電機から全業種へ、CEATECがV字回復できたウラ事情

電機から全業種へ、CEATECがV字回復できたウラ事情

2017.10.11

盛況のまま幕を閉じたCEATEC JAPAN 2017

「CEATEC JAPAN 2017」が10月6日、幕を閉じた。長期間に渡り来場者数が減少していたCEATECだが、昨年から「CPS/IoTの総合展示会」へと舵を切ったことで上昇に転じ、今年の来場者数は15万人を超えた。ただ、この数字の改善以上に評価すべきポイントは、かつての「電機業界の見本市」という立て付けから、幅広い業種が参加する総合展示会へのステップアップという点だ。

IoTの上を行く「CPS」という考え方

そもそも、「CPS/IoTの総合展示会」というテーマを理解できる人はどの程度いるのだろうか。モノのインターネットと称される「IoT(Internet of Things)」という言葉こそ一定の認知度があるとみられるが、「CPS」という言葉は認知されておらず、頭の中に一瞬「?」マークが浮かぶ人も多いだろう。

CPSは「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」の略称で、CEATEC JAPANの主催団体の一つ、電子情報技術産業協会(JEITA)は「実世界(フィジカル空間)にある多様なデータを、センサーネットワークなどで収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術などを駆使して分析、知識化を行い、そこで創出した情報、価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくもの」と定義している。

簡単にいえば、フィジカル(現実)の社会からIoTによって収集されるデータをもとに、サイバー(デジタル)で処理を行い、そこから導かれた解決策を再度フィジカルな社会に実装して課題を解決するというものだ。つまり、IoTはCPSを構成する一部であり、重要なパーツという言い方にもなる。CPSの概念自体は米国で生まれたものだが、日本では経済産業省がこの言葉を多用しており、それがCEATEC JAPANの標語に利用された経緯でもある。

CEATEC JAPANは、「エレクトロニクスショー」と「COM JAPAN」の2つの展示会を統合して、2000年に、IT・エレクロトニクス産業の総合展示会としてスタート。2007年のピーク時には国内外895社の企業および団体が出展し、20万5859人の来場者数を誇っていた。

しかし周知のように、日本はデジタル家電市場において、世界的な競争力を失う。韓国や中国、台湾などが台頭し、CEATEC JAPANもその影響を受けないわけにはいかなかった。2008年以降は若干の上下動がありながらも、2015年は出展社数が531社、来場者数も13万3048人と過去最低を記録することになった。

ソニーや日立製作所、東芝といった国内の主要電機メーカーが続々と参加を見送り始めていたことから、業界内でもCEATEC JAPANの役割に対して「限界」を指摘する声が出始めていたのも確かだった。

そうしたなかで、2016年に、CEATEC JAPANは、展示会全体の方向転換を打ち出した。それが、「CPS/IoTの総合展示会」であった。家電見本市から、CPS/IoTによるソリューション展示のイベントへと転換することを目指したのだ。いわば、「モノ」から「コト」への展示の切り替えだ。

その成果は上々だった。CEATEC JAPAN 2016では、648社が出展、来場者数も14万5180人と、いずれも前年から上昇に転じ、今年は出展社数が667社、来場者数は前年比4.7%増の15万2066人と、いずれも前年実績を上回ることになった。

CEATEC JAPAN 実施協議会は、当初見込みの16万人こそ下回ったものの、「1日あたりの登録来場者数平均は2008年以来、9年ぶりに3万8000人を超えた」という点を強調した。過去17回のCEATEC JAPAN開催のなかでも、この水準に達したのは5回だけ。ピーク時の4万1172人には及ばないが、着実に復活の道を歩んでいることがわかる。

だが、出展社数の増加や、来場者数の増加といった数値以上に、CEATEC JAPANを評価すべきなのは、これまでCEATEC JAPANには縁のなかった新たな企業や来場者が増えているということだ。新規に出展したベンチャー企業や研究機関は、国内で44社、海外では47社に達している。

また、CEATEC JAPANに初めて訪れた来場者が全体の約3割に達したと想定しているようだ。昨年も出展社の約4割が初めてCEATEC JAPANに出展。来場者でも約3割が初めてCEATEC JAPANを訪れたという実績だった。これが2年繰り返されたことになり、逆算すれば、この2年で、CEATEC JAPANへの出展社と来場者は、大きく様変わりしていることになる。

実際、出展した企業の業種は様々だ。金融、旅行、玩具、住宅、工作機械、自動車、通信、印刷、繊維なとの企業が出展。まさにIT/エレクトロニクス産業の枠を超えた企業が参加していることで、新たな関心層を取り込めた結果に繋がったといえるだろう。

IT/エレクトロニクスは産業間コラボの新時代へ

例えば金融業界からは昨年に引き続いて三菱UFJフィナンシャル・グループが出展。さらに今年は三井住友フィナンシャルグループが初めて出展したほか、出展こそなかったものの、みずほフィナンシャルグループがカンファレンスに参加した。三大メガバンクが顔を揃えたことで、単なる電機見本市とは性質が異なることがよくわかる事例だろう。

また工作機械メーカーでは、ファナックとアマダホールディングス、ジェイテクトの3社が出展。自動車メーカーについては、ホンダ1社だけの出展だが、これは27日から開幕する東京モーターショー2017への出展を自動車メーカー各社が優先させたのが理由。来年は、2年に1回の東京モーターショーが開催されない年であることから、再び自動車メーカーの出展が期待される。

異業種企業の出展に共通しているのは、それぞれの展示内容が、IoTや上位レイヤーのCPSに繋がるという点だ。CPSやIoTという切り口の展示会へと舵を切ったからこそ、これらの企業は、CEATECJAPAN 2017に出展をしたというわけだ。

工作機器メーカーのCEATEC JAPANへの出展も初めてだ。写真はファナックのブース

もともとITとエレクトロニクスは、あらゆる業種に波及する産業。特にITはかつて、社内業務の効率化などが目的だったものの、昨今は説明するまでもなく、顧客サービスへ活用することが当たり前になりつつある。スマートフォンやSNSが普及したことで、IoTとITの活用、そしてその先のCPSは不可欠な避けられないミッションとなりつつある。

今年初めてCEATEC JAPAN 2017に出展したある異業種企業のブース担当者は、「予想以上に多くの人がブースを訪れ、出展した手応えを感じている。消費者視点で展示を見る人よりも、一緒にビジネスを模索したいという視点で説明を求める来場者が多かった。CEATEC JAPANの終了後、どんな形で、新たなビジネスにつながるのかを期待している」と話す。

新たに出展した企業や異業種企業では、単に最終製品を見せるというよりも、未完成段階の技術やサービスを見せ、共創型の展示を行ったケースが目立っていたのが特徴だ。これまでのIT、エレクロトニクス業界のための展示会から変化していることが、こうした点からわかるだろう。

CEATEC JAPAN実施協議会では、「CEATEC JAPAN 2017は、業界の垣根を超え、政策、産業、技術を連携し、IoT、ロボット、AIを活用した『未来の社会』を共創する展示会として、さらなる躍進を遂げた」と自信をみせる。

あまり知られていないが、主催団体の1つであるJEITAは今年5月の通常総会で定款を変更し、正会員として加入できる資格条件を、従来の「エレクトロニクス製品を生産する企業」から、「エレクトロニクス製品を使用し、サービスを提供する企業」にまで範囲を広げた。

これを言い換えると、「あらゆる産業の企業を対象にする」ともいえる。事実として、定款変更後にトヨタ自動車がJEITAの正会員として加入している。IT/エレクトロニクス産業の業界団体という立場は変わらないものの、参加企業はIT/エレクトロニクス産業の枠を超えることになる。

JEITAでは、「CPS/IoTという観点で、新たな業界団体への進化を遂げた」と説明するが、これと同じことが、CEATEC JAPANでも起こっている。異業種産業からの出展は、IT/エレクトロニクス産業の新たな構造変化ともいえるのだ。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
関連記事
Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

関連記事