採点競技に“科学の眼”!? 富士通が東京五輪に新技術を投入

採点競技に“科学の眼”!? 富士通が東京五輪に新技術を投入

2016.05.18

東京に招致できたまではよかったが、「新競技場のコスト問題」「エンブレムの盗作疑惑」「コンサル料の闇」などなど、次々と波乱が巻き起こる東京2020五輪大会。せめて競技そのものは公正でクリーンなものにして、さわやかに観戦できるようにしていただきたい。とはいえ、フィギュアスケートのように「ん!?」と思ってしまうような採点が出されることが少なくない。こちらは“ずぶの素人”なので100%採点者が正しいことはわかってはいるが、やはり何かしらの明確な基準がほしいものだ。

メダル候補の白井選手も注目

公益社団法人 日本体操協会と富士通、富士通研究所は、その明確な基準となりそうな採点支援技術の共同研究について発表した。その研究とは“3Dセンシング”により競技者の動きを立体的に捉え、ICTを駆使して採点を算出するというもの。まずは体操競技を対象に技術開発・技術実証を行い、2020年の東京五輪で活用したい考えだ。

日本体操協会 会長 仁木英徳氏は「採点スポーツである体操競技では公平かつ正確にジャッジしなくてはならない。だが、現在は超人的なレベルに競技が発展。目視だけでは限界があるので最新テクノロジーを活用したい」と、今回の研究に期待を寄せる。

日本体操協会 会長 仁木英徳氏
国際体操連盟 理事 渡辺守成氏

国際体操連盟 理事 渡辺守成氏も「昨年10月に富士通のオリンピック対策室で“何かできないか?”と発言したのがきっかけ。わずか半年あまりで記者発表にこぎ着けたのはすごいこと」と前置きし、「競技の採点だけでなく、指導者・競技者がワザを研究・研磨するのに非常に役立つと思う。観客サイドからみても『今、どんなワザを繰り出したのか』が確認しやすくなり、わかりにくかった体操競技への理解が深まる。体操競技の人気上昇につなげたい」と語った。

ビデオメッセージで登場した白井選手

さらに「2020年までは日本だけで活用し、選手育成に役立てたい。15個ものメダル獲得を予定しているので(笑)」と、冗談を交じえながら3Dセンシングによる採点システムに対する期待を打ち明けた。

また、メダルが期待される白井健三選手もビデオメッセージで登場。「自分のパフォーマンスがうまくいったときといかなかったときを比べ、指標づくりができます」と話した。余談だが、前出の渡辺理事は「白井選手は“4回転ひねり”から“5回転”に挑戦している。5回転ともなると目視で確認するのは非常に困難」と、いかに体操競技の進歩がめざましいかを強調した。

具体的なテクノロジーについて触れてみよう。研究が進められている3Dセンシングは「3Dレーザーセンサー技術」と「骨格認識技術」を融合したものになる。1秒間にレーザーを230万回パルス照射し、対象物から戻ってくるまでの往復時間を計測することで距離を算出、立体を認識する。さらに得た3Dデータから関節位置の3次元座標を推定し、ヒジやヒザの曲がり具合などを認識し、ワザの完成度の判定などに活用する。

右の写真が3Dレーザーセンサー。モニターに映り込んでいる人物の動きをリアルタイムで立体表示する

これまで、人間の動きを立体映像化するには、おもに「モーション・キャプチャー」という方式が用いられてきた。アニメ映画やゲームのムービーなどでお馴染みの手法だ。だが、モーション・キャプチャーは体中にマーカーを装着し、10台以上のカメラを駆使しなくてはならない。

体中にマーカーを取り付けての体操競技など非現実的だ。事実、白井選手もビデオメッセージの中で「センサーをつけて体操の動きを検証したことがありますが、とても違和感を覚えました」と語っている。

スポーツからほかの産業へ

富士通 執行役員常務 廣野充俊氏

さて、富士通が3Dセンシングに取り組むねらいは何か。

「富士通は24人のオリンピック選手、3人のパラリンピック選手を輩出し、川崎フロンターレや女子バスケットボールチームを所有するなど、スポーツ貢献に積極的」(富士通 執行役員常務 廣野充俊氏)というように、スポーツへの取り組みを盛んに行ってきた。さらに、無線通信による照度制御やスムーズな入退場管理が行える“スタジアムソリューション”を提供したり、上部のカメラで選手の動きをトラッキングできる“スマート体育館”を開発したりと、スポーツにICTを採り入れてきた事例がある。

この3Dセンシングを活用した採点システムもそうした流れのひとつ。まずは定点観測に向く体操競技の「あん馬」で実証システムを開発し、「鉄棒」や「跳馬」「床」といった広い動きとなる種目に適用していく。もちろん体操競技だけでなく、フィギュアスケートや高飛び込み、乗馬といった採点競技全般にこのシステムを導入したい考えだ。

そして、富士通がにらんでいるのがスポーツ以外の産業だ。3Dセンシングによる立体データを医療分野や健康増進、産業・文化といった面での活用を見据えている。たとえば“手術の手順”“陶磁器のろくろ回し”“能や歌舞伎など伝統芸能の動き”といったものを立体記録できるようにし、それぞれの産業の発展に寄与していくのがねらいだ。

国際体操連盟の渡辺氏は、新たな採点支援システムにより、体操競技のリズムが速くなると強調する。「今までより体操競技観戦がエキサイティングになるはずです」という言葉に、4年後の楽しみがひとつ増えた気がした。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu