小田急ロマンスカーが新宿・小田原間を59分で走り抜く意味

小田急ロマンスカーが新宿・小田原間を59分で走り抜く意味

2017.11.22

2017年11月1日に行われた記者会見において、小田急電鉄は2018年3月(期日未定)に実施するダイヤ改正の詳細を発表した。代々木上原・登戸間の複々線化工事が全面的に完成し、現時点では複線のまま残っている下北沢駅付近のネックが解消されることによって、大幅な輸送力増強が実現する大規模な改正だ。

この改正にはさまざまな見どころがあるが、3月までの間、そのうちいくつかを何回かに分けて紹介し、小田急電鉄が今回の大変革を機に狙っているところを解説していこう。

山本利三郎が描いた夢

今回のダイヤ改正は、激しい混雑が繰り返されている、ラッシュアワーの輸送改善が主眼であるが、小田急電鉄の象徴的な目標が達成されたことにも注目したい。小田急史上初めて、新宿・小田原間が1時間を切り、59分で走り抜く特急ロマンスカー(「スーパーはこね」)が、土休日に下り4本、設定されるのである。

左:記者会見にて挨拶する、星野晃司小田急電鉄取締役社長。右:現在の小田急ロマンスカーのフラッグシップである50000形「VSE」

この意義を説明するには、山本利三郎という人をまず紹介しなければなるまい。

山本利三郎は鉄道技術者であり、1948年に6月1日に、小田急電鉄が戦時合併させられていた東京急行電鉄から分離独立した際、取締役運輸担当兼運輸課長に就いた人物である。

山本は電車の高速化にはとりわけ熱心で、スピードアップにこそ鉄道の将来があると確信していた。その理想を実現するため、就任直後の1948年10月16日には、早くも新宿・小田原間ノンストップの特急を復活させた。まだ戦後の荒廃が続き、窓ガラスが割れたまま走る電車など当たり前だった時期に、まず集中的に整備した車両を特急に投入。続いて、他社に先駆けて専用車両を新製したのである。

さらに、新宿・小田原間82.5kmを1時間で走破するという目標が立てられた。戦前の鉄道の最高速度記録は、阪和電気鉄道(現在のJR阪和線)天王寺・和歌山間61.2kmを45分(表定速度81.6km/h)で走った「超特急」だったから、これを打ち破ろうという野心的な目標であり、かつ社内向けの方針説明にも、社外へのPRにも、わかりやすいキャッチフレーズであった。

特急専用電車という斬新な経営思想

その後、山本利三郎は、1957年に画期的な特急用電車3000形「SE(Super Express)」を就役させ、1963年には改良型の3100形「NSE(New Super Express)」を投入し、目標に挑んだ。

3000形が画期的だったのは、取り入れられたさまざまな最新技術だけではない。

それまでの特急用電車は、単に「内装が豪華な車両」「強力なモーターを積んで高速で走る車両」という考え方で設計されていた。これに対し、3000形は設計の出発点を「徹底的に特急専用とした電車」に置いたことが重要であったのだ。次世代の特急用車両が現れれば、それまでの電車のように急行などへ格下げ改造、転用することは一切考えず、10年程度で廃車としてもよし(実際には約35年使われたが)という"設計思想"である。

これは技術革新や顧客の嗜好の変化の速さ、つまりは時代の流れをよく理解していた経営上の考え方であった。そういう経営感覚を車両設計に盛り込んだという点で、3000形は時代の先を読んだ斬新なものだったと言えるのだ。

ただ、新宿・小田原間1時間という目標は、3000形、3100形でも達成されることはなかった。電車の性能が不足していたためではない。高度経済成長期の通勤通学客の激増に対応するため、急行や各停などの大増発が必要になり、それらの列車に行く手を阻まれて、特急が常に全区間を最高速度で走るわけにはいかなくなったためである。

3100形以降の小田急の特急用電車は、速度もさることながら快適性も重視したものへと切り替わってゆく。NSEの次の7000形が、豪華さを打ち出して「LSE(Luxury Super Express)」と命名されたことが象徴的だ。

左:3000形の思想を受け継ぎ、展望室を設けるなどの改良を施した3100形「NSE」。小田急開成駅前で保存されている。右:3000形「SE」以来の車体色イメージを受け継いだ7000形「LSE」。2018年度内の引退が予想されている

新車と「VSE」を最速列車に投入

正直なところ、山本利三郎の理想は車両性能の向上により達成されたわけではない。複々線化の完成で、各停などと走る線路が分離されたことにより達成されたのは、間違いないところだ。

左:2018年春に登場する予定の新型ロマンスカー70000形の完成予想イラスト。右:小田急新宿駅では歴代のロマンスカーをイラストで紹介

実際、ダイヤ改正後の新宿・小田原間59分運転に投入されるのは、新型ロマンスカー70000形と、現在も同区間を1時間4分で走っている50000形「VSE(Vault Super Express)」である。つまりは、性能的にはすでに十分なものが持たされているのである。

