綾鷹が「+10円」で実現したプレミアムな緑茶は成功するのか?

綾鷹が「+10円」で実現したプレミアムな緑茶は成功するのか?

2017.10.17

綾鷹 珠玉の深み

サントリー提供の緑茶「伊右衛門」が切り開いたとされるプレミアム緑茶セグメント。その成功を受けて日本コカ・コーラが上林春松本店の監修を受けて開発した「綾鷹」もまた、その地位を確かなものにしている。綾鷹が2007年に誕生してからこの10月で10周年。その節目のタイミングに、コカ・コーラは通常の綾鷹の一段上を行く「綾鷹 珠玉の深み」をリリースした。

コカ・コーラは、この珠玉の深みこそが「プレミアム・ラインナップの製品」だと謳っており、綾鷹を監修する上林春松本店 代表取締役の上林 秀敏氏も「自信を持っている」と話す。上林氏と、日本コカ・コーラ マーケティング本部 ティーカテゴリー 緑茶マネージャーの吉田ミシャール氏に、話を聞いた。

創業450年の歴史、上林春松本店が得たもの

綾鷹といえば「選ばれたのは綾鷹でした」のキャッチフレーズでお馴染みであり、競合の伊右衛門と同じく京都の老舗茶舗の監修を受けてプレミアム緑茶として販売されてきた。緑茶市場は伊藤園「お~いお茶」の一強とも言われているが、2004年から販売されている伊右衛門、そして2007年に登場した綾鷹も緑茶ブランドとして親しまれていることに違いはない。

上林氏によれば10年前、綾鷹のリリース時には「(自社監修と謳う製品を出すことに)かなり心配していた」と話す。それは、本業における長年付き合いのある顧客や小売部門、法人販売への悪影響を懸念してのことだったという。

「製品開発に協力するという立場から、緑茶の専門家としての技術、知恵を提供してきました。それが、茶葉を組み合わせる合組(ごうぐみ)や、茶葉の味わいや品質を最終確認する茶葉認定式といったものです。一方で私たちも、お手伝いして名前を出している以上、お客さまの期待を超える出来に仕上げてこそ、本業との相乗効果が生まれます。そういう意味ではこの10年の成果は最初に抱いていたイメージ以上のものでした」(上林氏)

上林春松本店 代表取締役 上林 秀敏氏(左)と日本コカ・コーラ マーケティング本部 ティーカテゴリー 緑茶マネージャーの吉田ミシャール氏(右)

またこの10年で、日本コカ・コーラとの信頼関係を築けたことはもちろん、マーケティングデータを活用するといった従来の茶舗としてのビジネスとは異なる文化が上林春松本店にいい影響を与えたそうだ。

「私たちの本業の製品開発は『市場調査』というものはなく、お客さまとの対話を積み重ねることで嗜好を探っていくビジネスの手法でした。もともとは茶葉に対する知見の提供がミッションでしたが、製品開発のプロセスの中でさまざまなデータに触れられたことは財産。マーケティング用語などは最初、一つひとつの言葉の理解にも苦労していましたが(苦笑)、そこで触れたものを自社で取り入れられるものは積極的に取り入れました。ある意味で一番良かったことは、私たちが大量生産品とどう違いを生み出すのかを反面的に見いだせたこと。茶園限定商品、タイアップ商品というものを大切にして高い品質を保つ。さらにその製品のPR、売り方などには、綾鷹で取り入れたものを利用しています」(上林氏)

10年という歳月をかけて確かな関係を築いた上林春松本店と日本コカ・コーラ。10年という期間は、ブランドの定着とともに新たな挑戦が難しくなる時期でもある。

「緑茶市場は依然として成長しているものの、無糖茶やブレンド茶などに比べるとややスローダウンしている。綾鷹というブランドからのニュース発信を考えなくてはならないタイミングでしたし、綾鷹のDNAである『急須で入れた緑茶の味わい』をいま一度表現したかった。常に伝統と革新を模索する、それが綾鷹なんです」(日本コカ・コーラ 吉田氏)

そこで構想したのが通常の綾鷹の上を行く、ハイグレードな「珠玉の深み」。「ベースバリューを維持しつつも、究極の急須で入れた緑茶の味わいとは何かという議論を3年に渡ってやってきた」(吉田氏)。上林氏と吉田氏のみならず、製品開発チームやブランドチームが一体となって茶葉の選定から火入れ、温度管理などを議論した結果、採用したものが「玉露」だった。

玉露は日光を遮るカーテンのような布を被せる「覆下栽培」で作られる茶葉。日に当たらないため生産量は少ないものの、旨味や甘みを引き出せることから緑茶好きに支持されるものだという。

玉露は栽培が難しく、市場流通量も少ない(写真はイメージ)

緑茶で主に味選定のベースとなるのは「苦味」。苦みの強さ、弱さを大別すると、およそ半数が「程よい苦み」を求め、残る25%が強い苦み、もう25%が弱い苦みを求める。綾鷹は2016年3月に「綾鷹 にごりほのか」を発売しており、弱い苦みへのアプローチは終えていた。

「強い苦味を求める層は、それなりの『緑茶通』だと考えています。緑茶に対する理解の深さ、何よりこのセグメントこそがプレミアムであり、実は市場がまだ確立していません。通常の製品(290mlボトル缶)よりも10円高い製品ではありますが、そのこだわりをわかっていただける層だと考えています」(吉田氏)

にごりほのかが女性ユーザーをターゲットに据えるのに対し、30~40代男性がメインターゲットの珠玉の深み。苦みを好む層が集中していることもあるが、一方で「苦味ありきではない」と吉田氏らは強調する。

現在の綾鷹のラインナップ。綾鷹は濁りを大切にしているが、珠玉の深みが一番濁りも"深い"

「25%が強い苦みを求めていると言っても、苦みに振り切った製品は満足していただけるかというとそれは難しい。バランスを大切にしなければならないのが、開発する上で難しいところでした」(上林氏)

「玉露を追加して終わりではなく、すべてをレベルアップさせることに力を入れました。苦みに特化した製品は競合他社にもありますし、綾鷹としてあえてそこに製品を当てる必要はない。苦みを好む層が緑茶通と話しましたが、通に満足していただくには『苦み』に加えて『渋み』『旨み』をトータルに高める必要があるんです」(吉田氏)

吉田氏は、綾鷹ブランドに対する消費者の期待は「漠然と『急須』『本格的』というキーワードを浮かべているもの」だと分析している。

競合他社も「CMキャラクターのあの人の製品だよね、くらいのものかもしれない」とした上で、「だからこそ、なんとなくのチョイスから一歩踏み込んでもらうために、『伝統と革新』というキーワードのもとに創造し続けなければならないと思っています」と吉田氏は語る。

一方で上林氏はこの新製品が「急須で入れた緑茶の味を知っている層がどう感じるか、やや恐怖を持ちつつも期待している」と話す。

「これまでの経験から、綾鷹は一定のクオリティを保ってしっかり成果を出しました。珠玉の深みは、そこからさらにクオリティを上げることを目指した総結集的な製品です。これまでもクオリティを大切にしていて私たちに伝わってきた声も批判的なものはなかった。この製品で目指すのは、さらに上を知っている人たちに認めてもらえる緑茶です。まずは口にしてもらってファンになってもらう。それは、私たちが普段からやっている『体験してもらってわかる味』であり、マーケティング的に数字で見えてくるものではないんです。飲んでもらえれば、期待を超えられるものだと思っています」(上林氏)

取材時に飲み比べた感想では、通常の綾鷹を基準として、にごりほのかと珠玉の深みの明確なブランド間の違いを感じることが出来た。にごりほのかは飲みやすい煎茶、さらに言えばよりライトなブレンド茶のような飲みやすさがあるのに対し、珠玉の深みは苦みがグッと奥底に漂う濁り茶ならではのあじさいがあった。とはいえ、苦みありきではなく、吉田氏らの説明通りの旨み、コクといったものも多分に感じられ、急須で飲むお茶の味というコンセプトが通常の綾鷹よりも感じられる。

綾鷹の試飲にあわせて、珠玉の深みと同じく、通常の煎茶に玉露を加えた時の味わいを上林氏に注いでいただいた。玉露を加えると苦みこそ増すものの、味わいが一段と深くなる

日本コカ・コーラは9月にも「熟成」をキーワードにリブランドした「熟成烏龍茶 つむぎ」をリリースしているが、こうしたプレミア感を強調した製品の連続投入は必ずしも意図したものではないと吉田氏は煙に巻く。

ただ、好調な経済環境下において、高級感を打ち出す製品が飲食品に限らず登場しつつあるのも事実。デフレ脱却にあわせた値上げだけでなく、付加価値にあわせたプレミア価格を消費者がどこまで許容し、求めるのか、珠玉の深みの売れ行きに注目したいところだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu