マックフルーリーとパナップが“禁断のコラボ”に踏み込んだ理由

マックフルーリーとパナップが“禁断のコラボ”に踏み込んだ理由

2017.10.25

「マックフルーリー」の10周年を記念する日本マクドナルドと「パナップ」のコラボ相手を模索していた江崎グリコ。この両社が共同開発で作り上げたのが、本日発売となる「マックフルーリー パナップグレープ」だ。本格的な冬の到来を前に始まったアイスとアイスの“禁断のコラボ”は、マックにとってカフェタイム強化戦略の一環にもなる取り組みだ。

本日発売の「マックフルーリー パナップグレープ」

マクドナルドは10月25日から「マックフルーリー パナップグレープ」を期間限定で販売する。価格は税込み290円だ。TVコマーシャルは、江崎グリコの商品開発担当者に対して執拗にコラボ企画を持ち掛けるマクドナルドいう図式で描かれるが、実際のところは、両社ともに提携先を模索していた時期が偶然のように重なったのだという。

商品発表会では、両社の開発担当が座談会形式でコラボ商品の誕生秘話を語ったが、それによると今回のコラボ商品は、江崎グリコが持つパナップソースをマクドナルドのソフトクリームにかけて混ぜただけの商品ではないらしい。

単なるコラボではなく真剣勝負の結果

マックフルーリーとパナップは両方ともアイスクリームの1種だが、実は各商品のおいしい温度は異なる。それ故、パナップソースをそのままマックフルーリーにかけても、ソース本来の香りや甘み、酸味などは再現できなかった。そのため、マックフルーリーのおいしさが最適になるよう、江崎グリコとしてもソースの改善などに取り組まざるを得なかったという。

結果として、両社はレシピを共有することにより、この大きな課題を克服した。江崎グリコにとってみれば、会社を代表する門外不出のソースを使うコラボ商品であるゆえに、この決断には相当な勇気が必要だっただろう。

パナップとマックフルーリー、それぞれの特徴は

パナップは冷凍アイスゆえに最初は固く、食べ進めるうちに溶け出し、木のスプーンが刺さる深さが変化する。細長い容器ゆえにすぐに溶ける商品ではない。じっくりと時間をかけて溶け出していく。何かをしながら、時間をかけて食べる。少しずつ木のスプーンの刺さり具合が深くなる。年輪の数も増えると同時にソースのリング数も増える。これこそが、パナップと過ごす時間を楽しむ真骨頂だ。アイスの温度変化により、香りと甘さ、酸味の度合いも変化する。最初はくぐもっていた香りが、華やぐように変わる。温度が上昇することで、香りと甘さの感度が連動するように上がるのである。

ふたとスプーンにマックフルーリーの秘密が?

一方、マックフルーリーはベースとなるソフトクリームにソースと砕いたワッフルコーンを混ざった状態でカップに入れて提供される。経験の浅いアルバイトのクルーでも、簡単にできる製造工程となっている。誰でも作れる秘訣は、カップのふたと謎のプラスチックスプーンにある。

カップのふたは、コーンが飛び出さないようにすると同時に、ふたのふち近くに円を描くようにカップを回すことで、絶妙の混ざり具合になるという。スプーンは食べる時にも使うが、実は攪拌(ホイップ)する羽の役目も兼ねている。四角い穴は攪拌する機械に取り付けるときの穴。カギのようなストッパーは器具に取り付けた時の固定具の役割を果たす。

攪拌がマックフルーリーらしさを作り出す

その構造は、空気をいっぱいに含んだ、口どけのよいまろやかなクリームを作るために安定した高速回転に耐えうる。プラスチック製のスプーンは中空のため、アイスの冷たさが直接手に伝わらない効果ももたらしている。また適度な太さのため、攪拌時の強度を保つだけでなく、年齢を問わず持ちやすい形状ともなっている。

パナップが食べ進めるうちに変わっていくアイスである一方、マックフルーリー パナップグレープは、アイスクリームを攪拌して出来たてを提供する。最初から香りが開き、甘みと酸味のバランスを感じる温度だ。江崎グリコ監修のグレープソースを使っているとは言いつつ、パナップとは全く別の商品といっていい。

冷たいスイーツはコンビニの得意商品

実は冷たいスイーツはコンビニのお手の物である。パフェやケーキ、シュークリームなど、多くのスイーツがかなりのスペースを確保している。マクドナルドの挑戦は「作りたての味わい」を提供することだ。コンビニなど、他社の商品にはない魅力を顧客に提供しようと試みている。

マックフルーリーの製造工程を見ると、攪拌は短時間で高速だ。ソフトクリームはもともと空気を多く含んでいるのだが、この工程により、さらに多くの空気を内包することとなる。この加工により、まろやかな口当たりと溶けやすい状態を獲得したソフトクリームが、マックフルーリーの基本となる。

完成品として店舗に並ぶスイーツでは、「作りたて」や「出来たて」の味わいを求める顧客の要望には応えきれない。「出来たて」という点において、マックスイーツはコンビニスイーツに対し、商品の差別化・価値創りの面で一歩リードしている。

「出来たて」という商品価値がコンビニスイーツとの差別化ポイントだ

マックフルーリーはマクドナルドの可能性を広げるか?

マクドナルドがハンバーガーをメインとする業態であることは疑問を挟む余地がない。かつてはコーヒー専売店と覇を競うため、「マックカフェ」として新しい業態を展開しようと試みたが、商品設定や価格設定が顧客の支持を得られず、事業縮小を余儀なくされた。今はハンバーガーショップという業態の中で、多くの顧客の支持を獲得できる商品設定に取り組んでいる。

マクドナルドでスイーツを楽しむ、という選択肢を消費者に認知してもらうために、同社では先頃、熱いスイーツである「シナモンメルツ」とコーヒーのサンプリングを実施。ハンバーガー店でアイドルタイムとなりがちな午後のカフェタイムを強化しようと大量のコーヒーを無料で提供した。

7年ぶりに復活した「シナモンメルツ」とプレミアムローストコーヒー。マクドナルドはシナモンメルツ復活にあわせて、コーヒー1.3億杯の無料キャンペーンを展開し、カフェタイムの集客強化を図った

シェイクではなくフルーリーにしたコラボ商品

コラボ商品の誕生秘話として、江崎グリコは企画当初、パナップとマックシェイクのコラボ商品を想定していたとの後日談が紹介された。江崎グリコの商品企画担当によれば、Twitterでパナップとシェイクが比較されることが多かったことが、そう考えた理由の1つだという。マクドナルドがシェイクとして今回のコラボ商品を展開しなかった理由は、おそらく「スイーツ」としての商品展開に魅力を感じたためだろう。

日本アイスクリーム協会の統計によると、アイスクリーム類の販売額・量は、ここ数年右肩上がりに増加している。アイスクリームは暑い時期の食べ物と思われがちだが、実は冬でも購入されているという実態もある。夏は気温が高いために氷菓が好まれるが、通年で人気を博しているのはアイスクリームなのだ。温かい飲み物が求められる季節になると、おやつのスイーツとしてアイスクリームの出番も増える。温かい飲み物と一緒に食べると、アイスクリームの甘さはさらに引き出される。温度は糖度の感度を高めるとも言われているのだ。

マックの提案は新たな選択肢となるか

カフェタイムのおやつとして提案された新商品マックフルーリー パナップグレープ。江崎グリコとマクドナルドが組んで生み出した「出来たてスイーツ」は、温かく、きれいになった店内でカフェタイムを過ごしてほしいというマクドナルドからのメッセージだ。モノだけを販売するのではなく、快適な店舗環境や過ごし方、利用シーンを含めた提案を増やしつつあるのが現在のマクドナルドだ。

今回採用された専用カップには、約5個に1個の割合でスマイルマークのついた「当たりカップ」が存在する。“インスタ映え”やSNSを通じた拡散を意識した販売戦略にも抜かりはない

マクドナルドの提案は、スイーツの購入先として消費者の新たな選択肢になりうるのだろうか。少なくとも、選択肢が増えることは消費者にとって利点と言える。価格もドリンクとセットで500円以内と考えられる。この価格帯は、かつてマクドナルドが得意としてきた範囲でもある。

価格は安いが質も悪い商品は、自然に淘汰される時代だ。質がよく、価格が妥当であることが消費者の選択を勝ち取る時代ともいえる。江崎グリコという強力な味方を得たマクドナルドの新しい挑戦は、11月下旬までの期間限定で始まった。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。