食生活の新機軸 - キーワードは「健康」、独自ビジネスモデルで成長するファンデリー

食生活の新機軸 - キーワードは「健康」、独自ビジネスモデルで成長するファンデリー

2016.05.17

食の宅配サービスが好調だ。矢野経済研究所の「食品宅配サービス市場に関する調査結果 2015」によれば、2015年度の市場規模は1兆9,864億円、2019年度には2兆1,470億円にまで拡大すると予測されている。多くの企業が参入し、競争が激化するこの市場において、独自のビジネスモデルで成長を続けるファンデリーを紹介する。

ファンデリーとは

ファンデリーは健康食宅配事業を行う会社。糖尿病や脂質異常症、高血圧、腎臓病といった食事制限が必要な人向けのお弁当を冷凍で宅配してくれる。メニューは「ヘルシー食」「ヘルシー食多め」「たんぱく質調整食」「ケア食」の4ジャンルに分かれており、すべて管理栄養士・栄養士が考案したもの。注文の電話を受けるオペレーターは全員が管理栄養士・栄養士だ。オペレーターは、必ず身長・体重のみならず血液検査数値や食事制限数値(「塩分は1日~gまで」など)を電話で聞き、一人ひとりに合わせたメニューを提案する(そのほか、WebサイトやFAXでも注文を受け付けている)。

ファンデリーの入居するビル。本社は東京都の赤羽にある
お弁当の盛り付け例。写真は「鶏肉のパプリカ煮込みセット」。カラフルで見た目にもおいしそうだ

創業は2000年。代表取締役の阿部公祐氏が脱サラして起こした会社だ。営業職に就いていたときに多くの経営者と出会い、「みなさん目が輝いていて、とてもカッコよかったんです。それで、自分もビジネスをしてみたいと思うようになりました」(阿部氏)というキッカケ。衣食住のうち、効果がみえやすい「食」にフォーカスし、多くの人の健康に寄与しようと宅配食ビジネスを始めた。

ファンデリー 代表取締役の阿部公祐氏

ファンデリーは「医食同源」ならぬ「一食二医」を掲げる。健康のためにはまず「食事コントロール」、それでも困難な場合に「医療」という考え方だ。食事で健康状態を改善できるなら、高齢化社会、生活習慣病患者の増加によって膨れ上がる医療費の削減にもつながる。

ところが、「創業当時は買い物代行業でしかなく、栄養士が家まで食材を届けることを生かしきれていなかった」と阿部氏は振り返る。はじめから栄養士ありきのビジネスを想定していたものの、食事制限が必要な人に特化していたわけではない。転機は糖尿病患者向けのレトルト食品を届けた時。「もっとちゃんとした食事があったらいいのに」との声を聞き、食事制限が必要な人向けにお弁当を宅配することを思いついたという。

今でこそ他社の参入も目立つが、当時は同じような健康食宅配をしている企業がほとんどなかった。ニッチな市場ながら、食事に悩んでいる人が多いという状況に、商機を見出したわけだ。ただし、阿部氏いわく「当時はとにかくお金がなくてチラシもカタログも作れない状態」だった。そこで、食品メーカーなどから広告を出稿してもらうかたちでカタログを創刊することになる。それが、他社との差別化に大きく貢献している「mealtime」(ミールタイム)だ。

他社はそう簡単に参入できない

ファンデリーのビジネスモデルにおいて、異彩を放つのがカタログ「mealtime」(ミールタイム)の存在だ。ミールタイム(薬局向けは「ミールタイム ファーマ」)を手に入れられるのは医療機関や保健所、介護施設、調剤薬局など、全国で合計約18,000カ所。年に4回、75万部ずつ発行しており、掲載メニューは各号240前後だ。メニューは毎号半分ほどが入れ替えになり、ユーザーが飽きにくいよう工夫している。

ミールタイムとミールタイム ファーマ。カタログを作成する際のコストも実はクライアントからの広告出稿料でまかなえてしまう

お弁当メニューのほか、表紙には主治医や食事制限の指示、血液検査結果の数値などを記入できる欄を設けていたり、食生活を振り返れる健康管理カレンダーのページがあったり、医師や栄養士が患者に栄養指導を行う際のツールとして使える。

