最初から日本はどうでも良かった - 20人で世界を取ったスマホゲーム会社

最初から日本はどうでも良かった - 20人で世界を取ったスマホゲーム会社

2017.10.20

日本のスマートフォンゲームメーカーといえば、「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のガンホーや「モンスターストライク(モンスト)」のミクシィが最初に思い浮かぶかもしれない。あるいは、既存IPをフルに活用するスクエア・エニックスやバンダイナムコゲームスという人もいるだろう。

これらの企業は名前の知られた会社。一方この記事で紹介するトランスリミットはあまり知られていない、社員数わずか20名の会社だ。ところが、パズドラが2012年のリリースから足かけ4年の2016年11月に全世界6000万ダウンロードを記録したのに対し、トランスリミットが制作したゲームは2タイトルながら、全世界5000万ダウンロードを3年あまりで記録している。

20名の会社がなぜ世界に通用したのか。トランスリミット 代表取締役の高場 大樹氏に話を聞いた。

トランスリミット 代表取締役 高場 大樹氏

どの国でも使えるUI/UXを意識

トランスリミットがこれまで提供したゲームアプリは「Brain Wars」と「Brain Dots」の2タイトル。2014年はBrain Wars、2015年はBrainDotsが「Google Play Best of Games 2014、2015」と「App Store Best of 2014、2015」をそれぞれ受賞している。この会社の特筆すべきポイントは、前述の5000万ダウンロードのうち、Brain Warsは95%、Brain Dotsは97%が海外ユーザーによるダウンロードという点だ。

彼らは何も、日本市場を"捨てて"いるわけではない。むしろ、「日本とアメリカの収益が2/3を占めており、それ以外の国・地域は収益性が低い」(高場氏)。例えばバンダイナムコゲームスのネットワークコンテンツ売上は、2017年の見込みで日本が75%、海外が25%の売上比率だ。

バンダイナムコゲームスも順調にスマホゲームの売上を拡大。米国では「DRAGON BALL Z DOKKAN BATTLE」がGoogle PlayでSales Ranking 1位を獲得

もちろん、日本に強固な基盤があるからこその比率とも言えるが、ドラゴンボールのスマホアプリがUSのGoogle Playでダウンロードランキング1位となるなど拡大できる下地も持っており、キャラクターIPを持っていないトランスリミットの特殊性が伺える。

高場氏は両アプリが成功した理由を「デザインやルールをシンプルにして、誰にでも好かれるように製作したこと」だと話す。

「はじめから日本はどうでもいいと考えてアプリを開発したんです。日本語にとらわれず、どの国でもUI/UXでユーザーが悩むことなく、文化や知識に依存しないゲーム性を意識しています。色使いやアニメーション、サウンドは、文字がわからなくても世界で似たような感性で受け止められる。自分たちは20名の会社。アプリを絞ってコンパクトに、コンセプトを重視して戦うというのがうまく行った理由だと思います」(高場氏)

最初からアメリカや欧州を狙っていたと話す高場氏だが、Brain Warsではアメリカの割合が25.2%、Brain Dotsでもフランスが7.6%など"有言実行"で市場を開拓してきた。一方で、すべてが順風満帆とは言えないと高場氏。その一例がアプリ内課金だ。日本でスマホゲームのマネタイズの主流といえば"ガチャ"だろう。

一方で、グローバルではガチャは主流とは呼べず、基本的にはアイテム課金、ゲーム内通貨課金といったものになる。高場氏はこの点で「アプリ内課金はハードルが非常に高い。特に私たちの"カジュアルゲーム"というジャンルは受け入れられない。そのため、広告による収益が8割を占めている」と語る。

アプリ内広告でも、収益性を高めるために、全画面広告や動画広告など、さまざまなフォーマットを活用しているという。「ただ、やはり広告よりもユーザーに課金してもらえるような体験価値を提供したい。そこから脱却するためにも、次回作では(アプリ内課金に)力を入れている」(高場氏)。

ただし、ゲームを提供する元来の目的は「世界中、誰もが使えるアプリを」というもの。例えばBrain Dotsではインドのアプリユーザーが7.7%を占め、韓国、米国に次ぐ3番目のユーザー数だという。一方で広告単価は低く、「ただユーザーがいるだけです(苦笑)」(高場氏)。それでも「インドの人がこのゲームを好きというだけで良い。経済合理性は二の次」と意に介さない。

Brain WarsとBrain Dotsはともに海外がメイン市場だ

「うちの国の会社」と思われるために

世界中に自分たちのゲームを楽しんでもらうため、日本語と英語だけでなく、Brain Warsでは7カ国、Brain Dotsでは16カ国、次回作では18カ国語の言語に翻訳してゲームを提供している。もちろん、それ以上に言語は存在するが、20名規模の会社でここまでやるケースは珍しいように思える。

「機能や見た目こそ共通してますが、言語は可能な限り対応したい。私たちは日本の会社ですが、言ってしまえば『このアプリはうちの国の会社が出しているアプリなんだ』と思われる存在になりたい。そうしたポイントにフォーカスするのが最大のマーケティングであり、だからこそ私たちはシンプルで好かれるゲームアプリの開発にフォーカスできるんです」(高場氏)

高場氏が目指す会社の将来像の一つはスーパーセルだと話す。スーパーセルはフィンランドのゲーム会社で、「クラッシュ・オブ・クラン」などで著名だ。2013年にソフトバンクグループの一員になるなど(現在は中国・テンセント傘下)、グローバルで高い評価を受けている。

スーパーセルは売上の半分を米国で上げており、2位の市場が日本というトランスリミットと同様の収益構造。何より、従業員数が200名程度ながら売上高は23億1500万ドル(2016年度、日本円で約2616億円)も稼ぎ出す優良企業なのだ。「一人あたりで10億円あまりの売上は一つの目標。ジャンルは違えど、スマホアプリという面で可能性は十分あると思っています」(高場氏)。

高場氏は自分たちの目標を語りつつ、日本から世界を狙う意義についてこう語った。

「日本は世界に類を見ないコンテンツ大国なのに、どうしても国内で小さくまとまってしまっていると思います。日本から海外を見通すことは必要だし、そもそもスマートフォン時代に『日本から海外だ』という考え方がおかしい。国境は関係ありませんから。世界を相手にするという考え方は当たり前にすべきですし、日本は遅れていると言われがちですが、台湾や韓国といった国が先行しているかというとそうでもないと思う。Facebookなどのプラットフォームの戦い方は、何も日本が出来ないわけじゃない。キャラクターIPのパワーだけでなく、大切にしたい価値を世界に広めたいと思って、頑張っていきたいですね」(高場氏)

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。