IoTのパナソニックとTVのシャープ、両社に見るCEATECのゆくえ

IoTのパナソニックとTVのシャープ、両社に見るCEATECのゆくえ

2017.10.12

CEATEC JAPAN 2017

10月3日~6日までの4日間に渡って開催されたCEATEC JAPAN 2017は、展示会のコンセプトを「CPS/IoTの総合展示会」に変更して2回目だった。異業種企業を含めた新たな出展社が増加し、来場者の客層が変化。CEATEC JAPANそのものの変容を印象づけた。

CEATEC JAPANの主力は、大手電機メーカー各社の展示だが、今年のCEATEC JAPAN 2017では彼らの展示内容にも変化が見られた。その最たる例がパナソニック。というのも、今年のパナソニックブースの特徴は、薄型テレビを1台も展示しなかったからだ。

パナソニックが期待する「オープンイノベーション」

家電見本市、いわゆる「最先端ITエレクトロニクスの総合展示会」時代は、当然ながらテレビの展示が主役だった。もちろん、パナソニックがテレビを展示しないCEATEC JAPANなどは考えられなかったわけだ。しかし、「CPS/IoTの総合展示会」となったCEATEC JAPANには、テレビの展示は不要であるという判断が、同社には働いたようだ。

方向性が変わったその展示の中身は、新たに発表したB2B向けIoTサービス「μSockets」を活用したソリューション展示のほか、RFIDプロトコルを利用して端末への給電と通信を同時に行うマイクロ無線給電、幼児向けソーシャルロボット「cocotto」、温度・湿度などの計測が可能なデバイスを衣服に縫い付けることができるウェアラブルメーカーパッチ、カロリー/栄養素チェッカー「CaloRieco」、顔を撮影した静止画上で、本物のメイクをするかのように自由にデザインができる「メイクアップデザインツール」など。

パナソニックはμSocketsによるソリューション展示などに力を注いだ
本物のメイクをするかのように自由にデザインができる「メイクアップデザインツール」

さらに、2種類のカメラと画像処理技術により非接触で人の感情、眠気、温冷感を推定する「感情・体調センシング」や、独自レーザスキャン技術によって周囲にある物体までの距離と方向を広範囲に計測できる「三次元距離センサ 3D LiDAR(ライダー)」といったように、製品化時期が明確ではなかったり、他社との協業によって利用範囲が拡大すると想定される技術が中心となった。

加えて、ブースの「メインステージ」においても変化が見られた。例年であれば女性コンパニオンがステージに立ち、最新製品・技術を大々的に紹介する演出が行われている。これは、過去のCEATEC JAPANで多くの大手電機メーカーが行ってきた展示手法だ。

だが今年のパナソニックブースは、メインステージとなる部分を「Open Innovation Lab」と呼ぶステージに変え、パネルディスカッションやセミナーなどを毎日4回、テーマを変えて実施した。派手な演出がなく、地味な印象を与えることは否めない。しかしパナソニックは、ブースのど真ん中にこれを設置することで、「来場者との対話を通してオープンイノベーションの創出を目指す」という内容に変えたのだ。

パナソニックは、ブース中央に「Open Innovation Lab」を設置。パネルディスカッションやセミナーなどを行った

実際、パナソニックブースを視察した同社 代表取締役社長の津賀 一宏氏は、「今までのように、パナソニックが正しいと思ったものに対して、時間と金をかけるというやり方はリスクが高い。いかにオープンに手を握り、リスク分散をするかが大切である。パナソニックは社内外とクロスバリューイノベーションというスローガンのもとで、オープンなバリューのチェーンを作るということを中核にしている。Open Innovation Labは、それを形にしたものである」と語っていた。

一方で「家電の展示が無くなった」という声に対して「家電の定義の仕方次第だ」(津賀氏)と反論。製品ユーザーの暮らしに寄り添うものを"家電"と定義すれば、B2Bのようなパートナーシップで作る家電があってもいいと話す。

「サービスという形で、機器を売り切りしないビジネスモデルで作る新しいジャンルがあってもいい。いずれも、暮らしに密着し、お役立ちをするという点では何も変わらない。その点では、パナソニックの考え方には変化がない」(津賀氏)

これまでのパナソニックと同じ展示を期待して訪れた来場者にとっては、従来型家電が用意されていないブースに「期待外れだった」という印象を抱いたかもしれない。しかしパナソニックは、「CPS/IoTの総合展示会」という観点にあわせる形で、新たな展示内容に踏み出したともいえる。

これは、2013年1月に米ラスベガスで開催されたCES 2013でパナソニックブースがB2B中心へとシフトし、来場者を驚かせた時のインパクトに近い。これはB2C中心だったCESが、B2Bを視野に入れた展示会へと踏み出すきっかけになったのは間違いない。

これに対して、従来型の展示内容を踏襲したのがシャープであった。まさにパナソニックとは対照的な展示内容であったといえる。

シャープは中央部に「事業ビジョンステージ」を配置。70型ディスプレイを16台使用して、8K相当の解像度を実現したマルチディスプレイによるステージを用意した。印象的な映像、音楽と共に女性コンパニオンがナレーションを加え、同社の事業ビジョンを紹介してみせた。

シャープは女性コンパニオンが中央ステージで事業ビジョンなどを説明

また、IoTによって各種家電製品を接続し、快適なライフスタイルを実現するデモストレーションを行う「AIoT ワールドステージ」と、超高精細8K映像技術をコアに新たなビジネスの広がりを模索する「8K ワールドステージ」をそれぞれ設け、ここでも女性コンパニオンが、内容をストーリー仕立てで紹介した。

展示内容は、AIoT関連商品や各種「COCORO+」サービスの具体的な連携、発表したばかりの料理キット宅配サービスの「ヘルシオデリ」、CEATEC JAPANでは常に人気者となる「ロボホン」、AIoT対応液晶テレビ「AQUOS」の新製品や8K対応テレビなど、すでに入手できたり、近々購入できるものが中心となっていた。

8K対応テレビをはじめ、いますぐに買える製品を全面に打ち出す

もちろん、IGZO技術を活用したSuper Wide Displayや円形ディスプレイを搭載したDriving Assistantのほか、耳にかけるだけで咀嚼回数やスピードなどを計測し、正しい噛み方を提案する新たなヘルスケアツール「bitescan(バイトスキャン)」、最終糖化産物であるAGEs(エージーイー)の蓄積レベルを簡単に測定できる「AGEsセンサ」など、近い将来に商品化するものも展示されたが、それらが前面にあるわけではなかった。

こうした「期待通りの展示内容」を実現してみせたシャープのブースは、例年通りの終日黒山の人だかりという状況だったようだ。今後、パナソニック型の展示が増えるのか、シャープ型の展示が継続されるのか、出展社にとって、来場者にとって、そして、主催者にとっても注目すべき動向だといえそうだ。

来場者が求める"シャープ型"、一方で差別化には"パナ型"が重要に

もし、パナソニック型の展示が増加するのであれば、出展する企業の業種の幅は今後広がりをみせるだろう。そしてCEATEC JAPANを一度離れたソニーや日立製作所といった企業が、この変化に気が付けば、再出展するという可能性もありそうだ。奇しくも、彼らもB2Bソリューションの拡充を進めているプレイヤーであるからだ。

しかし、シャープ型の展示がこれからもCEATEC JAPANの主力になるというのであれば、主催者はCESやIFAという海外の大規模展示会との競合を見据えながら、その方向性を改めて検討し直す必要がある。実際、今年のブースの盛り上がりを見れば、パナソニックブースよりも、シャープブースの方が確実に盛り上がっていた印象を受ける。あくまで「来場者ウケ」という視点では、理解しやすいシャープ型展示が求められているという結論に至る。

昨日の記事でも触れたように、2年目を迎えた「CPS/IoTの総合展示会」としてのCEATEC JAPANはまだまだ過渡期と言える。CEATEC JAPAN実施協議会では、「来年は、より幅広い業種、業界の参画を促し、『つながる社会、共創する未来』の具現化と実現に向けて、さらなる変革を加速する」と語る。

主催者側は明確にしていないが、CPS/IoTの総合展示会を継続するのではあれば、今後は、パナソニック型の展示内容を増やすように働きかけていくことが見込まれる。それこそが国内外の展示会と差別化できる要素であり、CEATEC JAPANが生き残る道として考えている様子が伺えるからだ。

CEATEC JAPAN 2018は、2018年10月16日~19日の4日間、千葉県幕張の幕張メッセで開催される予定だ。出展各社は、今年の成果をどう評価するのか。そして今回出展した異業種企業やこれまで出展していなかった企業、そして出展をやめた企業が今回のCEATECに対してどんな評価を行い、どんな印象を持ったのか。その結果が、来年のCEATEC JAPANの姿になるはずだ。3年目を迎える新生CEATEC JAPANに向けた動きはもう、始まっている。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。