車種展開、全固体電池、充電設備…トヨタが語ったクルマの電動化

車種展開、全固体電池、充電設備…トヨタが語ったクルマの電動化

2017.11.29

トヨタ自動車は27日、クルマの電動化技術に関する報道向けの説明会を都内で開催した。展示されたのは、20周年を迎えたハイブリッド車(HV)「プリウス」でトヨタが培ってきた技術の数々。モーターやインバーターなど、HVのコア技術は多くが電気自動車(EV)にも転用可能とのことなので、同社が保有する技術や工夫は、今後のEV開発にもフル活用されるのだろう。

説明会の会場となった「MEGA WEB ライドスタジオ」(江東区)にはトヨタの電動車両が集結した

ハイブリッドで1,000万台の実績、電動車両は全方位で

すでにトヨタは、多様な電動車両をラインアップしている自動車メーカーだ。累計1,000万台以上を販売したHVはもちろんのこと、外部からの充電が可能なプラグインハイブリッド車(PHV)の「プリウスPHV」や、水素で発電して走る燃料電池自動車(FCV)「ミライ」といった商品も展開している。EVについては海外勢に比べ遅れているとも言われる同社だが、これまでに「RAV4 EV」や「eQ」などの商品を手掛けてきた経緯があるし、今後は中国やインドなどにも商品を投入していくとのことだ。

会場には「eQ」も展示された

では、トヨタにとって何が次世代エコカーの主力となるのか。説明会に登壇したトヨタ常務理事の安部静生氏は「それを決めるのはユーザー」(以下、発言は安部氏)とし、需要のあるカテゴリーに顧客の望む方式の電動車両を用意していく姿勢を鮮明にした。

基本的には全方位の開発を続けていくのがトヨタのビジネスだ。ただし、「規制の動向次第で、規制にミートする環境性能をどのクルマで実現できるかという観点でいえば、エンジンだけで走るクルマが今後、つらくなるのは間違いない。HVでも環境性能が足りなくなる時代がくるかもしれない」とも安部氏は付け加えた。

トヨタの安部静生常務理事

さて、気になるEVについてのトヨタの考え方だが、安部氏は航続距離400キロの日産自動車「リーフ」が登場するなど、“普通のクルマ”になりつつあると言われるEVの現状については「まだまだ足りない」と指摘した。これは単純に航続距離の長短を語った言葉ではなく、使い勝手に向上の余地があるという話だ。

充電問題解決に2つの方向性

では、何が足りないのか。ガソリンで走るエンジン車であれば、車種にもよるが500~600キロを走るエネルギーを3分で充填(給油)できるが、EVの充電時間は設備によって10時間を超えたり、急速充電でも数十分を要するのが一般的だ。このエネルギー充填に関する問題が、EV普及の課題になっていると安部氏は指摘する。こういった課題を踏まえトヨタは、EVは現時点で、充電時間が短くて済むよう小さい電池を搭載し、通勤など近距離の移動に使う領域に向いているとの見方を示す。

充電の問題についてトヨタは、解決に向けた技術を「鋭意、開発中」とのこと。充電問題を解決するには「2つの方向性」があるという。

PHVやEVの普及に向け、充電の利便性向上が重要となる(画像は「プリウスPHV」)

まず1つ目の方向性は、充電に「ガソリンスタンドと同等の利便性」を持たせること。つまり、既存の充電設備を進化させて、多くの電力を素早くクルマに充電できるようにしていく道だ。しかし、この方向で進んでも給油にはスピードで「歯が立たない」し、充電時に損失するエネルギーの量も大きくなるそうなので、こちらの手法はあくまで非常用との位置づけだ。

充電問題解決に向けた2つ目の方向性として安部氏は、クルマが「止まっている時間をいかに活用するか」という視点を提示した。1日のほとんどを持ち主の自宅や職場などで止まった状態で過ごすクルマだが、この駐車の時間をフルに充電にあてることをシステマティックに考えるのが課題解決の道だというのだ。安部氏によると、この充電システムを確立できれば「どんどん(設置コストが)高い充電インフラを作るより、よほど効率的にEVを運用できると試算」しているとのことだった。

クルマが止まっている時間を充電に有効活用する道を探るトヨタ(画像は初代「プリウス」のカットモデル)

説明会では、トヨタのEVに関する取り組みで最近、話題を集めた2つのトピックについても語られた。それは「全固体電池」と「EV開発合弁会社」に関する話だ。

バッテリーの製造で幅広い協業も視野

リチウムイオン電池よりエネルギー密度が高く、可燃性の液体が漏れ出す心配がないため安全性も高い「全固体電池」は、トヨタが以前から研究してきた次世代の蓄電池だ。

全固体電池について安部氏は、「先日の東京モーターショーで副社長(ディディエ・ルロワ氏)からも話があったが、2020年代前半には全固体電池を搭載したEVを出したい」との考えを示した。全固体電池は安全性が高いので、冷却装置や電池の監視ユニットなど、安全性のためのデバイスを「よりリーンにできる(無駄を省ける)可能性」があり、そのポテンシャルにも期待を寄せているそうだ。製造を含め課題が多いのも事実らしいが、トヨタとしては前向きに開発を進めているとのことだった。

東京モーターショー2017年でスピーチしたトヨタのディディエ・ルロワ副社長

EVで使うバッテリーについて安部氏は、電池は典型的な装置産業だと指摘した上で、トヨタ単独あるいはグループ内で内製化するのではなく、もう少し広い協業が必要になるのでは、との考えも示していた。

単独開発はビジネス的に厳しいEV

EV開発に向けマツダおよびデンソーと設立した合弁会社「EV C.A. Spirit」については、マツダのクルマづくりを特徴づける「コモンアーキテクチャー」という手法に学びたいという考えを示す。これは、数年先までのクルマを「一括企画」するマツダが採用するクルマづくりの手法だ。安部氏はトヨタ単独でEVを開発しても「ビジネス的に厳しい」と認めた上で、この悩みは各メーカーに共通するとし、その問題を乗り越えるべく協業を進めているとした。

この合弁でトヨタが果たす役割は、HV開発などで培った技術の提供だと考えられるが、安部氏は同社で開発する実際のEVについては企画も出ていないし、どんなユニットをどこで作るかについても現時点で白紙として、多くを語らなかった。

2017年8月に資本提携を発表したトヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長

今回の説明会で感じたのは、HVで蓄積した技術を核に、電動化が進む世界でも全方位の姿勢を貫いて存在感を示そうとするトヨタの思いだった。実のところトヨタは、2016年にHVを含む電動車両市場でシェア43%を獲得(トヨタ調べ)した一大勢力でもある。あくまで顧客本位を基本としつつ、今後は充電システムの革新、電池の革新、さらなる協業拡大などを通じ、電動車両の普及をさらに推進していきたいというのがトヨタの考えだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu