「池の水を抜く」ならぬ「草原の草を刈る」で既存種を守る一風変わったCSV

「池の水を抜く」ならぬ「草原の草を刈る」で既存種を守る一風変わったCSV

2017.10.03

2011年に提唱されたCSV(Creating Shared Value)。「共通の価値創造」という意味だが、企業が持つ知識や資源を活用し、ビジネスを推進しながらも地域・社会貢献につなげていくと考えればわかりやすい。今、このCSVに取り組む企業が増えている。

一昔前までは企業CSRという考え方が主流だった。社会や環境、取引先、自社社員などに対し貢献を行い、社会的責任を果たしていくというのがCSRだ。ただこの場合、CSRのための予算や人的リソースなどの確保が必要となり、しかも企業の利益に直結しない。社会貢献で企業イメージが向上し、結果的に業績に反映するかもしれないが、あくまでそれは副次的なものだ。

一方、CSVは企業の生産性・競争力を向上させながら、社会の問題を解決していく。CSRとCSVは字面は似ているが、根本的に異なるものだ。このCSVに早くから取り組んだ企業がある。酒類・飲料大手のキリンだ。

組織一新の際にCSVの概念を導入

キリンは2013年に組織を一新し、それまで別々の経営体制だったキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンを統合。その際に、経営にCSVという概念を導入するため、CSV本部を立ち上げた。そして現在、「健康」「地域貢献」「環境」の3本柱を軸にCSVを推進している。

そんな同社から、「弊社のCSVの一部を見学しませんか」というお誘いをいただいた。「はて、どんなCSV活動だろう? 堅苦しい内容だったらお誘いをお断りするかな」などと、一瞬思った。だが、ハナシを聞くと実に興味深い内容だった。

見わたすかぎりブドウの樹が広がる。右は農園入り口のオブジェ

そのCSVとはこうだ。キリン傘下のメルシャンは、長野県にいくつかブドウ農園を持っているが、そのうちのひとつ、上田市・椀子(マリコ)の農園が舞台。この農園は1999年に拓かれたもので、メルローやカルベネ・ソーヴィニヨン、シラー、シャルドネといったワイン用ブドウの主力を育てている。

この農園で行われているCSVとは、日本在来の既存種・希少種といった植物を再生・保存すること。かつては遊休農地だったこの場所をブドウ農園として造成したことで、希少な植生が戻ってきたという。

2016年に農研機構・農業環境変動研究センターの研究員を招聘し、生態系調査を実施。希少な植生を発見したことを受け、キリンの従業員参加による再生・保存活動が行われている。今回、招待されたのは、この活動の見学だった。

当日は、少し風が強かったが、標高650mの高さにある農園に立つと、なんとも爽快。約20ヘクタールの敷地にはギッシリとブドウの樹が並び、葉がサワサワと揺れている。この日は、ブドウの収穫をお手伝いしてくれるボランティアと、植生の再生・保全活動を行うキリンのスタッフにわかれて行動した。

まず最初に、国立開発研究法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動センター 生物多様性研究領域 上級研究員 楠本良延氏が解説してくれた。楠本氏によると、農業と環境の研究をできる場所は貴重だそうで、椀子のブドウ農園では168種の昆虫、288種の植物が確認できたそうだ。

農園の植生について解説する楠本良延氏。ピンクのビブスを着用しているのがキリンのスタッフ

ブドウ農園の多様性が草原の植物を育む

これほどの生態系となったのは、ブドウ農園の多様性にあるという。「日本は以前、30~40%の土地が草原でした。化学肥料がなかった時代、草原に生えている植物を肥料代わりにしたり、牛や馬の食料としたりと重宝していました。ただ、こうした草原は現在1%ほどになってしまっています」(楠本氏)と話す。

だが、ブドウ農園は、ブドウが植樹されている以外は、基本的に草原。その環境の良さから日本の既存種・希少種といった植物が戻ってきたのだという。今回集まった30名ほどのキリンスタッフは、そうした植生を再生・保存するため、全国の事業所から集まってきた。余談だが、この活動は社内でも人気らしく、抽選で参加者が選ばれるという。

日本の既存種・希少種。左上から時計回りに「カワラナデシコ」「ツリガネニンジン」「コウゾリナ」「ゲンノショウコウ」

さて、楠本氏は再生・保存の手順について解説した。手順は至極単純。種が実り、枯れる直前の既存種・希少種を刈り取り、まだそうした植生になっていない場所に撒くだけ。既存種などを掘り起こし、根ごと新しい場所に植える方法もあるが、それでは掘られた場所がダメージを受けてしまう。種を自然に蒔く感覚でよいのだそうだ。このときに気をつけたいのが外来種を撒かないこと。せっかく新しい場所に既存種・希少種を再生したくても、外来種が混入しては台無しだ。

刈り取った草をブルーシートに集め、ほかの場所に撒く。このとき「セイタカアワダチソウ」や「ブタクサ」といった外来種は除く。右の写真はブタクサ

あの話題番組の草原版ともいえる活動

こうした作業を見学しているうちに、あるテレビ番組を思い出した。今年から不定期で放映されているテレビ東京の「池の水ぜんぶ抜く大作戦」だ。池の底に何があるのかの興味、増えすぎた外来種の駆除による爽快感などで、放映開始から話題だ。このブドウ農園での植生の再生・保存は、あの番組に通じるものがあるのではないか、と感じた。

ただ、楠本氏によると、外来の植物はブルーギルやブラックバスのように凶悪に繁殖するということはなく、定期的に刈り取っていればあまり影響はないそうだ。とはいえ放置してしまい、鬱蒼とした森林になった場合は、外来植物の繁殖が懸念される。

たわわに実ったブドウ。手の届きそうな距離にある

一連の再生・保存作業を見学させていただき、ブドウの収穫が始まった。広大なブドウ農園を歩いていると、フト気づいたことがある。たわわに実ったブドウが、あまりにも不用心に樹に成っているのだ。道路と農園の境には30cmほどの柵しかなく、手を伸ばせばブドウをもぎ取れる。案内してくださったスタッフにそのことをたずねると、あまり気にしていない様子だ。

「人間よりも野生動物の対策が重要です。とはいえ、もっともブドウをつまみ食いしているのは我々収穫スタッフかもしれません(笑)」と笑みをこぼす。ただ、これは盗み食いではなく、“ブドウのデキ”を確認するためのことらしい。筆者も失礼させていただきつまみ食いさせていただいたところ、「甘い!」。ワイン用ブドウは生食に向かないと聞いていたが、そのイメージは払拭した。

プラズマ乳酸菌で労働生産性が向上!? ヤフーとキリンが共同発表

プラズマ乳酸菌で労働生産性が向上!? ヤフーとキリンが共同発表

2018.11.16

キリンとヤフーが共同で健康経営に関する研究を実施

プラズマ乳酸菌の摂取が免疫細胞の司令塔を活性化させることを確認

免疫力アップが労働生産性の向上につながることも導き出した

キリンとヤフーは11月15日に、キリングループの研究している「Lactococcus lactis strain Plasma(プラズマ乳酸菌)」について、共同で実施した研究結果を発表した。

研究結果は、「プラズマ乳酸菌を摂取すると、労働パフォーマンスの指標が向上する」というものだ。いったいどういうことなのだろう。

プラズマ乳酸菌が活性化させるのは免疫細胞の司令塔

そもそもプラズマ乳酸菌とは何か。乳酸菌はヨーグルトなどに入っているイメージだが、プラズマとは違う物質なのだろうか。キリン社によると、プラズマ乳酸菌とは免疫細胞の司令塔を活性化する唯一の乳酸菌だという。

どうやら免疫細胞には命令系統のようなものが存在し、司令塔を活性化させることに成功すれば、司令塔の命令を受けるすべての免疫細胞が活性化されるのだという。

ただし、一般的な乳酸菌が活性化できるのは、命令系統下位の細胞のみ。そのため効果も限られる。それに対して今回研究結果を発表した、プラズマ乳酸菌は免疫細胞の司令塔である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化することができるため、免疫細胞全体を活性化することができるという。

そんなプラズマ乳酸菌が労働パフォーマンスとどう関係があるのか。次は、今回の研究で行われた試験内容を見てみよう。

一般的な乳酸菌とプラズマ乳酸菌の違い

元気な体が、低労働生産性の「プレゼンティーズム」を回避

今回の試験は、ヤフー社員226名を対象として行われた。プラズマ乳酸菌1000億個含むヨーグルトを4週間摂取し、体調、気分、労働生産性に関するアンケート評価を実施。その結果、非摂取の状態と比較すると、プラズマ乳酸菌を摂取している状態のほうが、活気があり、体調も良好だと感じている人が多かった。