こうした流れとなったのは、やはり時代の変化。なかんずく、沿線の都市化が予想以上に深化、広域化したことによる。3000形、3100形が登場した時代には、通勤電車がこれほどの本数で走るとは思われておらず、複々線化計画もまだなかったのだ。

今回の複々線化は特急の所要時間短縮のために行われたことではない。ただ、小田急電鉄としての「悲願」が、会社発足から70年にして達成されることも間違いない。社内外へ向けてもっとアピールして箱根への旅客を誘致し、かつ社員を鼓舞する材料としてもよいと思う。

「落合陽一×鈴木えみ」が魅せる、現代の東京と服

「落合陽一×鈴木えみ」が魅せる、現代の東京と服

2018.10.19

落合陽一と鈴木えみがコラボ、インスタレーションを実施

東京の街を切り取った光で、”日常”の中の服を演出

「ランウェイを歩くより、恰好いい」と演出に好感触

モデルの鈴木えみ氏がデザインするオリジナル服飾ブランド「Lautashi(ラウタシー)」は10月18日、「Amazon Fashion Week TOKYO」のスペシャルプログラム”AT TOKYO”にて、2019年初夏コレクションをインスタレーション形式(作品の展示方法の1つ)で発表した。

メディアアーティストの落合陽一氏が演出を担当することで注目を集めたこのイベント。開催に先立って行われたインタビューで落合氏は、「『光』にフォーカスした演出を行います。”日本らしいものは出てこないけど、なぜか日本を感じてしまう”演出に注目して欲しい」と話していた。

その発言の意味するところを実感してみようと、会場を実際に取材することにした。

東京の日常の中の”服”を演出したい

イベント会場に入ると、暗闇の中にLautashiの新作に身を包んだモデル達が後ろを向いて立っていた。

「工業社会っぽいが、それが自然に溶け込んできている風景」を演出に組み込んだという落合氏。独特の光を用いた演出に加え、会場そのものの選択にもこだわったようだ

インスタレーションが始まると、モデルが振り返り、”東京の日常に溢れる音”をイメージしたという、騒がしく、どこか聞き慣れた音が鳴り始める。その後、天井や壁、モデルの合間に設置されたいくつものLED照明がさまざまに光り出す。そして、その色を青、赤、灰色と複雑に変化させ、照らす服の印象を次々に変えていく。

光の変化で、服の見え方も変わってくる
インスタレーションが始まり数分経つと、「是非自由に見て回ってください」との場内アナウンスが。モデルの間を自由に歩き回り、服を間近で見ることができた

僕らの日常とは、松屋やセブンイレブンの光

今回のインスタレーションを終え、鈴木、落合の両氏は以下のように語る。

「ファッションショーや雑誌って、服を完璧な照明や状態で見せることが多いんです。でも、日常にはさまざまな光が溢れています。今回のように、服をいくつもの照明条件で見せることで、”日常感”を感じさせられるような演出にしました。来場者が期待以上にモデルに近づいてくれて良かったです」(鈴木氏)

「光の演出には、日常に溢れるさまざまな光景を使っています。例えば、松屋やセブンイレブン、車のヘッドライトなどをあえてぼかして撮影して、(その画像をLEDで映し光源とすることで、街の光を再現した)照明に使っているんです。それらは普段、意識しないと目にも止めないようなものですが、そういうものから出る光が、たとえ人工的であっても、現代においては”自然”な存在となっています。私たちは普段、そういう照明条件で服を着ますよね」(落合氏)

左から、アマゾンジャパン バイスプレジデント ファッション事業部門 統括事業本部長のジェームズ・ピーターズ氏、メディアアーティストの落合陽一氏、モデル・デザイナーの鈴木えみ氏、サウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏

イベントの音楽を担当したサウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATIC氏は、街でサンプリングした音と会場での音を組み合わせることで、こちらも「どこか日本らしい」音楽でインスタレーションを彩っている。

Amazon Fashionを擁するアマゾンからは、日本でバイスプレジデントを務めるジェームズ・ピーターズ氏が来場。「消費者と非常に近い距離で服を見せられる。非常に素晴らしい演出だった」と、感銘を受けたことを語っていた。

落合氏の「なぜか日本を感じてしまう演出」という言葉通り、ありふれているようで、これまでにない体験を得られるインスタレーションとなったのではないだろうか。

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

2018.10.19

5Gの実装が1年前倒しされることに

「CEATECH」で5G技術を体験してきた

恐竜ハントや建機の遠隔操作などの技術を紹介

「5Gで世の中が大きく変わる」とは、ここ数年で聞き飽きた言葉だ。同時に、変わる未来に期待を持たされるのも確かである。

5Gとは第5世代移動通信システムの略。あらゆる物がインターネットに繋がるようになったIoT時代をさらに次の次元へと導く技術であり、世界中で研究開発が進められている。もっとも身近な存在であるスマホはもちろん、遠隔医療や自動運転などへの活用も期待されている。

