ローソンらとタッグも障壁高く、楽天のドローン事業が抱える問題

ローソンらとタッグも障壁高く、楽天のドローン事業が抱える問題

2017.10.14

楽天とローソンは共同で、福島県南相馬市において、移動販売車とドローンによる商品配送の連携について、実証実験を開始する。未来のロジスティクスを担うと期待されるドローン配送だが、事業化に向けてはまだまだ障壁も多いようだ。

写真左から、楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、福島県南相馬市長の桜井勝延氏、ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏

揚げ物が空を飛んでやってくる

福島県南相馬市は、2011年3月の東日本大震災による津波で大きな被害を被っただけでなく、続く福島第一原発事故で一部が避難区域に指定された。今回実証実験が行われる小高地区はまさに避難区域に指定され、2016年7月に避難指示が解除され、徐々に人が戻りつつあるが、店舗などはほとんどが閉店したままで、買い物が困難な地域になっている。そんな中、2016年10月にローソン南相馬小高店がオープンし、地域の貴重な購買手段として作用している。

今回の実験は、この南相馬小高店で行われている移動販売車と並行して、楽天のドローンによる配送も行うというもの。楽天はこれまでにも南相馬市でドローンによる長距離貨物配送の実証実験を行なっているが、今回の実証実験では移動販売車の設備では温かいまま運べない「からあげクン」などのホットフードを、注文から10分程度で移動販売車が訪れるスペースまで届ける。購入者は事前に店舗へ電話で注文をしておき、移動販売車が販売と決算を行う(現金のみ)。実験は週1回のペースで半年をめどに行われる予定だ。

ローソンが使用する移動販売車。冷凍・冷蔵品を扱える4温度帯対応車両はあるのだが、暖かい品物のほうはこれまで扱えなかった

実験に使われるのは楽天の「天空」ドローンで、あらかじめ設定されたルートを自律飛行で配送する。ドローンは飛行ルートなどの制限が大きいが、今回の実験では主に河川の上を飛ぶことで安全性を確保しているという。

実験で利用する楽天の「天空」ドローン。約2kgまでの搭載能力がある。「からあげクン」にすると約10箱ぶんだが、実際には容積が足りず、5つ程度が限界ではないかとのこと

ローソンはすでに、全国でおよそ70台の移動販売車を所有しており、過疎地や郊外、工事現場、高齢者施設などを中心に展開している。まだまだ社会貢献という意味合いが大きいとのことだが、要望はかなり大きく、今後は台数をさらに増やすとともに、都市部など採算が見込める地域にも展開を進めていくという。移動販売というと「昭和」なイメージが強いのだが、たとえばオフィス街の弁当の移動販売にコンビニ業界も参入すると考えれば、確かに需要は大きそうだ。

小高地区以外の地域でも、移動販売車が地域の交流のための貴重な機会になっているとのこと。買い物で近所の人たちと顔をあわせるのを楽しみにしているお年寄りも多いという

ドローン配送事業化に残る障壁

ローソンの竹増社長によれば、コンビニの店舗まではいいが、そこから移動店舗車両を消費者の元へ届ける、いわばラスト1マイルに、労働者不足という障害があるという。そこでドローン配送や自動運転などの技術とその将来性に期待しているというわけだ。

一方、ドローン配送を担当する楽天側からは、規制の多さへの不満が聞こえる。記者会見で楽天の三木谷社長は、規制緩和などについて「人口減少の傾向がある中、自動化は欠かせない技術」と指摘しつつ、「ドローンの規制緩和について、もう少し柔軟性が欲しい。ライドシェアなどについても、日本はかなり遅れていると感じる」との不満を述べた。特に第三者上空の飛行許可については、海上などを飛ぶ場合でも毎回許可が必要になるということで、事業化を考えるといち早く撤廃または緩和が必要になる部分だ。

楽天のドローンビジネスが昨年から2020年までに描いているロードマップ。実証実験などは順調に進行しているようだが、多くの企業や省庁が絡むだけに、進行速度は早いとは言えない状況だ

ドローンの運用ルールについては、2020年をめどに都市部でのドローン物流を実現するべく、関係省庁が承認基準等の規制緩和を進めている最中ではあるが、IT企業のスピード感からすると、遅々として進んでいないと感じられるのだろう。

今回の発表にはローソンの竹増社長、楽天の三木谷社長、さらに南相馬市の桜井市長が揃い踏みという力の入れようだったが、ドローン事業全体としては「着実に進んでいるが、まだまだ先は長い」と感じさせられずにいられなかった。錚々たるメンバーによる発表も、「これだけ力を入れているのだから、規制緩和などをもっと進めろ」というアピールにも見える。

ドローン物流の技術そのものは、インフラが整備されていない地域への輸出産業としても期待できるものだ。2020年という行政側の「ゴール」はなかなか前倒しにならないだろうが、国際的な競争力を失わないよう、産業側への配慮にも期待したいところだ。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

関連記事
スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

関連記事