クルマの未来に対照的な提案? 東京モーターショーのトヨタとアウディ

クルマの未来に対照的な提案? 東京モーターショーのトヨタとアウディ

2017.10.28

「第45回 東京モーターショー2017」でトヨタ自動車とアウディが展示した2台のクルマは、自動車での移動時間が今後、どのような意味を持つようになるのかについて考えさせる、興味深い対比を示していた。その2台とは、トヨタのオープンスポーツコンセプト「GR HV SPORTS concept」とアウディ「A8」だ。

伝統のオープンスポーツとHV技術が融合

トヨタ自動車が今回の東京モーターショー2017で初公開した「GR HV SPORTS concept」は、同社がレースで鍛えたハイブリッド(HV)技術が、「トヨタスポーツ800」や「スープラ」といった同社伝統のオープンスポーツと融合したようなコンセプトカーだ。ベースとなっているのは「86」だが、トヨタでは同コンセプトを「86」と表現せず、あくまでHVスポーツのコンセプトカーとして展示している。

「GR HV SPORTS concept」。トヨタは世界耐久選手権(WEC)をハイブリッドレーシングマシン「TS050 HYBRID」で戦っており、このコンセプトカーにはレースで鍛えたハイブリッド技術を搭載している

トヨタは先頃、スポーツカーの新ブランド「GR」を設立し、「ヴィッツ」や「プリウスPHV」といった既存のトヨタ車に“スポーツカーバージョン”を追加していく方針を示した。GR設立の時点で広報に聞いた印象としては、GRブランドで全く新しいスポーツカーが登場する可能性は薄そうな感じだったが、今回のコンセプトカーを見ると、GRブランドからの新モデル登場もなくはなさそうに思えてくる。

ルーフは着脱式。「トヨタスポーツ800」や「スープラ」では「エアロトップ」と呼ばれたスタイルだ

トヨタの説明員は「商品化については白紙」と断りつつ、トヨタは「レースで人とクルマを鍛え、楽しいクルマを出す」ことを目指しており、今回のコンセプトカーは「その第一歩となる提案」だと話していた。

テレビも見られるアウディの自動運転

一方、今回の東京モーターショーで日本初公開となったアウディの新型「A8」は、自動運転技術で世界に先駆ける存在だ。このクルマには、市販モデルとしては世界初となる「自動運転レベル3」の機能が搭載となる。

その機能とは、新型A8が搭載する「Audi AIトラフィックジャムパイロット」だ。「中央分離帯のある比較的混雑した高速道路を時速60キロ以下で走行しているとき」に限って使用可能な機能で、起動すれば発進、加速、ステアリング、ブレーキの各操作をクルマに任せることができる。アウディによれば、その国の法律さえ許せばという条件つきだが、自動運転状態の車内では、車載テレビを見るような過ごし方も可能なのだという。

アウディの新型「A8」

システムによる運転代行で広がる可能性

東京モーターショーのプレスブリーフィングに登場したアウディジャパンの斎藤徹社長は、自動運転のレベリングは「あくまで技術的なカテゴリー分けであり、重要なのはユーザーにどういったメリットがあるか」だとした上で、アウディの自動運転に関する取り組みや考え方などを以下のように語った。

「忙しい現代人にとって、毎日の通勤、都市間の長距離移動は、退屈で無駄な時間と感じられるだろう。そうした状況で、自動運転システムが運転を代行すれば、そこで生まれた時間を仕事や同乗者との会話、あるいはリラックスすることなど、他の有意義な活動に使える」

「(A8にトラフィックジャムパイロットを搭載したのは)渋滞中の運転に費やす時間をユーザーに有効に使ってもらえると考えたから。アウディでは、これで(システムが運転を代行することで)生まれるエクストラな時間を『25時間目』と呼び、どのような過ごし方が可能で有意義か、研究を重ねてきた」

自動運転技術の普及はクルマでの移動時間を一変させる。アウディが東京モーターショーに展示しているコンセプトカー「エレーヌ」(Audi Elaine concept、画像)は、A8よりも高度な自動運転を実現するとうたう電気自動車(EV)だ

確かに、渋滞中の車内で過ごす時間は少し退屈だ。システムに運転を任せることで、ドライバーも映画を観るなどの過ごし方ができるようになれば、移動時間の楽しみは増えるに違いない。斎藤社長は、アウディが自動運転技術の普及に積極的な理由について、クルマの安全性が高まるのはもちろんのこと、「人間を単調で生産性の低い作業から解放し、より自由な時間を生み出していくというモビリティの新しい可能性を信じているから」だと説明した。

クルマは単なる移動手段か

ただし、自動運転技術に積極的だからといって、アウディがクルマを運転する楽しさを無視しているわけではない。自動運転の時代が到来しても「アウディはクルマを運転する行為の意味や楽しみを否定するものではなく、操る楽しさのあるスポーティーなクルマを作り続けるつもり」(斎藤社長)というのが同社の方針だ。ブースに展示されていた「Audi R8 Spyder V10」や「Audi Q8 sport concept」といったクルマからも、その考え方は感じ取れた。

ダイナミックで高効率な未来のSUVを具現化したコンセプトモデル「Audi Q8 sport concept」

一方で、スポーツカーのコンセプトを展示しているトヨタも、決して自動運転技術に消極的なわけではない。現にレクサスのブースでは、高速道路の入り口から出口までを自動走行するデモムービーと共に、コンセプトカー「LS+ Concept」がお披露目されていた。この技術は2020年までに実用化する方針だという。

レクサスのフラッグシップセダン「LS」の将来像を示唆するコンセプトカー「LS+ Concept」

ただ、「GR HV SPORTS concept」と「A8」で比べると、自動車での移動時間を楽しくしたいというメーカーの思いは共通しているのに、その方法が対照的なので興味深かった。トヨタが運転すること自体の楽しみを打ち出す一方で、アウディは運転時間を別のことに使える楽しみを訴えている。

自動運転の進化により、クルマは単なる移動手段としてコモディティ化していくのか、あるいは、運転すること自体が楽しいというような、何か特別な価値を持つ存在であり続けるのか。今年の東京モーターショーは、こんなテーマで見て廻るのも面白いかもしれない。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。