性客の足が遠のく?

女性客が足を運ばない理由は誰にでも分かる。大きな理由としては、吉野家を好んで訪れる“中年男性客”のイメージが色濃いことだ。また対面式のカウンターは、従業員のオペレーションを効率化するには大きなメリットだが、女性客にとっては逆にデメリットと映る。

他にも、女性向けのメニューが少ない、女性向けのサイズが少ないなど、コアターゲットとしてきた20~40代の男性客以外に、どのように向き合っていくかが吉野家の大きな課題となっていた。これまで多くの施策を打ってきたが、これまでのところ、女性客を大幅に増やすことには成功していないようだ。

居酒屋に行きにくい“おひとり様”をターゲットとし、吉野家が2015年から始めた「よし呑み」にしてみても、牛丼と軽く一杯を組み合わせて“ちょい飲み需要”を取り込もうとした戦略ではあったが、結果として、女性客の足は更に遠ざかる結果となった。多くの客を呼び込むはずの戦略が、逆に一部の客に選ばれない結果を招くとは、皮肉なものだ。

そんなわけで、吉野家にとって女性客の取り込みは長年の課題なのだが、その解決につながるかもしれないのが、新型店舗への取り組みだ。

吉野家の新型店舗は、まだまだ進行形

吉野家は店舗改装と並行して実験店舗の設定を行っている。代表的なのは恵比寿駅前店だ。ここではカフェテリア方式を採用しており、利用客は商品を受け取り、食べ終わったら返却口に運ぶスタイルとなっている。特筆すべきは、あのU字カウンターが存在しないことだ。

吉野家の新型店舗を見かけるようになってきた。画像は大井町西口店

実際に恵比寿駅前店を訪れてみると、無料Wi-Fiやコンセントは当然のように設置されており、なんと喫煙室も存在していた。喫煙室はドアのついた専用スペースとなっており、愛煙家にも配慮した設計となっている。店舗スペースも広めでゆったりしており、目線を遮るように設置された人工の植栽からは、利用者の視線への配慮が感じられた。キッチンにはフライヤー(揚げ物の調理機器)を設置し、他の店舗にはない「からあげ丼」なども提供している。

また、秋葉原店はU字カウンターそのものは存在しているものの、座席配置がギザギザの形になっているため、目の前の客と目線が合ってしまう気遣いがない。座席はおひとり様仕様になっており、はしや紅しょうがなどは1セットずつ置かれている。なんと、コンセントも座席ごとの設定だ。

明るい店内、かつ丼もメニューに

そして大井町西口店は、更に進化した店舗という印象だ。まず、晩ごはんのメニューがやたらと多い。座席は対面式カウンター10席、外に向いたカウンターに5席、2人掛けのテーブル席が5セットという配置で、計25名で一杯となる設計だ。フライヤーの用意はもちろんのこと、「かつ丼」までメニューに載っている。

吉野家らしからぬメニューも扱う大井町西口店

日曜日の夕方に大井町西口店を訪問してみたが、家族連れや若い夫婦などで席は埋まっていた。夫婦と思しき高齢の2人づれを見ると、男性客がビールを傾ける傍らで、女性客が食事していた。従来の吉野家ではあまり見かけないシーンだ。加えて、外から見ても分かることだが、店内がとても明るい。まるでコンビニではないかと感じられるほど、店内の明るさが印象深かった。ちなみに、大井町西口店にも喫煙室がある。

新型店舗は吉野家からのメッセージ

多くの客の選択肢に残ること、客に足を運んでもらえる価値を創出することが、どんな店舗にとっても集客の基本となる。今までにはなかった吉野家の新型店舗に、吉野家が苦悩しながら進化を模索し、挑戦している姿を見出した。大井町西口店では、店内ディスプレイに商品ラインアップだけではなく、女性客が楽しんでいる風景も映し出していた。吉野家は新しい客層に向けて、新しい店舗を通じてメッセージを発信している。

中央に仕切りのついたカウンターなど、大井町西口店は従来の吉野家とは違った雰囲気だ

先にはグループの「はなまるうどん」との共通定期券というアイデアで、はなまるうどんの持つ客層へのアピールを行った吉野家。セルフ方式で大・中・小のサイズ選択ができるはなまるうどんには、吉野家に足を運ばない客層も存在するはずだ。共通定期券も、はなるうどんの利用客に対する吉野家からのメッセージだったのではないだろうか。

吉野家の発するメッセージが、どのように女性客に伝わるのか。そして、吉野家の実験を受けた他社がどのような動きを見せるのか。これから、牛丼チェーンによる女性客争奪戦が過熱するかもしれない。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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