さまざまな業界から社会実装が待ち望まれる5Gであるが、数年前から語られていた「2020年の実用化」を目前にして、「実用化を1年前倒しする」との報道がなされた。まず大手キャリア3社は、5G対応端末の貸与で限定的なサービスを開始し、2020年からユーザー所有のスマートフォンで使えるようにするとのことだ。

では具体的に、5Gの登場によって世の中がどう変わるのか? 2018年10月16日~19日にかけて千葉県・幕張メッセにて開催されている「CEATEC JAPAN 2018」における携帯キャリア各社の展示から、変わる未来の一部を覗いてきた。

例えば、無人島で恐竜を狩れる

まずはauのブースから紹介する。ブース内でもっとも目を引いたのは、森をモチーフにした大きな展示とそこに吊るされた大きなモニター、そして何やら楽し気にしている高校生。気になって近づいてみると、なぜか大きな銃を手渡された。

ブースに入ると、大きな銃を渡された

「CEATEC会場内に恐竜が侵入しました…! おちおちブース見学なんてしてられませんよ!」(auブースの説明員)

ただならぬ緊張感が漂うauブース……。もちろんブース内に恐竜なんていない。銃をよく見てみるとそこにはスマホが搭載されており、『ジュラシックアイランド』という表記が。

スマホを覗くと『ジュラシックアイランド』と表示されている

数秒経つと、スマホがカメラモードに切り替わり、恐竜の足跡が表示された。その足跡を辿って銃先を向けると、スマホ越しにCEATEC会場を歩き回るティラノサウルスを見つけた。

登場したティラノサウルス(のイメージ)。筆者が片手で銃を持ち、画面を撮影していたところ「銃は重いので両手で持ってください」と注意されたので、実際のプレイ画像は撮れなかった

実はコレ、長崎のハウステンボスですでに実装されているもので、一世を風靡した『Pokemon Go』よろしく、AR技術を用いて現実世界で遊ぶことのできるゲームだ。

現状、このアトラクションは4Gにて提供されているそうだが、5Gを使用することで、より多くの人数でプレイができたり、恐竜の出現位置を共通化させたりできるようになるそう。筆者が体験したのも4Gを用いたものであったが、ティラノサウルスのほか、『ジュラシック・ワールド』で活躍したヴェロキラプトルなども登場して、思いのほか楽しめた。

「5Gによって大量のデータを迅速に端末に送信できるようになれば、従来モバイル側で行っていたデータ処理を、クラウド側で担当し、それをモバイルに送信することができるようになります。現在はハウステンボス内の特定のエリアにいるユーザーがプレイできるこのゲームですが、この技術を応用することで、将来的には遠隔地にいる人同士でも同じ恐竜を狩ることができるようになるでしょう」(技術説明員)

例えば、空を飛べる

次に目を引いたのは、大きな半球体のスクリーンに映された綺麗な映像だった。

「半球体スクリーンによる非日常体験」と題された展示。auブース内でもっとも行列が長かったのがこの展示だった

これは、エアレースやドローン、もしくはSUPER GTのマシンで撮った映像を、リアルタイムでスクリーンに映して体験できるというもの。ブースで実際に使用されていたのはすでに撮影された映像であったが、それでも雄大な映像を見ながらまるで自分が飛んでいるかのような体験ができるため、多くの人たちが並んでいた。

例えば、建機を遠隔地から動かせる

次はKDDIブースへ移動。こちらでは、同社がコマツと共同実験を進めている「5G活用による建設機械の遠隔制御」などの展示が行われている。

少子高齢化が進み、かつ職種が徐々に増えている今、人手不足に悩まされる業界は多い。建設業界もその1つであり、その問題を解決しようと開発されているのが同システムである。

遠隔操作コクピット。実際の建機と同じような操縦感で操作することが可能
遠隔で動く建機側で撮った映像を、リアルタイムで確認することができる

「これによって、例えば東京にいる建機の操縦者が、地方の建機を動かせるようになります。建機を操縦するタイミングは、ほかの工程との兼ね合いによって決まるため、デッドタイムが多いという問題がありました。しかし、このシステムを用いることによって、人が1カ所に留まりながら複数の場所で建機を動かせるようになります」(技術説明員)

ほかにもau、NTTドコモブースでは、好きな場所からスポーツを観戦できるシステムや、遠隔でのロボット操縦を実現するシステムなど、数多くの展示を行っており、そのどれもがどこか未来を感じさせるようなものであった。

5G実装まで1年

CEATECでは、紹介した2ブースのほかにも多くの企業が5Gに向けた取り組みを展示していた。それらを見ていると、「5Gで何ができる?」という疑問に対して「なんでもできる」と解答したくなるほど、どの技術も、仕事や日常生活がより便利に、より楽しくなりそう、と思えるものばかりであった。

なお、NTTドコモはラグビーワールドカップが開幕する2019年9月に「プレサービス」を始め、2020年春から「商用サービス」をスタートする予定だとしている。つまり、5Gの実装まで残り1年を切ったこととなる。

CEATECで体験したいくつもの技術が社会実装される日は近い。5Gという、どこか未来的な技術の足音が、もうすぐそこまで迫ってきている。