新Apple Watch、セルラーモデルで大ヒットなるか

新Apple Watch、セルラーモデルで大ヒットなるか

2017.10.01

アップルは9月22日に、Apple Watch Series 3を発売した。第3世代となったAppleのスマートウォッチは、iPhoneと組み合わせる前提はそのままで、GPS搭載と水泳に耐える防水性能を獲得した第2世代とデザインも変わらない。しかし、セルラー対応モデルの登場という、非常に大きなニュースとともに登場したのだ。

セルラー接続のインパクトとは

Apple Watchは前述のように、iPhoneとのペアリングを前提としている。iPhoneとはBluetoothで接続し、iPhoneへの着信やメッセージなどの通知を受信したり、Watch内のアプリのデータ通信をiPhone経由で行ったりしていた。

Apple Watchの動作はiPhoneとのペアリングが前提

Watch内のアプリはペアリングしなくても使えるが、データ通信を伴う作業は、既知のWi-Fiネットワーク下でなければ利用することができなかった。アップルが顧客にアピールする音声アシスタントSiriも、iPhoneとのペアリングか、Wi-Fiがなければ利用できなかった。セルラー接続は、iPhoneやWi-Fiのネット接続に頼らず、単体で携帯電話の電波を拾い通信できることを意味する。

Apple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルの登場に合わせて、世界中の通信キャリアは、スマートフォンの契約と同じ電話番号で通話とデータ通信ができるApple Watch向けのプランを用意し始めた。米国では月額10ドルだが、日本では350円から500円と、半額以下で利用できるようになる。

意味的には大きいが、過度な期待は禁物

Apple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルを実際に試してみると、こんな挙動になる。 iPhoneとApple Watchを同時に持ち歩いているときには、これまで通り、Apple WatchはiPhone経由の通信を行う。Wi-Fi環境下ではWi-Fiを使う。しかしiPhoneもWi-Fiもないときに初めて、セルラー通信を利用するのだ。セルラー通信をオフにする機能はあるが、通信経路の切り替えでユーザーが意識することは何もない。

iPhoneからApple Watchが離れれば、iPhoneの電話番号にかかってきた通話はApple Watchに着信するし、SMSもApple Watchに届く。またFaceTime AudioやiMessageなどのデータ通信を利用するコミュニケーションも、Apple Watchのみに届くことになる。そのため、iPhoneが手元にあるかないかは、ユーザーが意識することはほとんどないだろう。

特に米国では、インフラや社会的な問題の解決に、スマートフォンを用いてきた節がある。インフラが充実する日本以上に、スマホがある生活の定着によるインパクトは大きかった。

そのインフラたるスマホから離れる時間を演出し始めること。これがApple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルがもたらす意味だ。

例えば米国の都市では交通インフラとなったUberなどのライドシェアサービスは、Apple Watchだけで確実に利用できるようになった。また、Apple Watch単体で、音声アシスタントSiriを利用できる点も、アップルにとって、アプリ開発者にとって、重要な意味を占めることになる。

スマートフォンからスマートウォッチへの移行がすぐに起きるわけではないが、スマホで解決した問題を手首の時計だけで解決できる。そんなシーンが拡がることは、モバイルコンピューティングや我々の日常の生活の中で、デバイスのポジションの変化や、アプリの前提の変化などがもたらされる。

セルラー対応モデルはデバイスポジションの変化の可能性を秘める

しかし、前述のように、Apple Watchのソフトウェアは、極力セルラー通信を使わない前提で、通信経路の切り替えを行っている。その理由はバッテリーだ。

Apple Watch単体での連続通話は1時間、GPSを利用しながらデータ通信を行う場合は4時間のバッテリー持続時間となる。1日18時間というApple Watchのバッテリー持続時間のコンセプトとはかけ離れているのが現状だ。

そのため、あくまでも、Apple Watchのセルラー利用は一時的な場面、という前提がある。

いつ、セルラー通信を使うのか

Apple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルを実際に使ってみると、アップルの想定と同じように、思った以上にApple Watch単体で行動するシーンは限られている。

家でiPhoneを充電しているときも、Wi-Fiがつながってしまうのでセルラーは使わない。オフィスでも、カバンの中にiPhoneがあっても、つながり続けるか、結局オフィスのWi-FiにApple Watchがつながる。

電池の持続時間から考えればきちんと最適化されている証拠でもあるが、期待した以上にはセルラー通信を実感するチャンスは少なかった。

筆者の日常の中では、ルーティンとなっているジョギングが、数少ないケースとなった。 ジョギングをしている人なら分かるかもしれないが、iPhoneをポケットの中に入れていると、走っているときに弾んでしまって据わりが悪い。そのため、セルラーモデルの登場以前から、iPhoneを家においてApple Watchのみを身につけてジョギングに出かけていた。

Apple Watchがセルラー対応すると、これまで通りiPhoneを家において出かけても、家人からの連絡を受け取ることができるようになるし、Apple Musicなどのストリーミング音楽を楽しむこともできる。

あるいは1時間ほどのウォーキングを楽しむ週末でも、Apple Watchのみで軽快に出かけられるようになった。財布も持たずに出かけても、途中で買い物メモが送られくれば、Apple Payで解決できる。

初速は上々

アップルはワイヤレス接続に関して、不具合を認めており、ソフトウェアアップデートでの改善を約束している。

それでも、Apple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルは前述の通り9月22日に発売されたが、滑り出しは上々のようだ。

発売日となる9月22日の段階で、Appleのオンラインストアでは各サイズ、各色ともに3~4週間の納期を表示している。セルラー非対応のモデルが納期1日であることから、セルラーモデルに人気が集中し、高い需要がある状態だ。

前述の通り、多くの人にとって、セルラー通信のメリットをすぐに大きく実感することは難しいのではないか、と推測している。ただし、今後、セルラー通信を前提とするアプリの登場や、Siriの利便性向上など、セルラーモデルならではのメリットは大きくなっていくことが予測できる。

現在は新しい要素が加わった新製品としての需要の高まりかもしれないが、Apple Watch単体でのシーンが増えていくことで、セルラーモデルはもう一段、需要が高まる瞬間を向かえることになるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu