インバウンド観光客を魅了できるか!? 日本独自の食文化「駅弁」復活への課題【後編】

インバウンド観光客を魅了できるか!? 日本独自の食文化「駅弁」復活への課題【後編】

2016.01.27

NRE大増 商品開発部長 白木克彦氏

前編では、日本独自の食文化「駅弁」がなぜ国内に普及したのか、その背景について追ってみた。後編では、駅弁が「EKIBEN」として外国人に受け容れられるかどうかについて考えてみたい。公益社団法人「米穀安定供給確保支援機構」が開催した「日本の食文化『EKIBEN』とごはんの魅力」という説明会において、NRE大増(エヌアールイーダイマス)で商品開発部長を務める白木克彦氏が、外国人への駅弁訴求について、その糸口を示してくれた。

ちなみにNRE大増は、JR東日本の飲食事業に携わる日本レストランエンタプライズ(NRE)のグループ会社。東京駅で販売される駅弁の製造や主要百貨店での弁当販売、スーパー・コンビニ用弁当の製造を手がけている。

国ごとの課題克服が必要

NRE大増は、駅弁が海外に受け容れられるかどうか、試験的にシンガポールと台湾で販売を行った。その際の調理責任者が白木氏だ。試験販売とはいえ、日本で製造した駅弁をそのまま海外に持ち込んだわけではない。「日本で製造した弁当を海外に輸出するのは、食品の保存期間を考えると衛生的に難しい。現地で調理できるパートナーが必要になる」と、海外で駅弁を販売することの難しさを強調した。加えて“伊達巻きを卵焼き”にするといった、外国人の嗜好に合うメニューづくりにも苦労したと語る。

結果、シンガポールでの取り組みは、“多彩な食材を彩りよく詰める駅弁”が逆に仇をなし、“食べられない食材が入っている”ことに抵抗感を示す客がみられた。また、本当にサンプル写真のように食材が入っているのか、たずねてくる客もあったという。

一方、台湾での取り組みは、現地ではすでに駅弁文化が根づいており、事前のPRも功を奏したこともあって大盛況で終わったと報告した。台湾現地では2種類の駅弁を販売したが、さらなるメニューの拡充を求められた反面、多彩な食材調達によるコスト増をいかに抑えるかが課題になったと付け加えた。

衛生面・コスト面はさておき、「EKIBEN」が海外に受け容れられるために克服しなくてはならない“文化の違い”が2点、白木氏のレポートから浮き上がってきた。1点目は、米飯が冷たくなってもおいしく味わえるのを理解してもらうこと。台湾では駅弁が根づいていると前述したが、その場で調理した温かい弁当が主流で、冷えてしまった米飯には慣れていない。だが、台湾では味については好評だったというから、食べてさえもらえればこの点は克服できそうだ。

駅弁のパッケージは、実際の中身がみえないものが多い

もう1点が駅弁ならではのパッケージングだ。ご存じのとおり、大半の駅弁が中身のみえないパッケージを採用している。そのため、何が食材に使われているのか外国人に伝わりにくく、シンガポールの例にみられたように“食べられない食材が入っているかもしれない”という理由から敬遠される可能性がある。また、店頭のサンプル写真と本当に同じように食材が詰められているのか、疑ってかかる客が生じることも考えられる。海外では、食品のサンプル写真と実際の中身が乖離している例が少なくない。“中身がみえないから”という理由で、手に取ってさえもらえない可能性があることも否定できない。

コンビニ弁当のような透明パッケージにすれば、この問題をある程度は回避できるだろう。だが、日本人であれば“駅弁のフタを開ける瞬間のワクワク感”すら、旅の楽しみのひとつであると捉えるため、透明パッケージではかえって味気なさすら感じるのではないだろうか。駅弁は、サンプル写真と同じように食材が詰まっていることを、長い時間をかけて外国人に理解してもらうしかないだろう。

JR東日本とNREが出店する「EKIBEN」のイメージ(2015年10月本誌記事から)

さて、駅弁を「EKIBEN」として海外に売り出そうとする施策が活発化してきている。米穀安定供給確保支援機構だけでなく、日本の名だたる企業がEKIBENの推進に乗り出してきているのだ。その筆頭がJR東日本だろう。JR東日本とNREは、2015年10月にパリ・リヨン駅に「EKIBEN」の専門売店を期間限定で出店すると発表した。

フランスは、かねてより和食の人気が高かった国。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてからは、その傾向がより一層加速した。こうした流れをEKIBENで捉えようとしたのがこの施策で、日本ではお馴染みの「幕の内折詰弁当」や「おにぎり弁当」のほか、フランスのシャロレー牛を使用したオリジナル弁当「パリ・リヨン弁当」などの販売を予定する。ちなみに、これらのメニュー開発を担当した調理責任者が前出の白木氏だ。

だが、11月に発生したパリ同時多発テロにより、フランスに非常事態宣言が出された。その影響により、残念ながらこの施策は延期されたが、JR東日本もNREも、事態の終息をみて再度出店を試みる考えだ。

名物駅弁を訴求することで地元にインバウンドを呼び込む

一方、国内を訪れるインバウンド観光客へ「EKIBEN」の啓蒙を行っているのが、駅弁最大手ともいえる崎陽軒。同社は外国人観光客向けに、英語表記のパンフレットを作成し、神奈川・東京を中心に展開している約150店舗での無料配布を実施した。

店頭で無料配布されたパンフレット。邦人にもわかるように日本語が併記されている(崎陽軒ホームページより)

「駅弁という、日本ならではの独自文化を海外の方たちにも旅行のひとつの楽しみとして味わっていただきたいと考えてこの施策を始めました」(崎陽軒・広報担当者)という。 また、横浜名物として昇華した「シウマイ」を外国人に知ってもらうことで、観光地としての横浜の価値を高めるねらいもある。「インバウンド観光客が増加しているなか、横浜は決して優先順位の高い観光地ではありません。シウマイというメニューで横浜を訪れるきっかけにしていただきたいです」(同担当者)。

アレルギー表示やイスラム法に合するハラール表示など、国内向けとは異なる対応が必要になると前置きしながらも、「今回の施策の反応をみて、さらなる多言語対応を検討していきたいです」(同担当者)とした。こうした外国人の理解を得られる取り組みが進めば、“食べられないものが入っているかもしれない”という不安が取り除け、中身がみえないパッケージでも手に取ってもらえるようになるのではないだろうか。

さて、崎陽軒の「シウマイ弁当」は、駅弁からスタートしたのは確かだが、今ではその枠を越え“横浜名物”とまでいえる存在となった。駅での販売はもちろん、デパートやスーパー、自前のレストラン、横浜スタジアムなど販売チャネルは多岐にわたり、今やその知名度は全国区だ。このように、各地の駅弁がその土地の名物となり、全国に名が知れわたるかどうかが生き残りのカギともいえる。群馬県の横川・高崎で根を張る「峠の釜めし」や、北海道・森駅を発祥とし函館名物にまでなった「いかめし」などは、シウマイ弁当と同じく全国区への歩みをゆるぎないものにしている。

知名度の高い「峠の釜めし」(左)と「いかめし」。このほか、高崎の「だるま弁当」や富山の「ますのすし」も名をはせている

では、どのように全国区になっていくのか。「峠の釜めし」も「いかめし」も、都内で行われているあるイベントの常連メニューとなっており、それを足がかりにして首都圏にファンを増やした面がある。そのイベントが京王百貨店・新宿店で毎年1月に行われている「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」だ。同イベントは、期間中の売上が6億円を超える京王百貨店が手がける最大級の催しで、1966年から51回も続く歴史を誇る。

イベント内で行われる「駅弁大会」で上位に選出された駅弁の人気に火が付き、全国区に躍り出たということも少なくない。事実、いかめしは第1回大会で1位を獲得。以降、ランキングの常連となり、全国に知れわたるようになった。

取材した当日は、首都圏に今年初の大雪が降り、交通機関に大ダメージが生じた日だったが、会場内は多くの“駅弁ファン”でにぎわっていた。それでも担当者によると「例日よりも少ない客入り」だという。客層をチェックしてみると、筆者が注目している外国人客はほとんどみられなかった。むしろ、お目当ての駅弁ブースにサッと並び、弁当を手に入れると併設された休憩所で味わう手慣れた客が多いように感じられた。歴史が長いイベントだけにリピーターが多いのだろう。また、新宿ではなく、浅草から秋葉原、有楽町にかけての“インバウンドの通り道”ともいえる地域周辺の百貨店で、このような催しが行われれば、客層は違ってきたかもしれない。

会場を見わたすと、牛肉素材と海鮮素材が駅弁の2強という印象(写真左・中央)。前述した台湾の駅弁も販売されていた。日本の多くの駅弁と異なり、透明パッケージを採用する(写真右)

余談だが、この日は「のどぐろと香箱蟹弁当」ブースの行列が目立った。北陸新幹線開通でわく石川県の名産であること、テニスの錦織選手が「のどぐろが食べたい」と発言して話題になったことが影響しているのかもしれない。

長い列が生じていた「のどぐろと香箱蟹弁当」のブース

いずれにせよ、“駅弁は駅で買うもの”という至極まっとうな常識から離れなければ、窮地に追い込まれている駅弁の浮上は困難だろう。インバウンド観光客という新しい需要取り込みと、駅以外の販売チャネルの確保といったことが、駅弁復活の課題になるといえる。

過去最高のインバウンド来日数にわく日本文化

●インバウンド観光客を「虜」にする日本の“文化財ランドマーク”【前編】
●インバウンド観光客を「虜」にする日本の“文化財ランドマーク”【後編】
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LINEがあえて「LINE Pay」専用アプリをリリースした背景

LINEがあえて「LINE Pay」専用アプリをリリースした背景

2019.04.18

LINEが「LINE Pay」のサービスや機能を強化

対応店舗のマップ表示やクーポン機能などが利用可能に

まずはAndroidのみでスタート、iOS版は追ってリリース予定

4月17日、LINEはモバイル決済「LINE Pay」の発表会で、2019年4月後半に実施する「平成最後のキャンペーン」を発表した。注目すべきは、LINE Payの決済に特化した専用アプリのリリースだ。

LINE Payのアンバサダーには女優の今田美桜さんを起用した

これまでLINEは、ほとんどのスマホに入っているLINEアプリを窓口として、さまざまなサービスを提供してきた。なぜこのタイミングで、流れに逆行するような専用アプリを出すに至ったのだろうか。

正味の還元率は20%から15%に低下

LINE Payの国内登録ユーザーは3,200万人。LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏は「国内No.1を自負している」と強気を示す。特に注力してきたのが毎月の後半に実施する還元策「Payトク」で、バーコードやQRコードによるコード支払いの利用者は21倍に増加したという。

還元キャンペーン「Payトク」でコード支払いは21倍に

平成最後となる4月後半は「実質最大20%還元」として、4月18日から30日までの期間中に1人あたり最大5,000円を還元する。

気になるのは「実質最大」という表現だ。正味の還元率は15%で、そこに利用量に応じて決まるマイカラー制度やコード支払いのポイント増量を加えて合計20%という建て付けになっている。

3月後半には正味で20%還元だったことに比べれば、4月は還元率を下げたことになる。午前中の発表会では「2万5,000円の支払いで5000円分を還元」としていたが、夕方になって「15%分の還元として最大5,000円分」に訂正。つまり、5,000円分の還元を得るには約3万3,333円の利用が必要になる計算だ。

「平成最後」は実質最大20%還元に(2万5,000円のお支払いという表現は後に訂正された)

還元率15%が破格のオファーであることは間違いないものの、他の事業者が20%還元を継続する中、実質最大という表現でお茶を濁した印象は否めない。高い還元率をいつまでも続けるわけにはいかず、そろそろ息切れが近いのだろうか。「令和最初」は還元率20%の復活を期待したいところだ。

専用アプリでシンプルかつ便利になった「LINE Pay」

還元率がややトーンダウンした一方、LINEが新たに発表したのがLINE Payの決済専用アプリだ。4月後半のPayトク期間中にこのアプリをコード支払いに使うことで、還元上限が2倍の1万円に増加することからも、見逃せない点だ。

LINE Payの決済専用アプリをリリース

なぜ、通常のLINEアプリとは別に、LINE Pay専用のアプリを出す必要があったのだろうか。背景にはLINEアプリの複雑化がありそうだ。

LINEの月間アクティブユーザーは6,600万人に達しており、日本国内のほとんどのスマホにLINEアプリが入っていることは大きな強みだ。だが、1つのアプリに多数の機能やサービスを盛り込んだことで、目当ての機能を見つけにくいとの指摘は増えている。

もともとQRコード決済はかざすだけのFeliCaに比べて手間がかかるのに加え、LINEアプリ自体の複雑さが面倒さを助長していたといえる。そこで登場したのが、LINE Payの決済専用アプリというわけだ。

LINE Payアプリ。コードの読み取り、コードの表示の両方に対応する

アプリを起動すると、画面の上半分にはQRコードを読み取るためのカメラが、下半分には読み取ってもらうためのバーコードとQRコードが表示される。また、30万円までならFace IDやパスワードによる認証なしで支払えるようになった(認証を必須にする設定も可能)。

ほかにもアプリ内には、LINE Pay対応店舗を表示する地図や、すぐにアクセスできるクーポン画面を備えており、ライバルのPayアプリに見劣りしない使い勝手を実現している。かざすだけのFeliCaより手間はかかるものの、決済だけでなく情報提供もできる点はアプリ決済ならではのメリットだ。

LINE Pay対応店舗の地図機能や、クーポン機能を備える

ただし、Android用アプリを即日提供したのに対し、iPhone用アプリは「近日中」との表現にとどまった。アプリ開発をぎりぎりのスケジュールで回している際にはよくある話だが、アップルの審査を待っているなど、不確定要素が多く明言できない印象だった。

質疑応答にこたえる長福久弘COO。iOS版の提供時期は明言できなかった

4月末までのキャンペーンに利用したいiPhoneユーザーからは不満の声が上がっているものの、長期的な視点ではコード支払いの手間が減ることは大きな前進だ。これをきっかけにQR決済の普及に弾みが続くかどうか、注目したい。

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gooが目指す、誰でも「AIチャットボット」を作れる近未来

gooが目指す、誰でも「AIチャットボット」を作れる近未来

2019.04.17

人手不足を背景に「チャットボット」に注目が集まる

NTTレゾナントがAIを活用した新サービスを発表

チャットボットを活用した新たなビジネスモデルの構築へ

4月16日、NTTレゾナントはAI技術を活用したチャットボットの新サービスを発表した。ポータルサイトであるgooの技術を背景に、従来の法人向けのサービスを強化しつつ、新たに個人向けサービスにも参入する。

gooのAI技術を用いたサービスをBtoB、BtoC向けに展開

日本の人手不足などを背景に、ユーザーの問い合わせにAIが答えるチャットボットが大きく注目されている。その中でNTTレゾナントは既存業務の効率化にとどまらず、新たな付加価値の提供にチャットボットを応用していく構えだ。

「本音」を引き出す“チャットボットならでは”の魅力

チャットボットは、メッセージに反応して自動的に返事を返してくれる会話プログラムだ。かつては単純な受け答えしかできなかったが、ここ数年、機械学習などのAI技術を用いて学習を積み重ねることで、急速に進化している。

この分野において、検索エンジンやQ&Aサイト蓄積されたデータに基づく「gooのAI」技術を保有するNTTレゾナントは、企業向けにAI技術を用いたチャットボットをセミオーダーで提供するサービスを展開してきた。

たとえば日本テレビのドラマ向けには、登場人物を模したAIキャラクターとLINE上でチャットを楽しめるサービスを提供した。AIはドラマの内容を学習することで、設定に沿った受け答えができるという。

日本テレビ『家売るオンナの逆襲』のチャットボットサービス

さらに今年の3月1日には、日本航空が就活生向けのAIチャットボットにgooのAI技術を採用した。実際のOB訪問では聞きにくい質問でも、AIが相手なら気軽に聞ける。日本航空は個人を特定しない形でデータを分析し、就活生たちの「本音」を探れるというわけだ。

日本航空による「JAL就活AIチャットボット」

さらにNTTレゾナントは、チャットボットを販促やマーケティングに活用する「対話AI型Web接客支援プラン」を発表。消費者と雑談しながら商品提案や販売につなげていく方向性を打ち出した。

その背景には、これまでチャットボットは問い合わせ業務の効率化など「守り」を主体に活用されてきたが、今後はニーズの発掘やアップセルなど「攻め」のツールとして訴求したいとの狙いがあるという。

チャットボットは「守り」から「攻め」のツールに

個人向けサービスは成り立つか

次に、NTTレゾナントはコンシューマー向けのサービスも発表した。gooのAI技術を活用したチャットボットをエンドユーザーが簡単に作れる「goo botmaker( グー ボットメーカー)」だ。

goo botmaker

これまで企業向けのチャットボットは、NTTレゾナントのAI技術者が開発してきた。goo botmakerは、これをエンドユーザーに開放するものだという。高度な作り込みは難しくなるが、多くのユーザーの集合知を利用して面白いボットを作り出す仕組みだ。

将来的には家族やペット、架空のキャラクターなどを自由にチャットボット化することも視野に入れる。ただ、こうしたサービスを広く提供するには権利関係などの課題が多いという。同社はまず、この取り組みの第1弾として6月公開予定のアニメ『フレームアームズ・ガール』とのコラボレーションする。

アニメ『フレームアームズ・ガール』に登場するキャラクターをチャットボット化する

プロジェクト開始にあたって、NTTレゾナントはチャットボットに学習データを入力する「研究員」を100名募集。さらにそこから5,000円の参加費を徴収することで、ビジネスモデルやサブスクリプション化の可能性も検証するという。学習データは承認制にすることで、アニメの世界観を守っていく構えだ。

実際に100名のユーザーで魅力的なチャットボットを作れるかどうかは、手探りの部分が多い印象だ。だが、最近ではVTuberの人気が高まっているように、リアルとバーチャルの境目で活躍するキャラクターは増えている。gooのAI技術により、こうしたキャラクターたちが新たな進化を遂げる可能性が見えてきた。

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