グーグルがハードウェアを続々出す2つの事情、そこから見えるアップルの弱点

グーグルがハードウェアを続々出す2つの事情、そこから見えるアップルの弱点

2017.10.06

グーグルは10月4日、「Made by Google」イベントを開催し、最新のスマートフォンやスマートスピーカー、2-in-1ラップトップなどの自社ブランドのハードウェアを発表した。グーグルのハードウェア拡充は、同社の戦略上、どのような位置づけにあるのか、読み解いていこう。ハードウェアだけを見ていくと、結果的に「全方位」での対決の様相を呈しているが、グーグルの狙いはもう少し別の場所にある。

スマートフォンは「iPhone以上」のカメラを搭載

今回のイベントの目玉となったのは、最新のスマートフォンである「Pixel 2」だ。有機ELディスプレイを搭載し、5インチと6インチの2つのサイズで登場するスマートフォンは、アルミニウムとガラスの質の高いボディに包まれた、非常に完成度の高い製品となった。

Pixel 2(画像:グーグルストアより)

グーグルが強調していたのは、カメラ機能だ。カメラの評価の指標となっているDxOMarkのスコアは、iPhone 8 Plus、GALAXY Note 8が94であったのに対し、Pixel 2は98を獲得し、スマートフォンカメラとしては最高点を叩きだした点は、インパクトが大きい。

カメラを通じてイベントチケットの予約ができたり、目の前にある知らない花の名前を知ったりするなどスマホの使い方を大きく変えうるのがGoogle Lensだ(画像:Google Official Blog5月17日投稿より)

Pixel 2は背面、前面ともに1つのカメラでありながら、高速に撮影する複数の写真を活用して被写体を認識して画質を向上させたり、被写体と背景を分離して背景をぼかすポートレート写真を作り出したり、またビデオでの手ぶれ補正を強化するなど、ハードウェアとソフトウェア処理の高度な融合を実現している。

グーグルによると、こうした画像処理に、これまで培ってきた機械学習モデルが生かされているという。

またアップルがiPhone 8とiOS 11で強調したように、拡張現実への対応も行われている。

Google Lensは5月に発表したカメラを用いて検索やアシスタント機能を提供する拡張現実の活用アプリだが、Pixel 2がGoogle Lensに初めて対応するデバイスになる。

加えて、Daydream Viewを用いて、仮想現実アプリを楽しむ事もできる。現在Androidスマートフォンができうる全てのことを、シンプルなハードウェアで実現している点がPixel 2の魅力となる。

スマートスピーカーで意識するアマゾンとアップル

イベントでスマートフォンとともに時間が割かれたのが、スマートスピーカー「Google Home」だ。小さなサイズの「Google Home mini」と、音質にこだわった「Google Home Max」の2つの新製品を登場させた。

Google Home Max(画像:グーグルストアより)

それぞれ49ドル、399ドルという価格が付けられ、これまでのGoogle Homeと同様、Googleアシスタントなどの人工知能の機能や、YouTube Musicなどの音楽サービス、デバイス連携などを行うことができる。

Google Home mini、Google Home Maxの競合は価格面、そしてデバイスのデザインや特徴からも明確だ。

Google Home miniはAmazon Echo Dotと同じ価格やサイズ感。しかしデバイスの表面をファブリックで覆い、居住空間へのマッチングに気配りを見せたことをアピールする。

またGoogle Home Maxは高品質のスピーカーとAIを用いた環境や音源に最適な音作りをアピールし、こちらはアップルが12月に発売する予定のホームスピーカー、HomePodに価格面も含めた競合関係を示した。

米国の家電市場では、Amazon Echoが台風の目だ。スマートホーム製品の多くがAlexaとの連携をアピールし、またテレビや自動車などはAlexa自体を搭載する製品も現れるようになった。実際に試してみると、Google Homeの方がより多くの質問に対して答えてくれる賢さを見せるが、そのことは上手く伝わっていないようだ。

Google Homeは誰が話しかけたかを認識する機能や、こどもの学びや音によるエンターテインメントの提供など、Amazonとは異なる展開で、より明確な用途を家の中で作り出そうとしている。

ラップトップはマイクロソフトと対峙

もう1つの新製品は、「PixelBook」だ。Intel Core i5/i7を搭載するハイエンドChromebookで、タッチディスプレイと別売のペンを組み合わせて、ラップトップ、タブレットの用途をこなす、いわゆる2-in-1ラップトップに属する。

(画像:グーグルブログより)

グーグルによると、ラップトップとして初めてGoogleアシスタントを搭載し、例えばウェブでニュースを読んでいるときにテキストをハイライトしたり、写真をペンでぐるりと囲めば、それをアシスタントが検索して詳細な情報を表示する機能を備えている。人工知能を生かしたコンピューティングを具現化する製品として注目できる。

加えて、Androidのシェアを背景とした強みも見せる。PixelBookはAndroidのアプリストア、Google Playに対応し、Androidアプリを実行することができる。

普段スマホで行っているクリエイティブな作業やコミュニケーションを、大きな画面で実行できるのだ。例えば既にライセンスを持っているAdobeのフォトレタッチアプリ、Lightroom Mobileで編集し、Instagramのいつものアカウントに投稿することもできる。

スマホ世代にとっては最適なラップトップ、という打ち出し方は新鮮だ。

価格は999ドルからで、マイクロソフトのSuriface ProやSurface Laptop、アップルのiPad ProやMacBook Proと競合する関係にあるが、Androidアプリをそのまま実行できる点は、iPad Proでも完全ではなく、PixelBookならではの魅力になる。

自社デバイスに一貫するテーマとは

グーグルが自社製品を拡充する背景には、2つの事情がある。

1つは、Androidスマートフォンを中心とした製造メーカーの疲弊だ。現在のグーグルのソフトウェアを活用したデバイスはAndroidスマートフォンが中心だが、アップルと比較すると収益性が低く、また販売の中心は中国からインドをはじめとするアジア諸国、アフリカへと拡がりを見せている。中国メーカーが中心で、米国、日本を含む先進国メーカーは撤退もしくは事業売却が既に一段落ついた状況にある。

つまり、廉価版の製品が中心となっており、グーグルがアップルと競争したいハイエンド領域に食いついてきてくれる存在はサムスンぐらいしかいなくなってしまったのが現状だ。

またスマートフォンをきっかけにして、スマートウォッチ、スマートホームへとライフスタイルを構成するデバイスとプラットホームへ展開していく場合、ハイエンドスマートフォンを利用するユーザーのグーグル離れを食い止めていかなければ、その他の領域での競争が難しくなっていく。

そのため、Pixelシリーズで、先進国ユーザーをきちんと取り込み、Google Homeなどのスマートホーム製品などを通じて、グーグルプラットホームで生活する人を確保したいという考えだ。

もう1つの理由は、垂直統合の実現だ。

グーグルはこれまで、ハードウェアには取り組まず、OS、クラウドを中心としたソフトウェアサービスをカバーし、広告ビジネスを展開してきた。しかし前述の理由から、ハイエンドのハードウェアの競争状態を確保する必要があり、Pixelシリーズへの本格的な取り組みを強めている。

9月20日には、グーグルがHTCのハードウェア部門を買収するというニュースが流れた。2000人あまりの従業員もグーグルへ移籍し、Pixelシリーズをはじめとするデバイスの開発に取り組むことになる。

グーグルはイベントの中で、コンピューティングの進化は「AI + ハードウェア + ソフトウェア」の組み合わせであることを強調している。アップルも確かにAIへの取り組みを強めており、最新のA11 Bionicプロセッサは機械学習処理を高速化する仕組みを持っている。

しかし実際に機械学習を生かすのはアップルではなく、iPhoneとiOS 11の組み合わせを利用するアプリ開発者である。そのため、機械学習に強いiPhone 8が登場しても、対応するアプリが揃わなければ、その魅力を発揮することができないのだ。

グーグルは今回のPixel 2に合わせて、ワイヤレスヘッドフォン、PixelBudsを発表した。このヘッドフォンにはリアルタイム翻訳機能が入っており、相手の声を自分の母国語に変換して聞き、自分が喋った声を相手の母国語に変換して伝える同時通訳を体験できる。

PixelBuds(画像:グーグルストアより)

こうしたアプリをグーグル自身が用意していち早く体験させることができるのも、自前のハードウェアを用意した効果といえる。

これまでのスマートフォンビジネスにおいては、高付加価値のスマートフォン販売と、OSを含めたプラットホームを生かす開発者がビジネスを展開するアプリストアからの収益を向上させる、アップルの戦略が成功しており、今後も一定の成果を収め続けることが期待される。

その一方で、人工知能や拡張現実などの新しい体験を届けていく際、アップルのやり方では具体的なシーンを作り出す「アプリ」の登場を待たなければならず、体験にすぐにつながりにくい。これが、アプリ部分を統合していないアップルのモデルの弱点となり始めた。

これに対しグーグルは、ハードウェア、OS、人工知能、アプリという完全な垂直統合モデルを構築し、いち早く未来の体験を届けるブランドへと変化し始めた。どちらの方法論がより成功するのか、注目していくと良いだろう。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。