なぜルノーの台数は増え続けるのか、新型「メガーヌ」に見る独自戦略

なぜルノーの台数は増え続けるのか、新型「メガーヌ」に見る独自戦略

2017.10.14

ドイツ車が約6割という日本の輸入車マーケットで着実に伸びつつあるルノー。数字でアピールしにくいと言われるフランス車をどう売っているのか。新型「メガーヌ」の発表会でルノー・ジャポンの社長が口にしたのは「FTS」の3文字だった。

11月9日に発売となる新型「メガーヌ」

ドイツ一強の輸入車市場でルノーが健闘

日本は軽自動車を除く自動車販売台数に占める国産車の割合が約9割という、国産車が圧倒的に優位な市場だ。そして残りの1割を占める輸入車(国内メーカーの海外生産車を含む)に目を向けると、こちらはおよそ6割がドイツ車となっている。

クルマ自体の良し悪しだけでなく、長いものに巻かれがちな日本人の性格も、この結果に関係しているだろう。

しかし、輸入車についてはドイツ車以外も健闘している。わが国の日産自動車や三菱自動車工業とアライアンスを組んでいるフランスのルノーもそのひとつ。2010年から7年連続で前年の販売台数を上回っており、今年は9月中旬の時点ですでに2016年の数字を上回っている。つまり、8年連続の台数増が確実になっているのだ。

ニッチ戦略が奏功、ニッチとは言えない存在に?

なぜ、ここまでルノーは伸びているのか。理由のひとつに、日本市場に特化した独自の販売戦略があるのは間違いない。その戦略とは、2009年からルノー・ジャポンCOO、2012年から同社代表取締役社長を務める大極司(だいごく・つかさ)氏が推し進める「FTS」である。FTSとは「フレンチタッチ」「トレンディ」「スポーツ」の頭文字だ。

ルノー・ジャポンの大極社長

身内の日産をはじめとする国内メーカーが圧倒的に強いわが国において、正面から勝負を挑んでも難しいことは分かっている。そこで、ルノーは得意分野をいかしたニッチ戦略を取ることにしたのだ。それが成功に結び付き、今やニッチとは言えないレベルにまで成長している。

FTS戦略の象徴と言えるのが、ハイトワゴンの「カングー」と高性能ブランドの「ルノー・スポール(R.S.)」だ。

カングーに見る独自の立ち位置

カングーにライバルは存在しない。スライドドアを持つ背の高いボディはミニバンを思わせるが、シートは2列で、後方には観音開きのリアゲートでアクセスする広く使いやすい荷室を用意する。ルノーではこのカングーを「ルドスパス(LUDOSPACE、遊びの空間)」という粋な響きで表現している。

ライバル不在の独特なクルマ「カングー」(画像提供:ルノー・ジャポン)

カングーはトヨタの上級ミニバン「アルファード」に匹敵する全幅を持ちながら、エンジンは1.2リッターターボであり、価格は200万円台前半と、アルファードよりはるかに小さい「ノア」よりもさらに安い。輸入車は割高という一般的な常識の逆を行く。

それはなぜか。カングーは本国フランスなどでは商用車仕様も存在しているので、もともと高価なクルマではないためもある。でも、これはルノーを含めたフランス車の魅力のひとつとも言えるのだが、カングーは低価格車であっても、伝統の乗り心地や直進安定性はしっかり受け継いでおり、デザインには一切の手抜きがない。

数字で説明するのが難しいフランス車

もうひとつの「ルノー・スポール」は、サーキット走行を前提としたピュアな車種ながら、日本が世界で3番目の売上という人気を誇る。

ルノーは今年でF1参戦40周年というキャリアの持ち主。その経験が歴代ルノー・スポールには反映されている。しかも、フレンチタッチのデザインはスポーティなのにこれみよがしな派手さはなく、むしろエレガントでもある。こうした部分が支持されているようだ。

現行ルノー・スポールはすべて前輪駆動車だが、シャシーのチューニングは標準型のルノーとまるで違う。一言で言えば、後輪駆動車のように自在にコントロールできる。ターボらしいパンチとサウンドを堪能できるエンジンも魅力だ。そのため、三菱「ランサー・エボリューション」やスバル「WRX」など、日本製高性能車からの乗り換えも多く見られるという。

日本製高性能車からルノー・スポールに乗り換える人も多いという(画像は「ルーテシア R.S.」、提供:ルノー・ジャポン)

とはいえ、どちらもスペック的に秀でた部分はあまりない。数字で判断する傾向が強いわが国のユーザーには、日本車やドイツ車と比べると、ルノー車はかなり売りにくい。逆に言えば、数字に表れない部分に魅力がある。

これはフランス車を10台以上乗り継いできた筆者も痛感しており、記事を書く際に苦労している。ルノー・ジャポンではその分かりにくさを、「FTS」という分かりやすいメッセージで打破しようと考えた。それが実を結びつつあるのだ。

今年の成長については、前述の2本柱に加わったコンパクトカーの「トゥインゴ」も寄与している。現行トゥインゴはダイムラー・グループのスマートとの共同開発で、現在の自動車では珍しくエンジンを車体後部に搭載した。ルノーは昔からこのメカニズムを数多く採用したことから、リアエンジンによる個性的な走りをアピール。スマートより安い価格と合わせて人気を得ている。

トゥインゴもルノー・ジャポンの成長に寄与している。画像は10月19日に200台限定で発売となる「トゥインゴ GT」

メガーヌで踏み込む輸入車市場のど真ん中

しかし、カングー、ルノー・スポール、トゥインゴのいずれも、日本の輸入車マーケットでは脇役と言えるポジションにある。メインマーケットでのプレゼンスも高めたいところだ。そんな気持ちが表に出ていたのが、10月4日に発表された通算4代目となる新型「メガーヌ」だった。

通算4代目となる新型「メガーヌ」

なによりも驚いたのは、ルノー・スポールが手がけたスポーツグレード「GT」をメインとする商品構成だった。ボディはハッチバックとスポーツツアラーと呼ばれるワゴンの2タイプで、ハッチバックには1.2リッターターボエンジンを積む廉価版のGTラインも用意されるが、両ボディに用意されるのはGTのほうだ。

GTのエンジンは「ルーテシア R.S.」と基本的に同じ1.6リッターターボで205psを発生。7速デュアルクラッチ・トランスミッションを介して前輪を駆動する。

価格は税込みで「メガーヌ GT」が334万円、「メガーヌ スポーツ・ツアラー GT」が354万円、「メガーヌ GT-Line」が263万円からだ

それ以上のニュースは、ルノーでは「4コントロール」と呼ぶ4輪操舵が導入されること。つまり、前輪だけでなく後輪も向きを変える。低速では最大2.7度前輪と逆に切れることで小回り性能を向上させる一方、高速では前輪と同じ向きに最大1度切れることで正確かつ安定したコーナリングをもたらすという。

現在、4輪操舵を採用している市販車は、レクサスやBMWなどのプレミアムブランドだ。それが300万円代という、手を伸ばせば届くハッチバックやワゴンに積まれたことは画期的と言える。

競合ひしめくCセグで「メガーヌ」は輝けるか

フランス車が得意とするデザインも凝っている。前後のランプにはLEDを用いており、フロントはC型のアクセント、リアは中央のエンブレムまで伸びた赤い帯がとにかく目立つ。インテリアはイルミネーションを5色から選択可能。フランス車が遅れ気味だった運転支援システムやコネクテッド装備もライバルに並ぶレベルになった。

フランス車らしくデザインにも凝っている

メガーヌの発表会で大極社長は、「ゴルフ」などが属するCセグメントでのプレゼンスを高めるために、あえてFTS戦略を貫いてGTを主役に据えたと語った。説明しにくいと言われるフランス車の良さをどう伝えていくか。8年連続の成長を確定させたルノー・ジャポンは攻め方をつかみつつあるようだ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu