生まれ変わる「オレオ」、世界大手のお菓子メーカーは日本を攻略できるか

生まれ変わる「オレオ」、世界大手のお菓子メーカーは日本を攻略できるか

2016.05.12

誰もが一度は見たことある「オレオ」に「リッツ」、そして「プレミアム」。どのお菓子も"定番"のロングセラーだ。外装の左上には赤い三角マークで「NABISCO」の文字。2016年5月現在、日本では山崎製パンの子会社であるヤマザキ・ナビスコ(以下、ヤマザキナビスコ)が製造・販売している。

しかし、ヤマザキナビスコは2016年8月31日をもって「ナビスコ」ブランド4製品(オレオ、リッツ、プレミアム、チップスアホイ)の製造を終了し、9月からは商号を「ヤマザキビスケット」へ改める。その理由は、モンデリーズ・インターナショナル・インク(以下、モンデリーズ・インターナショナル)との技術および商標ライセンス契約の終了だ。

モンデリーズ・ジャパンが日本で販売するオレオ、リッツ、プレミアム。リッツは口当たりが軽く、オレオは甘さがちょっぴり控えめになったように感じた。とはいっても、やっぱり慣れ親しんだあの味だ。パッケージはあくまで見本だが、現行品とあまり変わらない

国内製造から海外製造へ

9月からはモンデリーズ・インターナショナルの日本法人であるモンデリーズ・ジャパンがオレオとリッツ、プレミアムを国内で販売していく。モンデリーズ・ジャパンが5月11日に開催した「ビスケット事業」についての記者発表会では、"モンデリーズ・ジャパン版"の3製品をお披露目。モンデリーズ・インターナショナル・インク アジアパシフィック社長 マウリッチオ・ブルサデリ氏、モンデリーズ・ジャパン 代表取締役専務 辺丙三(ほとり へいぞう)氏が登壇した。

リニューアルされるビスケットたちは、日本市場向けに改良(プレミアムは現行品と味は変わらない)。世界共通のレシピに則ってはいるが、日本の消費者に試食してもらって高い評価を得たものを採用している。

左から、モンデリーズ・ジャパン 代表取締役専務 辺丙三氏、モンデリーズ・インターナショナル アジアパシフィック社長 マウリッチオ・ブルサデリ氏

国内でビスケットを製造してきたヤマザキナビスコに対し、新オレオは中国の北京工場、新リッツはインドネシアのチカラン工場、新プレミアムはイタリアのカプリアータ・ドルバ工場で作られ、日本にやってくる。

原産国が海外になることで日本の消費者がネガティブな印象を持つことも考えられるが、辺氏は「いずれの工場も高い安全性を誇る」と強調。モンデリーズ・インターナショナルが培ってきた技術や経験を生かせるうえ、日本の消費者に満足してもらえる品質を提供できるのが上記の3工場だと説明した。続いて、製造だけでなく販売に関しても自信たっぷりの様子をみせた。

日本のビスケット市場は"おいしい"のか

モンデリーズ・ジャパンが展開しているガム・キャンディ

「日本のビスケット事業に貢献できると確信している」と辺氏は自信たっぷりに語る。

その根拠は、縮小が叫ばれるガム・キャンディ市場にある。モンデリーズ・ジャパンは国内で「クロレッツ」や「リカルデント」といったガム・キャンディを展開してきた。「縮小市場ではあるが、粒ガムや機能性を持つガムによって下げ止まってきた。モンデリーズ・ジャパンは需要回復を牽引する存在だ」と説明する。

ガムとは異なり、日本のビスケット市場は好調だ。2013年に比べて2015年は小売金額が13.8%増。高価格帯のプレミアムなものや季節商品の調子が良い。マウリッチオ・ブルサデリ氏は「多くのチャンスがあるアジア市場だが、特に日本は成長の可能性がとても高い」と評価。モンデリーズ・インターナショナルの2015年度売上は300億ドル。そのうち4割がビスケットなのだが、地域別でみるとアジアパシフィック市場が16%を占める。割合でみれば小さいが、今後の伸び率に期待しているのだろう。

モンデリーズ・インターナショナルの売上で最も高い割合を占めるのがビスケットだ
日本のビスケット市場は、サンド系やチョコ系といった多種多様な商品が存在すること、販売金額シェア1位でも7.5%と全体に占める割合が低いことも特徴

辺氏が自信をみせるもうひとつの根拠は、健康志向のビスケット「belVita」(ベルビータ)だ。belVitaは朝食用ビスケットを謳い、現在50カ国以上で展開している。マウリッチオ・ブルサデリ氏いわく「売れ行きは絶好調」で、特に中国では2015年9月の発売からすでに5,000万ドル以上を売り上げた。日本での展開についてはまだ具体的に決定していないが、前向きな姿勢をみせている。高価格帯のビスケットが売れているほか、グラノーラ専門店が登場するなど、にわかに「健康志向×朝食」の市場が盛り上がりつつある日本では受け入れられそうだ。

belVita(左)とBarni(右)。belVitaは全粒粉が入ったチョコチップクッキーのような味で、Barniはスポンジケーキのようなお菓子
さまざまなレシピ提案も積極的に行っていく。写真はオレオ、リッツ、プレミアムのアレンジ例だ

2016年9月から3ブランド8製品を投入するわけだが、その前後にはレシピ提案などのマーケティングを積極的に行っていく。さらに、2017年にはオレオが日本で発売されてから30周年という節目を迎える。具体的なプランは未定ながら「何かしらのイベントは行いたい」(辺氏)とのことだ。

ヤマザキナビスコにとってのメリット

日本にビスケットという食べ物が浸透したのはヤマザキナビスコの功績も大きい。ヤマザキナビスコはそもそもの成立が山崎製パンと日綿實業(現在の双日)、米ナビスコ社との合弁会社であり、45年以上にわたってナビスコブランドの周知に貢献してきた。そんなヤマザキナビスコに対して、辺氏は「大変感謝している」とコメント。今回の1件には、生みの親が育ての親から子を奪うような印象をどうしても抱いてしまうが、ライセンス契約終了はヤマザキナビスコにとってのメリットもある。

2016年5月11日現在のヤマザキナビスコのトップページより

そのひとつが海外への展開だ。これまではライセンス契約によって制限されていたが、ヤマザキナビスコのビスケットを海外でも販売できるようになる。すでに山崎製パンは「東南アジアをはじめとする海外市場」(プレスリリースより)に展開すると表明済みだ。

「チップスター」や「エアリアル」、「レモンパック」といったオリジナルのお菓子は、引き続きヤマザキナビスコが製造・販売していく。さらに、2017年12月以降はオレオ、リッツ、プレミアム、チップスアホイ類似品についての制限が解除されるため、ヤマザキナビスコが「競合品」を開発することも十分にありえる。辺氏はヤマザキナビスコを「ともに日本のビスケット市場を成長させ、盛り上げていく存在」とした。

モンデリーズ・ジャパンが発売の4カ月も前に発表会を開催したのは、「少しでも早く成果物を見せたい」という思いから。パッケージデザインなど細かいことはまだ定まっておらず、想定価格なども明らかになっていないが、気合いの入りようと誠実さを感じられるタイミングだったといえる。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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