アルコールがないのに「若者のアルコール離れ」に挑戦するコカ・コーラ

アルコールがないのに「若者のアルコール離れ」に挑戦するコカ・コーラ

2017.11.28

「若者のアルコール離れ」というキーワードはよく聞くが、実際はどうなのだろうか。NPD JAPANが2016年12月にまとめた調査結果によれば、居酒屋は8期連続で客数が減少しており、6年で店舗数も約1割減、年間売上も1店舗あたりで平均120万円減少しているという。

結果としての「アルコール離れ」はある一方で、飲食店情報を提供する「ぐるなび」の調査によれば「お酒がどの程度好き?」という質問に対し、20代が72%、30代も73.8%が「好き」「まあ好き」と回答している。40代が74.0%、50代は77.6%と、若年層よりも確かに「酒好き」の傾向はあるものの、そう大差ないというのが実情と言える。

飲酒が嫌いなわけではない若年層

客と店、需要と供給のミスマッチ

ではなぜ、若者は居酒屋で酒を飲まないのか。

同じぐるなびの調査で「外食時のアルコールドリンクに対する不満」という質問に対し、「お酒の種類が少ない」「好きな銘柄のお酒が少ない」「料理に合うお酒が少ない」という回答が上位を占めた。これは、店側の論理と顧客側のニーズに格差があると、ぐるなび プロモーション部門 グループ長の高橋 俊也氏は説明する。

例えば同じアンケートの中で明らかになった「顧客が飲みたいドリンク」は、上位から「ビール類(78.0%)」と「焼酎(37.5%)」「ウーロン茶(35.7%)」「日本酒(31.6%)」「ワイン(31.1%)」「チューハイ・サワー類(30.5%)」「ハイボール類(19.7%)」「カクテル類(17.0%)」と続く。

一方で飲食店が販売したいドリンクは「ワイン(31.2%)」「日本酒(28.8%)」が2強と飛び抜けており、「ビール類(22.6%)」「ハイボール類(16.4%)」が続く。来店客が望むビールや焼酎、チューハイ・サワーは居酒屋からすれば「眼中にない」というのが実情だ。

顧客の需要は「ロングテール」だが、供給側は売れ線を決める。これが需給のミスマッチに繋がる

この需要と供給のミスマッチが冒頭の「若者のアルコール離れ」、ひいては"居酒屋 冬の時代"へと繋がるわけだが、この課題に対して解決策を用意したのがコカ・コーラとぐるなびだ。

ぐるなびとコカ・コーラがタッグ

両社は「ビバレージマネジメント」のプログラムを提供する。これは、日本コカ・コーラのソフトドリンクを活用したミックスドリンクのメニューを飲食店に提案するもので、ぐるなびの飲食店向けセミナー、メディアを活用する。

ドリンクメニューの提案やプロモーション素材の提供などをコカ・コーラが行う

ミックスドリンクは、チューハイ・サワー類などに代表されるアルコールドリンクとソフトドリンクを組み合わせた飲料で、飲食店にとっては利益率の改善に繋がる"救いの手"だ。飲食店側のみならず、「お酒の種類が少ない」という顧客側の不満の解消にも繋がるため、双方にメリットがある。

日本コカ・コーラ コマーシャルリーダーシップ 料飲ショッパーマーケティング グループマネジャーのイアン・ハフ氏は、「若年層はメニューの魅力の乏しさ、中高年はそもそも飲酒量が減り、飲酒機会も減少する。そうした状況では客単価が下がるのに原価率が高くなる悪循環に陥る。ミックスドリンクによって利益率が改善されるだけでなく、低アルコールのニーズも喚起できる」とそのメリットを強調する。

ぐるなび プロモーション部門 グループ長 高橋 俊也氏
日本コカ・コーラ コマーシャルリーダーシップ 料飲ショッパーマーケティング グループマネジャー イアン・ハフ氏

例えば、ビールの原価率は31%、ワインも30%と3割近くあるのに対し、チューハイやカクテルなどのミックスドリンクはそれぞれ9%、11%にとどまる。「とりあえずビール」の1杯目が原価率3割で仕方ないにせよ、2杯目以降にも同じ調子で飲まれていては飲み放題が成立しない。

ビールやワインのミックスドリンクを簡単に提供できるようになれば、そうした店の悩みを解決できるというのが両社の読みだ。コカ・コーラの試算では、ビール・カクテルは原価率22%、ワインカクテルも21%と、チューハイ・カクテルほどではないものの、10%ほど原価率の改善に繋がるといい、居酒屋業態の平均1日客数50名の想定で年間30万円の利益が生み出せるようになるという。

原価率はビールやワインが高め
製品ミックスの改善で平均的な店舗であれば利益が実額で30万円上がる見込みだという

ハフ氏はまた、「インバウンド需要」と「割り勘負け」もキーワードに挙げる。

焼酎や日本酒を飲むことは訪日外国人の目的の一つとなっているものの、いずれも度数がそれなりに高く、万人に受け入れられるわけではない。そこでソフトドリンクと掛け合わせて口当たりを良くすることで、「ミックスドリンクが(日本の)食文化を知るきっかけになる」(ハフ氏)と話す。

また、2015年頃からイギリスを中心に流行しているモクテル(モック+カクテル、ノンアルコールカクテルのこと)を参考に、ソフトドリンクの力を最大限に活かす戦略によって、高単価商品のラインナップを増やせる魅力をアピール。「これまでアルコールが得意でない人たちはウーロン茶を無理に何杯も飲んでいたはず(笑)。みんなが楽しめる場になることは大きい」(ハフ氏)と話した。

ぐるなびとの協力では、「一日最大1万店舗と直接コミュニケーションしている」(ぐるなび・高橋氏)という接点を最大限に利用。すでにミックスドリンクメニューの試験導入を全国100店舗で進め、モニタリングしてきた。その成功事例は、月間8万部の「ぐるなび通信」で加盟店舗に発信するほか、「ぐるなび戦略共有会議」でセミナーも実施する。

ぐるなび側のメリットが薄いようにも見えるこの取り組みだが、同社の高橋氏は「Web集客をはじめ店舗をサポートしてきた中で、収益改善も重要な使命。その一つの手段としてビバレージマネジメントを提案することで、継続的に収益を上げてもらい、長くお付き合いできれば」と話す。

コカ・コーラはプログラムを通じ、飲食店60万店舗(同社推計)のうち、"非コカ・コーラ"の30万店舗を狙うという。ハフ氏は「既存店の底上げも考えている」と話すが、アルコール飲料を持たない同社の売上のうち、外食産業向けが占める割合は約1割に過ぎない。「アルコール離れ」を"非アルコール"のコカ・コーラが止め、売り上げも「居酒屋離れ」から脱却できるか。ハフ氏は一つの鍵に地方の商品メニュー開発を挙げた。

「コカ・コーラは地域密着のボトラーが17社ある。コカ・コーラを背負いながらも地域密着型で地元に根付いた企業だ。松山市と協力し、松山城のお祭りでブース出展し、みかんカクテルのモクテルを出したところ好評だった。こうした地産物の組み合わせによって、誰もがミックスドリンクを楽しめる環境が作れると思う」(ハフ氏)

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu