「AQUOS sense」が示す、大手キャリアの

「AQUOS sense」が示す、大手キャリアの"格安"に対する意識

2017.10.21

シャープが10月13日に発表した新機種の1つ「AQUOS sense」は、フルHDのIGZO液晶ディスプレイを搭載しながらも、3万円台と比較的安価なのが特徴だ。そのAQUOS senseを販売するキャリアの側は、低価格モデルの投入で何を狙っているのだろうか。

シャープの低価格モデル販売数は年間80万台

今年発売された「AQUOS R」より、自社ブランドを強化するべくキャリアの発表に先駆けてスマートフォン新製品を発表するようになったシャープ。そのシャープが、10月13日に発表したのが「AQUOS R Compact」と、「AQUOS sense」の2機種である。

このうち「AQUOS R Compact」は、ディスプレイの形状を自在に変えられる「IGZOフリーフォームディスプレイ」を採用し、ベゼル幅が狭く持ちやすい「EDGEST fit」デザインを実現、さらにAQUOS Rの特長である、表示や操作がなめらかな120MHz駆動のIGZO液晶ディスプレイを取り入れるなど、AQUOS Rのコンセプトを4.9インチのボディサイズに収めたコンパクトモデルである。

「AQUOS R Compact」は、「IGZOフリーフォームディスプレイ」で本体デザインにディスプレイの形状を合わせるなど、新しい取り組みを多く採用したコンパクトモデル

一方、もう1機種の「AQUOS sense」は、5インチサイズのスタンダードなモデルで、低価格で販売されるモデルとなっている。NTTドコモとKDDI(au)からの販売が予定されているが、両社のオンラインショップでの価格を見るに、いずれも割引なしの一括価格で3万円台の前半からと、大手キャリアから販売されるモデルとしてはかなり安価である。

しかしながらAQUOS senseは、この価格帯のモデルとしてはシャープで初めて、フルHDクラスのIGZO液晶ディスプレイを採用しているとのこと。さらにAQUOS R同様、2年間のAndroidのバージョンアップを保証するなど、低価格ながらも充実した機能・性能を備えたモデルに仕上がっているようだ。

低価格モデルの新機種「AQUOS sense」。3万円台ながらフルHDのIGZO液晶ディスプレイを搭載するなど、コストパフォーマンスが高い端末に仕上がっている

実はシャープが低価格モデルを手掛けたのは今回が初めてではない。2015年にNTTドコモから発売された「AQUOS EVER SH-04G」以降、高性能モデルだけでなく、低価格モデルのラインアップにも力を入れているのだ。そして現在、AQUOSブランドのスタンダードモデルのラインアップは年間80万台以上を販売する規模に達しており、同社のスマートフォン事業を支えるラインアップの1つとなっている。

端末価格の安さが通信料を下げ、MVNOへの流出阻止へ

シャープが低価格のラインアップに力を入れるようになったのは、キャリアの動向と無関係ではない。シャープのスマートフォン事業は、国内の大手キャリア向けに端末を提供することがビジネスの柱となっているため、他のメーカーと比べキャリアの動向に大きく影響されやすいのだ。

実際シャープがAQUOS EVERを提供した2015年といえば、MVNOを中心とした“格安”の通信サービスが急拡大したのに加え、総務省が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施し大手キャリアへ料金の見直しを迫るなど、携帯電話の料金に対する関心が非常に高まった時期でもある。そうした影響を受け、価格重視のユーザーに向けた低価格のラインアップが求められるようになったことが、AQUOS EVERの開発に至った大きな要因といえるだろう。

そしてAQUOS EVERの後も、シャープは大手キャリア向けに低価格モデルのラインアップ拡充を進めてきた。ソフトバンクのワイモバイルブランド向けに、グーグルの低価格スマートフォン向けプログラム「Android One」を採用した端末を、日本で最初に開発したのもシャープである。

ワイモバイルが日本で初めて投入した、グーグルの低価格モデル向けプログラム「Android One」を採用したスマートフォン「507SH」を開発したのもシャープだ

だが端末の価格を下げても、キャリアの通信料が安くならなければ、通信料が非常に安いことを売りにしているMVNOへの流出は止められない。一見すると安価な端末を増やすことが、通信料を下げることにはつながらないように見えるのだが、実は密接なつながりがあるのだ。

従来大手キャリアは、高額なスマートフォンを大幅に値引いて販売し、その値引きに費やしたコストを毎月の通信料に上乗せして回収するという手法を展開してきた。2016年4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出したことで、「実質0円」など極度な値引き販売は事実上姿を消したものの、端末の値引き販売自体は現在も存続している。

しかしそもそも、最初から安いスマートフォンを販売すれば、値引きの必要がないので毎月の通信料に値引き分のコストを上乗せする必要もなくなり、通信料を安くできる余地が生まれてくる。

低価格ラインアップへのニーズは今後も高まる

その仕組みを取り入れたのが、NTTドコモの「docomo with」やauの「auピタットプラン」「auフラットプラン」である。これらはいずれも、スマートフォンの価格は値引かない代わりに毎月の通信料を安くする、「分離プラン」と呼ばれるものだ。そしてAQUOS senseは、この分離プランを利用したいユーザーに向けて、割引なしでも手軽に購入できる価格を重視して開発されたモデルといえる。実際AQUOS senseは、docomo withの対象機種の1つとして販売されることが決まっている。

各社が分離プランを提供するようになったのは今年からだが、通信料金への関心が高いユーザーから人気を集め、順調に契約数を拡大しているようだ。実際、docomo withは既に70万、auの2つのプランは100万を超える契約を獲得するなど好評なようで、MVNOへのユーザー流出の防止にも効果をもたらしている。

分離プランの1つ「docomo with」は、既に70万契約を突破するなど好調だが、対象となる端末のラインアップが少ないとの指摘も多い

だが大手キャリアはこれまで、値引き販売を前提としてハイエンドモデルの販売に注力してきたことから、低価格モデルのラインアップの充実度は弱い。例えばdocom withの対象機種も当初は2機種しかなく、10月18日に発表されたAQUOS senseを含む3機種を合わせて、ようやく5機種にまで拡大したところだ。

それだけに今後、大手キャリアは端末メーカーに対し、一層低価格モデルのラインアップ充実を求めてくることだろう。AQUOS senseのようなキャリア向け低価格モデルが増える余地は、まだまだ大きいといえそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。