シャープが通期予想を上方修正、不振脱却もディスプレイ事業は安泰?

シャープが通期予想を上方修正、不振脱却もディスプレイ事業は安泰?

2017.10.30

シャープが発表した2017年度上期(2017年4~9月)の連結業績は、同社の順調な回復ぶりを示すものとなった。

売上高は前年同期比21.3%増の1兆1151億円、営業利益は前年同期の7900万円から405億円へと大幅な増益。経常利益は前年同期の320億円の赤字から411億円の黒字に大きく改善。当期純利益も前年同期の454億円の赤字から347億円の黒字となった。大幅な増収と黒字転換。そして、すべてのセグメントで増収となり、すべてのセグメントで黒字化する結果となった。

中国で8Kテレビ販売スタート、国内も12月に

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村 勝明氏は、「売上高、各利益ともに、5月26日に公表した上期予想を上回った。とくに、四半期最終利益は、上期予想を大幅に上回り、リーマンショック以前の水準にまで回復した」と、業績の回復に自信をみせる。

上期の営業利益の増減要因を見ると、売価ダウンでマイナス723億円の大きな影響があったが、コストダウン効果やモデルミックスの改善効果で515億円、販売増加で466億円のプラス要因があり、こうした実力での利益押上げも大きな自信になっているといえよう。

その中でも最大の回復をみせたのが、液晶テレビおよびディスプレイ事業で構成されるアドバンスディスプレイシステムだ。全売上高の約半分を占める同セグメントの回復は、全社業績の回復に直結するのは明白だ。アドバンスディスプレイシステムの売上高は前年同期比45.9%増の5216億円、営業利益が前年同期の146億円の赤字から163億円の黒字に転換した。

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員 野村 勝明氏
アドバンスディスプレイシステムが好調だった上期

同セグメントのうち約3分の1を占める液晶テレビ事業は、価格下落こそ影響したものの、中国における大幅な販売拡大、欧州における自社ブランドによる販売体制の再確立の成果が出ている。またアジアでも売上げが拡大しており、「液晶テレビ事業だけ見ても、黒字を維持できている」とし、テレビ事業の回復ぶりを強調してみせた。

液晶テレビ事業については、今後、2つの注目点がある。ひとつは、シャープが先行している8Kテレビの動向だ。8Kテレビは、すでに10月から中国市場での販売を開始し、日本でも10月2日より予約受付、12月1日から国内販売を開始する予定だ。

野村氏は、「引き合いはいい状況である。日本における12月の販売開始時には月200台規模の販売を目指す。すでに販売を開始している中国でもいいスタートを切っている」と語った。8Kテレビは、下期からの利益貢献を想定しているという。

米国の係争案件は「ブランド取り戻す」

好調な液晶テレビ事業において、米国におけるシャープブランドの取り扱いが当面の懸案事項だろう。

現在、米国におけるシャープブランドのテレビ販売は、前経営陣がハイセンスにライセンスを譲渡したことで、シャープ自らが販売できない状態になっている。しかし、ハイセンスによる電磁波の規制違反や表示に関する規制違反、法令・安全規格違反などを問題視。また、ハイセンス製のスマートテレビが、シャープの特許を侵害しているとして、シャープブランドの使用権の差し止めなどを求める訴訟を行っているところだ。

今回の会見では、この件について「現在係争中の案件であり、コメントは差し控える」としたが、「シャープのブランドを取り戻すという姿勢は変えない」とも発言をしている。米国市場における液晶テレビの販売は、同社のグローバル戦略において欠かせないものであり、この「ピース」を加えることができるかどうかが、今後の液晶テレビ事業の拡大を左右することになる。

さらに、アドバンスディスプレイシステムのセグメントにおいて、売上高の3分の2を占める事業はディスプレイの外販。これについて野村氏は「大手顧客向けのスマホ、タブレット用中小型ディスプレイが好調であり、さらに、車載向け、ゲーム向けパネルが伸張した」と語り、「特にタブレット向けの中型ディスプレイが、売上げ、収益ともに大きく貢献している」と説明した。

セグメント別の営業利益率では、アドバンスディスプレイシステムが低水準にとどまった

差し当たり好況にも思えるアドバンスディスプレイシステムだが、問題がないわけではない。ひとつが、営業利益率が3.1%に留まっている点だ。白物家電や太陽光発電などを含むスマートホームの営業利益率が7.0%、複写機をはじめとするスマートビジネスソリューションの営業利益率が5.5%であり、アドバンスディスプレイシステムの営業利益率の低さが目につく。

野村氏は、「この利益率には満足していない。IGZOの強みなどを生かして、付加価値を高めた提案をしていくほか、利益率が高い中小型ディスプレイを強化していく。テレビ向けの大型ディスプレイの利益率は高くはないが、赤字にはなってない。これからも収益性は重視していくことになる」と説明する。

だが、中小型ディスプレイによって成長戦略を描いたのは前経営陣と同じだ。需要変動が激しく、価格下落の動きも著しい競争の激しい分野で、従来の経営陣とは違う成果につなげることができるかが注目される。

もうひとつは、収益性の高い中小型ディスプレイの分野で、有機ELが台頭していることだ。サムスンがGalaxyシリーズで先行しているのに加えて、iPhone Xでも有機ELを搭載。わずか数分で予約数量に達するなど、人気を博しているのは周知の通りだ。

野村氏は、「シャープも、有機ELを2018年4~6月に出していくスケジュールは変わらない」とする一方、「有機ELとの競合という点では、IGZOの強みを生かすほか、18:9の液晶ディスプレイによる提案も可能になる。有機ELは1社独占であり、供給にも課題がある。液晶の強みを発揮できる領域は大きく、決して弱含みというわけではない」と反論する。

今後、液晶対有機ELという構図が鮮明になるなかで、液晶ディスプレイの強みをいかに訴求し、維持できるかがカギになる。

営業利益と経常利益、当期純利益を上方修正、"目指す未来"に光明

全セグメントで売上は伸長した

一方で、アドバンスディスプレイシステム以外の業績も好調だ。スマートホームの売上高は前年同期比10.2%増の2906億円、営業利益は41.2%増となる204億円と、大幅に伸張している。

「携帯電話では、フラッグシップモデルとなるAQUOS Rを中心に増収。さらに、コードレス掃除機のRACTIVE Airやプラズマクラスターイオンを搭載した洗濯機といった白物家電も好調に推移している。エネルギーソリューション事業も底堅い推移だ」(野村氏)

また、スマートビジネスソリューションの売上高は1.9%増の1627億円、営業利益が20.8%減の89億円。企業向けのサイネージが好調であったのに加え、海外での販売会社の買収などの成果もあり、海外での売上げが拡大としたという。「価格下落の影響を受けたことで減益になったが、コストダウン効果によって、黒字を維持した」という。

さらに、IoTエレクトロデバイスの売上高は前年同期比8.5%増の1922億円、営業利益は前年同期の15億円の赤字から36億円の黒字に転換した。「スマートフォン向けカメラモジュールや半導体、レーザーなどの独自デバイスの販売増加。さらにはモデルミックスの改善効果、コスト改善の効果により黒字転換した」とした。

今回の好調な業績を背景に、シャープは、2017年度通期業績見通しを上方修正。売上高は、経済動向などの不確定要素により前回予想(前年比22.4%増の2兆5100億円)を据え置いたものの、営業利益は5月の公表値に対して30億円増となる前年比48.9%増の930億円に、経常利益は80億円増の前年比247.0%増の870億円、当期純利益は100億円増で前年の248億円の赤字から690億円への黒字転換を目指すとした。

「上期の実績を踏まえ、営業利益と経常利益、当期純利益を上方修正した。下期においても、これまでの流れを止めることなく、事業の拡大を図り、着実に通期業績予想を達成するとともに、利益率も上期を上回るように収益率の改善に取り組む」と野村氏は話す。

最終黒字化をより確実なものにする上方修正となったといえる今回の発表。前年同期とはまったく異なるシャープの姿がそこには明らかだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。