KDDIがスマートドローン事業の先に描く物流の未来

KDDIがスマートドローン事業の先に描く物流の未来

2017.11.30

KDDIは11月29日、記者会見を開催し、同社のモバイル通信ネットワークを利用したドローン事業における新たな提携や実証実験の開始などを発表した。様々な企業がドローン事業に参入する中、KDDIが持つ強みや、それを踏まえた将来図はどのようなものだろうか。

世界初の完全自律飛行実験に成功

KDDIは同社のモバイル通信ネットワークとドローンを活用する「スマートドローン構想」を掲げている。これまでに通信モジュール関連でクアルコムと、ドローンのハードウェア面ではプロドローン、3Dマップではゼンリンと提携しており、今年3月には運航管理システムの分野でテラドローンと提携。KDDIがスマートドローンプラットフォームと呼ぶシステムの第一期開発完了を宣言していた。

KDDIの山本泰常務が登壇し説明。第一期で完成したシステムでは、4Gで接続されたドローンが3D地図を元に運航管理システムのもと自律飛行を行い、ドローンから得られた諸データがクラウドに蓄積・分析されるという流れになる

4月にはLTEによる完全自律飛行実験に成功しており、NEDOが実施する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、ドローン警備のプロジェクトが採択されている。また、10月にはこのシステムを元に、損害保険やトレーニング、操縦代行、運用サービスなどを含めたドローンパッケージの提供も開始している。

そして最新の成果として、新潟県長岡市・山古志において、モバイル通信ネットワークと3D地図を活用した完全自律飛行に、世界で初めて成功したことを明らかにした。

山古志は錦鯉発祥の地としても知られているが、養殖は山の上の棚池で行われている。そこで今回の実験では、4G LTEネットワークで繋がったドローンがドローンポートから発進し、3D地図を使って棚池に薬剤を散布して再びドローンポートに戻るという、総距離約6.3km、高低差約100mのルートを設定。無事に完全自律飛行に成功したということだ。

3D地図上で高度データを含めた航路をマッピングし、そのデータを元に自律飛行を行う。AIによる自律制御が話題だが、実はまだ実用段階にあるものは世界的にもほとんどないのだという
ドローンポートの画像,実験に使われたドローンポートの実物。金色の部分は約1cmのメッシュになっており、それぞれ+極と?極が割り当てられている
ドローン側には小さな「足」があり、ここがメッシュに触れると充電される仕組み。非接触式充電も可能だが、充電時間などの問題から今回は接触充電を採用したという。スペック的には最大電流は20Aまで出せるとのこと

今回の実験は、スマートドローンが長距離の自律飛行に向けて必要な3D地図による飛行高度の設定と、ドローンポートによる自動充電であり、これらを併用することで安全な長距離自律飛行が可能なことを証明するものとなった。充電時間など問題はまだまだ多いが、100kmを超えるような長距離飛行も現実味を帯びてきたといえるだろう。

ウェザーニューズと新たに提携

順調に進化を続けているKDDIのドローンだが、今回新たにウェザーニューズと提携することで、気象情報を運航管理に加えることができるようになった。ウェザーニューズが持つ天候情報や突風警報などを元に運航管理システムがルートの変更や避難指示などを出せるようになり、より安全な運航が可能になる。

スマートドローンプラットフォームの第二期としてウェザーニューズとの提携が発表された

ウェザーニューズはこれまでも全国のau基地局3000局に気象観測装置を設置した「ソラテナ」システムを構築しており、気象庁よりも細かな単位での気象予測を可能にしている。今後はこうした観測装置をさらに小型化して設置を増やしつつ、リアルタイムな天候情報をドローンに提供して自律飛行のサポートを行うという。

ウェザーニューズは都市部において路面の温度を計測し、それを元にビル街での乱気流が発生するシミュレートなどを行なっており、こうしたデータは都市部における自律飛行では必ず必要なものになる。また、ドローン自体を観測装置と見なせば、観測網ネットワークをより精度の高いものにできるなど、相互効果が大きい。気象情報はドローンの運航に際して非常に大きな要素となるため、国内有数の天候観測能力を持つウェザーニューズとの提携は大きなアドバンテージになるだろう。

都市部での乱気流データのシミュレーションが正確になれば、都市部での第三者上空の飛行安全性が格段に向上する

KDDIが考えるスマートドローン網の価値

KDDIは通信ネットワークインフラの一環として、全国にネットワークセンターを展開しているが、スマートドローン構想においては、このネットワークをドローン網のインフラとして活用することを計画している。

たとえばネットワークセンターはドローンのステーションとして、駐機・充電、点検整備、セッティング、遠隔監視などの拠点として利用する。また各基地局にはドローンポートを設置し、退避・駐機所や無人の充電ステーションとして利用する。こうして全国にある基地局などの施設を有効活用し、メッシュ状のネットワークを構築するわけだ。

ネットワークセンターは全国に20箇所程度だが、ここを大規模な地域でのドローン基地として利用する
基地局はアンテナの置かれた敷地をドローンポートとして活用する。ポートが小型化すれば、都市部などでもビルの屋上などを使って充電が可能になるだろう

ドローン単体の航続距離は短くとも、途中で充電しながらであれば数百キロの飛行も可能になる。また急な天候の変化なども、近くのドローンポートに避難できれば、破損や墜落の確率が減らせる。全国に基地局という形で不動産を所有しているKDDIならではの強みと言えるだろう。またKDDIは東京電力との間にも協力体制を築いており、将来的には、たとえば高圧送電線に沿った飛行ルートを設定する、といったことも考えられるだろう。これもまた他社にはない強みのひとつだ。

ドローン物流というと、搭載重量の制限や航続距離の問題などもあり、限られた場面でしか活躍できないようなイメージがあったが、メッシュ的なネットワークが組めるのであれば、無理に距離を伸ばさなくとも、ステーション単位で飛脚のようにリレーしていく方式なども考えられる。また災害時の現場確認なども、最寄りのステーションやポートのドローンが素早く向かうことで効率を高められるだろう。こうしてみると、近い将来、想像以上の数のドローンが空を飛び交うことになるのかもしれない。

2020年代に予定されている都市部での自律飛行の実現に向けては、法規制の緩和など、まだまだクリアしなければならないハードルは多いが、夢物語のように思えていたドローン物流が、着実に現実味を帯びてきたことを実感する発表となった。競合他社の動向も含めて今後も注目していきたい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu