結局、LINEはスマートスピーカーで何がしたいのか

結局、LINEはスマートスピーカーで何がしたいのか

2017.10.13

LINEは10月5日、スマートスピーカー「Clova WAVE」の発売を開始した。昨今話題になっているスマートスピーカー製品だが、比較的単価も安く、単独で大きな利益が見込める製品ではない。一体どのようなビジネスモデルを描いているのだろうか。

赤外線リモコン+ラジオで実用性アップ

「Clova WAVE」は、今年1月に発表され、9月に先行販売を開始していた製品だ。簡単に言えば「スマートフォンの頭脳を搭載したスピーカー」と言える製品で、音声入力によって起動し、音楽配信サービス(Clova WAVEの場合、LINEミュージック)を流したり、メッセージの送受信、天気やニュースの読み上げ、赤外線リモコン機能によるTVの電源オン・オフなどが行える。

本体価格は1万4000円(税込)だが、LINEミュージックの1年間利用権がセットになった「Clova WAVE + LINE MUSICセット」が1万2800円で、2018年1月末までの期間限定で販売される

先行販売モデルからの違いとしては、Clova WAVE専用のLINE家族アカウントを作成して、そのアカウントを通じてメッセージの読み上げや送信が行えるようになる。例えば外出先の父親に「帰りに洗剤買ってきて」というメッセージを、Clova WAVEから送れるようになる(受信側にはClova WAVEからのメッセージだとわかる)。逆に父親から「今日は遅くなる」というメッセージがClova WAVE側に届き、リビングにいる全員が聞ける、ということもできる。

ちょっとわかりづらいが、Clovaに割り当てられたアカウントとLINEのメッセージをやりとりしているところ。共有機器では家族の誰のアカウントを使うかが問題になりがちだが、うまくクリアしている

今後は、赤外線リモコンの電灯やエアコンへの対応、声による話者の識別、音声の翻訳、カレンダーやメモ機能、ショッピングやデリバリーへの注文、タクシーの配車などを音声から行えるようにする予定だという。

またラジオの再生(radiko提供)や鉄道の経路検索・運行情報(ヴァル研究所、レスキューナウ提供)、童話の朗読(アイフリークモバイル提供)など、サービスパートナーとの連携による機能も随時提供される。

なお、先行販売販売モデルについても、ソフトウェアのアップデートで製品版と同等になる。

ハードウェアの展開としては、LINEスタンプのキャラクターを象った「CHAMP SALLY」「CHAMP BROWN」、さらに今回初めて発表された、それらのミニモデルの発売も予定されているという。ちなみにLINEはClovaの発表時に、スマートディスプレイ「Clova FACE」も「今冬発売予定」として発表しているが、その後メディアの前での発表はないので、開発に多少遅れが生じている可能性がある。

キャラクターを作用した「CHAMP」のサリーモデル(左)とブラウンモデル(右)。タカラトミーと提携しているので、そのうち同社からアニメやゲームのキャラクターモデルが登場するかもしれない

Clovaの目標はアジア圏での覇権か

音声アシスタントを搭載したスマートスピーカーというと、Clova WAVEとほぼ同時期にグーグルが「Google Home」の販売を開始したほか、アマゾンも年内に「Echo」シリーズの導入を発表済みだ。アップルも日本導入は未定ながら「HomePod」の販売を年末に控えている。

Clova WAVEと同日に日本語版が発表された「Google Home」。最初から発話認識を行えるなど、機能的にはClova WAVEを上回る点もある(画像:グーグルウェブサイトより)

スマートスピーカーや音声アシスタントがなぜ大きく注目されているのか。これは、スマートフォンがPCからの流れを汲んだGUIの技術であるのに対し、次世代のインターフェースは音声入力(VUI)になると考えられているからだ。日本人の感覚からはなかなか人前で音声によるコマンド入力や読み上げをしたくならないのだが、世界的にはそれほど忌避されているわけではない。

ディスプレイを注視していなければならないGUIに対し、VUIはディスプレイを持たないIoT全般に対する操作手段となりうる。また運転中のカーナビのように、ディスプレイはあるが両手が塞がっており、直接操作するわけにいかないといったシチュエーションも、VUIなら解決できるわけだ。いわゆるスマートホームにしても、IoTの一種である以上、多くの製品でVUIが使われることになるだろう。

ただし、AIアシスタントの開発には非常に大きな開発リソースが必要になる。IoTや家電メーカーが自社製品に搭載したくとも、簡単に開発できるものではない。そこで既存のAIアシスタントのライセンスを受けて自社製品に搭載するのが近道となる。AIアシスタントを開発している側にとっても、ライセンスがひとつの収入源となるだろう。

とはいえ、搭載した製品が販売したい市場での言語に対応していないようでは意味がない。従ってAIアシスタントにとって、認識率だけでなく、いかに多くの言語に対応するか、あるいはピンポイントでターゲット市場の言語に対応するか、が大きな問題になるわけだ。

現在米国ではAmazon Echo、およびそのAIアシスタントであるAlexaが大きなシェアを確保しているが、Alexaは(今年中に日本に導入予定ではあるが)今の所、対応言語が英語とドイツ語などに限られている。

一方、スマートスピーカー市場では出遅れたグーグルだが、スマートフォンOSでは世界中に大きなシェアを確保しており、音声アシスタントであるGoogleアシスタントも英語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、インドネシア語、日本語、ポルトガル語、スペイン語と、多言語対応が進んでいる。中国でも中国語に対応した独自のAIアシスタントを搭載したスマートスピーカーを各社が開発・販売しているようだ。

ここでようやくClovaに話が戻るが、Clovaは日本語と韓国語の認識を中心に開発されているAIアシスタントだ(韓国語版は「NAVER Clova」)。現時点で、この2言語両方に対応しているAIアシスタントはほかに存在しない(Googleアシスタントが対応予定)。またLINEのシェアを考慮するなら、タイ語とインドネシア語、中国語(台湾)への対応も不可欠だろうが、グーグルがインドネシア語で先行するものの、Alexaには先行できる見込みが高い。

従って、Clovaとしては日本市場や韓国市場を中心にしっかり足場を固め、LINEの影響力が高いアジア圏の中で確固たる地位を築くことが当面のゴールになりうるだろう。特に日本ではLINEはコミュニケーションインフラとして高いシェアを持ち、決済機能なども提供している。有力な機器メーカーもまだまだ多く、ローカルな市場であっても先行者利益は十分期待できる。そのためには現在の日本語認識機能をさらに高め、実用性を上げていかねばならない。Clova WAVEがLINE MUSICを1年間実質無料にするなどして普及を急ぐのも、まさにその第一歩なわけだ。

逆にAI機能を搭載するIoTを開発する側としては、これからはどのAIアシスタントを選択するかが、製品戦略の上でのポイントになるだろう。日本市場だけを見据えて行けばClovaは非常に魅力的だが、世界展開となるとそうもいかなくなる。複数のアシスタントに対応させるなど、これまでの製品開発とは違った難しさが出てくるだろう。LINEはClovaを中心としたエコシステムの構築を考えているようだが、こうした悩みに対して今後どのように対応していくのかが注目される。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。