これこそがファンデリーの強み。病院などにとっては「無料で使える栄養指導ツール」なので、ミールタイムを置いてもらうのも配ってもらうのもコストはかからず、ファンデリーはお弁当が売れても設置機関に何も支払う必要がない。かつ、約10年かけて開拓してきたネットワークは他社にとって参入障壁となる。

「担当栄養士」のカウンセリング

ミールタイムを持つ阿部氏。ミールタイムには管理栄養士・栄養士のプロフィールも載っているが、「親近感を持ってもらうため」とのこと

管理栄養士・栄養士がカウンセリングするという点も見逃せない。現在、会員数(累計)は約18万人いるが、そのうち「定期コース会員」は6,772人でこれまでも堅調に推移してきている。定期コース会員になると担当の栄養士がつき、継続的に栄養アドバイスをしてくれるのだ(定期コースでなくても管理栄養士・栄養士に相談できるが、担当はつかない)。

血糖値やコレステロールといった数値を改善するという明確な目的があるため、定期コース会員のリピート率はもちろん高い。加えて、目に見えるかたちで効果が出るため(もちろん個人差はあるが)、ユーザーのモチベーションも上がる。病院で食事制限の指示が出されても、肝心なのはそれを守れるかどうかだ。「お弁当を売ったらそれでおしまい」ではなく、管理栄養士・栄養士がトータルでサポートしていくため、医療機関からの信頼も厚い。

1日に何百件もの栄養相談を受けるというファンデリー。阿部氏は「これまで患者さんとダイレクトにやりとりしてきたデータが蓄積されているのも強み」と語る。「栄養相談を受けている件数は数ある企業のなかでもトップ」(阿部氏)であり、その声を生かしたメニュー開発は得意分野だ。たとえば、シャープの「ヘルシオ」シリーズとのコラボレーション。ウォーターオーブン向けに、糖尿病や高血圧といった疾病ごとのメニューを共同開発するなど、そのノウハウを活用している。

「いずれ」ではなく「今から」

現在のミールタイムは、「まさにこういうのがほしかった!」と思うような興味・関心の高い層へ効率よくアプローチできる仕組みになっている。メインのユーザーは60代以上の高齢者だが、阿部氏は「30代~40代のサラリーマン、なかでも"ちょっとメタボ気味"な男性にニーズがあるのでは」とみている。

「生活習慣病のスタートは食べ過ぎ・飲み過ぎ。30代くらいの方には『いずれお世話になるかもしれません』とよく言われるんですが、そうではなくて、食事で予防できるなら今からしておこう、という考えを広めていきたいんです」と阿部氏はいう。

「食」以外への展開

ところで、ファンデリーのホームページを見ると「ヘルスケア総合企業を目指します」と記してある。これは、ゆくゆくは食以外のビジネスも展開したいという姿勢のあらわれ。阿部氏は「担当栄養士には、運動や薬の飲み合わせなど食事以外の相談も寄せられます。ファンデリーは食から健康をサポートしていますが、患者さんの最終目標は健康になること。おせっかいかもしれませんが、食以外についても広範囲でサポートしていけたら、と思っています」と意欲的だ。

ファンデリーの事業分野は「食に限らない」とのこと

今後の展開について阿部氏に尋ねると、将来的には「健康改善に役立つ素材を開発する研究所を作りたい」「栄養士が運営する病院を作りたい」などアイデアがぽんぽんと出てきたことが印象に残っている。「ファンデリーの強みはソリューションを提供しているというところ。その強みをさらに磨いて、より魅力的な企業を目指したい」と語ってくれた。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

関連記事
「社会人デビューは30歳からでいい」 転職相談のプロが想う“令和時代のキャリア論”

「社会人デビューは30歳からでいい」 転職相談のプロが想う“令和時代のキャリア論”

2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

「20代の転職相談所」運営会社の社長に直撃!

「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
関連記事