ソニーが卓上ロボット「Xperia Hello!」で目指す20年後

ソニーが卓上ロボット「Xperia Hello!」で目指す20年後

2017.10.18

Xperia Hello!

ソニーモバイルコミュニケーションズは10月17日、コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」を11月18日より発売すると発表した。驚きはその価格で、ソニーストアの場合は14万9880円(税別)となる。この秋、Googleの「Google Home」やLINEの「Clova Wave」といったAIスマートスピーカーが1万4000円で登場する中で、なぜこのような製品を販売するのか。

LINE連携でコミュニケーションを促進

Xperia Hello!は、2016年のスペイン・バルセロナで行われたMobile World Congress(MWC)でその存在が公表されており、「Xperia Agent」の開発ネームで知られていた。ソニーはこのデバイスをスマートスピーカーではなく「コミュニケーションロボット」と定義しており、その意味ではGoogle HomeやClova Waveは競合に当たらない。

ロボットという説明の通り、Xperia Hello!は頭部と胴体部が回転する仕掛けがあり、頭部には白色LEDによる「目」が、胴体部には4.6インチディスプレイが搭載されている。これらの動きを交えながらコミュニケーションを取ることが、既存のAIスマートスピーカーとは異なるというのがソニーの主張だろう。ロボットとして開発したがゆえに約15万円というのが一つの理屈だ。

さまざまな動きでコミュニケーションを取るXperia Hello!

同社 スマートプロダクト部門 エージェント企画開発室 室長の倉田 宜典氏によると、Xperia Hello!にはセンシング技術とインテリジェント技術、ロボティクス技術という3つのソニーのコア技術を活用しているという。

特にロボティクス技術は、犬型ロボットとして著名な「AIBO」で培った技術を一部活用しており、「新製品こそRollyなどの一部製品でしか表に出ることはなかったが、その技術はエンジニアが脈々と受け継いでいた」(倉田氏)と話す。例えば、Xperia Hello!ではモーターが駆動する軸を筐体の中心に集約することでパーツの故障率をあらかじめ引き下げる設計にしている。単に故障率のためだけでなく、ギアパーツなどの駆動部を少なくすることで素早く、静音性を高める効果が得られるという。

一方のセンシング技術とインテリジェント技術では、人感センサーを4つ、マイクを実に7個装備することで、その場にいる人とコミュニケーションを能動的に取れるようにした。頭部に設置されたカメラもソニーの1320万画素CMOSセンサーを採用しており、さまざまなシーンで高画質に写真を撮影できる。

また、このカメラでは登録した家族の顔を認識。登録ユーザーごとに発話内容を変える応答生成技術を独自開発したほか、LINEと連携することで登録した家族に個別のメッセージを送信、該当する家族が顔を見せた段階でそのメッセージを伝えることができるという。この技術は見守り機能にも活かされており、例えば家の中の様子をLINEで尋ねると「◯◯さんは3分前に見かけました」と室内の状況を伝えてくれる。写真を撮影してLINEに送信することも可能だ。

LINEとの協業で、LINEを通したコミュニケーションや画像の送信が可能になった

同社 スマートプロダクト部門 副部門長の伊藤 博史氏は、同社のビジョンを「コミュニケーションデバイスをより高い知能と機能を備えた人間の能力を拡張するツール」と語る。スマートフォンのXperiaに加えて、6月より販売を開始したスマートプロジェクター「Xperia Touch」、音声アシスタントを内蔵したスマートイヤホン「Xperia Ear」、そしてXperia Hello!が人間の能力を拡張するツールという位置付けだ。

Xperia Touchも、一般的なプロジェクターにAndroidを組み合わせた特殊な製品で、その独特な世界観は「大変好評をいただいている。海外からも問い合わせがある」(伊藤氏)。こちらも14万9880円(税別、ソニーストアの販売価格)であり、このデバイスの売れ行きが一つの自信として「Xperia Helloについても期待している」(伊藤氏)のだという。

ただ、Xperia Touchは既存の競合製品がほとんど存在せず、類似ジャンルも存在しなかった。言ってみればAIBOのような「ソニーらしい、おもしろ製品」としてのニーズも多分にあっただろう。一方で、Xperia Hello!は時期的にもAIスマートスピーカーと競合視される可能性が高い。前述のGoogleやLINEだけでなく、年内にはAmazonのEchoも上陸する予定で、価格は最安で6000円程度だ。

Google Homeは1万4000円。miniにいたっては6000円(いずれも税別)と、同一視されるデバイスとの価格競争では、完全に後塵を拝するXperia Hello!

会場にいたあるITジャーナリストも「これが10万円を切る価格なら見どころはあったが……」と話していた。一例で言えば、約15万円はNTTドコモが「iPhone X 256GB」の予約価格として提示している14万3856円よりも高い。ソニーが「ロボット製品としてみれば、ある程度の価格には落ち着いている」という説明をしていても、消費者の目は厳しいのではないかというのが率直な感想だ。

自前主義で技術力を磨けるか

ただ、筆者がGoogle Homeを利用していて至らないと感じている点、逆にXperia Hello!に期待できる点は存在する。

例えばGoogle Homeはディスプレイがなく、すべてを音声コマンドで完結させている。そのため、本来ビジュアルと組み合わせて表示して欲しい情報、例えばWikipediaの人物情報やニュースの画像などが見られない。これらはXperia Helloでは実現できているし、ディスプレイを搭載していることでビデオ通話、ビデオ伝言機能なども用意されている。

また、音声だけで「ごめんなさい。わかりません」と言われるよりも、ロボットならではの顔の表情の動きや胴体の動きが直接訴えかけてくる感情表現はAIスマートスピーカーとは一線を画すだろう。現時点でコミュニケーションロボットと呼ぶには乏しいコミュニケーション&応答量だが、ニュースや天気予報、リマインダーといった情報のやり取りだけでなく、雑談やミニゲームなどの細かなコミュニケーションが可能になれば「約15万円の納得感」は出てくるはずだ。

踊ったり、着せ替え衣装を用意するなど、ロボットらしさも見せるXperia Hello!

野村総合研究所の調査によれば、現在ロボット産業の主流は産業用ロボットであり、2020年においても産業用が1.2兆円、サービスロボットが1兆円規模だという。しかし、AIやロボティクス技術の進展によってその後は急激にサービスロボットが拡大し、2035年には産業用ロボットが2.7兆円にとどまるのに対し、サービスロボットは5兆円まで市場が拡大する見込みだという。

日本では、ソフトバンク・ロボティクスが提供する「Pepper」やSHARPが提供する手のひらサイズの「ロボホン」など、サービスロボットに向けた取り組みが世界に先駆けて進展している。Pepperについてはもともとフランスのアルデバラン・ロボティクスがコアを作り上げ、台湾の鴻海が生産しているものの、シャープのロボホンは広島で、Xperia Hello!についてもソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ(SGMO)が「メイドインジャパンで生産している」(伊藤氏)。

AI技術はGoogleやAmazonのAWS、Microsoftなどクラウド大手が遠く先を行くものの、ソニーもXperia Hello!で採用する各種認識技術を内製化するなど、「自前主義」で知見を溜める方向へシフトして技術力を磨く構えだ。それは「新しいコミュニケーションを創造するという目標のもとに開発してきた。家庭内のロボット市場は発展していく領域。期待値は高い」という伊藤氏の発言からも、内製化を重要視していることが伺える。

いわゆるIoTはハードとソフトの両面でブラッシュアップが必要とされる。その代表例となりそうなパーソナルなサービスロボット分野で、いかに先行力を活かして知見を溜められるか、そしてハードの強みを持つ日本勢がどこまでソフトウェアをブラッシュアップできるかが、今後20年を左右する可能性はある。

AIBOを諦めた過去を頭の中から排して見れば、Xperia Hello!はロードマップを長期間に渡って描き、その第一弾のテスト・マーケティングの製品とも思える。もしそれが現実のものだとすれば、Xperia Hello!が持つ価値は計り知れないはずだ。

ソニーモバイルコミュニケーションズ スマートプロダクト部門 エージェント企画開発室 室長 倉田 宜典氏(左)と同部門 副部門長 伊藤 博史氏(右)
メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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