通信事業者から転換? 「+d」から見えるドコモの将来像

通信事業者から転換? 「+d」から見えるドコモの将来像

2016.05.18

これまでドコモの新事業計画「+d」に関連する事業を取材してきた。「+d」とは、外部のパートナーと手を組み、新たな価値を創造する取り組みのことだ。ドコモはそれを"協創"とも呼んでいる。今回はこれまでの総括として、「+dとは結局どんなものなのか」を、取材から見えてきた姿を中心に考察したい。そこからは通信事業者という枠組みから脱却しようとするドコモの姿が見えてくる。

外部企業との連携で新たな創造を生み出す「+d」の戦略。そこから見えてくる新たな通信会社の役割とは?

通信事業は成長期から安定期へ

NTTドコモの本業である通信事業は、現在の主流である4G(LTE)から、2020年前後をめどに、さらなる高速化や多様化を果たす「5G」へとロードマップが敷かれている。5Gの時代になれば、現在の光ファイバー網に匹敵する速度で、あらゆるモノ同士が接続され、その上を動くコンテンツやサービスの種類や質も、現在より格段に進化したものになることが見込まれている。

日本の人口は横ばいから微減傾向にあるが、携帯電話やスマートフォンはすでに広く普及しており、これから大幅な上積みを期待するのは難しい状況になっている。現在は携帯電話時代と比べても高価な基本料金(代わりにパケット代は大幅に軽減されているが)が収入の中心だが、今後はこうした料金体系を維持できなくなっていくだろう。ビジネスそのものの再構築が必要になっているのだ。

5G時代の通信料金がどのようになるかはさておき、これまでの枠組みでは収まりきれない規模のサービスやコンテンツが関わってくるようになる。これをきっかけに、ドコモが自らのビジネスを再構築しようとしていること自体は明らかだ。

ドコモはこれまで、他社との協業であってもドコモブランドを前面に押し出してきたが、それは携帯電話サービスを通じて、サービスへの支払いも行わせる上で効率的だから、という面もあった。これを180度転換して、よりよいサービスを提供できる外部企業と柔軟に協業し、ドコモが完全に裏方に徹しても構わないとする、これが「+d」の発想といえるだろう。

通信事業者から総合商社へ

ではなぜ、ドコモは発想をここまで真逆に転換したのだろうか。それは、ドコモが単なる通信会社から脱却しようとしているからだと見る。

これまで、「+d」に関しては「農業ICT」「医療」「保険」「サイクルシェアリング」という、一見すると通信とも関係なければ、互いに関連性もなさそうな4つの業種について、取材を重ねてきた。この中で気付いたのは、それぞれの事業に共通する要素として「保険事業を除けば基本的に社会インフラの一部である」ということが挙げられる。

ドコモは農業、医療、保険、サイクルシェアリングなど通信とは一見関わりの薄い業種と手を組み新たな事業を展開している

NTTドコモはNTTグループの移動体通信事業として設立され、今やNTTグループの屋台骨を支えるまでに成長している。NTTは電電公社を受け継ぎ、固定網や移動体を問わず、通信事業によって成長してきた企業だ。そのDNAには深く「通信技術」という要素が組み込まれている。

今やインターネットが実生活と切っても切り離せない要素となっており、今後はスマートフォンやパソコンだけでなく、IoT(Internet of the Things:モノのインターネット)として、あらゆるモノがネットに接続できるようになるといわれている。

こうなると、現在の数倍から数十倍を超えるデータが常時やり取りされることになり、こうした時代が到来したとき、ドコモの通信インフラは、これまでの、いわば「必需品ではあるが、やや贅沢品でもある」状況から、「社会に欠かせないインフラ」へと進化することになる。

たとえばガス会社が、この三つ星レストランのガスは我が社のブランドです! などといちいち誇らないように、インフラというのは黒子に徹する地味な役割だ。しかしその一方で、これまでそのインフラを効率良く使えなかったり、よりよい使い方が可能な顧客と組めば、インフラの力を何倍にも増幅することができる。おそらく、ドコモがインフラ化した世界に描いているのは、そういった「つながるのが当たり前になった世界でのドコモの役割」なのではないだろうか。

そして、そういった姿は、すでに+dで一部現れているように、通信をベースに外部企業と連携し、新たなサービスや価値を生み出していく姿は総合商社のような存在にも映る。ただし、その総合商社はインフラの一部と決済手段、仮想貨幣にもなりうるポイント制度、ユーザーの個人情報(位置情報や移動情報を含む)そして全国に展開済みの、物理的な店舗ネットワークを持っているのだ。国内事業に限っていえば、これほど強力な武器を抱える企業もないだろう。

社会インフラ的資産とビジネスのほか消費者との接点となる店舗ネットワーク、ポイントプログラムなど多様な施策を打ち出しうる武器をドコモは数多く抱える

ドコモ自身、陶芸やそば打ちなど300以上のイベントを体験できる「すきじかん」などのサービスで、多様化するユーザーのニーズを掘り起こし、個別にパーソナライズして提供する仕組みを模索している節がある。このように、一方ではユーザーと密な関係を保ちつつ、もう一方では社会的インフラとしての役割を果たし、相互作用でこれまでにないサービスを生み出す、B2C、B2B、B2B2Cのすべてをこなせる新時代の総合商社。それがドコモが+dの先に見据えている姿ではないだろうか。

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CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。