ダイムラーの「me-convention」が示すモーターショーの方向性

ダイムラーの「me-convention」が示すモーターショーの方向性

2017.10.10

数年前からモーターショーの凋落がささやかれつつある。先進モデルはデトロイトモーターショーよりもCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で出ると言われ、東京モーターショーも規模縮小や来場者数減少など心配の種が尽きない。しかし、これが時代なのかもしれない。そんな中、フランクフルト国際自動車ショーの期間中にダイムラーが開催した「me-convention」は注目すべきイベントだと言える。

ダイムラーがSXSWとのコラボイベント「me-convention」を開催(撮影:Satoru Nakaya)

クルマの電化とITの発展が変えるモーターショーの意義

従前のモーターショーでは斬新なフォルムのコンセプトモデルを飾り、エンジンのモックアップや要素技術を展示してきた。10年ほど前はwell to wheel(井戸=燃料採掘から車輪=車両走行まで)のwell多様化論が花盛りで、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、天然ガス自動車(CNG)など、多種多様なモデルを並べることができた。

しかし、今のテーマは電化だ。これはエンジンのモックアップのような、見て触れられる技術展示には不向きで、スクリーンやパネルで概念などを伝えることになる。今回、フランクフルト国際自動車ショーの会場に活気が感じられなかったのは、展示物に迫力や斬新さがなかったせいもあるだろう。

電化がテーマとなりつつある昨今のモーターショー(撮影:Satoru Nakaya)

また、ITの発展は現場に行く必然性を薄れさせている。通信社や速報系メディアは取材したさきから小まめに情報をアップし、メーカーも発表と同時に公式サイトで情報を公開する。ダイムラーは「Mercedes me Media」を立ち上げ、プレスカンファレンスの模様をいつでもオンラインで閲覧できる体制を整えた。

今後、セールスに直結する商談会としてのショーは引き続き成立し得るが、新しい技術やモデルの発表会としてのショーはもはや厳しいかもしれない。これからのモーターショーはいかにしてその存在意義を見出すべきだろうか。ダイムラーがSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)と連携して開催した「me-convention」は、ひとつの方向性を示唆している。

豊富な参加型プログラム、2,700人以上が来場

me-conventionはダイムラーが9月15日~17日に開催したSXSWとのコラボイベントだ。開催場所はフランクフルト国際自動車ショーでダイムラーが使ったブースを分割して使用した。会場内ではステージイベントやハッカソンといった参加型プログラムなどを提供。3日間で150人が登壇し、35カ国以上から2,700人以上が来場した。

メルセデスの展示棟を分割して使用(撮影:Satoru Nakaya)
会場の見取り図

me-conventionでは、メルセデス展示棟の1階中央にあるメインステージ(urban stage)、2階の回廊すべて(オレンジ色のエリアなど)、隣接する別棟(forum stage 1+2)を使用した。この専用エリアに入るには入場料(一般360ユーロ、学生150ユーロ)が必要。モーターショーとの互換性はなく、それぞれにチケットを用意しなければならない。モーターショー会場との接点には係員が立ち、入館証をチェックしていた。

モーターショーのプレスデー(me-convention開催前)は入場制限がなく、展示棟の1階と2階は自由に出入りできた。展示棟2階は通常、車両や技術展示が行われるエリアだが、モーターショー開催期間中からme-conventionに向けてラウンジやブランコなどが設置されており、一種独特の雰囲気。ショー取材の合間にソファで休憩する人はいたものの、これらの意図を理解するジャーナリストは多くなかったのではないか。

展示棟1階のメインステージ(urban stage)。モーターショーではカンファレンスを行った場所だ。ただし、ここでme-conventionのイベントが行われたのは1回のみ。それ以外はモーターショーで披露したモデルを適宜入れ替えて飾っていた(画像提供:Daimler AG)
展示棟1階と2階にまたがるinsight stageでは比較的、若手のスピーカーが登壇し、スクリーンを使ってTEDさながらのプレゼンテーションを披露した(画像提供:Daimler AG)

日本人にはあまり知られていない印象

会場の外でも、スポンサーであるルフトハンザとの協業イベントや、フランクフルト市街地の飲食店にてスピンオフイベント(クラブのようなノリ)などを開催していた。イベント会場内はもとより、開催期間中は街中の至る所で何かしらのイベントが開催されているという、SXSWのコンセプトが踏襲されている。

フランクフルト市街地のカフェやレストランでもイベントを開催(画像提供:Daimler AG)

SXSWは1987年にテキサス州オースティンで始まり、当初は映画や音楽といったエンターテインメントコンテンツを扱うイベントであったが、近年はIT関連のスタートアップ向けイベントとして定着しつつある。日本からの参加者も多く、開催期間中は周辺ホテルの価格が高騰するという。

しかし、今回のme-conventionは日本人が少なかった。モーターショー会場では日本人が比較的目立っていたにも関わらず、3日間の来場者合計2,700人に対して、日本人は20人に満たなかったのではないだろうか。

パナソニックでスタートアップ関連の支援を行っているという男性からは「この手のイベントには日本人のスタートアップ関係者が結構参加しているし、直前に開催されていた『アルス・エレクトロニカ』には日本人がいたので、その流れで参加する人も多いのではと思っていたが、予想外に少ない印象」と語っていた。

5つのテーマで構成されるプログラム

開催されるプログラムは下記の5つのいずれかのテーマに分類される。

1.New Creation(創造性)

2.New Leadership(リーダーシップ)

3.New Realities(バーチャルに対しての現実)

4.New Urbanism(都市主義)

5.New Velocity(社会の変化の速度)

別棟のforum stage 1とforum stage 2。ダイムラーのディーター・ツェッチェ会長とfacebookのサンドバーグCOOが、「New Leadership」のテーマで「Culture, Leadership and Innovation in the Digital Age」と題した対談を行ったのもここだ。この対談を含め、キーノートスピーチの際は2つのステージを接続して使用していた(画像提供:Daimler AG)

一方、プログラムを系統別に分類すると下記の5つになる。

1.セミナー&シンポジウム(有識者がスピーチないし対談を披露)

2.プレゼンテーション(登壇者が自身のユニークな活動やアイデアを発表)

3.参加型プログラム(ハッカソンやアイデアソン、ワークショップなど)

4.スタートアップ向け情報提供(国や自治体によるスタートアップ支援の紹介)

5.フリースペース(交流や対話を促す場。ブランコやVR体験など)

メルセデスの展示棟2階に設置されたブランコ。5つのブランコが円形に並び、自由に遊べるようになっている。4人グループの男女は向かい合って座り、交互に足が触れるようにタイミングを合わせて漕いでいた。新しい発想が生まれる仕掛けだ(撮影:Satoru Nakaya)

期間中は一日中、どこかのスペースで、何かしらのプログラムが行われている。来場者は場内を回って、自分が好きなプログラムに参加すればよい。基本的には事前登録も不要だ。例えば……。

幅広い知識と情報に触れられる場所

午前中は史上2番目に月面歩行を行った宇宙飛行士バズ・オルドリンのキーノートスピーチを聞く。バズは過去の経験談をユーモアたっぷりに披露しつつも、御年87歳にしてこれから叶えたい夢があるのだと熱く語り、来場者には「夢を叶えるにはあきらめないことだ」と説いていた。

宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏がキーノートスピーチに登場

ラウンジのフリーフードコーナーには無料の軽食とドリンクがあるので、軽い昼食をとり、午後からはmaker's spotへ行く。ここでは自治体や国際協力機構(JICA)のような公的機関の担当者がスタートアップ向けの支援策を紹介している。国境を越えて起業の場を求める人たちは耳寄りな情報が得られるかもしれない。

会場内のフリーフードコーナー(写真左)。ドライフルーツやオーガニックナッツバーなどを無料提供する。ドリンク類も無料で、ジュースはチャリティー付きのものを提供。全体に“意識高い系”のテイストだが、屋外に設置された有料の飲食ブース(写真右)は一転してラフでくだけた雰囲気だ(画像提供:Daimler AG)

また、creater's spotでは事前登録した参加者が「AIとCar2GO」をテーマとするハッカソンに取り組んでいる。ハッカソンは数カ月前からネットで募集をかけていたそうで、ドイツ国内の大学生・留学生を中心に、各国の若手が100人近く集まっていた。日本からは唯一、関西の男子大学生が参加。英語での議論には苦労したそうだが、新しい挑戦に得るものも大きかったとか。フランクフルト2泊3日分の宿泊代と食事代、近距離交通費、me-convention入場パス、そして緑色のおそろいのパーカーはすべてダイムラーの支給だ。

ハッカソン参加者はお揃いのパーカーを着用。20代の若者が大半を占めていた(画像提供:Daimler AG)

creater's spotの横の通路を抜けると、insight stageの入口がある。ここでは音楽で福祉活動を展開するミュージシャンや、3Dプリンタやレーザーカッターなどを使ったプロトタイピングを研究するMITのポスドクなど、若手のスピーチが聞ける。登壇者との距離も近く、スマホアプリを使って質問をすることもできるので臨場感があっていい。

かっちりとしたスピーチやセッションを希望するならforum stageへ。NVIDIAのエンジニアから人権活動家、現代芸術アーティスト、AIの研究者、チベットの僧侶まで、実に幅広い有識者の話を聞くことが出来る。

17時を過ぎるころにはフリーフードコーナーでビールの提供が始まる。ラウンジのソファで隣り合った人に声をかけて、今日の感想を交換するなんていうのも楽しい。

隣に座った中国人の若い女性はメルセデスに勤める友人に誘われて来場したそう。彼女自身はドイツの大学に留学中で、マーケティングを学んでおり、クルマに興味があるわけではないとのこと。ただ、プログラムはどれも面白く、AIの講演が印象深かったという。

……こんな風にして1日が過ぎていく。

クルマに関係ないプログラムも開催

3日間のプログラムのうち、タイトルでクルマを謳っているものは数個に過ぎない。いずれのプログラムも刺激的かつ最新鋭のコンテンツであることは間違いないが、モビリティに一切触れないものもあった。

しかし、登壇者の多くはモビリティ、クルマ、自動運転などに触れている。彼らが総じて口にするのは自動運転の実現した社会への期待感だ。運転から解放されたらこんなことができる、こんな移動の自由が手にできそうだ、そうしたらこんな新しいライフスタイルが実現できるのではないか…。一部には、ダイムラーがフランクフルト国際自動車ショーで披露したミュージカル以上に夢物語の要素が強い意見もあるが、それこそが重要。異分野の専門家が自動運転をどう受け止め、何に期待しているのか、多様な視点からの意見交換に価値がある。

コワーキングスペース(写真左)では小規模なワークショップを適宜開催。右は3Dプリンタがずらりと並んだコーナーだ。特段に珍しい装置ではないようだが、台数の多さに圧倒される(画像提供:Daimler AG)

また、会場の中央にあるメインステージでは、モーターショーで披露した車両を適宜入れ替えながらデモムービーを披露しており、来場者にここがダイムラーのイベント会場であることを時々思い起こさせてくれる。

とはいえ普段なら、ここは自慢のコンセプトモデルや市販モデルが並べられる場であり、クルマ好きが嬉々として写真を撮ったり、今度はこれに乗りたいなどとイメージを膨らませたりする場所だ。そのスペースを大幅に減らしたのは商業的にみれば、もったいないのかもしれない。me-conventionの入場料が約5万円とはいえ、来場者数は2,700人程度。会場のキャパシティーから見て収容人数には上限があり、いくらスポンサーを募ったところで、利益のことを考えたらまず割に合わないだろう。

それなのに、なぜダイムラーはme-conventionを開いたのか。私はダイムラーが世界との対比で自らのポジショニングを図る企業だからだと考える。

イノベーションを生み出すのは多様性と共創の場

いま、世界を賑わせている新しいビジネスはクローズドの研究室やオールドスタイルの価値観からは生まれていない。Facebookにしても、テスラやUberにしても、既成概念にとらわれない自由さが根底にある。そこに必要なのは適切なインプット、アイデアが広がるオープンな場、そしてアウトプットを共創できるパートナーなのだ。

その意味でSXSWは非常によく組み立てられている。いいアイデアは必ずしも熟考の先に出てくるわけではない。まったく関係ない話をしていたときに、ふと解決策が浮かぶという経験は誰しもあるのではないか。SXSWはそんな刺激に満ちたイベントだ。ジャンルにとらわれることなく、先進的で刺激的で良質なコンテンツを豊富に取りそろえる。多様なコンテンツがあるからこそ多様な人材が集まり、そこから新しいものが生まれる。

ただし、本家のSXSWがそうであるように、今回のme-conventionから自動車産業を潤すニュービジネスがどんどん生まれるわけではない。ハッカソンのアイデアが今日明日の商品企画に反映される確率は極めて低いだろうし、有能な人材を発掘できる保証もない。しかし、「実はSXSWがきっかけ」という好事例は存在する。恐らく、インスパイアレベルまで含めると、その影響力は計り知れない。そして、「何か面白いことをやっている」という評判は新たな情報と人材を引き寄せる。ここに醍醐味があるのではないか。

小さな卓球台や落書きスペースなど、童心にかえって無心になれる仕掛けがあちらこちらに置かれている(撮影:Aiko Hayashi)

第2回me-conventionが開催されるかどうかは今のところ分からない。しかし、世界の新たな潮流を体感するために、コラボレーションというカタチでイベントを開催したのはダイムラーの英断と言える。

日本メーカーにも若者のクルマ離れを憂うばかりでなく、未来を創る世代の感じている流れを体感し、共に流れを作っていくような決断を下してほしい。それは若者にこびることでも、若者向けの商品を開発することでもない。多様な価値観を持つ人材との共創活動なのである。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。