新型「リーフ」は使いやすい電気自動車になった? 日産担当者に聞く

新型「リーフ」は使いやすい電気自動車になった? 日産担当者に聞く

2017.10.12

電気自動車(EV)への注目が集まる中、技術的に長足の進化を遂げて登場した日産の二代目「リーフ」。2010年に登場した初代に比べ、クルマ選びの選択肢に入る機会は格段に増えそうだが、購入検討者が気にするのは、そもそもリーフは買いやすいクルマなのか、そして、買ったとして便利に使えるのかといったポイントなのではないだろうか。その辺りを含め、リーフのマーケティングを担当する日産の寺西章氏に話を聞いた。

日産の日本EV事業部でマーケティングマネージャーを務める寺西章氏

航続距離への不安は解消、EVシフトが追い風に

日産リーフが2010年に発売された当時、同社CEOだったカルロス・ゴーン氏は2016年までの目標として、日産とルノーを合わせて150万台のEVを販売すると宣言した。だが、2017年時点で日産とルノーを合わせた販売台数は40万台を超えたにとどまっている。

とはいえ、ここへきて世界の自動車メーカーが電動化へ意欲を示し、逆にハイブリッド車(HV)は環境車と認められなくなる事態も起きている。そうした時代の追い風が吹き始めたところに登場した日産リーフの二代目は、JC08モードで400キロという、今日のEVの一充電走行距離では最先端に並ぶ性能を持つに至った。これまで、消費者の多くが心配していた走行距離への不安は、解消したと言っていい。

航続距離でEV最先端の水準を実現する新型「リーフ」

ガソリン車との勝負に向け条件は整った

技術的進化が進む一方、日産のEV販売戦略はどのような状況にあるのか。日産の寺西氏は次のように語る。

「EVのマイナス要因は、開発側が大幅に改善してくれました。これで、ガソリンエンジン車などと同じ条件で勝負できるようになったと思います。その上、先進装備として『プロパイロット』や『e-Pedal』、また新型リーフからの新装備となる『プロパイロット・パーキング』などが加わったこともプラスの方向へ作用し、お客様に魅力を感じていただける商品になりました」

「販売面では、従来の『エコカーとして』とか、電気代の安さという経済性の側面だけでなく、それ以上の魅力がEVにはあることを伝えていきたいと考えています。新車カタログでは“新次元”という言葉を使って表現しています」

新型リーフは日産が初めて「プロパイロット・パーキング」を導入したクルマとなった

「媒体を通じた取り組みでは、EVのリーダーであるという自負や姿勢を訴え続けるとともに、より多くの方に乗ってみたいと思っていただけるようなイメージづくりをしていきたいと思います」

「その上で、やはり実際に乗って体験していただくことが、ご購入いただくうえで最も重要な点と考えています。弊社の調査によれば、EVに乗った経験のある方は、まだ免許人口の2~3%にも届かないほどです。経験者が少ないことから、古い印象のまま、馬力が無いのではないかとか、排気音がしないのでつまらないクルマなのではないかと思われているところがあります。しかし、一度乗ってみていただければ印象が変わり、まさに目から鱗が落ちるといった体験をしていただけるでしょう。販売店で試乗をしていただき、戻ってきたところで最新のプロパイロット・パーキングの自動駐車を試していただければ、未来感覚を感じていただけるのではないでしょうか」

百聞は一見に如かずと言うが、まさにEVの本当の魅力を知るには体験に勝るものはない。とはいえ、まだ購入するかどうかを決めかねている段階で、販売店を訪ねるのは気が引けるという人も多いだろう。

寺西マネージャーはリーフの魅力は乗れば分かると自負するが、販売店での試乗にはハードルを感じる消費者も存在する。そこで日産は、「イオンモール」などでの体験試乗を全国的に展開していく考えだ。「『ノートe-POWER』でも盛況でしたので、その経験を踏まえ、新型リーフでも体験試乗を行って、環境にいいクルマというだけでないワクワク感を広めていきたいです」と寺西マネージャーは語る。

環境性能にとどまらないリーフの魅力は乗れば分かると寺西マネージャーは語る

集合住宅の充電問題にも切り込む日産

ところで、EVの普及で課題となっているのが、集合住宅における充電コンセントの設置の難しさである。居住者がEVを購入し、敷地内の駐車場で充電したいと思っても、共同利用の場所である駐車場にコンセント設置工事を行うには、管理組合の合意が必要になる場合が多い。そこで否決されてしまうと、EVの購入を諦めなければならないことになりかねない。

そこで日産、大京アステージ、NECの3社は、集合住宅へのEV用コンセント設置を促進するための覚書を締結し、既築のマンションへの充電コンセント設置を支援することになった。まずは、選定されたマンションでの実証が始まる。

その内容として、まずはマンション駐車場への充電設備の設置費用を実質ゼロ円とし、住民側の負担をなくす。そして、管理組合との折衝や、約款の改訂などには大京アステージが支援を行う。これによりEVの所有者は、月々のサービス基本料と電気代の支払いをするだけで充電設備を使えるようになる。

マンションにEVの充電設備を設置するのはなかなか難しい

集合住宅における充電コンセント設置の問題は、日産だけの話ではなく、またEVに限った話でもない。充電を行うプラグインハイブリッド車(PHV)も同様であり、他の自動車メーカーや輸入車メーカーも、解決の糸口を掴めずにいた課題であった。そこに、日産が一歩切り込んだことになる。

充電し放題のプランも

一方で、日産の調査によれば、戸建てのリーフ所有者でも、自宅に充電コンセントの設置工事をしている人は4割程度。実は、公共の充電器を利用してリーフに乗っている人が多いのだ。それはガソリンスタンドで給油する感覚だが、EVの充電には給油よりも長く時間が掛かる。なぜ、そのようなリーフの乗り方をする人がいるのだろうか。

自宅で充電できなくてもリーフは運用できる

日産では、定額で何度も充電できる“使い放題プラン”を実施している。月額2,000円を支払えば、充電のたびに掛かる電気代を定額で済ませられるのである。極端に言えば、2,000円で日本一周のドライブもできてしまうというキャンペーンである。距離を乗る人には、自宅で充電するより安上がりになるだろう。

日産は、初代リーフ発売の際に1週間無料で試乗できるキャンペーンを展開した。実際にEVの使い勝手や走行感覚を日常生活のなかで体験してもらうことで、リーフの販売につながったとの話も耳にする。このように、これまでのエンジン車やHVでは採用されてこなかった新発想の販売促進策を、これまでも日産は取り入れてきているのだ。

とはいえ、1台のEVを売るために、それだけの手間や投資をなぜ続けられるのか。端的に言って、EVを販売することで、かえって損をしてはいないのか。寺西マネージャーに聞くと、次のような答えが返ってきた。

「そこは、かつてCOOを務めてきた志賀俊之が、『EVは大義である』と常々言っていて、『虚仮の一念岩をも通す』で、その思いを貫こうという空気が今も社内にあります。確かに持ち出しは多いですが、新型リーフの登場は、そのターニングポイントになるだろうと考えています。HVに代われるかの勝負の局面にあるので、投資を続け、EVがブランドとしてお客様に受け入れられるよう働きかけていきます。そして、EVの大衆化を実現し、花を咲かせると信じてやっています」

EVへの取り組みは日産の大義でもある

我慢の先行投資が結実する日は

それでも事業である以上、いつまでも投資を続けるだけでは済まされない。寺西マネージャーは今後の見通しについて、次のように語る。

「10年も先までというのは考えられないでしょう。5年先くらいまでのところで、日産としてEVの存在を自社の個性に定着させるところまで持ってゆけるのではないかと思います。そのためにモーターショーで車種展開を提示していきますし、日産・ルノー・三菱の提携の中で、2022年までに12台のEVを出していくとしています」

「充電器の整備においても、充電網の整備に力を入れていきたいですし、自宅での充電環境を整えることもしていきたいです。世界各地のモーターショーで、各自動車メーカーがEV戦略を発表しているように、EVが事業として成功していけるような環境になりつつあることを、国内の販売店さんにも理解していただけるようにしていかなければなりません」

EVが事業として成立する環境は整いつつある

そしてここへきて、販売が好調の「ノートe-POWER」が、EV販売のきっかけにもなっているという。

「(ノートe-POWERでは)充電せずに、EVのような走りを体験できることによって、EVの凄さを知っていただけるようになりました。そして、一度モーターの走りを経験してしまうと、エンジン車には戻れないといった声も耳にします。販売店でも、お客様にリーフとノートe-POWERの両方を試乗していただき、利用のご事情に合わせた選択をしていただく営業の仕方もしています。ノートe-POWERの誕生が、リーフ販売の後押しにもなっているのです」

どんどん身近になるEV、勢いづく日産のマーケ部隊

低速トルクの太いディーゼルターボエンジンが運転のしやすさを謳うが、EVのモーターはそれ以上に力強く、であるからこそ少しのアクセル操作でも速度にのせていくことができる。軽いペダル操作は、運転のしやすさにつながるのである。そういった部分が、もうエンジン車には戻れないといった声にもつながっているのだろう。なおかつ、排ガスゼロはEVならでは強みだ。

クルマの進化という技術開発と、エンジン車とは違うEV体験の提供というマーケティングの取り組みが両輪となり、いよいよ、EVを身近に感じられる時代が近づきつつあると言えるのではないか。“やっちゃえ NISSAN”から“ぶっちぎれ 技術の日産”へ、EVのマーケティングも勢いづいている。

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NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu