auのホームIoT、月額490円は妥当か

auのホームIoT、月額490円は妥当か

2017.11.24

KDDIは11月21日、同社のホームIoTサービス「au HOME」を拡充した。スマートスピーカーの市場投入により、一気に身近になったホームIoTだが、キャリアがサービスを提供する狙いはどこにあるのだろうか。

サービスを拡充し利用対象者を拡大

「au HOME」はauが7月に提供を開始した、月額490円のホームIoTサービスだ。auが販売するホームIoT機器をau HOMEアプリで一括管理・制御できるほか、セコムの駆けつけサービスに無料で加入できるといった特徴がある。

新製品を含むau HOME対応機器。「赤外線リモコン01」と「スマートプラグ01」が「家電コントロールセット」を、「ネットワークカメラ01」と「マルチセンサー01」が「みまもりセット」を構成。その他「開閉センサー01」、「鍵 開閉状況センサー」、「マルチセンサー02」からなる

au HOME対応機器は900MHz帯の電波を使う無線通信規格「Z-Wave」を使って接続する。これまでZ-Wave方式の無線通信アダプターはUSBドングル形式で提供されていたのだが、このドングルに対応しているのがauひかり用のルーターだけで、他社製のルーターには非対応だった。このため、これまでは「auひかり」契約者にのみ提供されてきたのだが、今回一般的なWi-Fiルーター用の「無線通信アダプターA」や、LTEフォトストレージデバイス「Qua Station」でも利用できるようになり、auひかりユーザー以外にも門戸が開かれたかたちだ。

トライグルの「トリセツ」から取説閲覧機能を抜粋したものが搭載される。また消耗品購入はauが運営する「Wowma!」経由になる模様

今回の発表では、前述のように「auひかり」以外でも利用できるようにしたほか、Googleの「Google Home」との連携も実現した。これにより、Google Homeと接続できるホームIoT機器も制御できるようになるほか、音声による制御が可能になっている。

また、来年春をめどに、「au HOME」アプリ内で家電の取扱説明書を検索・閲覧できるサービスが実装される予定。これは株式会社トライグルの「トリセツ」と連携したもので、消耗品をオンラインで購入できるようにもするという。これはau HOME非対応の機器の取説も利用できるとのことなので、実現すれば確かに便利さを感じられそうだ。

キャリアがホームIoTに注力する理由は

スマートスピーカーの市場投入で一気に加熱し始めたホームIoT市場だが、これまでビジネス向けのIoTに注力してきていたキャリアも、ここにきてホームIoTへの動きを活性化している。

NTTドコモは、ホームIoT向けにIoT機器同士を一元管理・操作できる「デバイスWeb API」技術を開発し、実証実験「未来の家プロジェクト」を横浜市で実施中だ。またソフトバンクは2016年3月より「Softbank Innovation Program」の結果として、スマートホーム領域でリノべる、KAMARQ HOLDINGS、アッサアフロイジャパンらと共同でテストマーケティングを実施している。

とはいえ両社とも、まだ本格的な活動とは言い難い。こと家庭向けに関していえば、KDDIはこれら2社と比べ、一歩か二歩先んじている状況だ。それではなぜ、キャリアがホームIoT市場を狙うのだろうか。

その理由として考えられるのが、ひとつが家庭内での個人の行動パターンなどのビッグデータ取得、もうひとつがユーザーの契約長期化効果だ。特にセキュリティ関連は自宅の安全と紐づけられるので、データを入手するにせよ、契約を長引かせるにせよ、大きく役立ってくれる。

ただし現状、au HOME対応製品はある程度の行動データを入手できるものの、そこに接続されたGoogle Homeやその先のデータまでは入手できない。こうしたデータはGoogleにとっても宝の山であり、簡単に他社に渡すつもりはないだろう。ということは、au HOMEはその対応機器が大きく増えるのでない限り、ARPUを増やしユーザーの解約率を減らすための施策の一つというのが主たる目的だと言えるだろう。

月額490円は妥当なのか?

au HOMEは月額490円のサービスだが、たとえばGoogle Homeが提供する音声アシスタントや対応機器との連動は、別にau HOMEに加入していなくても誰でも無料で利用できる部分だ。iOSであればHomeKitに対応していれば、「ホーム」アプリで対応するIoT機器を一元管理できるし、音声アシスタント「Siri」や、ジオフェンスなどの条件を使ったコントロールも可能だ。多少ITリテラシーの高いユーザーであれば、「わざわざ490円も払わなくてもいいよ」と思うだろう。

実際のところ、au自身が「いつもの暮らし、ちょっと便利に」というキャッチコピーを付けているように、au HOME対応機器だけでできることはかなり限られている。たとえば現状、外から鍵の開閉はチェックできても、鍵を閉めるのは家に戻って自分でロックしなければならないのだ(Google Homeと対応機器を使えば可能)。これでは「ちょっと便利」というには少々厳しい。

ユーザーから見た場合、au HOMEの価値は「対応機器を一箇所で、遠隔地からでも統合管理できる」「セコムと連動したセキュリティ機能を利用できること」「取扱説明書をアプリ上で確認できる」に集約されるだろう。リテラシーの低いユーザーにとっては訪問設置サポートなども心強いサービスではあるだろう。このうち対応機器の管理と取説の確認はau HOMEだけの特権ではないので、ほとんどセコムの契約料+サポート料金に等しい。

発表会場に展示されていた、将来のau HOME対応機器とみられるホームIoT製品。現在のau HOME製品の弱い部分が補完されているラインナップだ

個人的に提言したいのは、au HOME対応製品をもっと増やすことと、それらを販売ではなくリース契約にして、もっと大きなパッケージとして提供することだ。ホームIoT製品は市場が立ち上がったばかりなので、次々に新製品が登場してくるだろうし、常時作動しているという特性上、故障なども心配だ。リース契約として故障品は無償または安価に交換でき、新製品への交換も可能、セキュリティ系の機器は1台だけでなく数台をパックにできる、といった形で、月額1980円くらいのプランを用意できれば、料金的にもお得感が出るし、使ってみたいという人は増えるのではないだろうか。

ホームIoT市場は、AIやロボットといった要素も入り混じり、これから本格的な競争が始まる激戦区だ。インターネットへの回線を握っているキャリアがそこで一定の立ち位置を得ること自体は難しいことではないし、ライバルに先んじて市場に参入したKDDIはかなり有利だと思われるが、同時に厳しいユーザーの目に叶うためには、囲い込みをするならするで、納得してもらえるようなお得さを打ち出していかねば、すぐに見限られてしまうだろう。GoogleやAmazonといった巨人たちに飲み込まれてしまわないよう、日本のユーザーに響く施策を打ち出せるのか、興味深く見守りたい。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。