好調キープのマクドナルド、「月見バーガー」発売で今年も磐石?

好調キープのマクドナルド、「月見バーガー」発売で今年も磐石?

2017.09.06

日本マクドナルドは本日、毎年恒例となった秋の季節商品「月見バーガー」を発売し、ハンバーガー“秋の陣”の戦いの火ぶたを早くも切った。今年度も好調をキープしているマックにとってみれば、今期の成績を確実なものにするためにも、この秋は絶対に外せない商戦といえるだろう。

マックが秋の季節商品「月見」シリーズを発売。価格は「月見バーガー」で単品340円、Mセット640円

ソース刷新、二代目「月見バーガー」がお目見え

発売から26年目を迎える月見バーガーは今年、進化した月見ソースを引っさげた「二代目月見バーガー」として登場する。「月見」シリーズのバーガーメニューには「チーズ月見」と「満月チーズ月見」のバリエーションも用意。新顔としては朝マック「月見マフィン」がメニューに加わる。

「月見」シリーズを先行販売する店舗に出掛けて、「満月チーズ月見」(単品390円)と「月見バーガー」の違いを店舗スタッフに聞くと、満月チーズ月見には「丸いふんわりとしたバンズ、そしてグリルしたベリーハムが入っています」との答えだった。確かに、丸くやわらかい感じのバンズであるが、ハム、チーズ、卵、そしてパティと、それぞれの硬さと個性を持つ具材をしっかり包み込んでいる印象だった。

バランスの良さを感じた「満月チーズ月見」

一般のバンズであったら、そのパサパサとした食感が全体のまとまりをスポイルしていることだろう。新しい商品と出会う際は、全体のバランスと個々の食材の個性を試しているのだが、この満月チーズ月見はバランスの良さを感じられる仕上がりだった。バンズの選択が、この味わいを醸し出す一番の役割を果たしているのだろう。

朝マックの「エッグマックマフィン」と「月見マフィン」は、「月見にはベーコンと月見ソースが入っている」(前出のスタッフ)ところが異なるとのこと。確かに、月見バーガーの味を朝の時間帯で味わうには効果的なラインアップと理解できるものの、エッグマックマフィンのファン(卵の味わいが好きな人)からすると、新商品という認識は薄まるかもしれない。

月見シリーズ初の朝メニュー「月見マフィン」

今期も好調のマック

12月決算のマックだが、2017年度の業績を見てみると、売上高と客数は毎月、前年同月を上回る好調ぶりだ。残り4カ月を駆け抜けるべく、月見で勢いをつけておきたいところだが、今期は定番商品の見直し・強化にも力を入れており、この2つの路線で相乗効果を生み出しつつ好業績を達成することが、マックにとって大きなチャレンジとなっている。

この戦略が奏功するかどうかを考えるためにも、ここでマックの昨年度から今年度にかけての動きを振り返っておきたい。

「おいしさ向上宣言」でレギュラーメニューにテコ入れ

売り上げ不振店舗の戦略的な閉店など、多くのビジネスリカバリープランを実行に移し、何とか黒字化を達成して2016年度(2016年12月期)決算を終えた日本マクドナルド。今年度は戦略の仕上げとして、「おいしさ向上宣言」と銘打ち、従来は見過ごされがちだった定番商品のテコ入れに力を注いでいる。

今までは、例えて言えば「打ち上げ花火状態」で期間・季節限定商品を繰り出し、1人でも多くの来店客の確保に重点を置いたのがマックの戦略であった。足が遠のいた顧客を呼び戻すため、さらには新たな顧客の来店を促すための戦略が実践されたのだ。

限定商品は「点」としての販売効果を見込めるが、顧客がリピートするには、「面」としての販売戦略が不可欠となる。それが、基幹商品である定番商品の魅力アップである。

基幹商品の強化と店舗体験の向上がマックの戦略の2本柱と言える。2017年に入り、マックがこの戦略に沿って実施した施策は以下の通りだ。

①おいしさ向上と題して1月に「プレミアムローストコーヒー」をリニューアルし、4月には新レギュラーメニューとして本格肉厚ビーフバーガー「グラン」を登場させた

②利便性の向上と題して店舗の改装を進め、従来はコンセプトがバラバラだった店舗展開の再調整に取り組んだ

新レギュラーメニューに加わった「グラン」

店舗体験の向上にも注力

店舗体験の向上を目指した施策の1つがポイントサービスとの連携だ。3月には「dポイント」、6月には「楽天スーパーポイント」が利用可能となった。決済機能の拡充に向けた取り組みも、多くの顧客から支持を得ている。

また、店舗環境の向上という観点で見ると、衛生面の改善は特に顕著であり、定期的にスタッフが環境整備で店内を回っている姿は、飲食店の基本を思い出させてくれるものだ。さらに、細かいところではあるが、カウンター下に位置する荷物置き場の改善も大きなポイント。荷物を床に置きたくない、と寄せられた声に対応したものだが、デイバッグや手提げかばんも楽に置くことができる荷物置き場の高さと幅は、店舗の利便性向上に一役買っている。

店舗リニューアルも最近、こなれてきたようだ。注文場所と受け取り場所の分離は、顧客の動線確保だけでなく、スペースの確保とスタッフの負担軽減にもつながっている。また、店舗立地により、カウンター席を中心とした座席配置を設定したり、可動椅子と固定椅子の配置を工夫したりするなど、顧客の居心地を意識した店舗作りができるようになってきたと感じる。

過日の店舗訪問の際、店員が「店舗体験」について来店客にヒアリングしている姿も見かけた。スマホアプリ「KODO」をはじめ、顧客から集まる膨大なデータを店舗環境の整備に活用する仕組みが整ってきたのだろう。顧客の声を「聞く」仕組みと商品開発や店舗展開などに「活用する」仕組みがうまく回ってこそ、初めてエクスペリエンスの向上につながるわけだ。

秋の定番商品である月見バーガーに寄せるマックの期待はとても大きい。しかしながら、月見だけでハンバーガー“秋の陣”を制することはできない。わきを固める通常商品の販売も確実にしていく必要がある。

季節商品とレギュラーメニューの両立が鍵だ(画像は「月見バーガー」)

月見のプレス発表と並行して、マックの公式アプリにある変化が見られた。9月6日までの期間限定だが、ビッグマックセットやダブルチーズバーガーなどのクーポンが配信されていたのだ。また、8日までとなっているがてりやきマックバーガーのセットなどのクーポンも見つけた。この辺りからも、集客策と定番商品の訴求が同時に行われていることを感じられる。

一方、月見シリーズを先行販売している店舗では、意外にも月見を注文している顧客は多くなかった。期間と店舗を限定した先行販売のため、まだクーポンが配信されていないことも、理由の1つなのかもしれない。実際に来店客が注文している商品を見ると、やはりクーポン商品が多く目に付いた。

マックの業績を左右する外食産業“冬の陣”

日本マクドナルドホールディングスの発表するセールスレポートによると、2017年度は客数において、5月を除き前年同月比で2桁%の伸びを示している。2017年3月の前年同月比12.2%増は、2016年3月が同5.1%増だったのに対し倍以上の伸び率だ。これは「てりたま」効果によるところも大きいだろうが、ビーフの新商品である「グラン」が集客に一役買ったと見ることもできる。

マックが春の季節商品として押し出す「てりたま」(画像は2017年3月の発表会で撮影)も3月の集客に効果があった様子

6月で比べても、2016年が前年同月比3.3%増だったのに対し、2017年は同13.5%増と大幅に来店客が増えた。同月は「ビッグマック祭り」が行われ、しばらくクーポンから姿を消していたビックマックが値引きとなった。大幅な値引きではなかったものの、やはりビックマックファンの多くは店舗に駆け込んだものと見える。

2016年度は結果的に「マクドナルド復活?」と騒がれたが、戦略的には客数を目指すのか、単価アップを目指すのか軸足が決めきれていない感があった。しかし、2017年度は目指す戦略(方向性)がしっかりしてきたことから、上期は堅調な結果を残すことができたと言えよう。新商品ラッシュという話題性だけを狙うのではなく、今年度は顧客が足を運ぶ価値のある商品展開や販売戦略を着実に実行している印象だ。

2017年12月期も残り4カ月を残すのみ。秋の名物「月見」シリーズの後には、1年の締めくくりとして冬の「グラコロ」も登場を控えている。このままマックが逃げ切るのか、あるいは競合各社が一矢報いる戦いを挑んでくるのか。マックが相手にするのはハンバーガー業界のライバルだけではない。

冬はコンビニ各社が「おでん」に磨きをかけ、中食需要の取り込みを図る一方で、丼チェーン各社はアツアツの「ひとり鍋」と1000円以下の低価格居酒屋業態で集客を図る。ファストフード、その他の外食、コンビニが三つ巴で繰り広げる外食産業“冬の陣”だが、2期連続の経常黒字に向け、マックは存在感を示したいところだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。