コーポレートガバナンス・コードってなんですか?

コーポレートガバナンス・コードってなんですか?

2017.11.22

「コーポレートガバナンス・コード」をご存知だろうか。上場企業が守るべき行動規範のことで、日本は先進国でも後発、2015年に東京証券取引所が取りまとめた

行動規範と言われてもいまいちピンとこないが、「企業の取締役会が透明性を保ちつつ、迅速に、正しく意思決定できているか判断する基準」といったものだ。上場企業が透明性を求められることは当然のことだが、その立ちふるまいをどう考えるべきか、いまいち知られていない。

これは、外部から見ての印象だけでなく、とうの取締役会の役員も理解していないケースが多いという。コーポレート・ガバナンスのトレーニングやエグゼクティブの採用などを手がける米ラッセル・レイノルズ ニューヨークオフィスマネージング・ディレクターのJack “Rusty” O'KelleyIII氏に話を聞いた。

米ラッセル・レイノルズ ニューヨークオフィスマネージング・ディレクター Jack “Rusty” O'KelleyIII氏

行動規範を第三者視点で評価

コーポレートガバナンス・コードは、あくまで「指針」であり、これを第三者機関より評価されて初めて機能する。その立場にあるのがラッセル・レイノルズだ。内部評価は1年に1回、外部評価は3年に1度が「(先行して導入していた)イギリスでは推奨されている」(O'Kelley氏)という。

コードの基本原則は5つ。

  • 株主の権利・平等性の確保

  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

  • 適切な情報開示と透明性の確保

  • 取締役会等の責務

  • 株主との対話

特に、日本市場ではこれまで、株主に対する説明責任を軽んじる傾向があったとラッセル・レイノルズではみる。同族企業や株主の持ち合いが比較的多い日本では、株式市場で企業価値の評価を受けるという意識が低く、取締役会の機能不全に陥りがちだという。

実は、東京証券取引所がガバナンス・コードを制定してからもこの傾向は少なからず見て取れる。ラッセル・レイノルズの調べによれば、取締役会の実効性評価を行った企業はおよそ8割程度とみられるが、ラッセル・レイノルズなど第三者機関による外部評価は1/3程度にとどまる見込みだという。

「取締役会が機能しているかどうかを外部から判断するのは透明性の確保という意味でも重要。例えば、同族企業の持ち合いで多くを占めているある企業を評価した例では、1年間でかなり効果が上がったという内部評価にも繋がった。同族企業は特に、内部、外部ともに評価を受けるという判断自体が一般的な企業と比較してインパクトがある。外部評価は『ベストプラクティス』を見られるいい機会、ということを意識してもらいたい」(O'Kelley氏)

基本原則から見て取れるように、取締役会の評価は必ずしも業績の結果というわけではない。役員の自己評価アンケートやインタビュー、業界ベンチマーク比較など、定量的、定性的な評価の両面で見られることになる。

「スチュワードシップ・コードが機関投資家の行動規範であるのに対し、コーポレートガバナンス・コードは企業の行動規範。つまり、外部から『この企業は第三者機関から評定される体制作りを行っている』と認識されることで、中長期的に企業価値の向上にも繋がる」(O'Kelley氏)

ただ、ガバナンス・コードはあくまで「規範」であり、一律の評価軸が存在するわけではない。そのため、企業それぞれの経営課題、業界環境などにあわせ、インタビューやアンケート項目が作られる。ラッセル・レイノルズの例では、「企業戦略」や「取締役会の構造及び運営方法」「取締役メンバーと構成」「取締役会カルチャー」といった主な要件で70の質問項目を用意する。

質問の内容は、取締役会のメンバーがしっかり協力できているのか、サクセションプランが制定されているのか、取締役会におけるアジェンダが適切なのか、取締役と経営陣の意思疎通が出来ているのかなど多岐にわたる。

「我々は、日本だけでなく世界の同業他社とのベンチマークがある。機関投資家のレビューシートや取締役、経営陣のインタビューなど、細かい内容のニュアンスの違いも把握して、それぞれのクライアントの強み、弱みを捉えることが大切だ」(O'Kelley氏)

ラッセル・レイノルズによる外部評価は、評価プロセスの明確化とそのレポーティングの結果として改善案も含めて一貫して伝える。「(インタビュー前夜に会った)ある上場企業の取締役会議長は、評価プロセスを高評価していた。『単なるアンケートのチェックボックスだけでなく、直面するビジネス課題に対して何をすべきなのかを考える上で、サーベイ以上の結果をもたらした』と喜んでいた」(O'Kelley氏)

取締役会は近年、社外取締役を取り入れることで透明性を担保する事例が増えてきた。こうした外部評価のあり方は、一面的ではなく多面的な企業の信用度、評価へとつながっていくとO'Kelley氏は強調する。

「特に日本企業は、機関投資家に対する見解を変える必要がある。彼らは、取締役会に対して株主への説明責任をより求めるようになる。長期的なコミットメントを支持しないとなれば、取締役会は責任が重くのしかかる。だからこそ、投資家のマインドをよく理解した取締役会になっているのか、CEOが策定した経営計画に対して役割を果たせているのか、企業のダイバーシティが保たれているのかなど、時代に合わせた取締役会のあり方を考えなくてはならない」(O'Kelley氏)

世界のベストプラクティスがあるからこそ作れる「取締役会の評価」

インタビューの最後に、改めてO'Kelley氏にコーポレートガバナンス・コードの重要性について尋ねると、単なる外部評価だけではない3つのポイントを挙げた。

  • 株主に変わって経営・監視するグループの設置
  • 執行役側に立った、洞察やガイダンスの提供
  • CEOに対する監督

取締役会はCEOの選任や、場合によっては解雇するものだ。その大きな役割を果たすためには、正しい評価基準を、時代に沿った形で行使できる取締役会でなくてはならない。その基準の「ベストプラクティス」を作り上げているのがラッセル・レイノルズだ。

「社外取締役を含め、『自分たちが会社に貢献している』『変化を起こしている』という実感を得られるようにするのが、私たちの率直な洞察(インサイト)だ。世界中のベストプラクティスをもって、機関投資家がどのように企業を見ているのか、取締役会に向けて提供できるのが我々の強みだ」(O'Kelley氏)

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる