なぜ今、ソニーはAIBOを再生するのか?

なぜ今、ソニーはAIBOを再生するのか?

2017.10.26

1999年5月に発表されたソニーの犬型ロボット「AIBO」。当時小学生の筆者は、25万円という価格をよく理解せず、「これ欲しい」と親にねだった覚えがある。ついぞ買ってもらえることはなかった。

そして11月1日に「AIBOらしき何か」を発表すると示唆した動画「New story with…」が、ソニーのYouTubeチャンネルに公開された。

AIBOの再生は、ソニー 代表執行役 社長 兼 CEOの平井一夫氏が2016年6月の経営方針説明会でロボット事業への再参入を示唆したことから一気に現実のものになった。ではなぜソニーがロボットを今、改めて作る必要があるのか。

社内に残ったAIBOの遺産

ソニーは世間的に知られるAIBOのみならず、二足歩行の人型ロボット「QRIO」、ロボットとはやや異なるが「踊る音楽プレイヤー」として一部で話題となった「Rolly」といったさまざまな製品を世に送り出してきた。もちろん、いずれの商品も家庭内のロボットのデファクトスタンダードとなれたわけではなく、むしろ過去の遺物、失敗作、ソニーの凋落の要因として語られることも少なくなかった。

一方で、こうした知見は今も脈々と受け継がれている。例えば、先日発表されたソニーモバイルコミュニケーションズのコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」においても同社 スマートプロダクト部門 エージェント企画開発室 室長の倉田 宜典氏が「技術はエンジニアが脈々と受け継いでいた」と発言している

VAIOが生産するトヨタのKIROBO mini(同社Webサイトより)

また、現在は別会社となったVAIOの長野・安曇野工場は、もともとAIBOの生産拠点。同社は現在、EMS事業(受託製造)でロボティクスを手がけており、トヨタの小型ロボット「KIROBO mini」などを生産している。この2社が今、ロボット事業を本格化させるのは過去の挑戦からの思いつきではなく、自社内に秘めていた技術を活かすという側面もあることが伺える。

AI技術の進化、米大手の独壇場

一方で、10年前と大きく変わるのはむしろ、ロボットに対する今の消費者の考え方、そしてソフトウェア面の進化だろう。

Google AssistantやAppleのSiri、AmazonのAlexa、MicrosoftのCortana、LINEのClovaなど、いわゆる音声アシスタントの登場で人々は「自分が質問・お願いしたことをこなしてくれる執事」に対する期待度が高まっている。もちろん、これらのサービスもまだまだ開発途上にあり、実用性に欠ける部分もある。

しかし、例えばAmazonのAlexaは「スキル」と呼ばれる製品・サービスの連携機能を持っており、10月26日時点で2万件のスキルが用意されている。このスキルは、さまざまな企業・開発者が自由にスマートスピーカー「Amazon Echo」との連携機能を開発できるため、AndroidやiOSのような一大プラットフォームとなりつつある。

Amazon Alexaのスキルは2万件を超える。日本語対応は年内を予定

Amazon Alexaは年内に日本語対応する予定とアナウンスされているが、一方でこの10月からスマートスピーカーを先行投入しているのがLINE Clovaを搭載した「Clova WAVE」とGoogleの「Google Home / Home mini」だ。筆者はGoogle Homeを利用しているが、音楽・ラジオの再生や玄関の電源ON/OFF、ちょっとした雑学の収集など、声による操作は確実に新しい価値を生み、将来的には消費者に広く支持されるだろうと感じる。

特にAmazonとMicrosoft、Googleはエンタープライズクラウドの分野でAWS、Azure、GCPがしのぎを削る。3社はそれぞれ音声アシスタントのベースとなる自然言語処理や音声認識技術、音声合成技術などを企業向けにAPIとして提供している。これらは、ディープラーニングによって飛躍的に進化を見せており、画像認識や音声認識は一部で人間を超えたとも言われている。こうした技術力を背景にAIが日々アップデートされる環境になると、その他のプレイヤーは為す術がない。

AIBOの製品ページは今も公開されたままだ

各種報道によれば、ソニーは18年前のAIBOと異なり、ただの「愛玩具ロボット」ではなく、人とたわむれ、人の言うことを理解し、家電連携などが可能になるロボットを目指すとされている。

ソニーは、8月にディープラーニングのプログラムを生成できる統合開発環境「Neural Network Console」を公開している。6月には同社のディープラーニングライブラリをオープンソース化しており、同社にも技術がないわけではない。また、同社が2016年5月に資本参加した米CogitaiのAI技術も活用するとみられる。

一方、オープンソース全盛、クラウド時代と言われている中で、どこまでソニーの技術が通用するのか。GoogleのTensorFlowなどのグローバル・スタンダードになりうるディープラーニング ライブラリは、ユーザーコミュニティが立ち上がり、クラウド基盤も含めて全世界の開発者がユースケース開発や機能改善のため議論を日々交わしている。

ソニーも外部に連携機能を開放するとみられるが、どこまで開発者を巻き込めるのか。希望の光があるとすれば、ソニーは日本企業で数少ないITプラットフォームの成功者だ。PlayStationは、単なるゲームプラットフォームを超え、同社のエンターテインメントプラットフォームとして少なからず存在感を発揮し、収益化の面でも「ソニーの三本柱」の一つに据えられるレベルまで達した。

ゲーム開発者とは異なり、他の家電メーカーとの連携、Web・アプリ開発者は未知の部分もある。特に後者はその母数が世界で数百万人単位にのぼり、「インディーズゲーム開発者と連携する」といったレベルとは異なるアプローチが求められる。前述のライブラリのオープンソース化においてもソニーは外部から1500名程度の反応があったと語るが、本気でプラットフォームを構築するつもりであれば、桁が1つ少ないのではないか。

強いソニー、ロボットで返り咲きなるか

「モノづくり大国日本」という言葉は、電機メーカーと自動車メーカー、そしてそれらを支える中小の部品メーカーによって神話化した。

しかしこの10年で電機メーカーは中国・韓国メーカーに飲み込まれ、自動車メーカーもEV化が迫られるなど、岐路に立っている。ただ、このモノづくりの底力を見せる可能性があるのがロボット分野だろう。

現在、ロボットの主力は産業用ロボットであり、この分野で日本はファナックや安川電機などの世界大手がいることもあり、5割程度のシェアを持っているとされている。家庭向けロボットと産業用では、製品の大きさなど整合性がない部分もあるが、ロボット工学としてはトヨタやホンダがロボットの研究開発を続けているように、一定の価値は存在する。

産業用ロボットが主流のロボット産業だが、2021年にはサービスロボットなどコンシューマ範囲にもロボットが浸透するとみられる(スライドはソニーモバイル発表会のもの)

何より、ロボットは単にCPUとディスプレイ、無線部品を組み合わせればいいスマートフォンなどと異なり、製品ごとの細かい駆動部の設計、組み合わせ、高い技術力を必要とする。愛玩具を超えたSFの世界のロボットを実現できれば、その先行力は10年スパンで武器になりうる。

ロボットはある意味でIoTの先端事例だ。IoTに必要なのは、ハードウェアとソフトウェアの"両輪"であり、ソニーがこれまで蓄えてきたハードの知見、ソフトの知見を活かそうとAIBO復活に注力しているのがその表れだろう。前述のXperia Hello!でも、ソフトウェア技術で外部流用していたものを、内製化することで知見を蓄えたいとソニーの倉田氏は語っていた。

新しいソニーのロボットに対して「AIBO」と冠するかどうかはわからない。ソニーはこの事業を犬型ロボットにとどまらず応用する可能性を示唆している。営業利益5000億円への道が見える中で、業績だけではない「強いソニー」を示せるのか。10月31日の第3四半期決算と11月1日の発表、2日連続の吉報が待たれるところだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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