また、「風邪気味で頭がボーっとする」「下痢で何度もトイレに行く」といった、出勤しているが心身の健康上の問題によって十分なパフォーマンスを発揮できていない状態を「プレゼンティーズム」と呼ぶが、今回の試験によって、このプレゼンティーズムの状態が軽減され、労働生産性が向上したことを確認できたという。

つまり、プラズマ乳酸菌を毎日摂取することで、生体内の免疫が活性化し、体調がよくなり、プレゼンティーズムを改善して労働生産性が向上することがわかったのだ。

簡単に言うと、プラズマ乳酸菌を摂取して元気な状態で仕事をすれば、高いパフォーマンスを発揮できるということである。

プラズマ乳酸菌の摂取によってプレゼンティーズムが改善するという結果が得られた

キリン 代表取締役社長の磯崎功典氏は「従業員とその家族が健康であることは、社会にとってプラスの価値を生みます。健康寿命が延びることによる労働力の確保、ひいては、経済の活性化にもつながると考えました。その結果、従業員は考える時間やチャレンジする時間を持てるようになり、仕事のパフォーマンス向上や、イノベーションの実現につながっていくでしょう」と、キリンが健康経営に力を入れる理由を説明した。

キリン 代表取締役社長の磯崎功典氏

同社が乳酸菌事業に参入してから1年。すでに、初年度の売上額は、目標の1.5倍の額にあたる55億円に達しているが、さらに拡大していき、3年後には2.7倍の150億円を目指す。

たしかに筆者自身も、プレゼンティーズム状態だと感じることはしばしばある。疲労だけでなくオフィス内の騒音なども、仕事に集中できない原因の1つだと思われるが、はたして、そのようなメンタル面のプレゼンティーズムも改善されるのだろうか。実際にプラズマ乳酸菌を飲んで、試してみたいところだ。

『パワプロ』eペナントレース開幕! 元プロ野球選手の解説も

『パワプロ』eペナントレース開幕! 元プロ野球選手の解説も

2018.11.16

『パワプロ』のeペナントレースが開幕

プロアナウンサーの実況と元プロ野球選手の解説で盛り上がりを見せた

規模の大きさにプロ選手も緊張していた様子

コナミデジタルエンタテインメントとNPB(一般社団法人日本野球機構)は、11月10日に、ベルサール渋谷ガーデンにて「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」の開幕戦を開催した。

eBASEBALLは、『実況パワフルプロ野球』のeスポーツイベント。プロ野球全12球団に登録された3名ずつ、計36名のプロゲーマーによって行われる。リーグ内で各チームと3戦ずつ、全15戦行い、ペナントレースを争う。

今回、先だって行われたプロテストeドラフト会議を経て、いよいよ開幕を迎えることになった。開幕戦では、セ・パ両リーグともに試合が行われたが、基本的に土曜日にセ・リーグ、日曜日にパ・リーグの試合が開催される。

試合前にはオンライン投票での勝敗予想も行われる。チーム自体の強さもさることながら、プレイする選手の実力も加味して投票される
全チームではないが、球団マスコットも会場に駆けつけた。一緒に写真撮影したり、サインをもらったりと、ファンにとっては貴重な一日となったのではないだろうか
オープニングでは、ベリーグッドマンによるテーマソングも披露された

1節に実施される試合回数は各チーム3戦。チームの選手が1人ずつ対戦する形式だ。試合は6イニング制で、延長は9回まで。3戦連続で試合をするため、ゲーム内選手のスタミナ面などが後の試合に影響する。つまり、実際のペナントレースと同様に、投手起用などを考える必要が出てくるのだ。

また、選手の調子はランダムで決定される。主力選手の好不調に合わせて戦略を変える必要もあるだろう。エラーや悪送球なども一定確立で発生するので、eスポーツとしては珍しく運要素もある。とはいえ、実際のスポーツ、今回題材としている野球においても運要素がまったくない訳ではないので、そこは逆にリアルとも言える。

試合直前に発表される選手の調子。絶好調、好調、普通、不調、絶不調の5段階あり、絶不調の場合、選手の持つ特殊能力が発動しなくなる。選手の好不調と実力を考え、オーダーを組み直す必要もあるだろう。主力選手が絶不調だったときの絶望感は相当なものだ

開幕戦は、メインスタジアムのセンタースタジアムと、レフトスタジアム、ライトスタジアムの3カ所で実施。いずれもプロのアナウンサーによる実況と元プロ野球選手の解説が行われた。3つのスタジアムでは同時に試合が進行し、他のスタジアムの途中経過なども表示されるといった、まさにプロ野球中継さながらの臨場感を味わえるようだった。会場にいれば、好きなスタジアムでの観戦ができるのも嬉しいところだ。

左からニッポン放送アナウンサーの清水久嗣氏と元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏、プレイヤーゲストのまめしば氏
左からeスポーツ専門アナウンサーの平岩康佑氏と元千葉ロッテマリーンズの黒木知宏氏、プレイヤーゲストのアールグレイ氏
左から文化放送アナウンサーの槙島範彦氏とギャオス内藤氏、プレイヤーゲストのハル氏
左から清水久嗣アナウンサーと元ソフトバンクホークスの多村仁志氏、プレイヤーゲストのまめしば氏
左からフリーアナウンサーの田中大貴氏と前ヤクルトスワローズ監督の真中満氏、プレイヤーゲストのめし原氏

開幕戦で注目カードの1つとなったのが、センタースタジアムの第2戦で行われた中日ドラゴンズ対ヤクルトスワローズの一戦。ドラゴンズ愛あふれるでらナゴ!選手とeドラフト会議で4チームから指名を受けたマエピー選手の試合だ。ある程度の打撃戦となることは予想されたが、結果は7対3ででらナゴ!選手の勝利。昨年の覇者であるマエピー選手が初戦を落とすという波乱の展開となった。

3試合通しての結果としては、唯一3連勝を飾った西武ライオンズが、頭ひとつリードと言ったところ。セ・リーグは、2勝1敗2チーム、1勝1敗1分2チーム、1勝2敗2チームと混戦状態だ。なお、試合結果と順位表は公式ページからも確認できる。

昨年までも「パワプロチャンピオンシップ」として、大会は開催されていた。しかしながら、いわゆるeスポーツのような位置づけでもなく、注目度も高くなかったこともあり、今年はプロ選手によるeBASEBALLとして大きく様変わりしている。大会出場経験のある選手たちも、規模の大きさや注目度の高さに驚いているようだった。

読売ジャイアンツ所属のティーノ選手は「人前でプレイするのは昨年もやっていましたが、規模が違いますね。打撃が得意だったので、今回の試合も10点くらい取れるかなと思っていましたが、ベルガモット選手も私も3安打とまったく打てませんでした。気がつかないうちに緊張をしていたんだと思います」と、感想を述べた。

東京ヤクルトスワローズのマエピー選手も「すごく緊張しました。キャッチャーの送球が逸れまくって、4回の盗塁のうち、本来なら2回は刺せたと思いましたし、ピッチャーの悪送球やサードのエラーなど、かなり運にも見放されていました。ただ、それを差し引いたとしても、打ち負けていたので、完敗です。来週に向けて練習してきます」と語っていた。

横浜DeNAベイスターズのAO選手は「たぶん、私は数少ない3年連続出場の選手なのですが、今年はやはり独特です。この場の雰囲気に緊張しました。ただ、勝てばヒーローになれると思っていましたし、逆転ホームランを打ったときの大歓声はすごくて、大舞台での試合を楽しめました」と、いずれにしても大会の規模と注目度には緊張をしていたということがわかった。

阪神タイガースの実力者ベルガモット選手と対戦し、1対0で勝利を収めた読売ジャイアンツ所属のティーノ選手
珍しく大敗を喫した東京ヤクルトスワローズ所属のマエピー選手
少ないチャンスをものにし勝利した横浜DeNAベイスターズ所属のAO選手

そのほか、大会の見どころとしては、元プロ野球選手の解説が間近で聞けることや、球団マスコットとふれあえることが挙げられるだろう。アメリカのいわゆるボールパーク状態で、野球や『パワプロ』に興味がない人も十分に楽しめる時間となったのは間違いない。

今後の予定は、毎週土日にeペナントレースが行われ、12月16日には、クライマックスシリーズにあたる「eリーグ代表戦」が行われる。さらに来年の1月12日には「e日本シリーズ」も開催予定だ。

開幕戦のすべての試合はYouTubeのKONAMI公式チャンネルにアーカイブされているので、興味がある人は観てほしい。プロによる実況解説、試合展開の盛り上がりなど実際のプロ野球と比べても遜色ないので、プロ野球ファンも是非。