日本のワイン史140周年! 業界の雄「メルシャン」が示した軌跡と未来

日本のワイン史140周年! 業界の雄「メルシャン」が示した軌跡と未来

2017.09.07

2017年8月、日本のワイン造りが140周年を迎えたとメルシャンがアナウンスした。140周年が長いか短いかはひとまず置いておくとして、“区切り”を迎えたことは確かだ。そのメルシャンが山梨県の拠点である「シャトー・メルシャン」へメディアツアーを開催した。

140年前といえば、1877年(明治10年)。その年にはどのような出来事があったのだろうか。もっとも有名なのは西南戦争が勃発したことだろう。そのほか、日本初の高等教育機関として東京大学が設立されたり、学習院が誕生したりと、政治、文化が激動した年だ。海外ではトーマス・エジソンが蓄音機の発明に成功している。

この年に「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、土屋龍憲と髙野正誠がフランスに派遣された。彼らはワインの本場フランスで、苗木づくりや醸造、貯蔵の技術などについて学び、1879年に帰国。この大日本山梨葡萄酒会社が、メルシャンの前身となる。完全なこじつけだが、最後の士族の赤い血が多く流れたこの年に、赤い色のお酒を造る会社が生まれたのかと、感傷に浸ってしまった。

仕込みはじめを神事で祈り

山梨県・甲州市のシャトー・メルシャン

メディアツアーに話を戻そう。招待されたのは、山梨県・甲州市にあるシャトー・メルシャン。メルシャンがワイン造りの“旗艦”とするワイナリーで、日本産ワインの象徴的な存在にもなっている。工場の規模もワイン生産量も、神奈川県にあるメルシャン藤沢工場に遠くおよばないが、こちらは安価なデイリーワインをメインに造る拠点。日本産ブドウから品質の高いワインを生み出すシャトー・メルシャンは、手がけるブランドからしても、歴史の面からも同社のフラッグシップといってまちがいない。

そのシャトー・メルシャンに案内されて、最初に面白い光景を拝見した。実はこのメディアツアーが行われた日、今年に収穫されたブドウを使った“初の仕込み”だったらしく、厳かに神事が行われていた。宮司が神棚に向かって儀式を行い、今年のワイン造りの安全や仕上がりを祈っていく。少し「クスッ」となったのは、神棚にお供えになった“御神酒”がワインだったこと。御神酒は日本酒というイメージで凝り固まっていたが、ワイナリーでの神事だ。ワインのほうがシックリくるというものだろう。

神事のあと、今年初ブドウの搾汁が開始された

続いて、ワインのテイスティングを体験させていただいた。テイスティングなどというと少々気取っているが、ようは「タダ酒が飲める」というくらいに考えていた。内心はニヤニヤしながら、目の前に並べられた3種の白ワイン、1種の赤ワインを神妙な面持ちで飲み比べてみた。すると不思議なもので、味のちがいが伝わってくる。普段は1種のワインを「おいしい」と思いながら飲むが、異なる銘柄を飲み比べることはない。こうしてグラスを並べて飲み比べれば、それなりにワインの個性を感じ取れる。

そして、最後に注がれた赤ワインにびっくりした。これは「桔梗ヶ原メルロー」という、シャトー・メルシャンの“顔”ともいえる銘柄で、あきらかに普段飲んでいるワインと味わいが異なる。それこそ、いつも飲んでいるのはメルシャン藤沢工場で生産された、1本500円くらいのものだが、まったく別物のように感じた。あとで広報担当者から聞いたことだが、“諭吉さん2枚を超す”価格のワインだそうだ。

テイスティングに用意されたワインとそのボトル

デイリーワインに馴染んだ層をいかにステップアップさせるか

ただ、ここで違和感も憶えた。確かにワインを楽しむ層が増えたのはまちがいない。しかしそれは、安価なワインがコンビニやスーパーで手に入れやすくなったことが大きな理由。そうしたデイリーワインに慣れ親しんだ人々が、このシャトー・メルシャンのラインに手を伸ばすだろうか。テイスティングに提供してもらった白ワインも2,000~3,000円はする。

デイリーワインで裾野を広げることには成功した。メルシャンとしては、こうして増やしたワイン愛好者の何割かに、シャトー・メルシャンといったハイブランドへの興味を持ってもらいたいというのが本音だろう。だが、ワンコインでワインを楽しんでいる層が、そうしたハイブランドに簡単に軸足を移すとはあまり考えられない。つまり、デイリーワインとシャトー・メルシャンの隙間を埋めるブランドが弱く、ワイン愛好者が少しずつステップアップしにくい状況が生じてたのだ。

この点をキリン(メルシャンはキリングループ)の担当者にたずねると、「そうした谷間を埋めるために『カッシェロ・デル・ディアブロ』というブランドを扱い始めました」との答えが返ってきた。このブランド名はスペイン語で「悪魔の蔵」という意味。その昔、あまりの美味しさに“盗み飲み”が絶えず、創立者が「この蔵には悪魔が棲んでいる」とのウワサを流したところ、盗み飲みがなくなったという逸話を持つ。取り扱い以降好調で、2016年第1四半期には、販売量が前年比142%も伸張したという。

こうして、デイリーワインとシャトー・メルシャンのようなハイブランドの隙間を埋める商品の目途は立ったが、気になる点がもうひとつある。それは、ここ1~2年、ワインの消費量が鈍化している兆しがあることだ。

テイスティングのあとはランチとなったが、ここでもワインが提供された

ワインは現在“第7次ワインブーム”を迎え、2012年から2015年まで、4年連続で過去最高の消費量を更新してきた。それが、足踏みをし始めたのではないかと、ワイン取り扱い関係者からチラホラと聞かれるようになった。まだ、直近のデータが発表されていないので詳しいことはわからないが、この点をメルシャン 常務執行役員 営業本部長 館野敦氏に聞いてみた。

「チリ産ワインの急速な普及で、コンビニやスーパーのワイン売り場が広がりましたが、この動きが一段落したというのが鈍化の理由のひとつです。ただ、ワインの消費量は今後も伸びるとみています」と、館野氏は話す。

その理由はこうだろう。ワインを提供する飲食店は今や珍しくなくなったが、まだまだビールや清酒のようにほとんどのお店で提供されているわけではない。そうした飲食店の開拓にまだ余地があること。また、近年は「甲州」や「マスカット・ベーリーA」といった日本固有のブドウから醸造された“純国産ワイン”が注目され始め、世界文化遺産になった和食との相性に着目する料理人やグルメが増えていることが挙げられる。

日本固有のブドウ種である「甲州」と、それを育む豊かな自然

ブーム到来も十分ありえる

さらに“水物”ともいえるが、酒類は何かのきっかけで消費量がグンと増えることが珍しくはない。たとえば1990年代後半、「ポリフェノール」が注目され赤ワインの人気が爆発的に伸びたし、安倍首相が各国の要人に贈ったことで知名度が上がった日本酒もある。近年は朝の連続ドラマの舞台が蒸留所だったことで、品薄になるウイスキーの銘柄があったほどだ。ただ、この場合は一過性となることも考えられ、こうしたチャンスが訪れたときに、いかにファンをつなぎ止められるかがカギとなる。

さて、冒頭で示したとおり、日本のワイン造りは140周年を迎えた。人生70年と考えれば、その“2生分”の年月はいかにも長い。だが、海外に目を向ければ、ワイン造りの痕跡は紀元前までさかのぼる。とはいえ、日本のブドウ栽培、日本の醸造技術は加速度的に発展し、今や世界的コンクールで金賞を受賞するまでとなっている。今後もグローバルで評価されるワイン造りを続けてもらいたい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu